61話
俺は夢を見ていた、遠い遠い場所、遥か昔の誰かの記憶を……
【ーーーーー!コッチですよ!】
【待ちなさいーーーーー、何処にも逃げないわよ】
【そう言うが君はいつもーーーと何処かに行ってしまうからな】
【僕は流浪何だからいいんだよ、いつもーーーーーと何処でも行けるんだ】
名前も顔も分からないが何処か楽しそうで、4人共深い悩みを胸に秘めている感じがする。
【羨ましいです、私とーーーーは守るべき国を捨てては行けませから】
【王をやるのも難儀なものね】
【いいえ、そうではありません。私は守るべき民を重んじる王という役職が好きなのです】
【よく分からないわ、私はただアイツを殺せればそれでいい】
【………止めはしない、ただ自分が進むべき道を見誤らないでくれ】
【心配ご無用!僕も付いて行くんだから!】
【同行を許した覚えはないわよ】
【ええーー】
【全く、君達は本当にーーーー】
そこで視界が真っ白になっていき…………
「う……ん」
夢の内容を思い出しながら起き上がり周りを確認する。
「ん〜〜〜………そうか、仮眠室で寝たのか」
体を伸ばして昨日の事を思い出す。
「はあ、徹夜なんてするもんじゃないな」
溜まっていた書類をさばいていたらいつの間にか深夜を過ぎていて、そのまま仮眠室で寝たのだ。
ベットから出て、横に置いてある時計を見る。
「もう3月、あとちょっとで卒業……そして高校か」
あれから異界の事件は落ち着いてきて、勉強に集中できて無事にレルム魔導学院に合格した。他の皆も合格した、まあ魔法がある分地球よりも楽に入れた気もするが。
ただそれよりも驚いたことがあった、フェイトが本局の保護施設で女の子を保護したらしく。その女の子が未来に行った時のピンク髮の女の子だったのだ。名前はキャロ・ル・ルシエ、一緒にいた竜はフリードリヒ、通称フリード。
未来改変とかが怖いから自分では会いに行かない様にしないとな。
俺はディスプレイを展開して写真を見て行く。
幼少の頃から今までの写真が撮られている、海や山、運動会や遠足その他。
あとちょっとで海鳴を離れるとなると寂しくなる、もちろん休暇の際には皆と遊びに行くが。
すでに兄さんと忍さん………いや忍義姉さんか。
数日前、空港で海外ドイツで仕事をしながら暮らす兄さんと忍義姉さんを見送りをした。2人は親族と親しい友人だけを招いた小さな結婚式を挙げ、晴れて夫婦となった。兄さんが月村に婿入りする形だったので今の兄さんは月村の姓に変わっている。別れを惜しみながらも2人を見送った、その前忍義姉さんがすずかと静かに話してたらすずかが顔を真っ赤にしていたが……
「次は俺達か………」
本来俺がレルム魔導学院に入らずに風芽丘学園に入ってたら、お母さんとお父さん、姉さんと別れずに済んだんだが……
「いやいや!自分が決めたんだから、納得…………はあ」
やっぱり罪悪感があり、納得できなかった。
「…………帰るか、皆が心配しているし」
身仕度を整えて、メールを確認した後地球に向かい家に帰った。
そして3月31日、桜の花びらが散る中……笑うか泣いて見送るかの卒業式を終えて次の日、俺達がミッドチルダに移り住む日。
「なのは、レンヤ、体には気をつけるのよ?」
「うん、ありがとうお母さん」
「いつでも帰って来るんだぞ」
「分かっているよ、休暇の時に遊びに来るから」
「ソエルちゃ〜ん、ラーグく〜ん、寂しいよ〜」
「美由希〜、苦しいよ〜」
「やれやれ」
別れの挨拶を済ませて、荷物を持った。
「それじゃあ行くね」
「うん、頑張ってきてね2人共」
「それと、レンヤ」
お母さんに呼ばれて前に来ると……
バチーーン!
