魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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66話

5月下旬ーー

 

桜が完全に散り、新緑薫る風がルキュウの街を吹き抜ける季節……特別実習を終えた俺達は再び、忙しい学院生活に追われていた。 魔法訓練、武術訓練に加え、一般授業や専門学も本格化する中……今年から始まった科目、異界学も始まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーここ数年で明らかにされてきた異界。霧の魔女事件以降、私達は初めて認知することができました」

 

教卓の前で喋っているのはモコ・オースター。異界について研究している女性だ、何度か面識もある。

 

「異界は現実世界と接触するために(ゲート)を発生させます。この現象のことを異界化(イクリプス)といい異界のほとんどは迷宮の形をとり、何らかのきっかけで特異点と呼ばれる因子となった人や物を起点として発生されます。異界に入るためのゲートを目視できるのには個人差があり、大抵の人は見えませんけど異界に入ることができれば目視できるかもしれません。そして異界には住む住人、怪異(グリード)。グリードは未だなぜ存在し、人を襲うのかは明らかにされていません。ただ、最近の調査によってミッドチルダの過去に起きた災害の半数はグリードが関わっているとのことです。そして主な事件を起こす異界のリーダー的グリードが存在します」

 

どれも知っているが、改めて知る事も大事であり聞き逃さずノートにペンを走らせる。しかしいかに魔法文化が優れていてもペンとノートは必要なんだな。

 

モコ先生は誰かを指名しようと教室を見渡している。

 

「それでは高町 なのはさん。分かりますか?」

 

「は、はいっ!エルダーグリードです」

 

なのはは立ち上がり、迷う事なく答えた。

 

「正解です。エルダーグリードが事件を起こす主な原因です、しかし何の目的で事件を起こし人々を襲うのかは分かりません。犯行方法も様々で対処が苦労する原因の1つです、さらにここ数ヶ月で単体の……」

 

(正解してよかった)

 

授業が続く中、なのはは正解か不安だったのか一安心する。

 

(大丈夫か、なのは?)

 

(うん、レン君達に教えてもらってなかったら危なかったよ。ありがとうレン君)

 

(どういたしまして、お互いに頑張ろうな)

 

(うん!)

 

それから真面目に授業を受けて、午後から男女別のI組と合同で授業をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女子、栄養学・調理技術ーー

 

「あれが管理局のエース達、なぜあんなクラスに……せっかくご一緒できるのを楽しみにしてたのに」

 

「あのカチューシャの子と金の短髪の子、入学主席と次席だったっけ?」

 

「地球出身の方は全員優秀なのでしょうか?」

 

「それにしても茶髪の子の手さばきは何なの? 鮮やかすぎです」

 

声を下げずに言いたい放題である。

 

「ーー皆。そのくらいにしておきなさい。私達は誇り高きI組。料理ごときとはいえ、あのような寄せ集めのクラスに負けるわけにはいかないよ」

 

「す、すみません。エステートさん」

 

「けど、あまり料理はやった事なくて……」

 

なのは達は聞こえてくる声に、気分があまりよくなかった。

 

「……まったく。ヒソヒソ感じが悪いわね」

 

「私達のことが気になって仕方ないんだと思うよ」

 

「ちょっと気恥ずかしいね」

 

「うわっ!手が滑った!」

 

「姉さん、落ち着いて!」

 

「やりづらいったらありゃせんなぁ。ほい、三枚おろしや」

 

『おお!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男子、CP端末入門ーー

 

教員は教える事だけ教えて、一服していた。

 

「このやろ〜このやろ〜、俺に恨みがあるのか〜」

 

レンヤは操作なんてとうの昔にマスターしており、教員が見ていないのでメモリを指して資料を作成、そして日頃の鬱憤を効率よくぶつけていた。

 

「うわぁ、レンヤうつの早いね」

 

「どうやるか皆目見当もつかなかったが、何とかなるものだ」

 

「そうだね、2人もすぐに操作を覚えたみたいだし」

 

「ああ、リヴァンとシェルティスは優秀だからな。シェルティスはともかくリヴァンは前から興味があったらしいからな。まあ、今のご時世触らないほうが珍しいがな」

 

