魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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57話

 

早くも5月が終わり6月、はやては自分の目標に向かって準備を進めており俺達はその手伝いをしている。

 

そんなある日、はやてがヴィータの事を話してきた。

 

「最近ヴィータちゃんの様子がおかしい?」

 

「そや、ジッとしていられなくて動くものに過敏に反応したり日向ぼっこしたりとかで……」

 

「それ普通の子どものする事じゃない」

 

「でも確かにおかしいね、ヴィータちゃんはそんなことする人じゃないのに」

 

「体に精神が引っ張られたとか?」

 

「だったらもっと早く症状が出てもおかしくないぞ」

 

「私もシグナムから聞いているよ、まるで猫みたいだって」

 

「「「「「猫?」」」」」

 

フェイトの発言に首を傾げる。

 

「そう言いば前にザフィーラから聞いたことあるな、ゲートボールしている時に猫みたいな影にぶつかったって」

 

「何だか異界絡みの予感がするよ」

 

アリシアの感はよく当たるから、あながち否定できない。

 

「仕事にも支障が出ているみたいやし、皆でどうにか出来へんかな?」

 

「どうにかって言われても……」

 

「とりあえず会ってみよう、まずはそれからだね」

 

「今日は非番で家にいるんだよね?」

 

「そや、学校に行く前もゴロゴロしとってた」

 

「放課後に行ってみましょう」

 

「賛成〜〜」

 

それから放課後、はやての家に向かう。

 

「ただいま〜」

 

「おかえりなさい、はやて」

 

「皆さんもいらっしゃいですぅ!」

 

リンスとリインが出迎えてくれた。

 

「リンス、ヴィータはどこにおるん?」

 

「ヴィータですか?先程シャマルが検査をする為ミッドチルダに連れて行きました」

 

「あっちゃー、入れ違いになっちゃったよ」

 

「私達もすぐに向かおう」

 

「そうだな」

 

「それじゃあリンス、リイン、留守番は頼んだで」

 

「はい」

 

「はいですぅ!」

 

すぐにミッドチルダに向かい、本部にある検査室に入ると……

 

「にゃあああああ!」

 

「コラ、ヴィータちゃん!大人しくしなさい!」

 

ヴィータが嫌がるように暴れ、シャマルがバインドで抑えていた。

 

「シャマル!」

 

「あっはやてちゃんに皆も!お願い、手伝って!」

 

「うっうん!」

 

なのはがヴィータをバインドてしてようやく抑えてこむ事ができた。

 

「一体ヴィータはどないしたんや?」

 

「それが分からないの、どこも異常は無いし健康そのものよ」

 

「…………………………」

 

アリシアがジッとヴィータを見つめる。

 

「アリシア、何か分かったか?」

 

「…………うん、憑かれているね」

 

「姉さん、ヴィータは全然疲れていないよ」

 

「疲労じゃなくて憑依の方だよ、フェイトちゃん」

 

「憑依ってまさか……オバケ⁉︎」

 

「ひいっ!」

 

オバケが苦手なフェイトは俺の背中に隠れる。

 

「アリシアちゃん、どう言う事や?」

 

「そのまんまの意味だよ、ヴィータは猫型グリードに憑かれている。どうやらザフィーラから聞いた時期に憑かれてらしいね」

 

「これも怪異の仕業なの⁉︎」

 

アリシアの説明にシャマルが驚く。

 

「過去の異界の事件例として数件出ているものよ、代表例としては悪魔憑きが有名ね」

 

「あっ悪魔………」

 

「そしてヴィータちゃんの症状は猫憑き、だけどグリムグリードでもそこまで脅威でも無いし。すぐに直せるよ」

 

「えっ!これもグリムグリードなの?」

 

猫なら怖く無いのかフェイトが聞いてくる。

 

「単体でのグリムグリードの顕現、前に言ったよな。大抵下級だが全く事件を起こさない訳じゃない」

 

「よし!直ぐにでも除霊しよう、そのまま抑えていて」

 

アリシアが魔法陣を展開して、ヴィータに向かって手をかざす。

 

「!、にゃああ、にゃあああああ!」

 

危険を感じたのか暴れ始める。

 

「何て力なの……!」

 

「ヴィータちゃん!大人しくして!」

 

「なのは、手伝うよ!」

 

「ヴィータ!大人しくしい!」

 

フェイトとはやてがバインドしようとすると……

 

「にゃあああああああああ!」

 

「きゃあっ!」

 

「しまった!」

 

ヴィータが光り出し、頭から猫耳が生えて、二又の尻尾が出てきた。

 

「シャアアアアアア!」

 

ガシャアアンッ!

