魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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63話

 

 

レルム魔導学院に入学してから、早くも2週間近くが経過した。

 

ルキュウの町は今やすっかり春爛漫。燦々と太陽が輝き、暖かな春風が爽やかに頬を撫でる。

 

「えーっと、今日の授業の教科書は……よし、大丈夫だな」

 

「もう行くの?」

 

「ああ」

 

その町並みから外れた場所にある年季の入った建物ーー第3学生寮の自室にて、俺は登校の準備を整えていた。今日は一応土曜だが、レルム魔導学院は月1回、日曜しか休みがない。

 

「それにしても、さすがはミッドチルダ屈指の名門魔導学校。望んだとはいえ魔法教練だけじゃなく勉学のレベルまで高いと来た」

 

「でもようやく慣れたんでしょう?」

 

「俺らも最近書類整理ばっかりだぜ」

 

歴史と国語に違いがあるが、ほとんど同じようなもので最悪な事にはなっていないが。どちらかと言えば身体を動かす方が得意なのでレルムの授業はなかなかレベルが高くて苦労する。

 

「ま、最悪落第にならない程度にできれば良いし、そんな悩むほどでもないか………」

 

「ダメ人間発言だ」

 

「ま、ほどほどにな。俺達は先に行くな」

 

ラーグとソエルとアギトはいつもここから異界対策課に行っている。2モコナが出て行ってから荷物を確認して、室内に備え付けてあった写し鏡の前に立って身嗜みをもう1度確認する。入学してからしばらく経ったが、文化の違いというものはなかなか慣れない。ここに来ることと住むことはまるで別物だ。

 

「よし……」

 

身嗜みも確認した。鞄を持って部屋を出ようと扉に向かう。その際、鏡の隣に据え付けてある棚の前で俺は立ち止まった。

 

「………………」

 

視線の先には、その棚に置いてある3つの写真立てーーその中の1枚の写真を見る。

 

1つは俺が翠屋に暮らし始めた時に撮った家族写真、もう1つはこの前の卒業式に撮った皆の集合写真、そして最後の1つは優しい顔をした金髪の女性と黒髪の男性、その女性の腕には身体をリボンで巻かれた赤ん坊。

 

この写真はウイントさんから貰った物で、俺と俺の両親の写真だ。その写真を見つめ、静かに棚に置く。

 

「ーー行ってきます」

 

俺は静かに部屋を出た。

 

「あ、レンヤ!」

 

部屋を出てすぐにツァリが近寄ってきた。

 

「おはよう、ツァリ」

 

「おはよう〜」

 

「えへへ、おはよう。学院に行くんでしょう?せっかくだから一緒に行かない?」

 

「もちろん。もう時間もないし早く行こうか」

 

「うん、皆はもう行っちゃったようだし……僕達も行こう」

 

さすがはツァリ、端子も使わずともそれ位わかるようだ。

 

階段を下りると入り口になのはとすずかがいた。

 

「おはようなのは、すずか」

 

「あっレン君おはよう!ツァリ君もおはよう!」

 

「おはようレンヤ君、ツァリ君」

 

「おはよう。なのは、委員長。2人共これから登校?」

 

「うん、私達は先に行くね」

 

「ああ、分かった」

 

「それじゃあ、教室で」

 

なのはとすずかは寮を出て行った。

 

「はは、相変わらず仲がいいんだね?ちょっと羨ましいかも」

 

「いつもの光景だから、あんまりよくわからないけどな、俺達も行こう」

 

第3学生寮の扉を開けて外に出る。その瞬間、燦々と輝く陽光が視界を覆い、2人は反射的に目を細めた。寮を出て真っ直ぐ駅の方向に向かっていくと商店街に出る。そこでは登校中の学生や町の人達で既に賑わっており、開店準備の為に品出しをしたり、店先の掃除をする人たちもいた。

 

「でもこの2週間……ホント、あっという間だったね。覚悟してたのは魔法訓練くらいだったけど………まさか普通に授業のレベルがあんなに高いとは思わなかったよ。それに加えて武術訓練まであるなんて……」

