魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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59話

 

 

「えーそれでは中間テスト終了を祝い………乾杯!」

 

「「「「「「乾杯!」」」」」」

 

1学期中間テストも終わり、俺達は翠屋で小さなパーティーを開いた。

 

「皆もいい点数取れたみたいだね」

 

「あれから成長したわね」

 

「あはは、皆のおかげだよ」

 

「うん、皆がいなかったらここまで来れなかった」

 

「ほんま皆に感謝せなあかんなぁ」

 

「うんうん、これで高校も一緒に行けるね!」

 

「さすがにそれは気が早いぞ」

 

雑談をしながらテストの結果や進路についての話しをした。

 

「高校は皆、風芽丘学園にするの?」

 

「私はそのつもりだよ」

 

「私も」

 

「私もや」

 

「私もそこにするわよ」

 

「皆と一緒がいいしからね」

 

「俺は………まだかな」

 

「「「「「「えっ⁉︎」」」」」」

 

俺の発言に全員が驚く。

 

「どっどうしてなの⁉︎」

 

「一緒の高校は嫌なんか?」

 

「違う、そうじゃ無いんだ。前は入るつもりだったけど、ただ勉強するだけで決めるのは、ね……」

 

「レンヤは何か別の事をしたいのかな?」

 

「そうだな、とりあえず見学に行ってみてから考えてみるか」

 

「迷っているなら、それもいいかもね」

 

「早く決めなさいよ」

 

「そうだよ、私達はレンヤと一緒の高校に行きたいんだから」

 

「そうか、出来るだけ早く決めるよ。て言うかついて来る気か?別にそこまでしなくても……」

 

なのは達はテーブルに身を乗り出して、顔を近づける。

 

「ダメ!私はレン君と一緒に高校生活したいの!」

 

「そうだよ!別々なんてあり得ないんだから!」

 

「そう言う事やから、早めに決めるんよ?」

 

「おっおう……」

 

剣幕に押されて、頷く。

 

「さてと、話しわ変わるけど……なのは、最近レリック関連の事件がよく起きているのよね?」

 

「うん、必ずと言っていい程未確認機械兵器……識別名、ガジェットドローンが出現しているの」

 

「本局でもかなり問題視しているよ」

 

「これは急がないとあかんな」

 

「出来れば高校卒業までに何も起きないで欲しいね」

 

「そうだね、部隊もそれ位で完成していればいいけど……」

 

「考えても仕方がない、今はとりあえず食べよう!」

 

場の空気を変えようと話しを変えた。

 

「そっそうだね!」

 

「うん、食べようか!」

 

「桃子さ〜〜ん、シュークリーム追加で〜〜」

 

それから皆で楽しみ、夕方頃に解散した。

 

「じゃあね〜皆〜!」

 

「またねなのは、レンヤ!」

 

「それじゃあね」

 

「またいつでも来いよ」

 

「うん!」

 

フェイト達は帰って行き、俺となのはは後片付けの為翠屋に戻る。

 

「………よし、掃除も終わりっと」

 

「レン君、コッチも終わったよ」

 

「あら、ありがとう2人共。もう大丈夫だから先に帰っておいて」

 

「「はーい」」

 

翠屋から出て、家に向かう途中……

 

「ねえ……レン君」

 

「ん?なんだなのは?」

 

「まだ……レン君のお父さんとお母さんは見つからないの?」

 

「………そう、だな」

 

あれから何の手がかりもない、一体何で魔法文化の無いここに捨てて行ったんだろうか……

 

「まっ、考えても仕方がない、か……」

 

「レン君……」

 

「そう落ち込むな」

 

俺はなのはの頭を撫でる。

 

「あっレン君///」

 

「まだ俺は諦めていない、管理局の皆や聖王教会も捜索に手伝ってくれている。もちろんなのはも手伝ってくれるよな?」

 

「うん!もちろん!」

 

「ああ、頼むぞ。エース・オブ・エース」

 

「にゃ!もうレン君!」

 

「あはは!」

 

「待〜〜て〜〜!」

 

俺達は駆け出し、家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休み真っ只中……働く者は働き、休む者は休む。

 

「ここも以上なし………さて次は」

 

俺はミッドチルダに現存するゲートを調べ回っていた、はっきり1人でミッドチルダ全域を調査するのは物理的に無理だが、ちゃんと飛行許可を得て飛行魔法を使用しながら調査している。