 

バインドを力づくで破り、窓から飛び出て行った。

 

「ヴィータ!」

 

「直ぐに追いかけるわよ!」

 

「ヴィータちゃん待って!」

 

窓から飛び出しヴィータを追いかける、ヴィータは路地裏に逃げ込み……見失ってしまう。

 

「ダメ、魔力を使っていないから何処にいるのか分からない!」

 

「これじゃあ無闇に探しても見つからないよ」

 

「ヴィータ!何処に行ったんや!」

 

はやてが呼び掛けるも何も返ってこない。

 

「ヴィータ………」

 

「はやて………」

 

「はやて、ここは私達に任せて」

 

「異界対策課、出動よ」

 

「必ずヴィータちゃんを見つけ出して元に戻すよ!」

 

「だから元気出せ、はやて」

 

どうにかはやてを励まそうとする。

 

「皆……うん、ヴィータを見つけ出して!」

 

「レン君!もちろん私も手伝うよ!」

 

「協力させて」

 

なのはとフェイトも名乗り出た。

 

「なら力を貸してもらうぞ、なのは、フェイト、もちろんはやてな」

 

「「「うん!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は異界対策課の会議室に向かい、今後の対策を話していた。

 

部屋にいるのは異界対策課のメンバーとなのは達、シグナム達もいる。

 

「まず何でヴィータが猫憑きになったのかの説明だ、アリシア」

 

「うん、グリードに憑かれる共通点としては人間側が何らかの願望を持っていてそれがグリードと呼応して憑かれるんだ」

 

「それに今回憑いたのは猫でも猫又、それなりに霊格はある相手よ」

 

「そうなんや……」

 

「ちょっと待って!ヴィータちゃんは厳密には人間じゃ無いわ!」

 

「異界の事件例として、パソコンのデータにハッキングし乗っ取ったグリードもいます。ヴィータちゃんが憑かれてもおかしくないんです」

 

シャマルの疑問にすずかが答える。

 

「もはや怪異は何でもありだな」

 

「お前達はこんなのを相手にしていたのか」

 

「まあね、臨機応変な対応力がないとこの仕事には向かないからね」

 

「人材が少ない理由の一つよ」

 

アリサがそう言うと、俺達は落ち込む。

 

「アギトしか入ってこないし、ルーテシアも入る予定だけどまだ先だし……」

 

「ちょっと憂鬱になるな……」

 

「「うん」」

 

「レッレンヤ⁉︎」

 

「アリシアちゃんまで……!」

 

「しっかりせんか!」

 

シグナムに喝を入れられ正気に戻る。

 

「コホン、まあ説明はこれ位にして。本題に入ろう」

 

「このミッドチルダでヴィータちゃん1人をどう探し出して捕まえるか、それが今回の議題だよ」

 

すずかの説明に全員頭を悩ませる。

 

「しらみ潰しに探しても時間はかかるし……」

 

「餌で釣るとか?」

 

「猫の好きそうな物とかで?」

 

「猫じゃらしとかマタタビかしら?」

 

「それが1番無難かな」

 

猫好きのすずかもそう言うので、それで決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日ーー

 

餌もとい罠の設置場所はミッドチルダ中心、東、西、南、北の5箇所。

 

なのは達は捜査協力許可を本局からもらい、正式に協力してもらっている。こう言う手続きは正直面倒だ、改めて異界対策課の自由さを実感する。

 

メンバーは、俺、ラーグ、ソエル、アリサ、すずか、アリシア、アギトの異界対策課となのは、フェイト、はやて、シグナム、シャマル、ザフィーラ、リンス、リインの本局組の合計12人と1匹と2モコナ。

 

1チーム平均5人に分けて捜索を開始した。

 

俺は西側でソエル、はやて、シグナム、リインといる。

 

「今思うけど結構間抜けな作戦だね」

 

「うるさい、これ以外にいい方法が無いだろう」

 

「だからってこれは恥ずかしいんよ///」

 

目に当たりやすい場所に猫が好きそうな物を置き、俺達は茂みの中で見ている。時折通行人が怪訝な目で見るが上に掲げているーー異界関係の調査です、と書かれたーー看板を見るとそそくさと去って行くの。

 

「しかし来ないな、もうかれこれ2時間だぞ」

 

「ヴィータちゃん、来ないですね」

 

「他も同じような状況だな、さてどうした物か……」

 

「もっと別の餌で釣れんかなぁ」

 

「もっと別の………………あ」

 

シグナムが何か思いついた。

 

「シグナム?」

 

「しばし待っていてくれ」

 

そう言ってい何処かに行ってしまった。

 

「シグナム、どないしたんやろ?」

 

「シグナムの事だ、何か策を思いついたんだろう」

 

「だと良いんだけどね〜」

 

「ソエルちゃん?」

 

それからしばらく待ち。

 

「お待たせしました」

 

シグナムが戻ってきたが……

 

「シグナム……それ、何?」

 

「む〜〜〜〜〜!」

 

シグナムは簀巻きにしたユーノを担いできた。

 

「これはヴィータを釣るための囮です」

 

「いやそれじゃあ餌だから、生き餌だから」

 

「とりあえず釣ってみよか」

 

「む〜〜〜〜〜⁉︎」

 

ユーノは訳の訳の分からぬまま木に吊るされた。

 

「さて、これで来ればいいのだが……」

 

「確証、無いんですね」

 

「確かにヴィータはユーノの事が気になっとったけど」

 

「本当に来るんでしょうか?」

 