 

「まあ、文武両道がこの学院の基本だからな。武術では訓練も異界ならではだし、予復習をちゃんとしないと付いて行けなくなるかもしれない」

 

「その割にはレンヤは余裕がある気がするし……管理局の事もあって大変だよね」

 

「これも慣れかな、前までは魔法を隠す分さらに大変だったからな」

 

授業内容や訓練の話しをしながら学院に向かう。

 

「すごいなぁ、他の女子達も……特に委員長とアリサが羨ましいよ。どっちも凄く頭がいいみたいだし。入学試験じゃ、委員長がトップでその次がアリサでその次がレンヤだったんでしょ?」

 

「昔からスパルタでマンツーマンで教えて貰ってたからな、それぐらい行かなきゃ失礼と言うものだ」

 

「それにユエにシェルティスにリヴァンまで成績いいし……なんだか疎外感を感じるよ」

 

「別に俺達と比べる必要はない、ツァリはツァリのペースで歩いていけばいい。俺も手伝うから」

 

「うん、ありがとうレンヤ…………」

 

礼を言うとツァリの顔色が少し暗くなる。

 

「ツァリ?」

 

「え、あっ大丈夫だよ。ちょっと2人の事で考えていて……」

 

「2人?……ああ、そうか」

 

リヴァンとシェルティスの事だ。

 

「あれからますます仲が悪くなっているし……あの2人が一緒にいるだけで空気が緊張するんだよね」

 

「ああ、シェルティスは無用な挑発するし。リヴァンも軽く流している割には食いかかっているからな。そう簡単には打ち解けられないだろう」

 

「うーん。何とかできればいいんだけど……」

 

話しながら歩いていると十字路に差し掛かり、正面に学院、右側に第2学生寮、左側に第1学生寮がある。

 

「2科生の生徒が住んでいる第2学生寮か……レンヤはともかく、僕は本来だったらあそこに入ってたんだよね?」

 

「ああ、そうかもな。しかし、まさかVII組が寮まで別とは思わなかった。俺達が入るに合わせて古い空家を改装したみたいだしな」

 

「まあ、意外に綺麗だし、雰囲気も悪くないけど……学院までちょっと歩くのは善し悪しってところだね」

 

寮と学院の位置関係を話していると……

 

「ーー邪魔だ、どくがいい」

 

横から高慢そうな声が聞こえてきた。

 

振り返ってみると第1学生寮から白い制服をきた男子3名がいた。

 

「フン……VII組の連中か」

 

………何だか名もなき小物と似たようなヤツだな、幾分マシだと思うけど。

 

後ろに2人より前に出ている男子は俺達を見定めるように見る。

 

「えっと……?」

 

「フッ……しょせんは寄せ集めの連中か。行くぞ、皆」

 

「はい、ランディさん!」

 

「まあ、せいぜい分を弁えるんだな」

 

言いたい事を言って、3人は学院に向かった。

 

「はあ……1科生の人達か。やっぱり緊張するなぁ」

 

「大抵、魔力量に胡座をかいている奴ばかりだからな。あんなのが何人かはいるさ、俺もつくづく1科生じゃなくて良かったと思っているし……」

 

そこで一旦言葉を区切るって、3人を見る。

 

「レンヤ?」

 

「いや、知っているかはわからないけど……俺が聖王と知っているなら、あんな事は言えないと思ってな」

 

「あ、確かに」

 

そう言ってツァリの視線は第1学生寮に向く。

 

「そっちの建物は1科生生徒の第1学生寮か……噂だと凄く豪華らしいよ」

 

「へえ、そうなのか」

 

キーンコーンカーンコーーン、キーンコーンカーンコーーン……

 

ちょうど予鈴が鳴ってしまった。

 

「予鈴か、急ぐか」

 

「うん、そうだね」

 

足を進めて学院に向かって歩く。

 

「あ、そうそう。クラブってもう決めた?別に所属しなくてもいいみたいだけど」

 