レンヤは喋りながらも手を休めずキーボードを打つ。

 

「なのはから聞いたが、先月のB班の実習は相当酷かったらしいな」

 

「危うく殴り合いになる所だったようだ、テオ教官が来なかったらどうなっていた事か」

 

「アリサでも止められないなんて。どうしたもんだろうね」

 

「いい加減、俺達にも何か出来ればいいだけど……」

 

「ーー神崎 蓮也」

 

その時、横から高慢そうな声が聞こえてきた。

 

「……?」

 

「え……」

 

横を向いてみると、金髪でI組の生徒が立っていた。

 

「確かI組のランディ……だったか?」

 

レンヤは手を止めて、

 

「ああ、その通りだが1つ補足しておきたいな。僕のフルネームはランディ・ジムニーシエラ。そう言えば判るかな?」

 

「ジムニーシエラって……」

 

「有名な家柄なのか?」

 

「ベルカに残る古い家系の1つだ、それで俺に何か用か?」

 

レンヤは下らない事だと思い、またキーボードを打ちはじめる。

 

「神崎……いやゼーゲブレヒト様。ご一緒に学生会館の3階に来て頂けますか?」

 

「それはーー」

 

キーボードを打つ手を止める、学生会館3階は1年から3年生のI組、II組の限られた生徒だけが使える交流の場。いわゆるサロンだ。

 

「あなたが来てくれればみなも喜ぶ。聖王であるあなたなら許可など取る必要もないでしょう、従者の女性達もご一緒しても構いません」

 

(困ったな……またこの手の話しか)

 

以前から何度も呼ばれているが、管理局で忙しいという名目で断っていた。

 

(明らかに媚を売ろうとしているな、俺にそんな権限ないし。よくて管理局の三佐として……いや執務官の権限があったか)

 

「やれやれ……こんな場所で勧誘とはな」

 

後ろからシェルティスが話しかけてきた。

 

「シェルティス……」

 

「シェルティス・フィルス……!」

 

「あんまり感心しないな、このような学業を行う場での勧誘は。家柄の底が知れるぞ」

 

「貴様……!舐めた口を……!貴様ごときすぐにでも……」

 

「そこまでだ、この学院では権力を振りかざし他人を害する事は優秀な魔導師の芽を刈り取る行為でありーーこれを破った者は厳罰に処する……分かっているはずだ」

 

レンヤはこの学院の校則を言い、ランディを抑える。

 

「くっ………仕方がない。それではこれで失礼します、いい返事を期待しています」

 

ランディはそれだけを言い残すと、自分に割り振られた端末に戻って行った。

 

「随分、賑やかな男だったな」

 

「ああ……どう断ろうか迷ったよ。ありがとうシェルティス、助かった」

 

「あいつの言い分が気に食わないだけだ」

 

シェルティスはそれだけを言い残し、戻って行った。

 

「シェルティスも結構優しいんだね」

 

「あそこまでハッキリ言える者はそうはいないだろう」

 

「どちらにせよ、助かった」

 

レンヤはホッと一息つく。

 

「………………………」

 

それを耳を立ててリヴァンが静かに聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

H・Rーー

 

今日1日の授業も終わり、明日は自由行動日だ。

 

「今日のお勤めごくろーさん。明日は自由行動日だ、各自自由にするといいが、来週の水曜日には実技テストがあるからな」

 

「はあ……そろそろかとは思っていましたけど」

 

「次の特別実習についての発表もあるんですか?」

 

アリサが溜息をつき、なのはが特別実習について質問する。

 

「ああ、来週末にはまた実習先に行ってもらう、楽しみにしてろよ」

 

「ふう………」

 

「…………………」

 

リヴァンとシェルティスは前回の特別実習を思い出したのか、表情が悪い。

 

「楽しみだね〜」

 

「ふふ、アリシアちゃん。落ち着いて」

 

「それと来月の半ばから……各種、高等教育授業の中間試験って言うものがあるから」

 

中間試験……学生である以上避けては通れない門の一つ。

 

「そ、それもあったっけ……」

 

「中間試験……嫌な響きや」

 

「日々の学習の成果が試されるというわけか」

 

どこの世界も試験の思い入れは様々らしい。

 

