魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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60話

 

あれから数ヶ月ーー

 

今は夏休みも終わり2学期に入った、レルム魔導学院に入る事を説明したら驚かれたが、お母さん達は喜んで認めてくれた。ただ姉さんが寂しくなるっと言って俺となのはに抱ついてきたが。

 

他の皆も認めて貰った様だが、八神家だけは未だに決定していない。そもそも料理を作れるのがはやてだけだ、前衛2人と1匹はもちろんのことシャマルまで料理が出来なかった。今はリインフォース姉妹がはやてに教えてもらっている途中で、覚えも良く卒業までには太鼓判を貰えると思う。

 

そして現在、聖祥中の3学年教室。

 

俺は……落ち込んでいた。

 

「はあああ……」

 

「レンヤ、元気出して」

 

「そうよ落ち込む事ないじゃない、DSAAで優勝したんだから」

 

そう、夏休み中に開催されたDSAAミドル男子部門に出場して……優勝したんだが……

 

「あそこまでレベルが低いとは思っていなかったぞ……」

 

「毎日のように異界と相手していれば、差も開くよ」

 

予選の試合はほぼ一撃で終わらせ、本戦も最後辺りから良かったが……

 

「何でまたあいつに合わないといけないんだよ……」

 

「あはは……」

 

レルム魔導学院で模擬戦をした、名も聞いてない小者と会ってしまったのだ。速攻で終わらせたが。

 

「よく魔力だけで勝ち上がれたね」

 

「確かにそうだね」

 

「まあ、年齢的にもインターミドルやからな」

 

「私は2度と会いたくなかったよ」

 

優勝したのに嬉しくない事ってあるんだな。

 

「これなら女子の方がまだレベルが高かったね」

 

「言っちゃっ悪いけど、そうね」

 

「事実だから気にするな」

 

「皆は来年出場するの?」

 

アリシアがそんな事を聞いてきた。

 

「私は全員が出るならいいわよ」

 

「それならいいよ、皆とは全力で戦った事はなかったからね」

 

「そうやな、模擬戦だけで一回も全力でやっておらんかったな」

 

「皆が出るなら私も出るよ!」

 

「自分の実力も図りたいしから、いいかな」

 

「いいよな〜皆は、競えられる同性がいて」

 

「ユーノ君とクロノ君はともかく、ザフィーラは違うの?」

 

「ザフィーラは犬やからなぁ」

 

「はやてちゃん、ザフィーラは狼だよ」

 

来年にはあいつはレルムを卒業するからいいけど、まだまだ大変な日々が続きそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、俺は今のミッドチルダのとある道場にいた。

 

「はあぁぁぁっっっ‼︎」

 

気合いの入った掛け声と共に、少女は納刀した刀を……アームドデバイスを抜き、水平に振るう。

 

「天瞳流抜刀居合ーーー水月‼︎」

 

刀は水月……鳩尾を狙ってきた。そう簡単に受けるつもりはないので……

 

「ふっ!」

 

納刀した状態に刀の柄頭で受け流し、体勢を崩す。

 

「っ!まだです、水月・二連‼︎」

 

直ぐに体勢を立て直してそのまま刀を振り下ろす。鍔を親指で少し押して刀を鞘から少し出して……

 

ガキィィィン!

 

「!」

 

ほんの僅かに出た刀身で受け止められた事に驚く少女、そのまま鯉口と鍔で刀身を挟んでずらし、手首を掴んで投げた。

 

「かはっ!」

 

地面に叩きつけられて肺から空気が出てくる。

 

道場には衝撃緩和と強度を上げる魔法が掛かっているからちょっとやそっとでは壊れない。

 

少女は刀を杖代わりにして、ゆっくりと立ち上がるが膝が揺れている。

 

「どうするミカヤ?俺としては終わりに見えるが……」

 

俺は目の前の少女ーーミカヤ・シュベルに問い掛ける。非殺傷設定の特性として肉体へのダメージは無いものの、魔力はかなり消耗しているはず。

 

「いえ……もう少し、お願いします」

 

諦めの無い目でこちらを見て、刀を納刀して息を整える。

 

「そうか、体力的にもこれが最後だぞ。だから……」

 

柄に手を添えて構える。

 

「居合の弱点を教えるよ」

 

「!、ありがとうございます!」

 

礼を言った後、しばらく膠着した様に動かない状況が続いて……

 

「………行きます!」

 

