魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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54話

 

 

第162観測指定世界・定置観測基地 ーー

 

「発掘員の方は観測隊が無事に確保しました。退避警報が出た後も発掘物が心配だったそうで……」

 

僕は通信機を使いアースラに連絡を入れます。

 

「レンヤさ……神崎三等陸佐達、護送隊は妨害を避けて運搬中です」

 

『はい、了解。現場とアースラは直接通信が通らなくなってるからシャーリーとグリフィス君で管理管制をしっかりね!』

 

「「 はい!」」

 

その時シャーリーの端末に情報が入って来た。

 

「あっ……現場の方にヴィータさん達が到着した様です」

 

リミエッタ通信司令の指示を聞き返事をするとほぼ同時にシャーリーがヴィータさん達の到着を報せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしとシャマルはシグナムの報せを受けて現地に急行した。

 

「ひでえなこりゃ……完全に焼け野原だ」

 

確かにこれならシグナムがあたしとシャマルを呼び出すのも分かるな。

 

「かなりの広範囲に渡っているが、汚染物質の残留はない。典型的な魔力爆発だな、今リンスが周りを調べてくれている」

 

シグナムが現場を見渡し冷静に分析する。

 

「ここまでの話を総合すると、聖王教会からの報告・依頼を受けたクロノ提督がロストロギアの確保と護送を四人に要請。平和な任務と思ってたらロストロギアを狙って行動しているらしい機械兵器が現れて……こちらのロストロギアは謎の爆発……って流れで合ってる?」

 

『はいっ!合っています!』

 

これまでの経緯をシャマルが通信でシャリオに確認している。昔っからこういった事は参謀のシャマルの役目だったからな。

 

「聖王教会といえば主はやてのご友人の……」

 

「うん、多分騎士カリムからの依頼ね。クロノ提督ともお友達だし……何よりレンヤ君や私達とも深い繋がりがあるし」

 

(確かにな……)

 

あたしは焼け野原を眺めながらこれまでの経緯を思い出す。

 

「?……ヴィータ、どうかしたか?」

 

「ザフィーラ……別になんでもねーよ。相変わらずこーゆー焼け跡とか好きになれねーだけさ……」

 

大昔なら当たり前過ぎて気にもならなかった光景…でもはやてやなのは達……それにレンヤと出会ってからはより一層嫌いになった。

 

「戦いの跡は何時もこんな風景だったし……あんまり思い出したくねえ事も思い出すしさ……」

 

あたしは、4年前の……雪の中でなのはを庇い自分が血塗れになりながらも、あたし達を守ったレンヤ。睨まれた時のあの目、あいつと同じ色だが全く違う目で睨むレンヤの目はあれ以来見た事がない。なのはを医療班に預けた後すぐに戻ったら、そこには……

 

ポンッ……

 

「!」

 

昔を思い出していたあたしを肩を軽く叩かれた衝撃が現実に呼び戻した。

 

「ヴィータ、何を怖い顔をしている?リインやリンスが見たら心配するぞ?」

 

あたし達の将、シグナムが頭を撫でながらそう言って来た。

 

「うるせーな考え事だよ。後撫でんな」

 

右目の端を手で拭いながら言うと……

 

「ふむ…やはりユーノの様にはいかんな」

 

「バッ///ユーノは関係ねーだろ///!」

 

何処かからかいを含んだシグナムの言葉にあたしの頭の中からはすっかり熱くなり、思い起こされた記憶も引っ込む。

 

あの事件以降、落ち込んでいるあたしをよくユーノが励まし頭を撫でてくれた。

 

それが安心できて……ッて違う!

