魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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65話

 

 

翌日ーー

 

朝食を済ませた後、受付でオーナーから依頼の入った封筒を貰った。

 

「それではお気をつけて、実習の成功を祈っています」

 

「ありがとうございます、オーナーさん」

 

「感謝します」

 

オーナーが去った後、封筒を開けて依頼を見た。

 

「どれも必須ではないようだな」

 

「午前くらいで終わるようになっているね」

 

「それじゃあ、行こう」

 

「うん、張り切って行こか!」

 

さすがに2日目で4人とも慣れたようでスムーズに依頼をこなした。

 

そして依頼の1つがある、漁港に向かった。ここがミッドチルダ最大の漁港のようでかなり大きい魚市場だ。

 

「へえ、ここの河岸は賑わっているね」

 

「早朝の水揚げも終わっているから、ほとんどの業者の多くが店じまいしちゃったから少ない方だよ。もっと早く来ればこれの倍以上は人がいるよ」

 

「それは凄い」

 

「おお!これはええアジや!こっちのサンマも安い!帰りに買っていかへん?」

 

「はやては相変わらずだね」

 

「依頼を終わらせてからにしろよ」

 

俺達は依頼提出者の市場長の元に向かった。

 

「すみません、レルム魔導学院の者です。市場長にお会いしたいのですが?」

 

「おお来たか、私がここの市場長だ。見て欲しい物がある、ついてきてくれ」

 

市場長について行き、水揚げ場に来ると人が集まっている場所があった。

 

「あれは一体……」

 

「あそこに見て欲しいのがあるのだ」

 

人垣を分けて進むと……

 

「うわぁ!」

 

「これは!」

 

「ひどい……」

 

そこには巨大な鮫がいたが、腹を噛み抉られていた。

 

「過去にここの近海に危険生物の報告例は?」

 

「数十年間1件もない、それにこの巨大な鮫も見たのは初めてだ」

 

「てことはやっぱり……」

 

「見た感じ水棲生物型グリード、独立単体のグリムグリードだよ」

 

「これは少し厄介だな」

 

「えっ、どうして?」

 

フェイトが俺の言葉を疑問に思う。

 

「この広い海で巨大とはいえ、グリード1体を探すのにどれだけ時間がかかると思う?」

 

「確かにそうやなぁ」

 

「さすがにツァリ君でも難しいと思うし……」

 

「出来るよ」

 

「やっぱり出来ないのかぁ…………ん?」

 

一瞬聞き間違いた気がするな。

 

「えっと、ツァリ君出来るの?」

 

「グリードの気配は昨日分かったし、不可能じゃないね」

 

「こんな広範囲の索敵はシャマルでもできへんで」

 

「さすがツァリだな、それでお願いできるか?」

 

「うん、すぐにやるよ」

 

ツァリはウルレガリアを起動して、端子を海に放った。

 

目を閉じて集中しているようで、髪も薄紫色の魔力光で光っている。

 

「さて、俺達は邪魔にならないよう離れているか」

 

「いつでも出撃出来るように準備しておかないと」

 

「すみません、すぐに船が出せるように出来ませんか?」

 

「分かった、1番速い船を用意しておこう」

 

すずかの頼みに市場長は潔く了承してくれた。

 

それから数十分程度経った後……

 

「レンヤはいつもこんな事件を受けていたの?」

 

準備を進めている時、フェイトがそんなことを言って来た。

 

「そうだなぁ、大概は依頼主の所持品を異界から探しだすことが多いな。単体での現実世界の顕現は本当にたまにしかなかったし」

 

「そうなんだ」

 

「はやてはどうだ?目標に近づいているか?」

 

「順調や!このまま行けば卒業と同時に開始できそうや」

 

「そうか、俺達もどうにかしてそっちに合流したいんだが。もう少し人員が増えてくれれば出向扱いになるんだけど……」

 

「試験的の設立だから1部隊の出向は難しいし、一時的に異界対策課の活動も停止することにもなっちゃうからね」

 

「ふむ、大変な事をなんだな。できれば私にも手伝わせてもらえないか?」

 

「ありがとうユエ、でもまだ3年後の話しだ。3年経ったらお願いしてもいいか?」

 

「ああ、もちろんだ」

 

『もちろん僕も協力するよ』

 

話しに入るように、ツァリの端子が横に飛んで来た。

 

「居場所は特定出来たのか?」

 