「ぶっ!」
思いっきり両頬を叩かれてそのまま挟まれた。
「お母さゃん、にゃにお……」
「全く貴方は何も変わっていないのね、自分のせいでなのは達まで出て行く事に罪悪感を持っているでしょう?」
やっぱり、お母さんには隠し事は出来ないな。
「昔と変わらないレンヤの良い所でもあり悪い所、でも嬉しいのよ?貴方がわがままを言える様になった事に」
頬から手を離してそのまま抱きしめられる。
「貴方は貴方が行きたい道を歩いて行きなさい、寂しくなったら道を変えて私達の家に帰って来れば良いのよ、ただそれだけ。いつでも会えるわ」
「母さん………うん、ありがとう」
「よろしい」
お母さんは離れてお父さんの隣に立ち……
「行ってらっしゃい」
笑顔で俺達を見送ってくれた。
「「行ってきます!」」
俺となのはは元気よく返事して、フェイト達が待つ高台に向かった。
「あの子達はきっと大丈夫」
「ああ、何せ俺達の子だからな」
「うん、私の弟と妹だもの!」
衣服やその他必需品は先に学院の寮に送っており、現在の手荷物は必要最低限な物になっている。
「皆〜!」
「お待たせ」
高台に着くとフェイト、はやて、アリサ、すずか、アリシアが先にいた。
「なのは、レンヤ、おはよう」
「来よったなぁ」
「遅いわよ」
「おはよう2人共」
「ヤッホー」
5人はこちらに気づいて声をかける。
「皆はもう良いのか?」
「うん、母さん達とリンディさん達に見送ってもらったよ」
「家はこのままで、ミッドチルダに家を構えよう思っとるから大丈夫や」
「パパとママも喜んでいたわ」
「ノエルとファリンが皆によろしくって言っていたよ」
「うん!ありがとう、すずかちゃん!」
そろそろ時間だな。
「それじゃあ、行こうか」
「「「「「「うん!(ええ)(わかったよ)」」」」」」
俺はディスプレイを展開して、アースラと通信する。
「エイミィさん、お願いします」
『了解!転送開始!』
俺達の足元に魔法陣が展開されて、アースラに転移した。
「やっほー皆、久しぶり」
「元気してたか?」
アースラに転移した後、クロノ達のいるブリッジに向かった。
「はい、今日はありがとうございます」
「これ以降、アースラに乗る機会が無いのは残念ですけど」
「そうだよ〜〜せっかくもうちょっと一緒に仕事出来ると思っていたのに〜〜」
「すみません、俺の都合で」
「会う機会はいつでもある、構わないさ。それにレルムは名門だ、頑張ってこいよ」
「了解!」
「問題あらへんよ!」
「その前にクロノ、この制服について何か知っているの?」
アリサが着ている制服を見せて言う。
「あれ?何で皆赤い制服を着ているの?レルムは白と緑だったような……」
「レルムから送られた物を着てきたんですけど、確認しても何も分からなくて」
「どうやら一旦デバイスも預かるみたいで」
「私達全員が同じ制服だから、もしかしたら同じクラスなのかもね」
「まあ、今日確認しに行くんですけど」
俺達が着ている制服は赤い制服だ、見学の時に見なかったクラスでもあったのか?
「そうだ!エイミィさんとクロノ君、今更ですけどご結婚おめでとうございます!」
「え⁉︎あ、ありがとう……」
「もうお腹に子どももいるんだよね」
「恭也達の次はクロノ達かー、羨ましいなぁ」
「……なあなあ、子どもがいるちゅうこのとは……したん?」
「できればそこを詳しく?」
「はやて、すずか、やめろ」
「そ、そうよ。自分で体験した方がわかりやすいよ///」
「お前も何口走っていんるだ」
エイミィさんは顔を真っ赤にして言い、クロノがたしなめた。
それから雑談をしてる途中にミッドチルダに到着して、中央ターミナルから東にある近郊都市ルキュウに向かった。
俺達は6人掛けのボックス席に座ったが、人数オーバーと荷物でギュウギュウ詰めだった。
「なあ、誰かの……て言うか俺隣に行って良いか?」
「ダメよ、場所は有効活用しないと」
今有効活用できる席がそこにあるのに……!