 

「そうか?なら今後はユーノに撫でられるのはやめるか?」

 

「そ、それとこれとは関係ねーよ///!」

 

「ふっ、そうだな、悪かった」

 

軽く微笑んだシグナムが謝罪してくる。

 

(昔のシグナムだったらこんな顔もしねえし…ここまであたしを気遣ったりもしなかったな)

 

はやてやレンヤ、なのは達の影響だな。今のもあたしを励ます為にしてくれたんだし……

 

「ありがと……シグナム」

 

あたしの小さな感謝の言葉にシグナムは片手を挙げて気にするなと言ってくれた。

 

ちょうどその時リンスが戻ってきた。

 

「来たか、この付近に不審な物は無かったが……どうかしたか?」

 

「ふふ、なんでもないわ。よし……調査魔法陣展開!アースラと無限書庫に転送してね、シャーリーちゃん」

 

『はいっ!』

 

状況を飲み込めず疑問に思うリンスと、それを微笑ましそうに見詰めていたシャマルが自分の作業を終える。

 

(ったく…みっともねぇ///)

 

あたしは内心嬉しさや恥ずかしさで一杯になり、それを誤魔化す様に空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

護送隊飛行ルートーー

 

俺達は順調に飛行しながら、幼いリインに軽く講義をする事になった。

 

「えーと……もう一度復習するです。AMFというのはフィールド防御の一種な訳ですよね?フィールド系というのは……」

 

羽根ペンと蒼天の書を片手にリインが習った事をお浚いする。っていうか蒼天の書ってメモにも使えるんだな、結構便利?

 

「基本魔法防御四種の内の一つだね。状況に応じて使い分けたり組み合わせたり…私達のバリアジャケットやリインの騎士服もバリアやフィールドを複合発生させてるんだよ?」

 

ツインテールを風に多靡かせたなのはが左手にリインを乗せて説明する。

 

「因みにその四種は素材強度で防ぐ物理装甲、攻撃を防御膜で相殺し柔らかく受け止めるバリア系、攻撃と相反する魔力で固く弾く・反らすシールド系、範囲内で発生する特定効果の発生を阻害するフィールド系の四種だ。AMFはフィールド系に当たって、フィールド系ではかなり上位に入る」

 

俺の説明をリインは熱心にメモしていく。

 

「魔力攻撃オンリーのミッド式魔導師は咄嗟には手も足も出ないだろうね」

 

「ベルカ式でも並の使い手なら威力増強は魔力に頼ってる部分が多いし……只の刃物やとアレを潰すんはキツいよー……まぁ、レンヤ君みたいな例外もおるけどな~」

 

「実力もそうだけど……」

 

「レンヤには神衣があるからな」

 

フェイトの言葉にはやてが補足するが、俺をチラ見してそう付け足した。確かにただの剣技だけで斬れなくもない。神衣もなぜかAMFの影響を受けない、レアスキルだからかな?

 

「はえ~凄いですぅ……でもなのはさんやフェイトさんも簡単に……こうどかーんって!」

 

説明を聞いてたリインが俺を尊敬の眼差しで見ていたが、なのはとフェイトも簡単に破壊してた事を思い出して両手を上に広げながら二人の凄さを現すが。

 

「それは距離があったし……向こうのフィールドが狭かったからね」

 

「最初になのはやフェイトがやった手は術者がフィールドの外に居る事が絶対条件だ。囲まれたりしてフィールド内に閉じ込められたら結構ピンチだ。AMF範囲内で魔法を発動するのは結構厳しいんだ」

 

「飛行や基礎防御もかなり妨害されちゃうし……やり方はあるけど高等技術。リインなんかは気をつけないと大変だよ?」

 

「?はうぁっ!そーです!リインは魔法がないと何にもできないです~」

 

フェイトの言葉に涙目になり狼狽えるリイン。

 

確かに普段のリインの移動法は浮遊魔法だからな。

 

「まぁ…いい機会だから、その辺の対処と対策も教えるか」

 

「そうだね?」

 

「はいです!」

 

リインは俺となのはの言葉に敬礼しつつ答える。

 

「すみません教官、うちの子をお願いします~」

 

「ああ、了解された………なのはが」

 

「私⁉︎」

 

「頑張〜」

 

「レンヤも教導官の資格を取れば?」

 

はやてがにこやかに頼んで、俺はなのはに丸投げする。

 

そんな会話をしながら飛行を続け、俺達は目的地を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、シグナム?一緒の任務……ってか、任務自体久しぶりだな?」