 

「ここも問題なし、一体どこから湧いて出てくるんだ?」

 

各所のゲートを調べても全部フェーズ0、どこも異変は無かった。

 

「さてと、帰るとしますか」

 

記録をまとめて異界対策課に戻ろうとした時……

 

「ん?」

 

視界の隅に何かが見えて見てみると、学生達が雑談をしながら歩いていた。見たところ少し年上……高校生位だ。

 

「あれは……どこの高校だ?」

 

緑色の制服に、鋭い牙がある狼のエンブレム。あんまりここでは見ないな。

 

「…………帰ったら調べてみるか」

 

それから戻り、異界対策課には誰もおらず、報告書を制作してから調べてみた。

 

「狼のエンブレムっと………レルム………魔導学院」

 

パソコンで調べてみると幾つもの優秀な人材を輩出している名門、進路先は管理局はもちろん多種多様な職業も多くいる。

 

管理局の仕事の両立を認めている様だし。

 

「授業内容は……だいたい地球と同じみたいだし、当然魔導師としての授業もやるのか………ん?」

 

読み進めていくと、ある文面を見つける。

 

「異界に関する授業もやるのか、そう言えば異界の専門学者も出てきたし、何度かそれ関係の話しも来てたな」

 

クラスは一科生2クラス、二科生3クラスで構成されている。しかし一科生と二科生に分けるという事は、その2つのその間に大きな溝がありとう言う事だ。色々な問題が起きると思うぞ、一科生は二科生を見下し、二科生は一科生の態度に嫌悪する……

 

あらゆる面で優遇され、また実力も兼ね備えた白い制服の一科生。優秀ながらも下に見られ、理不尽さを抱き続ける緑の制服の二科生。

 

資料を読むだけでも分かってくる、学生寮もあるらしくそれも2つに分けている事もあって、両者は事あるごとに反発しあい、学業成績や魔法訓練、クラブ活動でも火花を散らし合っているのだろう………それでも俺はここに興味がある。

 

それに名門に恥じぬハードなカリキュラムを行っている、普通の高校に行くより自分を高められる所に行きたい。

 

この前、風芽丘学園の見学に行ってみたけどどこかピンと来なかった。ここなら……

 

「えっと見学日は……再来週か、事前に言っておかないといけないやつか……面倒だな」

 

愚痴りながらも必要事項を入力して送信した。

 

「よし、再来週が楽しみだ!」

 

その時俺は気付かなかった、出入り口の扉が少し開いていた事に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レルム魔導学院はミッドチルダ東部方面の近郊でテーマパークの先、ルキュウにある。

 

ミッドチルダから列車で1時間、さらにルキュウから30分で遊べる場所まで行けるから結構便利な位置関係だ。

 

当然聖祥中の制服を着て来ているがやはり浮いているな。

 

「えっと……レルム魔導学院はこの坂の上かな」

 

駅から出てレルム魔導学院に向かい、正門に到着した。

 

「ここが……レルム魔導学院」

 

今のミッドチルダの建物に比べ古い感じはするが、辺りは綺麗で中々いい学院だ。聖王教会と似たような物だ。

 

「さて受付は………」

 

確か講堂で説明した後、学院を回るんだったな。講堂に足を進めようとすると………

 

「レン君!」

 

「へっ?」

 

後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた、もしかして……

 

「レンヤ!」

 

「皆!どうしてここに⁉︎」

 

聖祥中の制服姿のなのは達が現れた。

 

「どうしてじゃないわよ」

 

「私達に黙っといて、水臭いんよ」

 

「私達はレンヤと一緒がいいの!」

 

「うん!その方が楽しいからね!」

 

口々にそう言うが、一体いつ知られたんだ?

 

「不思議な顔をしてるね」

 

「何でここがわかったちゅうな」

 

「あっああ……」

 

「先々週にラーグ君から聞いたの、それで私達も参加しようって」

 

だからここに居るのか。

 

「ほらボーっとしてないで!」

 

「行こう、レンヤ」

 

「了〜解」

 

俺達は受付を済ませて講堂に入った、バスケやバレーに使われていないらしく、ラインやシューズの跡が無かった。

 

それから説明を聞き、学院内を回る事になった。

 

敷地内にあるのは大まかに本校舎と魔導訓練用の施設とドーム、図書館、学生会館、武練館、技術棟がある。

 

