魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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58話

 

レンヤ達はグラーフ・カッツェと戦いを挑んでいた。

 

「はあっ!」

 

「そこ!」

 

レンヤとアリサが左右から攻めるが、素早く避けられる。

 

「すずか!」

 

「うん!スノーホワイト!」

 

《アイスフロア》

 

すずかが槍を地面に突き刺し、地面を広範囲で凍らせる。グラーフ・カッツェは氷に足を取られて動きが止まる。

 

「もーらいー!」

 

アリシアがグラーフ・カッツェの関節部分に障壁を張り動きを止める。

 

シャアアアアアア!

 

グラーフ・カッツェが尻尾を鋭くし、斬りかかってきた。

 

「アリシア!」

 

「きゃっ!ありがとうレンヤ」

 

アリシアに襲いかかった尻尾をレンヤが払う。

 

そのまま障壁を破壊して前足を降り上げて……

 

ガシャアアアアアンンンッッ‼︎

 

氷を粉々に砕いた。

 

「くっ……面倒ね」

 

「うっ、流石……曲がりなりにもグリムグリードだね」

 

「あのスピードが厄介だな」

 

「どうにかしないと……」

 

「レンヤ、私にやらして」

 

「ソエル、準備はいいのか?」

 

「うん」

 

ソエルは迷わず頷く。

 

「……よし、ラーグ」

 

「おう!調整もバッチリだぜ!」

 

「足止めは任せて」

 

「早くしなさいよ!」

 

アリサ達が足止めに向かい、ラーグは赤いガントレットとカードケースを取り出した。

 

それを左腕と二の腕につける。

 

「さてソエル、初陣だ!」

 

「おー!」

 

レンヤは手の甲部分にある大き目の赤いボタンを押し、ケースから出て来たカードを入れる。

 

《Gauntlet Activate》

 

「ガントレット、チャージオン!」

 

ガントレットを掲げ、赤い光りをソエルに向ける。

 

「ポーン」

 

ソエルは全身が赤く光り、渦巻きながら小さくなりレンヤに飛んできてキャッチする。

 

「どうだ、ソエル?」

 

「問題ないよ!力が溢れて来るみたいだよ!」

 

赤い球が開き、ドラゴンの様な姿に変わっている。

 

「レンヤ!」

 

「わかっている!ゲートカード、セット!」

 

黒いカードをグラーフ・カッツェの足元の地面に投げ、赤い波動を放ちながら消えていった。

 

「行くぞ、ソエル!」

 

「うん!」

 

レンヤがソエルを掴み、振りかぶろうとすると……

 

「あーレンヤー!ちゃんと掛け声も言えよー!」

 

「とっと……あれを言うのか……?」

 

「そうだよ!ルーテシアと一緒に決めたんだから!」

 

「はあ、今更恥ずかしがっても仕方ないか……」

 

レンヤはグラーフ・カッツェの方を向く。

 

「改めて、行くぞソエル!」

 

「うん!」

 

「爆丸、シュート!」

 

思いっきりソエルを投げてグラーフ・カッツェの前で止まり……

 

「ポップアウト!」

 

球が展開し立ち上がり、赤い光りを放ちながら人型に近い巨大な赤いドラゴンが現れた。

 

「ノヴァ・ヘリックス・ドラゴノイド!」

 

グガアアアアアア!

 

レンヤが名前を叫ぶと、呼応するようにソエルが叫ぶ。

 

「すごい、あれがソエルなの……⁉︎」

 

「完全に別物じゃない!」

 

「ガリュー君と違ってソエルちゃんは強化しても戦闘なんて出来ない、だから戦闘できる別の姿を与える事にしたんだよ」

 

すずかがソエルの姿についての説明をする。

 

ソエルはグラーフ・カッツェと向き合う。

 

「さあ、行くぞソエル!」

 

《Ability Card、Set》

 

「アビリティー発動!ドラゴン・ハマー!」

 

ガントレットにカードを入れて発動する、ソエルの体が赤く光り、高速でグラーフ・カッツェに近づき攻撃する。

 

グラーフ・カッツェも高速で動き、攻撃に対応している。

 

「うわ、すごっ」

 

「何処の怪獣対戦よ」

 

アリシアとアリサが戦いの光景を見てそう言う。

 

「攻めるぞソエル、アビリティー発動!ドラゴン・ファランクス!」

 

ソエルの両手に赤い魔力弾が現れ発射する。

 

グラーフ・カッツェの左右に着弾し爆発する。グラーフ・カッツェは直撃してよろけるも直ぐに体勢を立て直し、爪を伸ばして斬り裂いてきた。

 