 

「そうだな、霧の魔女事件以来だからな。普段はみな担当部署が離れてしまったからな」

 

ふと思い出したあたしの言葉にシグナムは頷きつつ答える。

 

「あたしとシャマルは本局付きでシグナムとリンスはミッドの地上部隊。ザフィーラはもっぱらはやてかシャマルのボディーガード。ま、家に帰れば顔を合わせるしあんま関係ねーけどな」

 

「緊急任務がない限り、殆んど一緒だしな」

 

「しかしまだまだ三年以上地球に居んだよな……」

 

「そうだが…何か心配事か?」

 

「ああ、海鳴のじーちゃんとばーちゃんともゲートボール続けんかんな……変身魔法でも使わねーと会えねーなと思ってよ。育たねえから心配される、年齢だけならじーちゃん達より年上なんだけどな……」

 

まぁ、あたしとしては楽しみだし……嬉しい悩みだな。

 

「違いない」

 

「あらー、じゃあ私がちゃんと調整して可愛く育った外見に変身させてあげる♪」

 

「……いい、自分でやる」

 

あたし達の話を聞いていたシャマルが言ってきたがキッパリと断わる。こういう時のシャマルのノリは碌な事がねーかんな。

 

そう言えば、前にゲートボールをした時に後ろから頭に思いっきり何がぶつかって来たな。怒って振り向いたが誰もいなく、じーちゃん達に聞いたら影がぶつかって消えたって言っていし、ザフィーラが言うには猫がぶつかったとしか言っていなかったし、本当に何だったんだ?

 

「私達は当分は服装や髪型程度で誤魔化せるだろうな」

 

「ザフィーラはいいよな、犬だから」

 

「……狼だ……!」

 

あたし等が会話しているとザフィーラが突然空を見上げる。

 

「ザフィーラ?どーした?」

 

「森が動いた。座標を伝える、シャマル調べてくれ」

 

「分かったわ!」

 

ザフィーラの報告にシャマルが観測基地と協力して調べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちら観測基地!先程と同系と思われる機械兵器を確認!地上付近で低空飛行しながら北西に移動中。高々度飛行能力があるかどうかは不明ですが』

 

『護送隊の進行方向に向かってる様です!狙いは……やはりロストロギアなのではないでしょうか』

 

シャリオとグリフィスからの報告を聞き私とシャマルで作戦を練る。

 

「そう考えるのが妥当だな。主はやてとテスタロッサになのは……更にはレンヤの四人が揃って機械兵器如きに不覚を取る事は万に……いや、億に一つもないだろうが……」

 

「運んでる物がアレだものね……こっちで叩きましょう」

 

「リインもいる、すぐに向かおう」

 

「ああ……ん?」

 

私とシャマルで作戦を決めるが……先程の様に鋭い目つきをしたヴィータに気がつく、やれやれ…

 

ぱんっ!

 

「観測基地!守護騎士から2名出撃する!シグナムとヴィータが迎え撃つ!」

 

私はヴィータの背中を叩きながら通信で告げる。

 

「あに勝手に決めてんだよ」

 

「なんだ……将の決定に不服があるのか?」

 

「……ねーけど」

 

「こっちは3人で大丈夫♪」

 

「危機あらば駆けつける」

 

「主はやてを頼むぞ、将よ」

 

「守るべき者を守るのが騎士だ。行くぞ、その務めを果たしに!」

 

「しゃーねぇーなっ!」

 

にこやかな表情のシャマルと無表情だが頼りになるザフィーラと真剣な表情のリンスと私の言葉を聞きヴィータも了承する。

 

「主はやて、シグナムです。邪魔者は地上付近で我々が撃墜します。テスタロッサ手出しは無用だぞ?」

 

『はい……分かってます、シグナム』

 

「なのは!おめーもだぞ!」

 

『はぁい!片手塞がってるしからねー』

 

主はやてへの報告を終えた後……私とヴィータはなのはとテスタロッサに釘を差す。

 

『2人共おーきにな……気ぃつけてー』

 