ミカヤの声と共に足元に展開された近代ベルカ式の魔法陣。

 

俺もミッド式の魔法陣を展開する。

 

やや前屈みの体勢で彼女は鞘に納められた刀を強く握り、視線は俺を射抜くと思えるほど鋭くなる。

 

「天瞳流抜刀居合ーー」

 

同時に飛び出し、ミカヤの魔力が極限まで高まり……

 

「天月・霞‼︎」

 

今持てる全力の一太刀が放たれた。

 

俺は交差する瞬間、柄を逆手で掴み抜刀する。

 

そして刀身でミカヤの居合を防ぎ受け流す、先程より鋭く重い一撃だ。

 

そのまま胴を擦る様に斬る。

 

一瞬の交差の後、俺とミカヤは刀を振り抜いた状態で背を向け合い……

 

バタン!

 

ミカヤはゆっくりと倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

私は目を覚まして飛び起きる。

 

「お、起きたか」

 

「レンヤさん、私は……」

 

「魔力枯渇による気絶だ、まだ動こない方がいい」

 

少し怠さが残るが、動けないこともなかった。

 

「大丈夫です」

 

「そうか、なら弱点も分かったね」

 

「はい、突撃と防がれた場合の次の手が無いことです」

 

「確かに、だが全くない訳でもない。回避とかは考えなかったか?」

 

そうだ!攻撃と防御ばかりに気を取られて回避を忘れてた!

 

「それに逆手で持った事にも反応したね、相手がどんな手で来ようがまずは自分の攻撃に専念して行動した方がいい」

 

「はい……」

 

「まあそう落ち込むな、順手の居合は逆手の居合と相性が悪いからな」

 

「相性、ですか?」

 

そんな物があったかなぁ?

 

「順手の場合、斬る部分は切先から始まるから柄部分から斬り始める逆手とは雲耀の差で負けている。それに逆手には踏み込みがない、移動しながら斬る事を重視している。踏み込みがある順手とはまた雲耀の差が出る」

 

「確かに……私から仕掛けたのにほぼ同時に鍔迫り合いをした気がします」

 

「それに移動しながらだから的は絞れない、突撃は苦手だろ?」

 

うっ……確かに、刀を振り抜いた時にはレンヤさんは後ろにいましたし……

 

「それと居合を続けて行くなら上段の構え……上からに攻撃に気をつけろよ」

 

「え、何でですか?」

 

「居合の構えは通常脇構、逆手とは別方面の弱点だ。単純に相性が悪いからな、このまま座学と行こうか。剣術の構えは基本5つ、それぞれに得意不得意がある。この関係性を五行相剋と言う」

 

「五行……相剋」

 

「日本の五行を剣術に当てはめた物だ、火は上段、土は下段、金は脇構、水は正眼、木は八相の順番が相生の関係でこれを五角形として中に星型を入れたのが相剋の関係だ」

 

レンヤさんはディスプレイを展開して五行の図を表示して説明する。

 

「水は火に強い関係を剣術に当てはめると相手上段には正眼が有利、そして……」

 

レンヤさんは1番上の火を指した後右下の金を指す。

 

「金には火を、脇構には上段となる。そして脇構が強いのは八相、木には金となる。もちろんこれが全てではないし絶対でもない、それに八相はぶっちゃけ野球のバッティングフォームに似ているからな、そんな構えをとるのは結構稀なんだよな」

 

「ええ⁉︎そうなんですか⁉︎」

 

「さっきも言った通りこの関係は絶対じゃない、けど覚えておいて損はないぞ」

 

「はい!ご指導ありがとうございます!」

 

「いいさこのくらい、それじゃあ案内してくれるか?」

 

レンヤさんは稽古が始まる前にどこかで試し斬りをしたいとの事で、いつもお世話になっている廃車場に案内した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稽古を終えて試し斬りをしたいのでミカヤに案内されて廃車場に来た。

 

「へえ、ミッドチルダにこんな場所があったなんてなぁ」

 

「レンヤさん!許可をもらいましたよ!」

 

許可をもらいに行っていたミカヤが男性と一緒に戻って来た。

 

「あんたが廃車斬りをしたって人か、何がいい?」

 

「う〜ん、じゃああれで」

 

俺が指したのは大型のバスだ。

 

「了解、このままでやるか?」

 

「えっ」

 

俺は男性の言葉を一瞬理解出来なかった。

 

「廃車をクレーンで吊って勢いよく落とし事が出来るんですよ!」

 

「あーそう言う事、大丈夫ですこのままで」

 

「あいよ」

 

俺は車の前に立ち、刀を構える。

 

「スーーー……フーーーー……」

 

息を整えて柄を握り、一気にーー

 

キィィィィィ………

 

振り抜いた。

 

「見えなかった、けど……」

 

「何も……起きねえな」

 

不思議がる2人を他所に俺は刀を納めると……

 

ズシャン!

