魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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67話

 

 

3日後ーー

 

鐘楼が鳴り響く中、VII組のメンバーは実技テストを受けるためテオ教官と共にドームにいた。

 

「さて、お楽しみの実技テストの時間だ。説明は不要と思うからサッサと行うぞ」

 

指を鳴らし、テオ教官の隣に青紫色のベルカ式の魔法陣が展開され機械兵器を召喚した。

 

「出たわね」

 

「相変わらず普通のガジェットとは違う感じがするよ」

 

すずかが機械兵器をジッと観察するような目で見る。

 

「………先月と形が異なっていますね」

 

「あ、確かに」

 

前回と違って腕が付いていた。

 

「色々といじるとこんな風に変えられるみたいなんだよな〜。仕組みの方はさっぱりだが」

 

「そんな大雑把な……」

 

「あ、あはは……」

 

呆れたのかなのはが苦笑いする。

 

テオ教官は少し真面目な雰囲気になる。

 

「始めるぞ。レンヤ、アリサ、なのは、ユエ、前へ!」

 

「先鋒か」

 

「ふふ、頑張らなくちゃ」

 

「皆、気をつけてね!」

 

「油断せず行こうか」

 

4人は前に出て、デバイスを起動しバリアジャケットを纏い、武器を構える。

 

「頑張れ〜、レンヤ達!」

 

「「…………………」」

 

リヴァンとシェルティスが無言の視線が嫌に気になるが、まずは目の前のことからだ。

 

「準備はいいなーーーー始め!」

 

テオ教官の合図ですずかが機械兵器に向かって飛び出した。

 

「ファーストギア……ファイア!」

 

《ドライブ》

 

キイイィィィッ!

 

「やあっ!」

 

甲高い音を立ててギアを回し魔力を上げる勢いを利用して、一瞬で頭、胴、足に突きを入れた。

 

「はああああっ!」

 

ユエが止まった瞬間を狙って、高密度の茜色の剄を右手をに集め、胴に叩き込む。

 

「何っ⁉︎」

 

「おお……」

 

機械兵器は左手で受け止めて、そのまま右手を広げて、魔力刃を出して薙ぎ払ってきた。

 

「させるか!」

 

《アバートレイ》

 

刀で魔力刃を上に逸らし、攻撃を外させた。

 

「せい!……ユエの一撃を止めるなんて、難易度上げ過ぎだろ」

 

「でも、その方が燃えるよ!」

 

胴に回し蹴りを入れて離れさせると、なのはが周りに桜色のスフィアを浮かべていた。

 

「ディバインーー」

 

ガシャン!

 

「ーーシューター!」

 

カートリッジをロードし、スフィアから魔力弾を軌道を変えながら撃つ。

 

バシュッ!バシュッ!

 

AMFを展開しているのか、当たる瞬間かき消されてしまう。

 

そのままなのはに狙いを付けて、両腕を構えて接近する。

 

「なのは!」

 

「大丈夫!」

 

なのははレイジングハートを棍の様に振り回し、攻撃を受け流し隙をぬって避けたりする。

 

俺は間に割り込み、機械兵器からなのはを離させる。

 

「近接戦闘の対処の仕方、前より上手くなったな!」

 

「はやてちゃんも頑張っているんだもん、私も苦手をそのままにしておかないの!」

 

なのはは懐に入られたらどうしても対処が遅れることがあった。どうやらはやて同様に克服してきているみたいだ。

 

「俺も負けていられないな!」

 

蒼いミッドチルダ式の魔法陣を展開して、幾つもの魔力刃を出して機械兵器に放つ。

 

「レン君!AMFが……!」

 

「なのはちゃん、静かに」

 

驚くなのはをすずかがなだめて、魔力刃が当たる瞬間……

 

蒼刃斬雨(そうじんざんう)!」

 

魔力刃と全く同じ太刀筋を通り、機械兵器を一瞬で何度も突く。

 

「ユエ!」

 

「任せろ!」

 

ユエが剄を膨れ上がらせて、ユエが何人も現れた。

 

活剄衝剄混合変化・千人衝

 

実際には千人なんていないが、残像から実体のある幻影を生み出す技。

 

アリシアのデュアルマリオネットより細かい操作はできないが、殴る蹴るぐらいはできる。

 

ガガガガガガガガガッ!