『ここから東南東20キロ先の海中に反応があるよ、姿はまだ見えないよ』

 

「すぐに出撃や!」

 

「市場長、今すぐ出航中の船を近海から船を戻して下さい!」

 

「分かった!船のエンジンも温まっている、直ぐにでも出せるぞ!」

 

俺達は市場長が用意した船に乗った。

 

「危険なので乗組員は全員降りて下さい」

 

「船の操縦はどうするんだ?」

 

「俺は原付から小型飛行機までの運転免許は一通り持っていますから大丈夫です!」

 

全員乗り込んだ後、フルスロットルで船を飛ばした。

 

「うわぁ!」

 

「飛ばし過ぎだよ!」

 

振り落とされないように、船にしがみつくツァリとフェイト。

 

「レンヤ君!一体いつの間に船の免許を取ったの⁉︎」

 

「ゲンヤさんの勧めで色々とな!持っておいて色々と便利だしな!」

 

「ほんま何気に凄いんやな、レンヤ君は!」

 

最高速度で向かい、目標地点付近に到着する。

 

「ツァリ、目標はこの下か?」

 

『さらに東に向かっているよ。でもレンヤ、どうやって海上に出すの?』

 

「それは、こいつだ」

 

俺が取り出したのは……釣竿だ。

 

「いやいや、無理やろ。巨大鮫が喰われるほど大きいやっちゃで、餌もどうするんや?」

 

「ルアーでいく、竿と糸は魔法で強化するから問題ない」

 

「その必要はないみたいだぞ」

 

「ユエ?なんで……」

 

フェイトがユエの見ている方向を見ると……

 

「レ、レレレンヤ!」

 

「なんだ、いきなり慌てて」

 

「後ろ後ろ!」

 

フェイトに言われて後ろを見ると、鮫のような巨大な背びれがあった。

 

「すずか、あれか?」

 

「どうやら狙われているみたいだね」

 

「釣る手間が省けた。ツァリ、結界は張れるか?」

 

「あ、うん。出来るよ」

 

「直ぐにやってくれ、すずかもいいか?」

 

「了解だよ」

 

ツァリが結界を張り、すずかがデバイスを起動してスノーホワイトをスナイプモードにする。

 

「レンヤ君、お願いできる?」

 

「了解」

 

「はやてちゃん、船の進行方向に壁を作ってくれる?」

 

「えっ!りっ了解や」

 

はやてはデバイスを起動して、正面に障壁を作った。

 

「レンヤ!どうする気なの⁉︎」

 

「まあ見てなって」

 

アクセルを全開にして、障壁に突っ込む。

 

「いーーーやーーー!」

 

フェイトが叫ぶ中、俺はギリギリで障壁を避けて。グリードはそのまま障壁に激突した。

 

「そこ!」

 

《フリージングバレット》

 

グリードを停止した瞬間を狙って、海面に向かって凍結弾を撃ち込みグリード周囲を凍らせて動けなくさせる。

 

「ツァリ、結界を上に上げてくれ」

 

「うん」

 

結界を上に上げて、海中に逃げられないようにする。ツァリを残し俺達は凍りついた海に飛び乗る。

 

「うぷっ……」

 

「大丈夫?はやて」

 

「酔ったか?」

 

「あんなに急に曲がればさすがに酔うよ」

 

「その割にはツァリは平気そうだが」

 

『あはは、これでも結構キツイんだよ』

 

障壁の手前に到着し、デバイスを起動してバリアジャケットを纏い、武器を構える。

 

「さて、どんな鮫がお出ましかな?」

 

「規格外なのは分かるけど……」

 

「相手にとって不足なし」

 

氷の地面が揺れ始め、氷が割れて出てきたのは……

 

キイイイィィィィィン!

 

「鮫?」

 

「なんやあれ?」

 

「ノコギリザメじゃない?」

 

「あれじゃあ、チェーンソーシャークだよ。もっと捻れば……ソーイーター?」

 

「識別名はもうそれでいいよ」

 

甲高い音を出しながら現れたのは巨体に機械的にチェーンソーが付いているグリードだ。

 

「どうやって浮いているのだ?」

 

「そこは異界において突っ込んではいけないことだ」

 

「考えるだけ解らないことだらけで意味がないんだよね」

 

「なんやいい加減やなぁ」

 

『皆、来るよ!』

 

ソーイーターは口を開けて鋭い牙を発射してきた。

 

「っ!」

 