 

「鳴雲雀」

 

バスは大きな裂け目を残して崩れた。

 

「それじゃあ、ありがとうございました」

 

「えっ!あっ…はい」

 

「……………………」

 

呆然としている2人に挨拶して、廃車場から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レンヤ君〜〜!」

 

異界対策課に戻る途中、名前を呼ばれて振り返るとすずかとはやて、ラーグとソエルがいた。

 

「どうしたんだ2人共、お前達も家に居たんじゃないのか?」

 

「ラーグ君達がお願いしてなぁ、一緒に来たんや」

 

「へえ、それでお願いって?」

 

「それはもちろん、み・ら・い♪」

 

「へっ……」

 

俺が驚く中すずかが目の前に立ちーー

 

「えい!」

 

「ぐふっ!…ぐっふ!」(エコー)

 

油断したところを手刀で鳩尾に入れられた、しかもスタン効果のある魔法も使って。

 

「そんじゃ行こうか?」

 

「レッツゴー!」

 

「「おー!」」

 

俺はすずかとはやてに腕を掴まれて、連れてかれてしまった。

 

されるがまま連れてかれて、動ける様になったのは未来に到着してミッドチルダに入った頃だ。

 

「一体何の真似だ!こんな事をして!」

 

「怒らないでレンヤ、私達がすずか達に頼んだの」

 

「何?」

 

ソエルの言い分を聞いてみる事にした。

 

「ちょっとした歪みがあってね、それでちょうど一緒にいたすずか達にお願いしたの」

 

「それならそうと言え」

 

「手早く済ませたかったんだよ」

 

「ごめんねレンヤ君、痛くはなかった?」

 

「痛いよ、普通に痛いよ」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「いいさ、それで歪みの場所はどこだ?」

 

すずかの頭を撫でながらソエルに聞いてみる。

 

「8年後だからね、中央地区の湾岸地区にあるよ」

 

「それじゃあ行ってみよか」

 

「レッツゴー!」

 

俺達は湾岸地区に向かったが……

 

「うーん地図を見る限り交通手段が限られているな」

 

「徒歩では行けないし、レールウェイか車で行くしかないね」

 

「アリシアちゃんのおかげで現金はちゃんと持ってきておるし大丈夫やろ」

 

「そうだな、無難なレールウェイで行こう」

 

レールウェイ発着場について目的地に向かう。

 

「到着地点はどこだ?」

 

「えっと、元機動六課隊舎……って書いてあるね」

 

「元?もうないんか?」

 

「そうみたいだねー」

 

「あっ見えてきたぞ」

 

ラーグに言われ窓の外を見ると、ちょっと古いが大きい建物が見えてきた。

 

到着してレールウェイから降りて、建物の前に来る。

 

「この辺りだね」

 

「それにしても人がいないな、降りたの俺達だけだし」

 

「もう使われていないんや、当然やろ」

 

「あっあったぞ」

 

ラーグが指したのは、玄関の前。そこに何かの揺らぎがあった。

 

「これをどうするんだ?」

 

「私達がやるからレンヤ達は周りを見張っていて」

 

「身を隠してやるからな」

 

「了解」

 

ラーグとソエルはダンボールに入った、ダンボールの穴から光が見えている。

 

「さて、見張るにしてもどうすか」

 

「ブレードでもやる?」

 

「あれ苦手なんよ〜」

 

それから見張るのほっといて2人はブレードを始めてしまった。

 

「ブラスト!………これや!」

 

「ああ!私の7が!」

 

「平和だなぁ」

 

すずかとはやての対戦を見ながら見張りもする。

 

「ん?」

 

隊舎の隅に何かあったので近づいて見てみると……

 

「これは……」

 

掲示板みたいなものに写真が貼ってあった、対舎を背景にしてそこに写っていたのは……

 