「正直、決めかねているんだよな……管理局の仕事もあるし。まあ、ゆっくり決めるさ」

 

少し歩く速度を速めて学院に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーーン、キーンコーンカーンコーーン……

 

今日の終わりを告げる鐘が鳴り響く。

 

すぐにテオ教官がHRを始めて……

 

「ーーお疲れ様。今日の授業も一通り終わりだな。前にも伝えたと思うけど明日は自由行動日になる。厳密に言うと休日じゃないが授業はないし、何をするにしても生徒達の自由だ。すぐそこのテーマパークや中心部に行って遊んでいいぞ」

 

何で遊びが先に出てくるんだ。他に教師らしい事を言えよ。

 

「えっと、学院の各施設などは開放されるのでしょうか?」

 

「図書館が使えればありがたいんやけど……」

 

「その辺りは一通り使えるから安心しろ。それとクラブ活動も自由行動日にやっている事が多いから、そっちの方で聞いてみるといい」

 

その言葉にすずかとはやては嬉しそうな顔をする。

 

「なるほど……」

 

「確認しておきましょうか」

 

ユエとアリサはクラブに興味があるのか。

 

「それと来週なんだけど。水曜に実技テストがあるから」

 

「実技テスト……」

 

「それは一体どういう……?」

 

フェイトが疑問に思っているようだ。

 

「ま、ちょっとした戦闘訓練の一環だ。一応、評価対象のテストだから体調には気をつけろよ。なまらない程度に身体を鍛えておくのもいいぞ」

 

「面白い」

 

「ううっ……嫌な予感がするよ」

 

「望むところだ」

 

実技テストは各自色々な印象のようだ。

 

「そしてーーその実技テストの後なんだけど。改めてVII組ならではの重要なカリキュラムを説明する」

 

「それって……」

 

「異界関連の……」

 

遂に来たか、アリシアの言う通り異界絡みなのは分かっているが……何だかいつもやっている事をやらされそうな気がする。

 

「ま、そういう意味でも明日の自由行動日は有意義に過ごすことをお勧めする。HRは以上。副委員長、挨拶を」

 

「はい。起立ーー礼」

 

リヴァンが号令を言い、HRは終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レンヤは明日どうするの?」

 

テオ教官が教室を出て行った後、いつものメンバーとツァリにユエで集まって明日の予定を聞く。

 

「異界対策課に行って依頼を解消する予定だ、ここ最近ラーグとソエルとルーテシアとアギトとかに任せっぱなしだからな」

 

「書類作成や依頼の報告書も作らないといけないからね」

 

「なのは達もだいたい似たようなものでしょう?」

 

「うん、私は教導のお仕事が入っているよ」

 

「私はクロノに呼ばれているから、次元艦に行くよ」

 

「私はクイントさんとメガーヌさんと協力して捜査任務や」

 

「ツァリとユエはどうするの?クラブに入いるつもり?」

 

アリシアが2人の予定を聞いた。

 

「僕は吹奏楽部に入るつもりだよ、前からバイオリンは趣味で弾いてたから」

 

「私は美術部に入る、武術以外にも打ち込んでみたいからな」

 

「皆は管理局で忙しいのは分かっているけど、クラブに入るつもりなの?」

 

クラブは基本的に自由だから気軽に入れたな。

 

「ああ、俺は釣り部だ」

 

「私は料理部に入ったんだよ」

 

「私は園芸部に入る予定だよ」

 

「私は文芸部や」

 

「あたしはラクロス部に入るわ」

 

「私は技術部に」

 

「私は水泳部〜」

 

クラブに入るつもりだが、いくら忙しくとも幽霊部員になるつもりはない。

 

その時教室の扉が開いて、テオ教官が入って来た。

 

「おーお前らいたか」

 

「テオ教官」

 

「何か忘れ物ですか?」

 

「いやお前達に頼みごとがあってな、誰でもいいから学生会館にある生徒会室に行ってくれないか?そこで必要なものを取ってきて欲しいんだ」

 

「それはいいんですけど……」

 

「教官自身で行かれないんですか?」

 

「俺はほら、面……忙しいからな」

 

今普通に本音が出たな、教官として大丈夫なのか?