「させるか、アビリティー発動!ヘリックス・シールド!」

 

ソエルを赤いバリアーが張られて攻撃を防いだ。

 

「決めろソエル!アビリティー発動!ギャラクティック・ドラゴン!」

 

ソエルが全身に炎を纏った後、それを口に集束させ火球の状態にしてから一気に放つ。

 

しかしグラーフ・カッツェは尻尾で火球を薙ぎ払い、火球は後ろで爆発した。

 

「ちょっレンヤ!あまり周りに被害を出さないで!」

 

「あんまり暴れると結界が壊れちゃうよー!」

 

「くっそうか……ソエル!ぶっつけ本番で行くぞ!ダブルアビリティー発動!」

 

レンヤは2枚のカードをガントレットに入れた。

 

《Ability Card、Set》

 

「ストライク・トルネード…プラス、ファイアム・トルネード!」

 

ソエルは自身をコマのように高速回転させた直後に炎を纏い、巨大な炎の竜巻を作り出しながらグラーフ・カッツェに突撃した。

 

グラーフ・カッツェは避けるも余波として発生した猛火に吹き飛ばされる。

 

「そこだ!アビリティー発動!バーニング・ドラゴン!」

 

そのままソエルは竜巻の中を飛び上がり、炎がドラゴンの形に変化してグラーフ・カッツェに突撃する。

 

グガアアアアアア!

 

雄叫びを上げてグラーフ・カッツェに激突して吹き飛ばす。

 

グラーフ・カッツェは断末魔を上げて消えていった。

 

「ふう……やったか………」

 

ソエルは全身が赤く光り、渦巻きながら球になり。レンヤに向かって飛んできたキャッチした。

 

「お疲れ様、ソエル」

 

「ふう……初めて戦いがグリムグリード何てキツイよ」

 

「そうだぞレンヤ、ダブルアビリティーをいきなり使うなんて無茶な真似を」

 

「ごめんごめん」

 

レンヤはガントレットを操作し、ソエルを元に戻す。ちょうど結界も解除された。

 

「レンヤ〜!」

 

アリサ達が近寄ってきた。

 

「レンヤ君、ソエルちゃん、大丈夫?」

 

「平気だよ」

 

「ちょっと魔力は使い過ぎたがな」

 

「レンヤの魔力量なら平気でしょう」

 

「だな」

 

「事後処理は私とラーグでするわ、あなた達はヴィータの所に行きなさい」

 

アリサがそう提案してきた。

 

「いいのか?」

 

「俺は構わないぞ、ヴィータによろしく言っといてくれ」

 

「ありがとうアリサちゃん、ラーグ君」

 

「また後でね」

 

レンヤはなのはと連絡を取り、都市部にある病院に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レンヤ達は病院に着くなり直ぐにヴィータの病室に向かった。

 

「なのは!」

 

「皆!無事だったんだね!」

 

「うん、今回はソエルちゃんに助けられたの」

 

「ソエル、大活躍だったよ」

 

「へえ、ソエルって戦えたんだね」

 

「えっへん!」

 

ソエルは褒められて胸を張る。

 

「それよりヴィータは?」

 

「今シャマルの検査が終わった所や」

 

はやてが病室の扉を開けて中に入る、そこには大人になったヴィータとシャマルがいた。

 

「シャマル、ヴィータはどうなったんや?」

 

シャマルはカルテから目を離し、はやての方をを向く。

 

「今のヴィータちゃんの状態は、体を構成するデータが改竄された状態よ。無理に戻すことは出来ないわ」

 

「それ以上の異常はないんですか?」

 

「ええ、それだけよ。結果としてヴィータちゃんの体が大きくなった……と言う事になるわね」

 

「そうか……」

 

「ヴィータちゃん、良かったですぅ」

 

異常がない事がわかり安堵する。

 

「それでアリシアちゃんから見てヴィータちゃんはどうなの?」

 

「ちょっと待ってね」

 

アリシアがヴィータの側に行き、ヴィータをジッと見る。

 

「………………………」

 

「姉さん、どうなの?」

 

「……………うん、残留するグリードの気配もないよ。私から見ても異常なしだね」

 

「「「良かった〜〜」」」

 

緊張が解けたのかその場に座り込むなのは、フェイト、はやて。

 

「後は目が覚めるのを待つだけね」

 

「私はここで様子を見ているよ、皆は先に戻っていて」

 

アリシアがヴィータの様子を見るため残る事にした。

 

「分かった、先に異界対策課に戻っているな」

 

「それじゃあアリシアちゃん、シャマル、ヴィータの事を頼んだで」

 

「分かったわ、はやてちゃん」

 

レンヤ達は病室から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……ん…………ここは……」

 

目が覚めたら見覚えのない天井が見えた、何でこんな所で寝ているんだ?