 

分身達がマシンガンのような音を立てながら一撃離脱で攻撃し、着実にダメージを与える。

 

「すずか!」

 

《セカンドギア……ドライブ》

 

「はあああっ!」

 

ギャッリイイイィィィィッ‼︎

 

歯車が噛み合わさり、すずかはスノーホワイトを下段で構え刃に氷を纏わせる。

 

氷槍穿(ひょうそうせん)!」

 

渾身の一撃が機械兵器を貫き、貫いた部分から電気がスパークする。

 

「えい」

 

突き刺さったまま機械兵器を持ち上げて、地面に叩きつけたら機械兵器は消えたしまった。

 

「なかなかいい感じだ。ちゃんと連携もできているし状況にも対応している。文句なしだ」

 

「はは……ありがとうございます」

 

「とてもやり易かった」

 

「うん、後もう一戦くらいは行けそうです……!」

 

「にゃははは……さすがに勘弁して欲しいかな〜……」

 

各自の感想ももちろんの事、いい感じだったと思う。

 

「さあ次だ。リヴァン、シェルティス、ツァリ!それとフェイトにアリシアにアリサにはやて、前へ!」

 

テオ教官の言葉にフェイト達は驚く。

 

「残りはまとめて⁉︎」

 

「そ、それもそうだけど……」

 

フェイトの視線がリヴァンとシェルティスに向けられる。

 

「くっ………とっとと終わらせるぞ!」

 

「………言われるまでもない」

 

「ううっ……嫌な予感がする……」

 

「やめなさい!2人共!」

 

「これは大変やなぁ……」

 

7人は前に出て、テオ教官に出された新しい機械兵器の対する。

 

デバイスを起動して、バリアジャケットを纏い武器を構える。

 

「準備はいいな?ーーー始め!」

 

テオ教官の合図で7人の実技テストが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んーー、まあ予想通りかな?

 

前回の実習を経て、関係の修復どころかさらに溝を深めてしまったリヴァンとシェルティス。

 

その二人が同じチームになって行われた実技テストが、散々なものになるであろうことは。

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

「……レンヤより多いのに……」

 

「仕方ない、かな?」

 

「はあ……」

 

「つ、疲れた〜」

 

リヴァンとシェルティス、それにツァリとフェイトとアリシアとアリサとはやて。

 

前回と同じく機械兵器を用いて行われた実技テストは、結果だけ見れば何とか倒すことはできた。

 

ただしそれは、アリシアの撹乱とツァリの指示、フェイトとアリサの前衛攻撃、はやての後方砲撃によるもので両名は有体に言って役立たずだった。お世辞にも、試験として合格であったとは言い難い。

 

「うーん、分かっていたけど、これは酷過ぎるなぁ。自覚あるなら反省しろよ」

 

「………くっ………」

 

「……………………」

 

確信犯だがテオ教官の言う通りだ。

 

納得がいかない様子の二人であったが、流石に教官に盾突くほどに頭に血は登っていない。最後に互いに鋭い眼光を交し合いながら、デバイスをしまった。

 

『何時になく厳しいな……』

 

『……今回ばかりは仕方ないよ』

 

『でも、どうにかしないと』

 

「ーー今回の実技テストは以上。続けて今週末に行う特別実習の発表をする」

 

テオ教官に配られた、特別実習の班分けが書かれた用紙を見る。

 

 

【5月特別実習】

 

A班:レンヤ、アリサ、アリシア、リヴァン、シェルティス、なのは

(実習地:ミッドチルダ西部・エルセア地方)

 

B班:すずか、はやて、ツァリ、フェイト、ユエ

(実習地:ミッドチルダ東部・カントル地方)

 

 