 

「教官……」

 

「あーーそうだ!名簿忘れてたんだ〜」

 

わざとらしく誤魔化し、教卓から名簿を取って教室から逃げた。

 

「大丈夫なのかな?」

 

「いい人なんだけど、教師としては……どうかなぁ?」

 

「それで誰が行くんや?」

 

ツァリとフェイトがテオ教官の評価を改めて、はやてが本題を話す。

 

「俺が行くよ、この後暇だし」

 

「えっいいの?」

 

「ああ、皆はこの後クラブだろ?」

 

「なら私も一緒に行くよ、今日はクラブもないし」

 

「ありがとう、フェイト」

 

その後解散となり、俺とフェイトは学生会館前に来た。

 

「生徒会室はどこだっけ?」

 

「そう言えばまだ1回も来てなかったな、とりあえず入ってから探すか」

 

「うん」

 

「よっ後輩達」

 

学生会館に入ろうとした時、後ろから声をかけられて振り返ると灰色の髪と緑の制服を着た2年生らしい男性がいた。

 

「えっと……?」

 

「お勤めごくろ〜さん、入学して半月になるが調子の方はどうよ?」

 

やっぱり先輩らしい。

 

「あっ正直、大変ですが何とかやっている状況です」

 

「授業やカリキュラムが本格化したら目が回りそうな気もしますが」

 

俺とフェイトは学院生活の状況を素直に答えた。

 

「はは、分かってんじゃん。特にお前さん達は色々山盛りだからなー。ま、せいぜい肩の力を抜くんだな」

 

アドバイスなのか同情なのか分からんな。

 

「はあ……えっと、先輩ですよね。名前を聞いてもいいですか?」

 

「まあまあ、そう焦るなって」

 

フェイトが遠慮がちに言うが、軽く流された。

 

「まずはお近づきの印に面白い手品を見せてやるよ」

 

「手品?」

 

「んー、そうだな。ちょいと50コインを貸してくれなえか?」

 

「はっはい」

 

俺は財布から50コインを取り出して渡した。

 

「おっサンキュー」

 

先輩は荷物を置いて、コインを親指の上に置く。

 

「そんじゃーーよーく見とけよ」

 

「えっ……」

 

コインを上に弾いて……

 

「ーーさて問題」

 

素早く手を交差して、両手を前に出した。

 

「右手と左手、どっちにコインがある?」

 

「みっ見えなかった……」

 

フェイトも分からないくらい早く、俺も見えなかった。

 

「それじゃあ……右手で」

 

「あ!私は左手で」

 

これでどちらかが成功するんだが。

 

「残念、両方ともハズレだ」

 

両手を開いたが、コインは無かった。

 

「え」

 

「一体どこに……」

 

「フフン、まあその調子で精進しろってことだ。せいぜいテオのしごきにも踏ん張って耐えるんだな。まあ、お前らなら平気か。生徒会室なら2階の奥だぜ、そんじゃあな〜」

 

先輩は荷物を持ち、生徒会室の場所を教えてから正門に向かった。

 

「…………………」

 

「……あっレンヤ、50コイン」

 

「あ」

 

手品に呆気にとられ、50コインをパクられた。

 

「完全に一本取られたな、それに俺達が生徒会室に行くのも知ってたみたいだし」

 

「どうやら2年生も結構ただ者じゃないね、場所も教えてもらったし行こう」

 

「ああ、2階の奥だったな」

 

学生会館の入り2階奥の生徒会室前まで来る。

 

「ここだね」

 

「入るぞ」

 

扉をノックして……

 

『はーい。開いていますからそのままどうぞー』

 

(あれ?この声は……)

 

「はい、失礼します」

 

「失礼します」

 

扉を開けて中に入ると、入学式の時に会った薄緑髪の女性がいた。

 