 

そう言えば今日の昼からの記憶がない、今何時なんだ?

 

「よっ………ん?」

 

起き上がると体に違和感を覚えた、いつも使っているサイズのベットなのに妙に小さく感じるし、それに胸が重い。視線を下げてみると……

 

「何だ、これ?」

 

胸が膨らんでいてお腹が見えない、何付けられたんだ……と思い触ってみると……

 

ムニュ……

 

「え」

 

自分の胸を触った感触がする。

 

「まっまさかな〜〜」

 

隣に鏡があったのでベットから立ち上がる、いつもより視線が高いような……

 

「えっ……」

 

鏡の前に立ち、絶句する。写っていたのは、アタシ似の大人の人だったから。

 

「…………………」

 

手を上げてみると鏡の人も手を上げる、手を振ってみると鏡の人も手を振る。そこで理解する。

 

「アタシ……大きくなっているーーーー⁉︎」

 

自分の姿を見て思わず叫んでしまう、その時シャマルが入ってきた。

 

「ヴィータちゃん、どうかしたの⁉︎」

 

「ああシャマル、ちょうど良かった。アタシ何でこんな風に……」

 

「ああそう言う事ね、今から説明するから一旦落ち着いて」

 

シャマルに言われ落ち着き、ベットに座る。

 

それから説明された、あれから1日経っている事、自分がグリードに憑かれてた事、体が大きくなった理由も全部。

 

「だからこんな風に……もう元には戻れねえのか?」

 

「ええ、変身魔法で誤魔化せるくらいね。もうヴィータちゃんの体はその姿で固定されたわ」

 

それを聞き複雑な気分になる、小さい事にコンプレックスはあったがこんな結果で大きくなる気は無かった。

 

「この様なタイプのグリードは憑く人の願望に呼応するらしいわ、やっぱりヴィータちゃんの願望は大きくなりたかった事?」

 

「…………ああ、そうかもしれないな。こんな事でなりたくは無かったがな」

 

アタシはベットに倒れ、ぼんやりと天井を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の事件はヴィータの処分でかなり揉めた、ヴィータはグリードの乗っ取られただけであって決して自分から異界に関わったりはしてなく、しかし本局上層部はそれでも罪に問おうとした。途中でレジアス中将の介入があり、こちらもグリードによる憑依に関する資料提示をしてなんとか異界対策課がヴィータを保護観察処分と言う形になった。

 

「レジアス中将、弁護していただきありがとうございます」

 

俺は敬礼をしてお礼を言う。

 

「構わんさ、ただ言われぬ罪に問われるのが我慢ならなかっただけだ」

 

「それでもです、はやての件についても了承を貰いましたし……」

 

はやてが現在も進行中の計画についてはレジアス中将も知っていて、部隊完成時の異界対策課の出向も認められている。

 

「あの火災の出動の遅さについても我々も実感している、管理局は大きすぎる故に小回りが利かないからな。新しく作られる部隊にしても、君達異界対策課の様な小回りが利く少数精鋭の部隊が必要だからな」

 

「俺達は異界限定ですけどね」

 

「そう言うがここ最近は随分と手広くやっている様だな、お前にしても、部隊員にしても階級は高いからそれなりの権限を言えるようになったからな」

 

現在の異界対策課の部隊員は俺、アリサ、すずか、アリシア、ラーグ、ソエル、アギトで。あれからアギトも一等陸士、アリサ達4人は二尉扱いでラーグとソエルは陸曹長扱い、俺も三等陸佐なので下手な部隊より権限が高いからな。

 

「そのせいで色々と大変ですが……」

 

「そう言うな、市民からの評判も高い。異界対策課は市民に1番近くにいる部隊とも言われているからな」

 

「そのうちルーテシアが入ってくるとはいえもう少し人員を増やして欲しいですけど、主にデスクワーク方面で」

 

「考えておこう、しかしメガーヌの娘が入るとはな」

 

しばらくそんな雑談が続いていると、ゼストさんが止めに入った。

 

「レジアス、そろそろ時間だ」

 

「そうか、すまないな。それでは神崎三等陸佐、失礼する」

 

「はい!」

 

「レンヤ、クイントによろしく言っといてくれ」

 