何でやねん、っとはやてみたいにツッコみたいのはやまやまであった。

 

「これは……」

 

「エルセアとカントル……どちらもよく聞く名前だな」

 

「またレールウェイの移動かいな」

 

「またミッドチルダを中心とした反対側だね」

 

「そう言う意味では釣り合いが取れるはずだけど……」

 

「うん……けど……」

 

「絶対にそれ以前の問題!」

 

すずか、フェイト、アリシアは班分けのことを言っている。それに……

 

「ーー冗談じゃない!」

 

この2人が黙っていない。

 

「テオ教官!いい加減にしてください!何か気に喰わないことでもあるんですか⁉︎」

 

「茶番ですね。班分けの再検討をしてもらいます」

 

あまり感情を露わにしないシェルティスも不満を言う。

 

「うーん、俺としてはこれがベストなんだけど……俺は堅苦しい軍人でもないし命令が絶対なんて言わない。ただ、VII組の担任としてお前達を適切に導く義務がある。それに異議があるなら構わない」

 

テオ教官はいい顔をして言い放つ。

 

「「「「「っ……」」」」」

 

「「「!」」」

 

俺、アリサ、すずか、アリシア、ユエはデバイスに手を伸ばし。なのは、フェイト、はやては体を強張らせる。

 

武人としての鍛錬と、戦いで培われた危機察知能力………直感とも呼べるべきそれが、その笑顔の裏の脅威を察したのだ。

 

「ーー2人がかりでもいいから力づくで言い聞かせるか?」

 

表情は変わらずに笑顔。しかし最後の言葉に圧し掛かったのは、紛れもない強者の重圧感。

 

今度はツァリにも充分理解できた。威圧という方法で以て心臓を鷲掴みにされそうになる感覚。だが、俺達異界対策課なら分かる。これはまだ、テオ教官にとって序の口の闘気であるという事を。

 

『って言うかこれってあれだよね。武力行使♡………ってやつ』

 

『そんな可愛らしいもんじゃねえし、どちらかと言うと教育的指導だ』

 

『どっちもダメだよ!』

 

『でもあれ絶対自分も楽しもうとしてるわよ』

 

『テオ教官、威圧してるようみせかけてちゃっかり挑発してんなぁ』

 

『あざといね』

 

『フェイトちゃん!あざとい言っちゃダメだよ!』

 

しかし2人はまんまと引っかかり、テオ教官の前に立つ。

 

「2人共、ダメだよ……!」

 

ツァリが止めようとするも、引き下がれないようだ。

 

「クク、さすがに男なら引き下がれないか。そう言うのは結構好きだぜーー」

 

テオ教官はデバイスを起動させ、武器だけを出した。

 

「⁉︎」

 

「な……!」

 

全員、初めて見るテオ教官の獲物に驚く。

 

テオ教官の身長を優に超える大剣を片手で持っている。刃は実体があり、刀身に薄く青紫色の魔力光が見える。

 

「大剣⁉︎」

 

「凄いね、あんなに軽々と」

 

「チッ……」

 

「面白い」

 

大剣に驚く中、リヴァンとシェルティスはデバイスを起動して、武器を構える。

 

「乗ってきたなーーレンヤ。ついでにお前も入れ!まとめて相手してやる!」

 

「え⁉︎……は、はいっ!」

 

訳の分からぬまま、前に出てデバイス起動する。

 

「あらら」

 

「ご愁傷様や」

 

アリシとはやては同情するようにつぶやく。

 

テオ教官から鋭い青紫色の魔力光が発せられる。

 

「ごくっ……」

 

「なんて鋭い魔力」

 

テオ教官の実力は今まで分からなかったが、相当な実力者だ。

 

「それじゃあ実技テストの補習と行こうか……」

 

テオ教官は大剣を構えーー

 

「レルム魔導学院・戦術教官、テオ・ネストリウス・オーヴァーー参る!」

 

名乗り出て、気迫と魔力が放出された。

 

「ぐうっ……」

 

「っ……!ぜあ!」

 