「あなたは……入学式の」

 

「2週間ぶりだね。生徒会室にようこそ、神崎 蓮也君、フェイト・テスタロッサさん。テオ教官の用事で来たんでしょう?」

 

「はい、ここで取ってきて欲しい物があるとのことで」

 

「それに生徒会の方だったんですね」

 

入学式の時につけていた青い腕章を左腕に付けていたから、予想はしていたが。

 

「えっと、3年の方ですよね?」

 

「あはは、そんなにかしこまらなくてもいいよ。この学院の生徒会長の2年、フィアット・デイライトです。改めてよろしくね、レンヤ君、フェイトさん」

 

女性……フィアット会長が自己紹介をするが。今気になることは……

 

「せっ生徒会長っ⁉︎」

 

「嘘っ⁉︎」

 

見た目ほんわかな人だから全然見えない。

 

「うん、そうだけど?ああ、2年生だから驚いたのか」

 

((違います))

 

心の中で否定しておく。

 

「これから、君達新入生に関わることも多いと思うんだ。困っていることや相談したいことがあったらぜひ生徒会まで来てね?全力でサポートさせてもらうから」

 

生徒会長としてなのだろうか、それともフィアット会長の人柄なのだろうか気軽に言ってくる。

 

「はい、ありがとうございます」

 

「機会があったら、ぜひ相談させてもらいます。それでテオ教官の用事ですが」

 

お礼を言い、フェイトが生徒会室に来た本題に言う。

 

「あ、これのことね……はい、どうぞ」

 

フィアット先輩は机に置いてあった、何冊かの手帳を渡した。

 

「こっちが男子ので、こっちが女子の。1番上のが2人のだよ」

 

「これは……学生手帳。そういえばまだ貰っていませんでしたね」

 

「ごめんね、君達VII組はちょっとカリキュラムが他のクラスと違っていて……デバイスも一般的に杖型じゃないし別の発注になったの」

 

「それは………ごめんなさい」

 

罪悪感が出たのか、フェイトが謝る。

 

「ううん、気にしないで。時間はかかったけど、ただ少し記述を変えただけだから」

 

「そうだったんですか……って、もしかしてそういった編集まで会長が?」

 

「うん、テオ教官に頼まれて。ごめんねー?こんなに遅れちゃって」

 

「いえ、大丈夫です!むしろ申し訳ないと言うか……そもそもそれって生徒会の仕事なんですか?」

 

「明らかに教官が手配するべき仕事ですよね?」

 

管理局の仕事をしていると、そういうこともよく分かる。

 

「うーん、テオ教官はいっつも忙しそうだし……他の教官の仕事を手伝うことも多いから、今さらって感じかな?」

 

((いい人だ……途方もなく))

 

あまりの優しさに感服する。

 

「えっと、それで他の手帳をVII組の皆に渡しておけばいいんですよね?」

 

「うん、よろしくお願いね。それと私からもお願いしてもいいかな?」

 

「?、はい。私達にできることなら」

 

フィアット会長がいきなり頼みごとを言ってきた。なんだろう?

 

「私達生徒会は学院の依頼はもちろんのこと、ルキュウの人達の依頼を受けているの。でもいくらルキュウが小さいとはいえ生徒会だけでは処理しきれない仕事があるの。それをできればVII組に助けてもらいたいの、テオ教官にも生徒会の仕事を回してあげってて頼まれたし」

 

「「………………………」」

 

何にも聞いてもいないし、むしろ逃げたし。

 

「えっと……ダメかな?」

 

うっ、なのは達と違った上目遣いのお願い……大抵これをされると断れ難くなる。

 

「いえ、大丈夫です。こちらの都合もありますから、時間が空いた時だけで」

 

「私も手伝います!」

 

「ありがとう!でも安心して、大変な仕事は回さないから。都合のいい時に気軽に連絡してね、たまーにこっちからも連絡する時もあるから」

 

「はは、大丈夫ですよ大変な仕事を回しても。異界対策課でもっと大変な仕事をやっていますから」

 