面積も街の半分以上は学院の様な物だ、流石名門。見た目古いのに中身は大違いだ。

 

「へえ、結構設備が充実しているわね」

 

「クラブにも力を入れているみたいだし」

 

「これなら風芽丘学園よりいいかもね」

 

「寮もあるのもええんやけど、家からの通学は厳しいなぁ」

 

「確かに、シグナム達の事もあるからね」

 

「迷い所だね」

 

「自分の道だし、あんまり妥協したく無いんだけどな」

 

皆で相談、意見しながら授業風景やドームでの訓練を見て回った。

 

「魔導訓練はハードにやっているけど、武術訓練はそこまでハードでもないね」

 

「典型的な偏見だろう、体力つけるより魔法を優先しているんだろう」

 

「ちょっと、寂しいね」

 

「せやな、一科生と二科生の仲も悪うようやし」

 

「どうにかしたい所だけど、そんな暇はないかなぁ」

 

「いつも通りに自主的にトレーニングするしかないね」

 

それから昼頃になり、学生会館で昼食を食べる事にした。

 

ここは一階が食堂や生活用品がある購買、デバイスの部品が取り扱われている。そしてやはり広い、全校生徒スッポリと入りそうだ。

 

「皆見て!デバイスの部品が一杯あるよ!」

 

「あはは、すずかはごはんそっちのけにデバイスの方に行くんだね?」

 

「うん、それがすずかちゃんだからね」

 

「俺がすずかを見ているから、皆は席を取っておいてくれないか?適当に定食でいいから」

 

「うん、了解や」

 

それからすずかはしばらく夢中になり……

 

「ごめん///」

 

「いいさ、ほら行くぞ」

 

「うっうん!」

 

すぐになのは達は見つかった。

 

「レンヤ、コッチだよ!」

 

「買っておいたわよ」

 

「ありがとう、それで……」

 

「いいよ、これ位」

 

「えっ悪いよそんなの!」

 

「かまへんよ、ありがたく受け取ってきい」

 

「そうそう」

 

「……分かったよ」

 

しぶしぶ了承して昼食にありつく、ここでも地球の文化が来ており普通の定食だ。

 

「この後はどうする?」

 

「ドームで模擬戦をするみたいだから、行ってみようよ」

 

「そうね、ここのレベルを見ておきたかったし」

 

「教導の参考になるかも」

 

「それじゃあ決まりやな」

 

「ならその後は技術棟に行きたいな」

 

「ぶれないな、すずかは」

 

昼食を済ませて俺達はドームに向かった。

 

「おお!やってるやってる〜」

 

「1組、一科生の授業ね」

 

「さっきは二科生だったけど、ずいぶん内容が違うんだね」

 

「思っていたより、偏見は根強いな」

 

「うん、あんまり参考にならないかなぁ」

 

その時、学生の1人がこちらに気付いた。

 

「あーー!管理局のエース達!」

 

それに続き何人もこちらに気付いた。

 

「わあ!本当だ!」

 

「まさか来年ここに入学するの⁉︎」

 

彼らの方が年上のはずなのに、何で騒ぐのかなぁ。

 

「静かにせんか‼︎」

 

教官と思われる男性の一喝で静まる、だが声が大きいだけで気迫がまるで無い。教員の質も高が知れているな、勉強以外で得るものはあるのかなぁ。

 

「だがせっかく来て頂いたのだ、君達の誰か1人模擬戦に参加しないかね」

 

「えっ……」

 

「それは……」

 

「それいいですね!」

 

「エースの実力を見てみたいです!」

 

勝手な提案に俺達は驚く中、いつの間にか決定している。

 

「教導官として、場に流されるのはやってはいけない事なのに……」

 

「なのは、落ち着いて」

 

男性の行動になのはは怒りを覚えて魔力が漏れ出る、それをフェイトが抑える。

 

「でもどないすんねん、もう逃げられへんよ」

 

「思っていたより不真面目ね」

 

「しょうがない、俺が行くよ」

 

「レンヤ君、気をつけてね」

 

「ああ」

 

俺は客席から飛び降りてグランドに立つ。

 

「ルールは?」

 

「一対一、もちろん非殺傷設定だ。手早くワンヒット制にするがいいか?」

 

「構いません、それで相手は……」

 

「僕が行きます」

 

前に出てきたのは、以下にも人を見下していそうな目をした男だ。

 