「待て!1人で行くな!」

 

怯む中、シェルティスが飛び出し、テオ教官に斬りかかる。

 

「おお、やるねぇ」

 

「くっ……」

 

テオ教官はシェルティスの攻撃を大剣で難なく受け止める。

 

シェルティスは一撃の重さでは確実に負けると分かっており、素早く動いて一撃離脱でテオ教官を攻め続ける。

 

「パワーで負けると分かっていてスピード勝負か、悪くないが……」

 

大剣を大きく薙ぎ払い、シェルティスを吹き飛ばす。

 

「小手先だけじゃ、俺は倒せないぞ」

 

「くっ……」

 

「どけっ!」

 

リヴァンが鋼糸を針のように飛ばす。

 

「甘い甘い」

 

鋼糸を剣圧で吹き飛ばし、リヴァンに接近してくる。

 

「ほらどうする?」

 

「繰弦曲・薙蜘蛛!」

 

リヴァンは攻撃を鋼糸で絡め捕って軌道を変更させる。

 

「繰弦曲・崩落!」

 

吹き飛ばされた鋼糸を編んで網にしてテオ教官を閉じ込め、その鋼糸すべてから内向きに魔力を放つ。

 

「まだまだぁ!」

 

テオ教官の全身に青紫色の魔力を纏って攻撃を防いでいる。フィールドタイプの防御魔法か、なんて魔力密度だ。

 

「行くぜぇ!エルスラッシュ!」

 

リヴァンに向かって魔力斬撃を放ち、鋼糸を切り裂きながら迫ってくる。

 

「リヴァン!」

 

「レンヤ⁉︎」

 

《スプリットモード》

 

「はあっ!」

 

間に入り、斬撃を断ち切る。

 

「リヴァン、シェルティス、自分の思いを主張したいなら連携くらい妥協しろ!」

 

「っ……」

 

「…………はあ」

 

理解はしているが、感情が否定しているみたいだ。

 

「戦場で相談はお早めにな!」

 

「にゃろ!」

 

《ファースト、セカンドギア……ドライブ》

 

刀身を強化して、テオ教官と鍔迫り合いをする。

 

「ぐう……!」

 

「うむ、やはりお前が今年の一年で1番強いな。基礎もとことんやっているようだ」

 

「そりゃどうも!」

 

魔力を炸裂させて距離を取り、レゾナンスアークに魔力を込める。

 

「桜花……気刃!」

 

魔力斬撃と実体の剣の二段攻撃で斬りかかる。テオ教官は受け止めるが……このまま押しきる!

 

「強烈だなぁ。だがそう簡単には負けねえっての!」

 

テオ教官は押しきろうとすると、後ろからリヴァンとシェルティスが攻撃をしてきた。

 

「水晶波!」

 

「繰弦曲・鎌糸!」

 

同士討ちを想定してか、遠距離の攻撃をする。

 

すると、テオ教官の魔力の感じが変わる。

 

「まずっ!」

 

飛び退こうとするが、刀がくっ付いたように離れなかった。

 

「フルカウンター」

 

「うわああっ!」

 

「ぐうっ⁉︎」

 

「っ……!」

 

次の瞬間、3人とも吹き飛ばされて。バインドで拘束された。

 

「くっ……倍返しで返された?」

 

「はあはあ……」

 

「……そんな……」

 

肩で息をして、負けたことを実感する。

 

「だ、大丈夫⁉︎」

 

「とんでもないわね」

 

「……あれでも一応、手加減したみたいだな」

 

「でもこれだけの実力者なのに、なんで名前を聞かないんだろう?」

 

「それにあの大剣、どこかで見た感じがあるやけど……」

 

「ベルカの騎士かな?近代ベルカ式だし」

 

「でも、これで……」

 

「決まりだね」

 

テオ教官はデバイスをしまい、バインドを解く。

 

「俺の勝ちだな。レンヤが本気出してたら俺も危なかったなぁ。それじゃあA班・B班共に週末は頑張ってこい。お土産、期待してるぞ」

 