「フェイトちゃん、アリシアちゃん、レンヤ君とくっ付き過ぎないかなぁ?」
「狭いのだから詰めないと♪」
「うっうん///」
列車に乗る前にじゃんけんしたと思ったら、席の位置決めをしてたのか。やっぱり平穏なじゃんけんは出来ないのかなぁ。
て言うかフェイトは分かっていたけどアリシアも結構あるんだな、着痩せするタイプなのか。しばらく両腕の柔らかさと鋭い眼光に耐えながらルキュウに着いた。
ホームを出ると桜と似たような花びらが咲き誇っていた。
「へえ、綺麗じゃない」
「桜とはまた違った感じがするね」
「ピンクじゃなく白だよ」
「そうだね〜」
桜似の木を観賞する皆を他所に、俺は周りを見る。
「……………………」
「気づいたんか?」
「ああ、白の制服が数人いてそれ以上に緑の制服が何人もいる」
「やっぱり何かの間違いかな?」
はやてとすずかの疑問は最もな事だ、周りの人達の視線を感じる。
「考えても仕方がない、皆行くぞ」
「はーい」
俺達は視線を感じながらも学院に向かった、ラーグとソエルはバックの中に入れてすぐに正門に着くと……
「ご入学、おめでとうございます!」
正門前に立っていた先輩であろう薄緑色の髪の女性がいた、後ろには白衣を着た茶髪の男性もいる。
「うん、君達が最後みたいだね」
女性は手に持つ名簿を読む。
「神崎 蓮也君、高町 なのはさん、月村 すずかさん、八神 はやてさん、アリシア・テスタロッサさん、フェイト・テスタロッサさん、アリサ・バニングスさん……でいいかしら?」
「はい、そうです」
「どうも初めまして」
「でもどうして私達の名前を知っとるんですか?」
はやてが名前を呼ばれた事に疑問を持つ。
「ちょとした事情があってね、今は聞かないでくれると助かる」
「えーと、それなら聞きませんけど……」
はぐらかされて結局何も聞けなかった。
「それじゃあデバイスをこちらに、一旦預からせてもらうよ」
男性がデバイスを載せる台を待ってきた。
「わかりました」
「案内書にあった通りだね」
俺達はデバイスを台の上に置いた。
「確かに、ちゃんと返すから心配しないでくれ」
「入学式はあちらの講堂であるからこのまま真っ直ぐどうぞ」
女性は講堂を指す。
「あっそうそう、レルム魔導学院へようこそ!」
「入学おめでとう、充実した3年間になるといいな」
思い出したように2人は祝いの言葉を言う。
俺達は講堂に向かう。
「あの2人は先輩で……いいんだよね?」
「見るからに3年生あたりでしょう」
「でも私達が最後って言っていたけど、どう言う意味なのかな?」
「他にも私達と似たような人がーーー」
キーンコーンカーンコーーン、キーンコーンカーンコーーン……
その時学院のチャイムがなった。
「そろそろ入学式の時間や、検索はまた後でやな」
「3年間の学院生活の始まりだ、気を引き締めて行こうか」
「うん、皆で頑張ろう」
講堂に入ると数名、赤い制服を着ていたがほとんどが緑で次に白。俺達が入ってきた途端視線が刺さる。
「早く座りましょう、居心地悪いわ」
「私達は見世物じゃないよ〜だ」
「ねっ姉さん……」
そそくさと席に座り、すぐに入学式は始まった。教卓の上で入れ替わる様に説明していくが、できる限り聞き漏らさずにしていたがやはり眠くなる。しばらくボーっとしていたら朗々とした声が響いてきた。ヴェント学院長だ、眠気を払いシャンとする。それからしばらく聞き……
「ーー最後に君達に1つの言葉を贈らせてもらおう、本学院が設立されたのはおよそ200年前の旧暦時代のことである。創立者はかのシュトゥラの覇王ーークラウス・G・S・イングヴァルド。聖王、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトと同じ過ち繰り返さぬよう、晩年の覇王は、先住していた都市に程近いこの地に魔法と兵学を教える学院を開いた」
チラリと横を見ると服装がバラバラの教員らしき人達が立っていた、魔力が無い人もいれば実力者もいる。
「近年、次元世界の風習や魔法体系の変化と共に本学院の役割も大きく変わっており、魔導師以外の道を進む者も多くなったが……それでも、覇王が遺したある言葉は今でも学院の理念として息づいておる」
ヴェント学院長は教卓に手を置き……
「若者よーー世の礎たれ」
静かに響かせる様に言い放つ。
「世という言葉をどう捉えるか、何をもって礎たる資格を持つのか。これからの3年間で自分なりに考え、切磋琢磨する手がかりにして欲しいーーワシの方からは以上である」
パチパチパチ!