「ま、大変だとは思うけどせいぜい学業も頑張れ。俺がフィエスタ教頭に嫌味言われない程度にな」

 

「そっちですか……」

 

「その、分からない所を教えたりは……?」

 

「あー、無理無理。そっちは専門外だから。HRは以上。リヴァン、挨拶」

 

「はい。起立……礼」

 

テオ教官は逃げるようにHRを終わらせて、サッサと教室から出て行った。

 

本当に何で教官をやっているか疑問に思う。

 

なのは、フェイト、アリシア、すずかは部活があるそうで挨拶したらすぐに部活に向かった。

 

「あはは、それじゃあ先に行くね、レンヤ」

 

「先に行くぞ」

 

「2人共、部活か?」

 

「うん、でもよかったら晩ご飯は一緒に食べない?」

 

「はやての料理も美味だが、たまには街のカフェはどうかと思う」

 

「そうだな……帰ったら寮の玄関で待ち合わせるか。はやてには俺が伝えとくよ」

 

「うんっ!」

 

「また後でな」

 

2人は部活に向かうため、教室を出て行った。

 

「レンヤ」

 

「ああ、アリサ。 そっちも今から部活か?」

 

「違うわ、今日は活動日じゃないのよ。 で、レンヤは明日もフィアット会長の手伝いをするの?」

 

「そうだなぁ、早朝から異界対策課に行かないといけないからな。今月は断るよ」

 

「そう、なら私が受けるわ。レンヤは気にせずに行きなさい」

 

「いいのか?」

 

「会長には毎回よくしてもらっているから無下にはできないわ。 こっちは私に任せなさい」

 

「了解、ありがとうアリサ」

 

アリサは手を振りながら、教室を出て行った。

 

「さてと、俺も……」

 

教室を出ようと席を立つと……

 

「レ〜ン〜ヤ〜く〜ん〜?」

 

「ぎゃあ! はやて⁉︎」

 

後ろからはやてが抱きついてきた。

 

「さっきの話し聞いたで〜〜私、いらん子なんやな……」

 

わざとらしく涙ぐむはやて。

 

「いや話し聞いていたんなら分かるだろう……!」

 

「ああー、これが家で1人冷めた料理と共に愛する夫を待つ家内の気持ち……」

 

「ちゃんと連絡するし、家じゃなくて寮だろう!」

 

「あはは!分かっとるって、それじゃあまたなぁ!」

 

はやては俺から離れると、駆け足で出て行った。

 

「全く……」

 

気づけば教室には俺1人だったので、荷物をまとめて教室を出て、寮に向かった。

 

「ーーよう、後輩君」

 

正門を出たあたりで、後ろから声を掛けられて振り返ってみると、灰色の髪の二年生……先月50コインを掻っ攫っていった先輩がいた。

 

「……もう賭けには付き合いませんよ?」

 

「ハハ、別に騙し取るつもりじゃなかったんだがな。そうそう。あれ、どうやったか判ったか?」

 

どうやった……コインが消えた手品の種か。

 

「別に50コインくらい、すぐに返してもいいんだが。それを答えてからの方が納得できるんじゃねーか?」

 

「そうですね……」

 

俺は先月のコイントスを思い出した。

 

(あのトリックには何かのコツがあるはずだ。おそらく決め手になるのはーーバックは下に置かれてなかったし、あの時確か両腕を上げてから前に出したし、多分……)

 

「ーー投げたコインをどちらかの手で掴み、両腕を上げて掴んだコインを袖の中に入れたんじゃないですか?」

 

考えを言ったら、先輩は驚いた顔をする。

 

「フフ……やるねぇ。答えるのも早かったし、ちょっと驚いたぜ」

 

「それじゃあ……」

 

「ああ、正解だ。約束通り50コインはきっちり返してやるよーー」

 

先輩はポケットを探ると、バツの悪そうな顔した。

 

「……悪ぃ。10コインしかねーわ」

 

「はあ……まあいいですよ。50コインぐらい大した額じゃありませんし」

 

「お、そうか?だったらありがたくーー」

 

「ーーいけませんよ。か弱い後輩に厚かましくたかるものではありません」

 

その時後ろから女性の声が聞こえてきた。

 