「あっヴィータ」

 

「「「「え」」」」

 

ソエルの言葉に見てみると、猫ヴィータがユーノの事をいろんな方向で見ていた。

 

「早っ」

 

「リイン、皆に連絡を」

 

「はいです!」

 

「本当に上手く行くとは……」

 

「確証なかったんだね」

 

するとヴィータがユーノに抱きついて木から落とした。

 

とりあえず近づいてみると……

 

「にゃん♪にゃんにゃん♪」

 

「うぐっ、ヴィータ……」

 

ヴィータがユーノの腹の上で丸まっていた。

 

「…………えっと……ヴィータちゃん?」

 

「何かこれ見たことあるぞ、確か何かの意思表示の」

 

「まっまあとにかく皆が来るまで、ヴィータを見張っておこうな」

 

「はい」

 

「あ、来たみたい」

 

次々と他のメンバーが集まって来た。

 

「ヴィータちゃん!」

 

「静かに……!また逃げちゃうわよ」

 

「アリシアちゃん、お願い……」

 

「了解〜……皆、行くよ〜……」

 

「「「「「おお……」」」」」

 

小さな掛け声を上げて、ヴィータを取り囲みがゆっくりと近づいく。

 

「にゃあ〜〜……!、フシャアアアアッ!」

 

「ぐふっ!」

 

ヴィータが異変に気付き、勢いよく飛び上がりユーノの腹を踏む。

 

「皆!」

 

「うん!」

 

「了解よ!」

 

全員が一斉にヴィータをバインドで拘束するもまだ暴れる。

 

「ヴィータ!大人しくしい!」

 

「本当にすごい力……!」

 

「待ってて、直ぐに……」

 

その瞬間、ヴィータがまた光り出し現れたのは……

 

「「「「「「「え……」」」」」」」

 

「「「「「…………………」」」」」

 

一部は思わず声が出て、一部は開いた口が塞がらなかった。なぜなら……

 

「フシャアアアアアッ!」

 

ポヨン!

 

今のヴィータはスタイル抜群の大人の女性の姿に変わっていたからだ。

 

「ヴィ、ヴィータちゃん⁉︎」

 

「レンヤ君!見ちゃダメ!」

 

「むぐっ!」

 

すずかに頭を掴まれ、胸元に引き寄せられた。

 

「コラすずか!どさくさに紛れて何やっているの!」

 

「そんなことより見て!」

 

ヴィータの様子がおかしくなっている。

 

「何が起こっている⁉︎」

 

「これは……グリードの気配!」

 

「まずいよ、ここで本体が顕現しちゃうよ!」

 

「リンス、住民の避難を!リインは管理局に連絡を!」

 

「分かった」

 

「はいです!」

 

はやては直ぐに指示を出してヴィータを見る。

 

するとヴィータから光りの玉が飛びでてくる、猫耳と尻尾がなくなったヴィータはそのまま倒れる。

 

「ヴィータ!」

 

「ヴィータちゃん!」

 

なのは達が駆け寄り、ヴィータに上着をかける。

 

「猫モードは治ったのに元に戻らへん」

 

「ここじゃあ碌な検査が出来ないわ、すぐに運びましょう」

 

「あっユーノ」

 

フェイトがユーノに気づき、拘束を外す。

 

「ぷはあ!酷いよ皆、僕に何の説明もしないで連れてくるなんて……」

 

「シグナム?」

 

「きっ緊急時だったゆえに……」

 

シグナムが顔を逸らし誤魔化す。

 

「見て、ご歓談中失礼だけど……」

 

「本命が来るよ!」

 

ヴィータから出て来た光りの玉が大きくなり……

 

シャアアアアアアッッ‼︎

 

巨大な灰色の毛色の猫又が現れた。

 

「ヴィータの中で力を溜めていたね!それでもA級、まだ勝機はあるよ!」

 

「なのは達はヴィータを連れて下がりなさい!」

 

「ここは私達に任せて!」

 

「でも……」

 

「早く行け!猫は気まぐれなんだぞ!」

 

「うっうん!分かった」

 

「気いつけてな!」

 

なのは達はヴィータとユーノを連れて下がっていった。アリシアが結界を張り、俺達は猫又と向き合う。

 

「さて、やるわよ」

 

「名前は………ヴィータに因んで鉄血の猫又(グラーフ・カッツェ)何てどう?」

 

「あっそれいいね」

 

「すずか、猫好きも今は自重して」

 

「むしろ攻撃できんのか?」

 

「うっ………」

 

ソエルとラーグに言われて、図星何か顔を引きつらせる。

 

「全く、すずかは後方支援。残りはいつも通りで……異界対策課、チームザナドゥ!これより巨大猫又を撃破する!油断するなよ!」

 

「「「了解!」」」

 

「ソエル!念のため、準備はしておけよ」

 

「うん、分かった」

 

「ちぇ、ソエルが最初かよ」

 

「そのうちラーグも暴れさせてやるから今は我慢しろ」

 

「了〜〜解」

 

俺達はグラーフ・カッツェに挑みかかった。

 

 


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