「はい」

 

「うん」

 

『シャマルとザフィーラとリンスも気を付けろよ』

 

『怪我しないでね!』

 

『サッサと決めてこいよ』

 

「ありがとう、レンヤ君」

 

「問題ない」

 

「気遣い感謝する」

 

『シグナム…AMFの話は聞いてると思うけど気をつけて下さいね!』

 

心配した調子のフェイトがそう言うが……

 

「テスタロッサ……貴様誰に物を言ってる?己が信ずる武器を手にあらゆる害悪を貫き敵を打ち砕くのがベルカの騎士だ」

 

「おめーらみてーにゴチャゴチャやんねーでもストレートにブッ叩くだけでブチ抜けんだよ!リインもあたしの活躍しっかり見てろよー」

 

『はいです、ヴィータちゃん!』

 

ヴィータの言葉にリインは可愛らしく敬礼して答える。

 

「出撃!」

 

「おうっ!」

 

ドドンッ!

 

私とヴィータは同時に飛翔し機械兵器の所に向かう。

 

『機械兵器移動ルート変わらず』

 

『あまり賢くはない様ですね。特定の反応を追尾して攻撃範囲に居るモノを攻撃するのみの様です』

 

『ですが対航空戦能力は未確認です。お気をつけて!』

 

「アンノウンなのは何時もの事だ。問題ない」

 

私とヴィータは空中に浮きながら機械兵器を待ち構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あの日のアレも未確認だったな。あたしもアイツも何時も通りの筈だった……問題なんて何もない筈だった。誰もが認める新鋭のエースが何時も通りに笑ってたから。だから気づかなかった……一緒に出撃してた、あたしは誰より早く気づかなきゃいけなかったのに……)

 

あたしは考えながら左手で鉄球を取り出す。

 

あの光景が頭に浮かんでくる、辺り一面凍りつかせて、その中心に血すらも凍りつかせ倒れているレンヤを……

 

【ヴィータ……ちゃん………レン君は……?】

 

最初に目が覚めたなのはは涙を流して自分の想いや命より……真っ先に他人を心配する様なお人好し……

 

(あんなのは……あんな思いは、もう二度と……ましてや、それをレンヤやはやて、やなのは達に味合わせない為にも!)

 

「纏めてブッ潰すッ!」

 

ガァンッ!ガァンッ!

 

あたしはハンマーで鉄球を打ち出す!

 

ギュラァッ!

 

更にシグナムの連結刃が躍り機械兵器に襲い掛かる!

 

「「おおおおおお‼」」

 

ドオンッ‼

 

気合いの咆哮を上げながらあたし等は間合いを詰め、機械兵器を粉砕していく!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アースラーー

 

「シグナムとヴィータはやっぱり凄いね。未確認でもモノともしない」

 

僕とエイミィはモニターに映し出された二人の戦闘映像を見ていた。

 

「合流地点までもう直ぐだし……そろそろアースラも回収の準備をしとこうか……どしたの、クロノ君?難しい顔して?」

 

「……ああ、この後の事を考えてた」

 

「後?」

 

疑問を投げ掛けてきたエイミィに僕は自分の考えを話す。

 

「って事だ……そういった事件に成ると管理局でも対応できる部隊はどれくらいあるか、人や機材が揃ったとして動き出せるまでどれぐらい掛かるのか、そんな状況を想像すると苦い顔にも成るさ……」

 

「なるほど……指揮官の頭の痛いとこだね」

 

「はやても指揮官研修の最中だし、レンヤは中隊の指揮官の資格を持っているからな……一緒に頭を悩ませる事になる」

 

その時フィニーノ通信士から通信が入って来た。

 

『シグナムさんとヴィータさん未確認撃破!護送隊と合流です!』

 

どうやら僕達が話してる間に殲滅し終えたみたいだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分前ーー

 

「シグナム達は大丈夫そやね」

 

「うん、そうだね」

 

俺達は2人の戦闘映像が映し出された小型モニターを見ながら飛行を続けている。

 

「シグナムもヴィータちゃんもかっこいーです!」

 