「おっと。現れやがったな」

 

「え……」

 

こちらに近づいてくるのは、長い赤髪の一科生の先輩だった。

 

「レンヤ君ですね。フィアットとグロリアから君のことは色々聞いています。先月の特別実習でも見事、事件を解決したそうで」

 

「そうですか……神崎 蓮也です。よろしくお願いします、先輩」

 

「はい。私はエテルナ。エテルナ・レグナムです。よろしくお願いします、レンヤ君」

 

「!、レグナム……今も残る古代ベルカからの古い騎士の一族の……」

 

「ふふ、さすがに知っていましたか。いつか、あなた様に仕えることがある時は、どうぞよしなに」

 

「いえ!もう従者は間に合っていますので……!」

 

「相変わらずかったいなーお前は。少しは肩の力を抜けよ、これから中心地区に行くのか?」

 

「ええ、これから稽古です、クー。あなたはもっと後輩に模倣になるような行動を心がけてください」

 

「なら俺がしっかりすれば、お前少しは羽を外すか?」

 

「それとこれとは別です。それではこれで失礼します、いずれわたくしから依頼を出しますから、ぜひに応じてもらえると嬉しいです」

 

エテルナ先輩は一礼をして、街に向かった。おそらく駅に行くのだろう。

 

「全く、少しは自分に甘くなれってんだ」

 

「あはは、俺はよく判りますよ。ああいうの、自分に甘くできないことが」

 

「それは難儀だな」

 

「そういえば、フィアット会長やグロリア部長と親しいんですか?エテルナ先輩も2人から話しを聞いたと言っていましたけど……」

 

「ま、全員クラスは違うが1年の時からの縁でな。っと……そういや言い忘れてたか。2年V組所属、クー・ハイゼットだ。よろしくな、レンヤ後輩。そんじゃお先に〜」

 

先輩……クー先輩は名乗るとサッサと行ってしまった。

 

「エテルナ先輩にクー先輩か……フィアット会長やグロリア部長も大した人だったし……ここの2年はやっぱり大物揃いみたいだ」

 

その後俺は川まで行き、何匹か釣った後。寮の前でツァリとユエと合流して、駅前のカフェで夕食を食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日ーー

 

5月23日、日曜日。

 

俺は早朝からミッドチルダ中心地区に向かい、本局と地上に異界の被害報告を行い、それから会議に出席して。終わったのは昼過ぎだった。

 

「はあ、子どもが……学生がやる事じゃないぞこれ……」

 

「お疲れ様、レンヤ君」

 

異界対策課に戻り、ソファーに寝転んでた所をすずかがお茶を用意してくれた。

 

今、異界対策課には俺とすずかしかいない。

 

「サンキューすずか」

 

お茶で喉を潤し、一息つく。

 

「次の特別実習はどこに行くんだろうね?」

 

「ミッドチルダのどこかなのは確かだけど、もしかしたらここかもな」

 

俺は机を指で叩いて、場所を示す。

 

「ミッドチルダ中心地区って事?ありえなくは無いけど、1班だけだど広すぎるし……東西半分に分けるのかな?」

 

「ま、あくまで可能性だ。それに依頼の多い場所が選ばれる可能性が高いな」

 

ディスプレイを開き、依頼が多い場所を調べる。

 

「ふむふむ、東と西か……まあ、ありえなくはないな」

 

「レンヤ君、後これを」

 

すずかが渡してきたのは、確認されているグリードの種類と特徴が書かれた資料だ。

 

「ここ最近、ニビノカミに似た様なグリードが増えてきているね。実力はグリムグリードには劣るけど、どれも厄介な能力を有している」

 

「どいつもこいつも対応のし難い能力だな、大抵のグリードは力でごり押ししているから楽だったけど……どうもおかしいな」

 

「ーーおかしいって何が?」

 

「たっだいまー!」

 

「おかえり、アリシアちゃん、ルーテシアちゃん、ガリュー」

 

依頼を終わらせたアリシアとルーテシア、ガリューが戻ってきた。

 

「お疲れ、依頼は終わったのか?」

 

「問題なく終わったよ、ああー疲れた〜」

 

「あれから1年異界対策課にいますけど、未だに慣れませんね」

 