「俺になのは、フェイト、はやて、アリサ、すずか、アリシア、ラーグとソエルにシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リンス、リイン、アギト。って、何故か美由希姉さんまでいるし……それに成長した……スバル、ティアナ、ソーマ、エリオ、ルーテシアと……誰だこの子」

 

エリオの隣にいるピンク色の髪の少女とちっこい竜は見た事なかった、他にもヴァイスさん、ティーダさん、グリフィス、シャリオとまだ会ったことの無い人もいる。

 

「皆いい顔しているなぁ……ん?」

 

未来の俺となのはの間にエリオより年下の男の子と女の子がいた。

 

「この目は……!」

 

「ーーーお兄さん、何してるの?」

 

「!」

 

声を掛けられて慌てて振り返ると、肩にくすぐるくらいの茶髪の髪を色違いの3本のヘアピンで留めた少女がいた。

 

「えっ⁉︎あっ君は……」

 

写真に集中していたから結構驚くも何とか応対する。

 

「私はめいって言います」

 

何だろう、今そこでブレードやっている奴に似ている様な……

 

「それでここで何してるの?」

 

「あっああ、ここに興味があってね。今日きてみたんだよ」

 

「ふーん、そうなの。私も皆と一緒に来ているの、紹介してあげる!」

 

めいやに引っ張られて元の場所に向かうと、はやてとすずかの周りにめいやと同い年くらいの子どもたちがいた。

 

「ほらほらコッチだよ〜!」

 

「またんか!」

 

長い金髪の髪を後頭部にまとめて簪で留めた女の子がはやてに追っ掛けられていて……

 

「ここをこうすればいいんだよ」

 

「こっこうなの?」

 

「うん、上手だね」

 

すずかは栗色の髪を腕付近までそのまま流している女の子にあや取りをしていた。

 

「あっ……やば」

 

ダンボールをジッと見つめている黒髪で頭の頂点にアホ毛がある男の子がいたので、止めようする。

 

「ごめん、それには触らないでくれるかな?」

 

「はい?」

 

男の子は振り返ると……

 

「「え」」

 

俺と顔がよく似ていた、全く同じではないがそっくりだ。

 

「やっぱり!お兄さんユウと似ていると思った!」

 

「そっそうか、偶然ってあるんだな」

 

「そうですね、こんな事もあるんだ?」

 

………そのアホ毛どうなっている、意思に反応する様にハテナマークになったな。昔のなのはのツインテールみたいだ。

 

「2人は兄妹なのか?」

 

「似た様なものだよ」

 

「俺はあそこにいるみやびと双子の兄妹です」

 

「そうなんだ、それであっちのあの子とめいは友達?」

 

「違うよ、ラナちゃんと私達は家族だよ」

 

「そっそうか」

 

何だか複雑な事情でもあるのかな、その時ソエルから念話が入った。

 

『レンヤ、終わったよ』

 

『とっととずらかるぞ』

 

ラーグ、それじゃあ俺達が泥棒してるみたいじゃん、俺はダンボールを持ち上げてはやてとすずかを呼ぶ。

 

「2人共!もう行くぞ!」

 

「えっもう⁉︎」

 

「……しゃあないなぁ」

 

すずかはともかく、はやては何があったんだ?

 

「あのラナって子にブレードの邪魔されたんや!もう少しで勝てたのに〜!」

 

「くすくす、ちょっとした遊びだよ〜」

 

「2人共楽しそうなの!」

 

「ふふ、そうだね」

 

「皆はどうしてここにいるんだ?」

 

「お父さんとお母さんに連れて来てくれたんだよ!」

 

「そうか、それじゃあ俺達は行くな」

 

「じゃあね、皆」

 

「また会えるとええなぁ」

 

「バイバ〜イ!」

 

「「さようなら!」」

 

「遊んでくれてありがとう!」

 

俺達はコウ達に見送られて、そそくさとレールウェイの発着場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行っちゃったね」

 

「楽しかったね〜〜」

 

「ラナちゃんはもうちょっと優しくしようよ」

 

「そうだよ、お母さんに怒られるよ」

 

「ーー皆」

 

「「お母さん!」」

 

「もう帰るの?」

 

「そうや、お父さんが待っておるで」

 

「「「「は〜〜い!」」」」

 

「あっラナちゃんは帰ったらお話しやで」

 

「何で⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レールウェイで中央地区に戻り、この後のことを相談した。

 

「それでこの後どうするんだ?」

 

「もちろん遊ぶんや!」

 

「私も新しい本を読んでみたいな」

 