「君を下せば、僕の評価も上がるだろう。どうだい?ここは僕に譲ってくれないかな?」

 

「…………はい?」

 

何言ってんのコイツ、そこまでここは…………いや、コイツだけか。

 

「もちろんタダでとは言わない、何ならーーー」

 

「すいませーん、始めていいですか〜?」

 

「なっ⁉︎……いいだろう、提案に乗らなかった事を後悔させてやろう!」

 

なーに勝手に話して勝手にキレてんだろう、まあいいや……実力を見たらサッサと終わらせるか。

 

「準備はいいか?」

 

《イエス、マイマジェスティー》

 

「レゾナンスアーク、セートッアープッ!」

 

バリアジャケットを纏い、刀を抜き構える。

 

相手もデバイスを起動してバリアジャケットを纏った。武器は一般的な杖型デバイスだ。

 

「レン君頑張れー!」

 

「負けたら承知しないわよー!」

 

なのは達の応援がする中……

 

「始め!」

 

教官の合図と同時に魔力弾を撃ってきた。

 

「ほらほらどうした!この程度かエース?」

 

やたら挑発してくるなアイツ、ジャブ入れてみるか。

 

「レストレーション02」

 

刀を中型の銃に変え、マシンガン並みに撃つ。俺の魔力弾は金属、火薬を魔力に置き換えて大雑把に地球の銃と同じ原理で撃っているから、魔力弾を操れない分威力は高い。

 

集中して魔力弾を地球の弾と似た様なのに生成すれば、簡単な防御なんて紙同然に破れるが……

 

「ぐわっ!」

 

………コイツの実力を見る分には必要ないな、弱そうだ。

 

「この!」

 

相手は魔力を集束し始めた、体勢も崩れていないのに砲撃って……

 

「舐めすぎだろ、レストレーション01」

 

《モーメントステップ》

 

銃から刀に変えて、足から地面に向かって螺旋状に魔力を放出して相手の背後に一瞬で行く。

 

「何っ⁉︎どこに行った⁉︎」

 

相手はキョロキョロと辺りを見渡すが、集束中だからなのか一向に後ろを見ない。本物の馬鹿だよ、俺が肩を叩いてようやく気付いた。

 

「な⁉︎いつの間に背後に⁉︎」

 

「ついさっき、気付くの遅いな」

 

「馬鹿にしやがって!喰らえ!」

 

相手はロクに集束もせずに撃ってきた、もちろん砲撃でも中身はスッカスカなので簡単に斬り払った。

 

「馬鹿な⁉︎僕の砲撃が⁉︎」

 

「あんなのタダのデカイ魔力の塊だ、もう充分だ………」

 

もう一度モーメントステップを使って背後に立つ、すでに刀を鞘に収めている途中だ。

 

「また証拠にもなく後ろにーー」

 

相手は直ぐに魔力弾を撃とうとしたが……

 

チン……

 

刀を鞘に収めると。

 

ザシュッ!

 

「なっ⁉︎」

 

相手は理解する間もなく倒れた。

 

「そこまで!勝者、神崎 蓮也!」

 

「ありがとうございました」

 

一応礼を言い、観客席に戻ってバリアジャケットを解除する。

 

「お疲れ様、レン君!」

 

「この程度問題ないさ」

 

「でしょうね、分かりやすく手を抜いていたわ」

 

「えっそうなんか?」

 

「何時ものレンヤ君はあんな物じゃないよ」

 

「相手も結構強かったよ」

 

「いつもグリードと相手していれば、そりゃあ強くなるよ」

 

俺の実力はあんまし理解していない、異界対策課ではトップだが周りと比べるとどれ位か分からないからな。

 

グランドを見るとまた騒ついてきた、速めにここを出ないとまた面倒な事にーー

 

「まてっ!僕はまだ負けていない!」

 

なったよ。一撃入れればいいから気絶まではしていなかったが……

 

「ルールは初撃決着なはずです」

 

「うるさい!僕が負けるはずがないんだ!」

 

典型的な小者の言い分だな。他の生徒が抑えているが魔力だけは有り余っている様で中々大人しくならない。

 

「しょうがないな〜」

 

「姉さん?」

 

アリシアがバリアジャケットを纏いグランドに降りて男の前に立つ。

 

「ねえ」

 

「邪魔だ!どーー」

 

《メテオショット》

 

ドガンッ!