「レンヤ!」

 

「分かっている!」

 

俺とユエは牙を弾きながら接近する。

 

《プラズマランサー》

 

「ファイア!」

 

フェイトが複数の魔力弾を生成して、ソーイーターにぶつける。

 

「舞踏刃!」

 

ひるんだ所を回転して移動しながらソーイーターに何度も斬る。

 

「外力系衝剄……剛昇弾!」

 

ユエは拳から巨大な剄弾を放ち、ソーイーターを吹き飛ばす。

 

「スノーホワイト!」

 

《ファースト、セカンドギア……ドライブ。クリスタルエッジ》

 

すずかはギアを回し、魔力が上がった勢いで飛ばされてきたソーイーターを薙ぐが……

 

ガキイイィィィィンッ……!

 

「っ⁉︎」

 

ソーイーターは体を捻り、すずかの一撃をチェーンソーで防いだ。

 

このまま鍔迫り合いをしているとスノーホワイトがボロボロになってしまう。

 

「やらせへんで!パンツァーシルト!」

 

はやてがソーイーターの上に古代ベルカの魔法陣が展開され、ソーイーターを押し潰す。

 

「大丈夫、スノーホワイト⁉︎」

 

スノーホワイトは少しヒビが入っていたが、すぐに魔力を流し修復した。

 

《リカバリー。ありがとうございます、マスター》

 

「うわっ!なんて奴や!」

 

ソーイーターは魔法陣を真っ二つにして、浮かび上がった。

 

「ツァリ、あいつの弱点は?」

 

『あのチェーンソー以外は通常のグリードより硬くはないよ。どうにかして動きを止めて……』

 

その時、ソーイーターが震え始めて……

 

ガキンッ!

 

全身に鋭い鮫肌のような氷の鎧を纏った。

 

「なるほど、それで補う訳か」

 

「だが所詮気休めだ、この程度容易に崩せる」

 

するとソーイーターは後ろを向き、海に飛び込んだ。

 

「待て!」

 

「落ち着けフェイト、海中深くには逃げられない」

 

『皆、ソーイーターがもの凄いスピードで来るよ!』

 

ツァリの言葉でソーイーターを見ると、すでに俺達の反対側にいて先程とは比べ物にならないスピードで海中を飛び出し……

 

「嘘っ⁉︎」

 

「飛んだ!」

 

ソーイーターは飛ぶより滑空して、口を開けて突撃してきた。

 

速いが、直線的なので避けたが……

 

「どうするんーー」

 

『気を抜かないで!もうUターンしている!2撃目が来るよ!』

 

「えっ⁉︎」

 

「速ーー」

 

相談する前にソーイーターが飛び出して来た。

 

「すずか!」

 

《ファースト、セカンドギア……ドライブ》

 

「うん!」

 

《サードギア……ドライブ》

 

ギアを回して刀を構え、すずかも槍を構えソーイーターに向かって飛び出す。

 

「一点突破!」

 

「猪突猛進!」

 

「「ストライクチャージ!」」

 

同時に突きを繰り出し、大きな槍となる。

 

真正面にはぶつからず、少しずれることでソーイーターを弾いた。

 

「くう〜〜〜〜っ!」

 

「腕が、痺れる……!」

 

「大丈夫2人共⁉︎」

 

思ってた以上に強烈で、腕が痺れてしまう。

 

「それよりもツァリ、あれはどういうことだ?」

 

『あれはエラから海水をジェット噴射して移動しているみたいだね。ヒレが翼の役割を持っていてバランスも崩れることもないようだし』

 

「これは厄介なことになったなぁ」

 

今は襲ってこないが、いつまた来るかも分からない状況だ。

 

「正面から突っ込んで来た所を砲撃で仕留めるしかないな」

 

「はやてちゃん、お願いできる?」

 

「了解や!その間の防御を任せたで、フェイトちゃん!」

 

「うん、任せて」

 

「ユエとツァリはソーイーターをはやての場所まで誘ってくれ」

 

「承知した」

 

『任せておいて』

 

はやては魔力を溜め始めた。

 

「コッチだ!」

 

『えいっ!』

 

ユエがソーイーターを追い立て、ツァリが端子を爆撃させて進路を変えさせる。

 

そしてソーイーターははやての魔力を感じ取り、速度を上げて滑空して来た。大口を開けて鋭い牙から魔力弾を放つ。

 

「させないよ!」

 

《ディフェンサープラス》

 