盛大な拍手が贈られ、ヴェント学院長の話しは終わった。
(世の礎たれ、か……)
「うーん、いきなりハードルを上げられちゃった感じだね?」
右から俺の考えを言う様に呼びかけてきた、見てみると菫色の髪と黄土色の目をした同じ赤い制服の少年がいた。
「ああ、さすがは覇王と言ったところか。単なるスパルタよりも遥かに難しい目標だ」
「あはは、そうだよね。僕はツァリ・リループだよ」
小声で話しながら少年ーーツァリと会話する。
「神崎 蓮也だ。そういえば……同じ制服だな?」
「うん、どういう事なんだろうね?ほとんどの新入生は緑色の制服みたいだけど……あ、向こうにいる白い制服は一科生の新入生なのかな?」
ツァリにつられて見てみると、前の列は白い制服の新入生はで埋まっていた。
「そうみたいだな、だが……」
少し疑問に思い、言葉を途切れる。
「?、どうしたの?」
「いや、何でもない」
「そう…………あれ?神崎……蓮也?」
「ーー以上でレルム魔導学院、第207回・入学式を終了します」
その時、男性が入学式終了を伝えた。
「以降は入学案内書に従い、指定されたクラスに移動すること学院におけるカリキュラムや規則の説明はその場で行います。以上ーー解散!」
それから、周りの新入生ーー1科生と2科生の新入生ーーは立ち上がり……講堂から出て行った。
後に残ったのは数名の職員と俺達紅い制服を着た人達だけだった。
「指定されたクラスって……送られて着た入学案内書にそんなの書いてなかったよ」
「確かに、この場で発表されると思っていたんだが……」
そう疑問に思っていると……
「はーーい、赤い制服のやつらは注目〜」
明るいというか、軽い感じの男性の声が聞こえてきた。
「どうやらクラスが分からなくて戸惑っているようだな。実は、ちょとした事情があるんだ」
俺達の疑問に答える様に男性教官は説明する。
「お前達には今から特別オリエンテーリングに参加してもらう」
「は……⁉︎」
「特別オリエンテーリング……」
「何それ?」
「そんなの、どこにも書いてなかったわ」
なのは達や他の男子生徒も分からない様につぶやく。
「すぐに判る。全員、俺について来い」
教官はそのまま講堂を出て行った。
「えっと……」
「とりあえず、行ってみますか」
「仕方ない……」
男子達は教官について行き講堂を出た。
「どういう事なのかな?」
「分からない、とにかく行ってみよう」
「レン君」
ツァリが不思議がっていると、なのはが話しかけてきた。
「なのは、皆」
「行くしかない様ね」
「何がどうなってるんや」
「皆、見失っちゃうよ」
「早く行くよ」
「うっうん」
(全員で11人か……)
俺達は見失わない様に早足で講堂を出た。
それを白い制服を着た新入生が怪訝そうに見ていた。
教官が向かったのは正門の反対側のさらに奥、旧い旧校舎だった。
「ここって……」
「前に来た時は立ち入り禁止の場所だった所ね」
「学院の裏手……随分と旧い施設だな」
「〜〜〜〜〜〜〜♪」
教官は鼻歌を歌いながら鍵を開けて、旧校舎に入って行った。
「こんな場所で何を……」
「一体何をするつもりだ……?」
「考えても仕方ないね」
教官について行き、旧校舎に入って行く。
「いかにも出そうな建物だね?」
「ひう!な、なのは〜〜」
「フェイトは相変わらず怖がりだなぁ」
「ここで何をするのかな?」
「分からないけど、行ってみたら分かるよ」
「ああ、そうだな」
(全員同じ赤い制服……やっぱり同じクラスなのかな?)