リインが2人の活躍ぶりを見ながら喝采を上げる。

 

「そうだね、ヴィータちゃん張り切っていたし」

 

なのははリインの言葉に同意する、そんな中……

 

「はやて、レンヤ……特別捜査官としてはどう見る?今回の事」

 

「んん?あのサイズのAMF発生兵器が多数存在してるゆーんが一番怖いなー。今回この世界に出現してるんが全部であって欲しいけど…そうでないなら規模の大きな事件に発展する可能性もある。特に量産が可能だったりするとなー……レンヤ君はどない思う?」

 

「そうだな……あの機械兵器がロストロギアを狙う様に設定されていたって事は背後に個人ないし組織的なのが居ると考えて然るべきだ。大方、ロストロギアを狙う犯罪者だろうかな。4年前の機械兵器にも搭載されていたのと同じだろう」

 

その言葉になのはは顔を暗くする。

 

「気にしてないよ、そう落ち込むな」

 

「うん、ありがとうレン君」

 

「そう……技術者型の広域犯罪者は一番危険だから……」

 

俺とはやての言葉にフェイトは真剣な表情で同意する。どうやらフェイトには思う所があるみたいだな。気持ちは分かるがな。

 

「ん?皆、転送ポートに着いたよ?」

 

「やっとか」

 

「シグナム達ももう直ぐ到着みたいです~」

 

「そうか、難しい話はこれぐらいにするか。着陸するぞ」

 

「「「了解!」」」

 

ソエルとリインに目的地に着いた事を知らされ、俺達は話を打ち切り地上へと降り立たったち、軌道転送ポートに到着する。

 

それから少しするとシグナム達もやって来て合流する。

 

「ヴィータちゃん~!」

 

「うわっ!だ、抱き付くなよ!」

 

「無事でしたかシグナム?」

 

「うむ、他愛ない相手だったからな」

 

「これで任務完了やな~」

 

「ふふ、お疲れ様です」

 

「ああ、皆もお疲れ様だ」

 

「お疲れ様ですぅ」

 

なのは達は互いに労いの言葉を掛け合う。

 

「さて、こちら護送隊全員無事に転送ポートに到着。転送処理を頼みます」

 

『こちらアースラ、転送了解!観測基地の2人もナビとサポートご苦労様、そちらの任務は無事完了!』

 

『『ありがとうございます』』

 

俺の報告を聞いたエイミィさんが転送処理をしながら、観測基地の2人に労いと任務終了の言葉を掛ける。

 

『さて、転送処理開始!食事の準備してあるからねー、最後まで気を抜かず戻ってきて!』

 

「了解です」

 

「はぁいっ!」

 

「お願いします」

 

転送ポートが開き、光に包まれた俺達はアースラに転送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アースラ、ブリッジーー

 

「護送隊とレリック、先程本艦に収容しました。残念ながら爆発点からはレリックやその残骸は発見できませんでしたが……」

 

アースラブリッジで僕は騎士カリムに任務の概要を報告をしていた

 

『お気になさらず、クロノ提督。事後調査は聖王教会でも致しますので』

 

「確保したレリックは厳重封印の上で自分が本局の研究施設まで運びます」

 

『ああ、その件なんですが…こちらから一人警護員をお送りしました。ご迷惑でなければご一緒に運んで戴ければ』

 

「ああ……はい……」

 

僕は騎士カリムの言葉に疑問を感じながらもブリッジを出てその警護員の居る応接室に向かった。

 

「クロノ君!」

 

室内に入ると長髪にスーツを纏った美形の男が気軽に片手を挙げて僕の名を呼ぶ。

 

「ヴェロッサ!君だったのか」

 

「久しぶりだね、先の調査行以来だ」

 

「ああ、元気そうで何よりだ」

 

僕達は握手を交わしながら挨拶し改めて座る。

 

「今日はどうした?義姉君のお手伝いか?」

 

「うん、カリムが君達を心配してたからっていうのもあるんだけど…本音を言えば面倒で退屈な査察任務より、気の合う友人と一緒の仕事の方が良いなってね?」

 