フェイトが半円球型のバリアを展開して、はやてを守る。

 

「いけっ!はやて!」

 

「来よ、白銀の風……天よりそそぐ矢羽となれ」

 

はやての背後に大きな古代ベルカ式の魔法陣が展開され、その周りに小さい魔法陣が4つある。

 

「フレースヴェルグ!」

 

杖を振り下ろした瞬間、大量の魔力弾が発射された。着弾時に炸裂してソーイーターを攻撃するが……

 

「ノーコンすぎでしょう……」

 

「しょうがないんや!私は細かい魔力操作が苦手なんや〜〜!」

 

直線しか来ないソーイーターに余り当たらず、海を荒らすばかりだ。

 

「ああもう!」

 

「レッレンヤ君⁉︎」

 

俺ははやての後ろか手を回し、両手を掴みシュベルトクロイツを握る。

 

「俺が合わせてやる、集中しろ」

 

「うっうん///」

 

はやてから流れてくる魔力を安定させる。

 

「狙いはつける、後は放つだけだ」

 

「うん!」

 

大口を開けて迫って来るソーイーター。はやては落ち着いて魔力を溜めて……

 

「フレースヴェルグ!」

 

大量に放たれた魔力弾は寸分違わずソーイーターに命中して、炸裂光と共にソーイーターは消えた行った。

 

「ふう……」

 

「やっやった……」

 

『グリードの反応消失を確認。皆、お疲れ様』

 

「初めてにしては上出来だ」

 

「久しぶりで緊張しちゃったよ〜」

 

「ふふ、お疲れ様。フェイトちゃん」

 

グリードの消失を確認して、一息をつく。

 

「その……ごめんな。ちゃんと出来なくて」

 

「誰でも苦手なものはあるし失敗もある。気にすることはない」

 

「ううん、今回のことでハッキリ分かった。魔力コントロールをこのままにするのはあかんってことを。レンヤ君、帰ったら付き合ってくれへん?」

 

「ああ、もちろん」

 

断る理由もないので、二つ返事で返す。

 

「ほんま、ありがとうなぁ!……………もう少し狼狽えてもええやん」

 

「何か言ったか?」

 

「何でもあらへん!」

 

いきなり不機嫌になったなぁ、何で?

 

「はやてちゃん!私も手伝うよ!」

 

「私も姉さんに相談してみるよ、姉さんが1番魔力コントロールが上手いから」

 

「おお!ありがとうなぁ、すずかちゃん、フェイトちゃん!」

 

すずかとフェイトにも手伝ってもらう事になり、はやては嬉しそうだ。

 

それからツァリのいる船まで戻り、港に向かった。

 

「うーーん!最初の実習がここまで大変だなんて思ってもいなかったよ〜」

 

「これでもまだいい方だよ、酷い時には今のが何体もいたり、あれ以上のが出ることもあるからね」

 

「ちょっと手こずったけどな。まあ、俺はあいつが出なければいいけど」

 

「あいつ?何なのそれ?」

 

フェイトはあいつについて気になるようだ。

 

「識別名、二尾の神(ニビノカミ)。狼型の全身に目玉の模様がある二尾のグリムグリード、こいつには2度と会いたくないな」

 

「全身に目玉の模様……」

 

「何で会いたくないんや?」

 

「あれはねーー」

 

すずかが説明しようとしたら、船が大きく揺れて停止した。

 

「きゃっ!」

 

「な、なに⁉︎」

 

「あー、すまん。燃料切れた」

 

「なんやて!」

 

まあ、あれだけブッ飛ばせばそうなるか。

 

「ツァリ、お願いできるか?」

 

「了解」

 

すぐに救援を呼び、1時間くらいで着くようだ。

 

「ボルトだよ!」

 

「ならば1を出そう」

 

「ここでフォースや!」

 

「ごめんねはやて、ミラーを出すよ」

 

「な、なんやてーー!」

 

その間、ブレード大会をやっていた。

 

「レンヤ君、今回の事件はどう思う?……5」

 

「いつも通り……と思いたんだけど……6」

 

「ここ数ヶ月の間に異界の出現頻度が上がって来ている。何か別の力が働いていると思うの………ミラー」

 

「あの報告例が出ない限り、何とも言えないのが現状だ………ミラー返し」

 

「冥災前に起きた事件、そうだね………6。クリア、仕切り直しだよ」

 

カード動かしながら、今後について話し合っている。

 