「買うのは厳禁だぞ」

 

それから俺とはやてはゲームセンターで遊び、すずかは図書館や書店で思い思いに過ごした。

 

しばらくしてフードコートで休んでいた。

 

「いや〜流石未来や、おもろくてはまってしもうたよ」

 

「久しぶりに思いっきりに遊んだな」

 

「本が買えないのが残念だよ」

 

ここ最近働き詰めだったからなぁ、休みだと大体家でボーッとしてるか勉強だけだからな。

 

「この後どうするん?」

 

「そうだね、他にする事もないし」

 

「なら適当に中央地区辺りでも回ってから帰るか?」

 

「ええよ」

 

「うん」

 

「賛成〜」

 

「レッツゴー!」

 

それから中央地区を見て回ってみた。

 

「ハムハム、やっぱり食べ歩きは鉄則やな〜〜」

 

「未来の味も変わらず美味しいってな」

 

「うん、そうだね」

 

食べ歩きをしながら管理局やその他施設を見て回った。

 

「目星いのはもう見終わっちまったな」

 

「そうやなぁ」

 

「あっレンヤ君、あれは何だろう?」

 

すずかが指差したのは大きめな公民館だった、小さい子ども達が入って行くのが見える。

 

「何やろう?」

 

「行ってみようか」

 

公民館の向かい、施設案内の掲示板を見てみる。

 

「えーと、小さい子どもが行く場所は……どれだろう?」

 

「これじゃないか?ストライクアーツ練習場」

 

「ストライクアーツ?」

 

「ミッドチルダで最も競技人口が高い格闘技だ、DSAAで何人か使い手がいたから覚えている。主に打撃による徒手格闘術を教えているな」

 

「へえ、面白そうやな。ちょっと見に行かへん?」

 

「俺達はパスだぞ」

 

「ならロッカーに入れとくか」

 

「ふふ、そうだね」

 

公民館に入りロッカールームでラーグとソエルをしまい、練習場に向かった。

 

「結構小さい子ども達が多いんやな」

 

「それなりに人気があるんだろう」

 

「それに皆楽しそうにしているね、コッチまで楽しくなっちゃいそうだよ」

 

しばらく見学して、キリの良い所で帰ろうとしたら……

 

「お前達見ない顔だが、ストライクアーツに興味があるのか?」

 

「えっ……」

 

後ろから赤い短髪の女性が話しかけてきた、その後ろにも少女が2人いる。何だがスバルに似ているな。

 

「えっと、その……」

 

「私達見るのが好きでして、ちょっと見学しに来たんです!」

 

「そっそうなんです!」

 

すずかとはやてが誤魔化してくれた、て言うかはやての標準語喋るの初めて聞いたな。

 

「そうなんだ」

 

「残念」

 

2人が残念がる中、赤髪の女性は何かに気がつく。

 

「見るの専門にしては茶髪はともかく、お前ら2人はそれなりに鍛えてるみたいだが?」

 

「「!」」

 

「……って私入っておらん⁉︎」

 

驚くはやてを他所に話しを進める。

 

「確かに鍛えていますけど、ここには本当に見学しに来ただけです」

 

「まあそう言わずに、一本付き合えよ」

 

「ちょっ……」

 

「レ……レンヤ君!」

 

女性に肩を組まれて、中心に連れてかれて行く。

 

「ちょっと!だから……」

 

「………神崎 蓮也………」

 

「!」

 

女性が耳元で俺の名前を呼んだ、この人未来での俺の知人か!

 

「コッチのレンヤさんがいつか昔の自分が会いに来ると言っていてね、その時一本相手してもらう約束をしたのさ」

 

「今の俺がした覚えてがないんですけど」

 

「細かい事は気にすんな、刀は目立つから徒手空拳にしろよ。心得はあるんだろう?」

 

逃げ場がない事が分かり、無手の構えをとる。

 

「アタシはノーヴェ・ナカジマだ。お前は名乗んなくていいぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「コロナ、合図を」

 

「はい!」

 

亜麻色の髪を下向きのツインテールにした少女……コロナが間に入り、手を挙げ……

 

「始め!」

 

「はあ!」

 

振り下ろした瞬間ノーヴェが飛び出し、ストレートのパンチを打つ。

 

「ふっ!」

 

右腕で受け流し、左で裏拳を打ち込むが受け止められる。

 

「やるなぁ」

 

「それほどでも!」

 