「相変わらずだな君は。こうしていると局でも名の通ったやり手とは思えないから返って怖いな」

 

「こっちが素なんだけどねえ」

 

このヴェロッサと義姉君の騎士カリムそれにはやて、更にはレンヤを加え、例外を抜いた4人は局内でも貴重な古代ベルカ式の継承者で有用なレアスキル保持者。その上それぞれの職務でも優秀な存在だ。

 

「確かにカリムは優秀だしはやては色々凄い子で……レンヤ君に至っては規格外だけど僕は別にさ」

 

「謙遜を。ともあれ君が警護に着いてくれるなら心強い、出る前にはやてにも声を掛けるか?」

 

「ああ、大丈夫だよ。お土産は届けてあるし」

 

「?」

 

疑問に思いながらも、ヴェロッサと研究施設に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アースラ・レクリエーションルームーー

 

「おお~、凄いですねえ!」

 

「肉がある!」

 

「こんなに用意されたんですか?」

 

テーブルの上に並べられていた数々の料理を見たエイミィさんとアルフが歓声を上げる。

 

「半分はアコース君からの差し入れよ。任務を終えたエースたちに……ですって」

 

ユーノの疑問に髪を首元で結んだリンディが答える。

 

「艦長……じゃない、リンディさんもすみません」

 

「ふふ、いいのよ。私も艦を降りてからは平穏な内勤職員だもん。ルナや子ども達お世話して上げたいしね?クライドも執務官の資格を改めて取ったし安心きるわ」

 

そうこうしていると……

 

「ただいま戻りました~♪」

 

扉が開き、制服に着替えたはやてを筆頭になのは達も続いて入っていく。

 

俺は先に着替え終わってここに来た。

 

「おかえり!」

 

「お疲れー!」

 

「フェイト♪」

 

そんな俺達を温かく迎えるリンディさん、エイミィさんとフェイトに駆け寄るアルフ。

 

「おお!なんだこの食事の量!」

 

「凄いわね~」

 

「この辺はアコース君からよ」

 

数々の料理を見て驚くヴィータとシャマルにリンディさんが説明する。

 

「ヴェロッサ来てるんですか?」

 

「クロノ君と一緒に本局まで護送だって」

 

その説明を聞いた俺の疑問にエイミィさんが答えてくれた。そうか、ヴェロッサが来ているのか。恐らくカリムが寄越した警護員って所だな。

 

「お疲れ様です、母さん」

 

「ええ、お疲れ様フェイト」

 

フェイトはアルフの頭を撫でながらプレシアさんと会話を交わしている。

 

「ユーノ君も久しぶり!」

 

「うん、なのは!」

 

「ロッサもクロノ君と一緒なら会いに行ってもお邪魔かなぁ?」

 

「あの二人仲良しさんですものね?」

 

「そうだね~……っとクロノ君とアコース査察官転送室から無事出立!という訳で……みんなは安心して食事を楽しんでねー!」

 

「「「はーーいっ!」 」」

 

エイミィさんの報告に各自コップや皿を取り飲み物をついだり料理を取り分ける。

 

「肉~~~!」

 

早速肉にかぶりつくアルフ。その表情は至福と言い表せるぐらい緩んでる。

 

「アルフ、もっとお行儀よくしなさい!小さくなって頭まで小さくなったのですか!」

 

「ごっごめーん、リニス〜〜!」

 

「あはは、3人共お疲れ」

 

「「「お疲れ~♪」」」

 

俺となのは達が乾杯し、そのまま4人で話していると。

 

「カズキさん、なのはさんお疲れ様です!」

 

「お疲れ様だよ」

 

「ああ、リイン、ソエルお疲れ」

 

「お疲れ様、リイン、ソエルちゃん」

 

リインとソエルが近寄って来た。

 

「えーと、それでですね…またちょっと教わりたい事があるです!」

 

「いいよー、なぁに?」

 

「なのはさんが所属されてる戦技教導隊って、よく考えたらリインは漠然としか知らないんですが…やっぱり教官さん達の部隊なんですよね?」

 