「ふふ、ルーテシアちゃんは早い方だよ。私達も結構時間がかかったし」

 

「え、そうなんですか!なんか嬉しいです」

 

「それでレンヤ、さっきの話しなんだけど……」

 

「ああ、そうだな」

 

さっき言いかけた事を話す。

 

「最近確認されているグリードには共通点があってな。さっき言った通り単体で顕現して実力はエルダーグリード並みで特殊な能力を持っている」

 

「それのどこがおかしいの?」

 

「最後に突発的に出現するんだ、なんの前触れもなく、目的もなく」

 

「それは……おかしいですね。どんなグリードでもちゃんと目的があって行動しています、何もないなんておかしいです!」

 

「確かに、前回のソーイーターもただ目に捉えた物を襲っている様にしか見えなかったし……」

 

「………………………」

 

アリシアが黙って顎に手を当てて、俯きながら考えている。

 

「アリシアちゃん、どうしたの?」

 

「え…………なんでもないよ!」

 

そう言うが、アリシアの顔は暗いままだ。

 

「アリシアさん……」

 

「………アリシア、原因が判ったんだな?」

 

アリシアは身体を一瞬、大きく震わせる。

 

「共通点があるグリード、突発的に出現して目的がない、エルダーグリード級で特殊能力を持つ………これらが合わさり導き出される答えはーー」

 

そこで一旦止めて、息を整えから言う。

 

「ーー第三者……何者がグリードに手を加えて、実験の名目で野に放つ」

 

アリシアは顔を俯き、すずかは目を閉じ、ルーテシアは驚きで言葉が出ない。

 

「な、なんでそんな事を!」

 

「いずれそんな事が起こると思っていた。ハンティングの事件がいい例、異界の利用と……兵器化」

 

すずかが辛そうに言う。

 

「次元犯罪者が異界に手を出すことは予想していた、HOUNDの様に実用化も難しいことじゃない。そして、グリードの改造ができそうな次元犯罪者はーー」

 

ディスプレイを展開して、ある1人の男性を映し出す。

 

「ーー広域指名手配犯、ジェイル・スカリエッティ。こいつだ」

 

「ッ……!」

 

アリシアは顔を背けて、ジェイル・スカリエッティを見ない様にする。

 

「アリシアさん?どうかしたんですか?」

 

「ルーテシア、そっとしておいてやれ」

 

(ポンポン)

 

ルーテシアの肩に乗っていたガリューが抑える。

 

「……とは言え判った所でどうしようもないし、各部隊に注意を呼びかけるしかできない状況だ」

 

「そう……だね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから日が落ちる手前まで働き、ルーテシアを帰してからレールウェイに乗っていた。

 

「………………………」

 

「アリシア、ジェイル・スカリエッティがそんなに憎いか?」

 

すずかは俺の肩に寄り添って寝てしまい。ボックス席の正面にいる暗い顔のアリシアに話しかけた。

 

「そう、じゃないよ。フェイトは私の大切な妹……それは絶対に誰にも否定させない。でもやっぱり、複雑かな?」

 

アリシアは自分でも判らないように苦笑いをする。

 

「ジェイル・スカリエッティがプロジェクトFの基礎を作って、それをお母さんが引き継いで完成させた。ジェイル・スカリエッティがいなかったらフェイトとエリオもいない、でもいたらいたらでただの犯罪者。だからいつか私の手でジェイル・スカリエッティを捕まえる、それが私の使命なんだと思うから」

 

自分の妹を守る姉、アリシアの瞳は決意で揺らがない目をしている。

 

「あんまり1人で背負い込むなよ、俺達を頼れ。じゃないとなのはみたいになるぞ」

 

「もちろん!きっちり手伝ってもらうからね!」

 

「ああ、でも俺はジェイル・スカリエッティに少し感謝しなくちゃいけないかな?」

 

「え、なんで?」

 

「フェイトとエリオに出会えることができたからさ」

 

アリシアは一瞬驚いた顔をして、すぐに笑顔になる。

 

「そうだね、私もレンヤ達と出会えたことに感謝しなくちゃ!」

 

俺達は笑い合い、それからルキュウに到着して。すずかを起こし寮に向かった。

 

 


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