蹴りを放ち離れさせ右腕を弓の様に引き、跳躍と同時に掌底を放つ。

 

「くっ……」

 

ノーヴェは避けて素早く拳を放ち、俺は受けながら攻撃する。

 

数分の攻防で相手の出方を読み合いながら決定打を入れようとする。

 

「そろそろ決めるぞ!」

 

ノーヴェが的を絞らせない様にジグザグして接近してくる、それなら……

 

「!」

 

俺は強い気あたりを放った瞬間すぐの気配を消して移動する、それにより相手の知覚に残像現象を起こさせる。

 

「ちっ!どこだ!」

 

「ここだ!」

 

姿勢を低くして懐に入り……

 

「外力系衝剄・化錬変化ーー」

 

「ストップ!」

 

掌底がノーヴェのお腹に触れた瞬間、もう1人の少女が止めに入った。

 

「流石に剄を使うのはダメだよ!って言うかなんで使えるの⁉︎それに疾影も!」

 

少女は俺が出そうとした技に驚き慌てている。

 

「あーーまああれだ、私の負けだな」

 

「いえ、俺も夢中になり過ぎたから引き分けで」

 

お互いそれで納得したら、さっきの少女がこちらに来た。

 

「今のはルーフェンの技だよ、なんで使えるの?」

 

「昔、剄を使った武術書が家にあってね。それで練習したんだよ」

 

実際はラーグから出てきた物だが。

 

「嘘⁉︎それで習得できるなんて凄いよ!」

 

「リオちゃん、落ち着いて」

 

コロナが少女を……リオを落ち着かせる。

 

「あそこまで綺麗な剄を見るのはソーマにいちゃん以来だよ」

 

「えっソーマ?」

 

「ほらほら、話しは後だ。お前達もいっぺん練習してこい、じゃないとアタシはおろかコイツも抜かせないぞ」

 

ソーマの事を聞こうとしたら、ノーヴェに邪魔された。

 

「はーい」

 

「了解です!行こう、ゴライアス!」

 

コロナとリオは練習しに向かった。

 

て言うかコロナって子の肩に乗ってた小さい茶色のヤツって……

 

「レンヤ君凄かったなぁ」

 

「カッコ良かったよ!」

 

「ありがとう、じゃあ俺達もこれで」

 

「おう、出来れば早く行けよ。そろそろ姉貴がーー」

 

「ーー何を話している」

 

ノーヴェの言葉を被せる様に、現れたのは右目に眼帯をした銀髪の小柄な女性だ。

 

「お前はあの時の!」

 

昔ゼストさんを襲っていた3人組の1人、こんな場所にいるなんて。

 

「レゾナンスアーク、セーットーー」

 

「わーわー!落ち着け!」

 

俺がレゾナンスアークを取り出し、展開しようとしたらノーヴェに止められた。

 

「ちょっ何で止めるんですか⁉︎」

 

「えーと……とにかく大丈夫なんだよ」

 

「ふう、最初の出会いが最悪だとはいえ少々傷付くな」

 

「えっと、どう言うご関係で?」

 

「さあな、複雑すぎてよく分からん」

 

すずかの質問に本人も肩をすくめる。

 

「それじゃあ姉貴、後はよろしくな」

 

「ああ、心友によろしく言っておいてくれ」

 

「え……」

 

何の事か理解出来ないままノーヴェに押されて練習場を出て行く、はやてとすずかもそれについて行った。

 

ラーグとソエルを回収して公民館を出る。

 

「それじゃあ元気でな」

 

どうやらノーヴェは彼女のことを話すつもりはない様だ。

 

「はい、コッチの私達によろしくお願いします」

 

「何かおかしな感じがするなぁ」

 

「しょうがないさ、迷惑をかけてすいません」

 

「いいってことよ、昔のレンヤさんの実力を見れて楽しかったし」

 

「コッチのレンヤは強いのか?」

 

「ああ、アタシなんか瞬殺される」

 

「あはは……」

 

ノーヴェと別れて俺達はアルトセイムに向かい、元の時代に戻って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球で2人と別れて、俺は家に帰り自室にいる。

 

「なんか今日は知ってはいけないのを聞いた気がする」

 

「それがタイムトラベルってもんさ」

 

「楽しめる要素全然ないけど」

 

「もう2度いかないぞ」

 

そう誓ったが、これは未来に行かないことで。過去には行くと言う事には今の俺には気がつかなかった。

 

 


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