 

言い終わる前に拳銃で腹を殴り、ゼロ距離で大型の魔力弾を撃ち込んで吹っ飛ばした。痛そうだな、あれ。

 

すっかり伸びているよアイツ。アリシアは気にせず戻ってきた。

 

「ほらほら行くよ皆!」

 

「コラ押すな!」

 

アリシアに押されてドームから出た、ハプニングはあったが一通り回ったかな。

 

「後はどこが残っているにかな?」

 

「なら技術棟に行こうよ!」

 

「すずか、落ち着きなさい」

 

「でもいいかもね」

 

「それならはよ行こか」

 

ドームから技術棟は正反対側にあって、到着に結構時間がかかった。

 

「ここだね」

 

「周りと違って建物が新しいわね」

 

「学生がデバイスを調整する所だ、それなりに重要なんだろう」

 

「なるほど」

 

「ほら皆!早く行こう!」

 

動物園に行った時の様なはしゃぎ様だな。

 

それから一通り見てすずかも満足してた頃には外は夕方になっていた。それでもう帰る事になった。

 

「楽しかったね!」

 

「でもレンヤ、ここに入るつもりなんだよね?」

 

「正直あまりお勧めしないわよ」

 

「ありがとう、でももう決めた事なんだ」

 

「まっそうやなぁ」

 

「この程度、レンヤ君の障害にならないもんね」

 

「なら、私達もここに入るよ」

 

すずかの言葉に全員が頷く。

 

「前にも言ったけど、そこまでする必要はないんだぞ」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すんよ」

 

「私達はレン君と一緒がいいの!」

 

皆の意思は固く、ちょっとやそっとでは変えられないな。

 

「まあ、俺が口出しできる訳でもないし、皆が決めたならそれでいいか」

 

「そう言う事よ」

 

「帰ったらお母さん達にちゃんと説明しないとね」

 

「そうや!家の事をちゃんと考えなぁあかん!」

 

「うん、悪いとは思うけど……」

 

「大丈夫だよすずか、絶対に分かってくれるって」

 

「きっと大丈夫、母さんも分かってくれるよ」

 

話しをしながら正門まで行くと、身長が大きい筋肉質の老人が立っていた。

 

「神崎 蓮也君だね」

 

「はい、そうですが……」

 

「あなたは?」

 

「これは失礼、ワシはこの学院の学院長をしているヴェントと言う者だ」

 

「!、なるほど……確かな実力者の様ですね」

 

「それでご用件は?」

 

「先程のドームの件についての謝罪をと」

 

「大丈夫です、気にしてはいません」

 

「それだけでもないでしょう?」

 

「ええ、貴方の父君と母君のお話を」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

その言葉に全員が反応する。

 

「レン君のお父さんとお母さんの居場所が分かったんですか⁉︎」

 

「そうではない、ただお二方はここの出でしてね。君を見た時ピンときた様でつい」

 

「そう……ですか」

 

「えっと……レンヤのご両親はどんな人でしたか?」

 

「ふむ、聖王であられるアルフィンは自由奔放で明るく。シャオは正義感が強く、勇ましかった。元々この学院は代々聖王家の方が入学する習わしであったが、今回は駄目だと思われたが……来ていただきありがとうございます」

 

「そうか……だからここに惹かれたのか」

 

制服を見た時頭から離れなかった理由がようやくわかった。

 

「………ヴェント学院長、貴方は今の学院をどう思いますか?」

 

「………昔と変わってしまった、一科生と二科生の間に溝ができてしまった。お二方がいた時は手と手を取り合ってそれは学院全体が1つにクラスの様だった」

 

「そんな事が……」

 

「…………………」

 

「レンヤ君?」

 

黙ってしまった俺にすずかが声をかける。

 

「うん、ここでやる事は決まった。父さんと母さんがやった事を俺もやる!2人が出来たんだ、俺にも必ずできる!」

 

俺は力強く言った、ここでやりたい事が出来た。絶対に成し遂げてみせる!

 

「いいわねそれ!」

 

「私も協力するよ!」

 

「うん!皆でこの学院を良くしよう!」

 

「乗り掛かった船や、このまま激流でも渦潮でも越えてみせるで!」

 

「当然だね!」

 

「ふふ、これからもっと忙しくなるね」

 

俺達がここで成すべきことをここで決まった瞬間だった。

 

「はっはっは、まさしく激動の時代の前触れじゃな」

 

ヴェント学院長は髭を撫でながら空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 


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