山札から引いたのは俺が3で、すずかが7。

 

「もし起きるとしても対策はしたいし、一度事件現場に向かうのもいいかもな……5」

 

「事件現場、東亰の杜宮市だったね……2」

 

「ああ、しかし、休みに行くとなると夏季休暇だが、レルムの夏季休暇は1週間だからな。早く終わらせないと遊ぶ時間が無くなっちまう……4」

 

「調査はアリシアちゃんの霊感頼りだから、案外すぐに終わるかもよ……5」

 

「だといいが。神話級、か………フォース」

 

「ま、負けました……」

 

それから他の皆とブレードで盛り上がり、その後救援が来てから港に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、アルトセイムから戻ってきたテオ教官と合流してルキュウに向かうレールウェイに乗った。

 

テオ教官はさすがに疲れたのか、早々眠りについた。

 

「ま、また寝ている……」

 

「今日1日レールウェイでの移動ばっかりだったらしいからね」

 

「大変だっだのな」

 

「どうやらB班方が散々だったらしいからな」

 

「あちらをフォローしつつ、1日でこっちに戻ってきたら疲れるのもしゃあないなぁ」

 

「お疲れ様だったみたいだね」

 

「いつも飄々としているからそんな風には見えないけど……」

 

「一応は、私達のことを気にかけているようだな」

 

テオ教官のことを心配しつつ、俺は話しを切り出す。

 

「初めての特別実習……何を目的としているかは、もうある程度分かっているよな?」

 

「うん。やっぱり異界に関することはあくまで目的の1つ。私達に色々な経験を積ませるのが目的なんだと思う」

 

「知識でしか知らなかったミッドチルダ各地や住んでいる人達………それに今回みたいな問題について体験させるつもりじゃないかな?」

 

「そうやな、その上で主体的に突発的な状況に対処する……そういった心構えが必要な気もするなぁ」

 

「うむ、そして状況を解決できる判断力や決断力。そういったものを養わせようとしているのかもしれない」

 

「ふふ、そうだよ。情報や言葉だけでは分からないこともある、現地でしか分からない情報はとても貴重。そして、いざ問題が起こった時に、命令がなくても動ける判断力と決断力、問題解決能力……どれも異界に対処するためには必要なことだよ」

 

皆の答えに、すずかが正解を答える。

 

「異界に対処する時は少数精鋭、どうしても必要になる要素だ。だからこの特別実習は非常に効率の良いカリキュラムなんだ」

 

「はやてちゃんもしっかり受けてよね、絶対に部隊を作る時に必要になるから」

 

「うん!ありがとうなぁ、レンヤ君、すずかちゃん!」

 

(あれま、全部言われちまったよ)

 

テオは自分の出番がなくなり、どうしようか考えた。

 

(それにしても……今回の情報だとグリムグリード級は確認されなかった。どこかで情報が操作されたか……今日、放たれたか……)

 

テオは現れたグリードについて疑問をかんじていた

 

(……どうやら何かが動き出しているな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レンヤ達が乗っているレールウェイを通り過ぎるのを、線路から少し離れた丘から見ている水色の髪をした少女がいた。

 

少女はレンヤの顔を一瞬だけ瞳に映り、ポツリと語り出す。

 

「………蓮の花は

太陽に壮麗さを怖じおそれ、

うなだれて 夢みながら

夜を待つ。

 

花の恋人の月は

その光をもて花をめざます、

すると花はやさしく 月のために

そのつつましい顔からヴェールをあげる。

 

花は咲き 燃え かがやき

黙って空を見つめる、

そして匂い 泣き 震える、

愛と愛の悲しみのために……」

 

少女は悟るように、言葉を紡ぎ出す。

 

「あなたは蓮でありながら月を見ず、太陽を身に宿している。空に憧れ、愛を知らぬ蓮よ、あなたはどこに流れるの?」

 

「ーーまたお嬢の語り部っスか?」

 

その時少女の後ろから、濃いピンク色の髪を後ろで纏めている少女が話しかけてきた。

 

「今回の観察任務は終了っス。あと1年ちょいすれば活動を開始する見込みみたいっス」

 

「そう……」

 

少女は短く返事をして、右腕を上げて……

 

ピイイィィィ……

 

隼を止まらせる。

 

「流れゆく先は激流。果たして耐えられるでしょうか?」

 

少女の問いに、隼が短く鳴いた。

 

 


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