「はい、執務官の仕事と比べると楽な気もします」

 

「あはは、そう言ってもらえると助かるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからフィアット会長が学食で夕食を奢ってもらうことになり、断ったが強引な優しい圧力に負けてしまった。

 

はやてにも連絡を入れてから夕食を奢ってもらい、食べ終わる頃には日も暮れてしまい、フィアット会長はまだ生徒会の仕事が残っているため生徒会室に戻ってしまった。

 

「ふう、はやてには悪いことしちゃったかな?」

 

「そうだな、けどあれを断るのも酷なもんだ」

 

本当に優しい人だよ、フィアット・デイライト生徒会長は。

 

その時、レゾナンスアークに通信が入る。

 

《テオ・ネストリウス・オーヴァからです》

 

「……………開いてくれ」

 

ディスプレイが展開されると、音声のみの通信が入る。

 

『よう聖王さん、どうやら会長に夕食を奢ってもらったようだな?』

 

まるで悪いと思っていない口調だ。

 

「……その聖王をよく騙しましたね。マジもんの王様だったら即打ち首ですよ?」

 

「打ち首……」

 

『おお怖い怖い。真面目な話し、実習内容はお前のご想像通りだと思うぞ』

 

やっぱり、そうか……

 

「つまり俺達異界対策課が………」

 

『おっと、そこまでだ。もちろんそうだがそれ以上の案がないしな、管理局の協力の元決定した。そしてその行動は広範囲に影響する』

 

「広範囲……ですか?」

 

『そっ対立する1科生と2科生、お前達留学生までいるこの状況を変えるために、な。お前もその為にここに来たんだろ?』

 

「それは……」

 

その時、勢いよく飲み物を飲み音が聞こえ、テオ教官が大きく息を履く。

 

「って、何を飲んでいるのですか⁉︎」

 

『何って、酒だよ酒。大人の唯一の楽しみだ』

 

本当に何でこの人教官なの⁉︎

 

『お前もそのうち飲むようになるさ、その前に女の1人や2人くらいとっとけよ。選び放題のよりどりみどりなんだからさ』

 

「2人ってなんですか2人って、それってベルカの重婚ですか?」

 

前にソフィーさんから聞いたことがある、もしかしたら俺がそうなるかもしれないとも。

 

「何を馬鹿なことを」

 

『そうか、前にリヴァンから聞いたが内のクラスの女子には希望が無いって言っていたぞ』

 

「本当に何の話しですか?」

 

『まあいいさ、俺も協力するから頑張れよ。それと寮の門限までにはちゃんと戻れ』

 

そう言い残して通信が切れた。

 

「はあ、全く何だったんだ?」

 

「さっさあ〜?」

 

心なしかフェイトの顔が赤いな。

 

それから寮に帰り、フェイトと別れてから俺は男子の学生手帳を配った後部屋に戻って休んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、自由行動日ーー

 

もう寮にはダメ教官しかいなく。

 

俺達、異界対策課は地上本部に課室に向かおうとした時……

 

「レンヤ、あんたは後で来ていいわよ」

 

「え……?」

 

いきなりアリサからそう言われた。

 

「あ、もしかしてフェイトからフィアット会長の依頼を聞いたのか?」

 

「うん、会長さんも大変そうみたいだから。レンヤ君はここの依頼を終わらせてから来てくれる?」

 

「最近楽だし、私達だけでも大丈夫だから。どうせ内容もいつもと同じようなものでしょう?」

 

まあ、町からの依頼と言われればそうなんだろうけど。

 

「わかった、こっちが終わったらすぐにそっちに行くよ」

 

「その頃には全部終わらせておくわよ」

 

「それじゃあ、また後でね」

 

アリサ達は駅に向かった。

 

「さて……」

 

俺は昨日交換したデバイスの番号を入力した、コール2ですぐに繋がった。

 

『レンヤ君?今日は大丈夫なの?』

 

「はい、他の皆に任されてしまって」

 

『あ、悪いことしちゃったかな?』

 