また足掻ける気力は2人にはなく、しぶしぶ了承する。

 

そして最後の最後で余計なことを言い、今月の実技テストは終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月29日、2度目の特別実習当日、早朝ーー

 

身支度を整えて、寮の1階に降りると既にリヴァンとシェルティスがいたがお互いに背を向けあって顔も合わせようとしてなかった。1月前と同じ状況だが、前と2人の間が広がっているのがとてもわかりやすい。

 

「おはよう2人共、早いんだな」

 

「ああ、おはようレンヤ」

 

「…………………」

 

なんだが幸先不安だ。

 

「ふわぁ〜……」

 

「ほらアリシアちゃん、しっかり」

 

「おはよう」

 

ちょうどアリシア、なのは、アリサが降りてきた。

 

「おはよう、3人共」

 

「おはようレン君、皆揃ったみたいだね。早速出発しようか?」

 

「そうだな……まだ時間じゃないけど」

 

「……僕は構わない」

 

「……俺も問題ない」

 

「……むにゃむにゃ……それじゃあ、れっつごー……」

 

現実逃避してるが如く眠そうなアリシアに激しく不安を覚える。

 

駅に向かうと、先に出て行ったB班がいた。

 

「ーー来たか」

 

「あ、皆」

 

「おはよう。そっちももう出発なんだ?」

 

「ああ、結構離れているから昼前には着きたいからな」

 

「そっちはもう行くの?」

 

「そろそろカントル行きのレールウェイが来る頃みたいやしな」

 

「すぐに着いちゃうけど、早い方がいいからね」

 

「こっちは特急使っても5時間はかかるわ。まあ、それだけ長い時間使ったことないから楽しむではあるけど」

 

「駅弁も楽しめるね!」

 

そしてB班の視線はさっきから会話に入ってこない後ろの2人に向けられる。

 

『……やっぱり今朝もそんな調子みたいだね……』

 

『よくもまあ飽きもせずいがみ合えるなぁ』

 

『ぶっちゃけ、イラつきます♪』

 

『ね、姉さん落ち着いて……』

 

皆も2人がどうやったら仲良く……までも行かなくてもいがみ合わない位までにしたいらしい。

 

『レンヤ君、レンヤ君ならできるよ』

 

『え……』

 

『2人に仲立ち………レンヤ君ならきっとできるよ。私も応援しているから』

 

『それは……まあ、ありがとうすずか』

 

ちょうどその時、放送でカントル行きのレールウェイが到着するとにことだ。

 

「それじゃあ行ってくるね」

 

「お互い頑張ろうや」

 

「ああ、そうだな」

 

「気をつけて行きなさい」

 

「また寮でね」

 

フェイト達はホームに向かい、ちょうどやって来たレールウェイに乗って行った。

 

「俺達もエルセアに行くか」

 

「うん、そうだね」

 

「………ああ」

 

「………わかった」

 

「ええ、行きましょう」

 

「レッツゴー!」

 

ゲートに端末を当ててゲートに入り、中央地区経由でエルセアに向かった。

 

ボックス席に座るが、2人は対面に座り顔を逸らして合わせようとしてない。アリシアは俺に寄りかかってサッサと寝てしまい、俺となのはとアリサは居た堪れない空気になってしまった。

 

「えっと……と、とりあえず実習先のおさらいをしようか?」

 

「そうね、確かシェルティスはエルセア出身だったわよね?せっかくだからエルセアについての概要を説明してもらえるかしら?」

 

どうにか場の空気を変えようとする。

 

「別に構わない。ただそこのヤツが素直に聞くかどうかは知らないがな」

 

「っ……エルセアのことはある程度知っている。別に説明しなくてもいいぞ」

 

「そうか、なら聞かなくていいぞ」

 

「ッ………!」

 

怒ったのかリヴァンは立ち上がる。

 

「ちょ、ちょっと2人共……!」

 

「やめなさい!」

 

なにはとアリサが止めに入る中、俺は……

 

「ーーなるほどな。道理で散々な成績だったわけだ」

 