施設に入って行く時、視線を感じたが………
「レンヤ、どうしたの?」
「いや……何でもない」
フェイトに呼ばれてそのまま入って行った。
旧校舎の入り口が見える場所に、2人の男女がいた。
「ーーあれが俺達の後輩か」
「名目こそ違いますが、似たようなものです」
男性は灰色の髪をしたレルムの緑色の制服を着ていて、女性は長い赤髪に白い制服を着ていた。
「わたくし達の努力が報われましたね。一年間、地道に頑張った甲斐があるというものです」
「だよな〜……って。お前は後ろから見てただけじゃん、たまーに前に来てはくれたがな」
「貴方も似たようなものです。バカスカと砲撃を撃って……わたくしを傷物にする気ですか?」
「誤解を招く様な事は言うな!そのせいで俺がどれだけ男子と女子共に大変な目にあわされか……!」
「……………………」(フッ)
「はっ鼻で笑いやがったなぁ?」
「ーーー2人共、喧嘩はほどほどにしなさい」
2人の後ろから、先ほど正門にいた2人が来た。
「お2人共、お疲れ様です」
「他の子犬どもは一通り仕分け終わったようだな?」
「うん、皆とってもいい顔していたよ。よーし!充実した学院生活を送れるように管理局と連携してしっかりサポートしなくちゃ!」
女性が張り切っているようで、嬉しそうに言う。
「ふふ、さすがは会長ですね」
「張り切りすぎてぶっ飛ぶなよ〜」
「まあ、多少の助けがないと厳しいからねーーーそれで、そちらの準備も一通り終わったみたいだね?」
「ええ、教官の指示通りに」
赤髪の女性は旧校舎の方を向き……
「しかし何と申しましょうか……彼らには同情を禁じえませんね」
「まっそれは同感だ、本年度から発足する訳ありの特別クラス……せいぜいお手並みを拝見するとしようかね」
2人が彼らを同情するようにつぶやく。
「でも子犬にしては……少々いい牙を持っている小狼がいるみたいだがな」
「ふふ、彼らならこの先の時代に残るくらいの偉業を成し遂げるに違いないですね」
「そうだね!」
「できれば、穏便が1番何だけど……」
旧校舎に入ると思ったより広くて普通で、教官は段差の上にいて俺達はその前に来た。
「ーーテオ・ネストリウス・オーヴァ。今日からお前達VII組の担任を務めさせてもらう、よろしくな」
男性教官ーーテオ教官は何かとんでもない事を言った。
「なっVII組⁉︎」
「それに君達って……」
「聞いていた話しと違うわ」
「あの……テオ教官?この学院の1学年のクラス数は5クラスなはずです」
「そうや、入試の成績や魔力量、実力に合わせたクラス別けのはず」
「おっ良い所に気付いたな」
すずかとはやての疑問に関心してテオ教官は質問に答える。
「以前まで1科生と2科生に区別されたいた。そしてクラスは5つまでしかない……だがそれは去年までの話し」
「え……?」
思いもよらない回答になのはは思わず声を出す。
「今年から新しく立ち上げられたんだよ。すなわちお前達……成績や魔力量に関係なく選ばれた第3科生、VII組がな」
「第3科生、VII組……」
「つまりそれって……」
つまり俺を含めてここにいる11人の制服の色が違っていたのは、テオ教官が言うように1科生や2科生という縛りに囚われないVII組というクラスだからか。
「それは問題ではないのですか?」
すると、銀髪で琥珀色の瞳をした少年が最もな意見を述べた。
「えーと、お前は……」
「リヴァン・サーヴォレイド。いくら成績などに関係なくとも偏見がある限り俺は納得できません」
どうやら少年ーーリヴァンは1科生みたいな人に対して良くない感情があるらしい、 リヴァンの言葉を受けて何人かのメンバーが反応を示した。
「フン……騒がしいな」
リヴァンの隣にいた青髪に鳶色の瞳の少年が不意に挑発的な事を言った。レヴァンは眉間に皺を寄せてその少年を睨みつける。
「……何か文句でも?」
「別に。そんな事で騒ぐ事でもないと言ったんだ」
「随分と上から言うんだな、さぞかし有名人なんだろうな」
金髪の少年がリヴァンに向き直る。
「シェルティス・フィルス。覚えなくても構わない」
「っ⁉︎」
フィルス……随分なビックネームだ、あの伝説の三提督の1人レオーネ・フィルスの血縁者か。
ミゼット・クローベルならはやて経由で知り合った事もあるが。
「それがどうした!その程度で俺がーー」
パンパン!