「大丈夫です、皆の了承もありますから。それで依頼を受け取りたいのですが」

 

『分かったよ、今まとめて送るから』

 

ディスプレイの右上にメールマークが出現して、開いてみると幾つかの依頼があった。

 

『今回はそれをお願いしたいの、無理に全部をやらなくていいから』

 

「いえ大丈夫です、これぐらいに少ない方です」

 

『あはは、さすが隊長さんだね。終わったら報告だけでいいから』

 

「隊長にやらせることは問題じゃないんですね、分かりました」

 

『それじゃあよろしくね〜』

 

通信を切り、依頼を確認する。

 

「んー、1時間あれば余裕かな。昼前に異界対策課に行けばいいかな?」

 

それから依頼を開始した、確実にこれは異界対策課のやっていること何で楽にできたが。異界完全に関係ないから本当に人助けの何でも屋だ。

 

そのうち異界対策課じゃなくて特務支援課になりそうだ。

 

そして依頼がある学院の技術棟に向かった。

 

「えっと……第1研究室は……ここか」

 

技術棟は広くて、地図を見ながら到着して、中に入ると入学式の時にいた茶髪の白衣の男性がいた。

 

「やあ、待っていたよ。入学式以来だね。僕は2年III組のグロリア・シェル。技術部の部長を務めている。君はVII組のレンヤ君だね、改めてよろしく頼むよ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「さっきフィアットから聞いたけど、生徒会の仕事を手伝うことにしたんだってね。君達なら心配ないとは思うけど、どうか頑張ってくれ」

 

「はい、それで依頼を受けたいのですがーーー」

 

手早く依頼を解消して、1時間経つ前に全部の依頼を終わらせフィアット会長に報告のメールを送った。

 

「さてと、俺も異界対策課にーー」

 

「やあレンヤ君、元気かい?」

 

声を掛けられ後ろに振り返ると、白い制服を夏服みたいな着方をしている1科生の先輩がいた。

 

「デドラ部長、今日も釣りですか?」

 

「ああ、今日は絶好の釣り日和だからね」

 

彼は2年、釣り部の部長のデドラ・グローブライト部長、1科生だけど親しみやすい人だ。

 

「レンヤ君は今日は釣りをしないのかな?」

 

「今日はさすがに忙しいですからね、やっぱり放課後にちょっと釣る方が気が合っていますから」

 

「それは残念、それじゃあまたの機会に一緒に釣ろう」

 

デドラ部長は町内に流れている川に向かった。デドラ部長は今のご時世珍しく魔力を使わずに釣りをする人だ、まあ一種の不正だから分からなくもないし俺も訓練の時はともかく、見習って魔力を使わずに釣りをする。そのおかげか部員は少ないが。

 

「さてと、俺も行くか」

 

駅からクラナガンに向かい、地上本部に向かった。

 

異界対策課で俺でしか処理できない物を終わらせて、ただ気になることがあったって異界対策課の正面の部屋が改装されていた。

 

あんまり関係なかったので放っておき、今日は定時通りに皆と帰れた。

 

そのうち車でも買おうかな?その方が何かと便利だし。地球じゃあ考えられなかったがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜ーー

 

はやての作った夕食を食べ終わった後、部屋に戻って簡単な鍛錬をしていた。

 

「……………………」

 

左右斜め前に2つずつある樽の上にろうそくを置き、抜刀状態で居合の構えを取り……

 

ヒュヒュン……

 

刀を振り抜き右2つのろうそくの火を消した後、斬り返し左2つのろうそくの火を消した。

 

「ふう、こんな感じかな」

 

《お見事です》

 

「ひゅう〜レンヤやる〜」

 

「ありがとう……さて、授業の予習でもするかな。実技テストもあるし、今週は結構忙しくなりそうだ」

 

「レンヤも大変だな」

 

片付けをレゾナンスアークに任せて、机の上に教科書とノートを開き、明日やるであろう授業を予習しておいた後明日に備えて寝た。

 

 


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