「分かりました!」

 

ゼストさんがそう言い、レジアス中将と去って行った。

 

「さてと、俺も行くかな」

 

見送った後、俺は異界対策課に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後ーー

 

「おーいアリシア、早く行こうぜーー!」

 

「待ってヴィータ!もう、見た目大人なのに中身が変わってないんだから!」

 

ヴィータは先に出て行き、それをアリシアが急いで追っている。

 

現在ヴィータは本局航空部隊からの出向扱いとして異界対策課にいる。

 

ヴィータは姿が変わってもヴィータで保護観察処分お構い無しに俺達を振り回している。

 

ただヴィータが言うにははやてによるシグナムとシャマルの被害がヴィータにも及んでいるとの事だ、何んの被害とは言っていないが。

 

「ヴィータちゃんもすっかり慣れちゃったみたいだね」

 

「あの体で抱きつかれると体が持たないわよ」

 

アリサは溜息をつく。

 

「まあもう少し大人しくして欲しいがな」

 

「アタシはいいけど」

 

「アギトも似た様なものだからね〜」

 

「性格が似てんだな」

 

「一緒にすんな!」

 

アギトはラーグの頭に乗り揺さぶる。その時扉が開かれてルーテシアが入ってきた。

 

「たっだいまー!西地区のパトロール終わったよ〜〜」

 

「お疲れ様ルーテシアちゃん、何か飲む?」

 

「はい!いただきます!」

 

「ルーテシア、あれからガントレットに調子はどう?」

 

「絶好調だよ!ガリューといつも一緒に居られるし、強くもなれるんだから」

 

「あんまり過信するんじゃないわよ、実際に強くなっているのはあなた達なんだから」

 

「はーい分かっていまーす!ねっガリュー!」

 

(コクン)

 

ルーテシアは肩に乗っている球の状態のガリューに話しかけ、ガリューは頷く。

 

「すっかりその状態も慣れたんだな」

 

「あーアギト、ガリューから聞いたよ。あんまりガリューでボウリングしないでよ」

 

「いっいいじゃんか、ガリューも楽しんでるんだから」

 

「それでもだよ」

 

ルーテシアはアギトと1番仲が良くて、いつも楽しそうにしている。

 

「それにしてもルーテシア、あの掛け声はなんだ?ゲートカードやアビリティーカードはともかく、爆丸の名前もそうだが投げる時にあれ言う必要あるか?」

 

「ええーいいでしょう爆丸、カッコいいんだから。それに合図を出さないと他の人の迷惑にもなるんだから」

 

「まあそうね、いきなり出てきても困る訳だし」

 

「ふふ、レンヤ君恥ずかしいんだね」

 

「そりゃそうだろう」

 

「ええー私はカッコいいと思うけど、爆丸、シュート!っていうの」

 

「そうだそうだ!」

 

「おめえらは投げられる側だろう」

 

(コクン)

 

「あはは!これからも新機能をじゃんじゃん作るから期待してよね!」

 

「程々にしときなさいよ」

 

その時扉が勢いよく開けられた。

 

「すまん!着替えるの忘れた!」

 

ヴィータは更衣室に飛び込んでいった。その後汗だくになったアリシアがやって来た。

 

「ぜえ、ぜえ……元気よすぎだよ…」

 

「はいアリシアちゃん、お水だよ」

 

「あっありがとう……すずか」

 

アリシアは水を受け取り飲む。

 

「ゴクゴク……ふう、生き返ったよ」

 

「相当振り回された様だな」

 

「うん、制服のままいちゃったから呼び戻すのにも時間が掛かっちゃったよ」

 

「私服での調査……相変わらずここはフリーダムだね」

 

(コクン)

 

「むしろ楽でいいでしょう?」

 

「おう!アタシは好きだぜ!」

 

「ーー着替えたぜ!」

 

更衣室からヴィータが出てきたが……

 

「ヴィータ随分ラフな格好だね〜」

 

「まあな」

 

その時アリサが何かに気がついた。

 

「ちょっと待ちなさい、アンタブラジャーは⁉︎」

 

「あっあれか?はやてに買って貰ったけど邪魔なんだよなぁ、前から付けてなかったし」

 

「ダメよちゃんと付けないと!」

 

「あっ押すなよ!」

 

「いいから来なさい!」

 

ヴィータはアリサとすずかに押されて更衣室に入っていった。

 

「全く、ここはいつも騒がしいな」

 

「「「「「うん」」」」」

 

俺の言葉に全員が頷いた。

 

 


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