「な、なんだと……?」

 

「……………………」

 

「レン君?」

 

「…………ふう」

 

視線を集める中、俺は自分が思ったことを話す。

 

「先月のB班の特別実習に付けられた評価はE……はっきり言って、普通の試験なら赤点レベルの落第点だ。2人はまた同じことを繰り返す気か?」

 

「………それは……」

 

「………だからと言って仲良くしろと言いたいのか?」

 

「そこまで言ってないさ。そもそも、あんな経緯で選ばれた俺達VII組だ。立場も違うなら考え方も違う。お互いに譲れない事だってあるだろう。だけど……数日間、俺達は紛れもない仲間だ」

 

「レンヤ……」

 

「何を言い出すかと思えば………」

 

「ふざけるな、誰がこんなヤツとーー」

 

「友人じゃない、同じ時間と目的を共有する仲間だ」

 

リヴァンの言葉を遮って話しを続ける。

 

「さらに露骨に言えば…………今回、フェイトやユエ達B班に負けないための仲間じゃないか?」

 

「ん……?」

 

「レ、レン君?」

 

「………君が勝ち負けにこだわるタイプだと思わなかったが」

 

「生憎、勝敗が気にならない程俺は無神経じゃない。正直、自由行動日に自由な時間があるリヴァンとシェルティスは羨ましいし……この間の教官との勝負だって負けて悔しい」

 

「あ……」

 

「そうね……」

 

「それは……」

 

「…………」

 

「テオ教官の実力はとても高い。どんな経緯か知らないけど相当、実戦経験があるんだろう。だけど、もし俺達3人がもう少し連携していれば一矢くらい報いることは出来たはずだ」

 

2人はもし連携出来た事を考えてみている。

 

「そうね、確かに魔力量は高いけど3人とがかりで相手となると話は別よ」

 

「戦い方も上手かったけど、レン君達が連携していたら勝つのは無理でも負けることは無かったと思う」

 

「……そっか」

 

「「………………」」

 

正論を言われて、2人は黙って聞いている。

 

「……実際、フェイトちゃん、すずかちゃん、はやてちゃん、ツァリ君、ユエ君は問題ないと思うし……」

 

「チームワークには問題ないわね」

 

「万全の態勢で特別実習に挑めるだろう。下手したらもっと差が開く事になる」

 

「判ったーーもういい」

 

リヴァンは俺達に会話を止めて座る。

 

「そこまで言われたら協力しないわけにはいかない」

 

「このまま悪い成績というのも嫌だしね」

 

「それじゃあ……」

 

「今回の実習が終わるまでは少なくとも休戦する。構わないな?」

 

「わかったよ。それぐらい耐えられなければ器が知れたもんだからな」

 

なんとか最悪の実習にならずに済みそうだ。

 

『……やれやれ』

 

『これで一緒に行動できそうだね!』

 

『先月よりまともな実習ができそうね』

 

『これで一安心』

 

「起きているなら逃げてんじゃねえ」

 

「いだだだだだっ!」

 

アリシアのこめかみをグリグリする。

 

それから落ち着いた所でシェルティスがエルセア地方についての説明が始まった。

 

「エルセアは田舎と都会の中間みたいな場所だ、住宅街や団地、マンションが多い」

 

「ある意味地球と近い感じがするわね」

 

「海鳴みたいな感じかな?」

 

「だいたいそんな感じだ。だが、さらに西に行くとそこは何もない荒野が続いていてな。あるのは岩と所々にある風力発電機だけだ」

 

「緑も所々にあってな、車の往来も少なく静かで落ち着ける場所が結構ある。」

 

「へえ〜〜、そういえばレンヤは西部担当だったっけ?」

 

「ああ、皆優しいしいい場所だ。そういえばシェルティスとは一度も会わなかったな」

 

「遠目からレンヤのことは見た事がある、子ども達にとても慕われていた所をな」

 

それから中央地区経由でエルセア地方まで約5時間、レールウェイに揺られ続けた。

 


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