「はいはい、そこまでだ」
シェルティスの家を知ってもなお食って掛かるリヴァンをテオ教官が手を叩いて制した。納得してないがリヴァンは大人しくなる。
「コホン、それじゃあそろそろオリエンテーリングを始めるぞ」
「オリエンテーリング……それって一体、何なんですか?」
「そういう野外競技があるのは聞いたことがあるけど……」
フェイトとアリシアがオリエンテーリングについて疑問に思っている。
(………………あっ)
俺達がVII組なら……もしかしたら正門で預けた……
「正門で預けたデバイスに何か関係が?」
「おっ中々鋭いな。それじゃあ、さっそく始めよう」
テオ教官は懐からリモコンを取り出して、躊躇なく押した。すると……
ズシンッ!
「えっ……」
「っ⁉︎」
「しまったーー」
足元が揺れ始め、次の瞬間には床が大きく傾き始めた。全員がどんどん滑り落ちて行く。
「うわぁっ⁉︎」
「っ!」
「何これー!」
「くっ……」
何とかその場に留まるが、魔法が使えない。これは……
「AMF⁉︎」
「おっ気が付いたか、飛ばれちゃあ意味ないからな」
そんなのあり⁉︎
「きゃあっ……!」
「!、はやて!」
俺ははやての元まで移動して、体を引き寄せた。
「れっレンヤ君……⁉︎」
「しっかり捕まっていろ!」
落ちていく中で体勢を整えてはやての背中に手を回し、胴体を支えながら膝裏に手を入れて立ち上がる。俺は下を見て、地面が見えてくると足に力を入れて跳躍してゆっくりと着地した。
「ふう……大丈夫かはやて?」
「うっうん……大丈夫や///」
「どうした、はやて?顔が赤いぞ」
「えっと……その///」
俺は今の体勢を理解した、慌ててゆっくりはやてを降ろした。
「その……すまんなはやて」
「大丈夫や、おおきなレンヤ君」
「2人共、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。なのはも大丈夫か?」
「うん、皆怪我もないよ」
怪我がない事を確認して、改めて周りを確認する。大きな広間で奥には石造りの重厚な扉があり広間の壁際に円になるような形で計11個の台座が設置されていた。
その時天井にあったスピーカーから音が鳴り出してテオ教官の声が聞こえてきた。
『全員いるか〜?』
照明がついて広間が明るくなる。
『お前達から預かってたデバイスを返却する、ちょっとした設定を追加しただけでその他はいじくっていないから安心しろ』
しばしの沈黙の後……
「はあ……やってみるしかないわね」
「うん、そうだね」
「一体何のつもりだ……」
「あれか……」
次々と自分のデバイスの元に向かう。
「レン君、また後で」
「ああ、俺のは……あれか」
「僕のはあっちだ……行ってくるね」
なのはとツァリが自分のデバイスの元に向かい、俺もレゾナンスアークの元に向かう。
台の上の箱を開けて、青い六角水晶……レゾナンスアークを取り出した。
「レゾナンスアーク、追加機能はなんだ?」
《擬似的なAMFをデバイスに発生させる機能です》
「つまり、AMFと近い現象が簡単に起きるということか」
《はい》
『全員確認したな?デバイスに細工をする事で簡単にAMFと同じ現象が起きるようにしておいた、それじゃあさっそく始めるか』
そう言い、奥の石造りの扉が重々しい音を立てながら開いた。この広間より薄暗い直線50メートルほど渡って続いており、一定の区間にランプの灯りのみが道を照らしている。
『そこから先のエリアはダンジョン区画になっている。割と広めで入り組んでいて迷うかもしれないが……無事、終点までたどり着ければ旧校舎1階に戻ることが出来る。まっちょっとした妨害工作なんかも配置しているんだけどな』
スピーカー越しから聞こえてくるテオ教官の声音は、少し楽しげだった。
『ーーーそれではこれより、レルム魔導学院・第3科生VII組の特別オリエンテーリングを開始する。各自、ダンジョン区画を抜けて旧校舎1階まで戻ってくること。文句があるならその後に受け付けてやるよ』
そう告げてからスピーカーから音声が聞こえなくなった。
(入学式から30分も経っていないのに、何か無茶苦茶だな)
呆れを通り越して感心するよ。