「ん~……一般のイメージでの教官は教育隊の方かな?」

 

リインの質問に丁寧に答えるなのは。まとめると……魔導師専用の新型装備や戦闘技術をテストしたり、最先端の戦闘技術を作り出し研究したり、訓練部隊の仮想敵としての演習相手、そして……

 

「預かった部隊相手に短期集中での技能訓練…これが一番教官っぽいかな?因みに私はこれが好き」

 

「要はアレだ……戦時のエースが戦争のない時に就く仕事だ。技術を腐らせず有用に使う為にな」

 

「うーん……まあそんな感じではあるんですが…」

 

「烈火の将……それでは身も蓋もないぞ」

 

質実剛健のシグナムらしい物言いに苦笑いを浮かべるなのはとリンス。まぁ俺もそんなイメージがあるな。

 

「でも、うちの航空教導隊にも色んな年齢や経歴の人が居るんですけど……みんな飛ぶのが好きなんですよね」

 

「それは……なのはらしいな」

 

「うん!空を飛ぶのが好きで一緒に飛ぶ人や帰り着く地上が好きで…だから自分の技術や力で自分の好きな空と地上を守りたいって……そういう思いはみんな一緒なの」

 

「なのはがずっと憧れてた夢の舞台だものね?」

 

嬉しそうに語るなのはを見てフェイトが微笑ましそうに言う。

 

「うん、2番目の夢だよ!」

 

「2番目?なら1番の夢はなんなんだ?」

 

「そっそれは……秘密///」

 

ラーグの疑問に顔を赤らめながら誤魔化す。

 

「まさか……なのは」

 

「それは言えへんな」

 

なのはの言葉にフェイトとはやてが何かを理解する。

 

「流石レンヤ、モテモテだね?」

 

「えっなんで?」

 

「よく考えれば自ずと答えは出る、焦るな」

 

「ええと……サンキュー、ザフィーラ」

 

俺達男性陣は少し離れて会話していた。

 

「そっそういえばフェイトちゃん!あの子達の写真持ってきてる?」

 

空気を変える為になのはがフェイトに話を振る。

 

「あの子達?」

 

「ほらアレよ、フェイトちゃんが仕事先で出会った子供達」

 

「執務官の仕事で地上とか別世界に行った時にね。事件に巻き込まれちゃった人とか保護が必要な子供とか……」

 

フェイトが待機状態のバルディッシュを取り出し空中にディスプレイを出現させる。そこには笑顔で写った数々の子ども達の写真が表示されている。

 

「保護や救助をした後お手紙くれたりする事があるの。特に子どもだと懐いてくれたりして……」

 

「フェイトちゃん子供に好かれるもんねー?」

 

なのはの言う通り確かにフェイトは子どもに好かれ易いよな。

 

「あー!エリオ暫らく見ない内に大きくなったなー♪」

 

「あーこいつもその手の子供か……エリオ・モンディアル6歳祝い?」

 

はやての言葉にヴィータも同じ写真を見ながら呟く様に読み上げる。

 

「うん、色々な事情があってちょっと前から私が保護者って事に成ってるの。法的後見人はうちの母さん。レンヤにも一度会いたがってたよ?」

 

「なら暇な時に会いに行ってみるか」

 

「私も行く〜〜」

 

フェイトとそのうちエリオと会いに行くことにした。

 

「フェイトちゃんが専門のロストロギアの私的利用とか違法研究の捜査とかだと子供が巻き込まれてる事多いからなー」

 

「うん、悲しい事なんだけどね。特に強い魔力や先天技能のある子供は……」

 

フェイトとはやてが寂しそうな表情で言う。

 

「だが、フェイトはそれを救って回っているんだろう?」

 

「そーだよ!」

 

「子供が自由に未来(ゆめ)を見られない世界は大人も寂しいからね」

 

「そういう意味ではお前は執務官になれて良かったのだろうな。試験に二度も落ちた時はもう駄目かと思ったが」

 

「あぅ///!シグナム!貴女はそうやってことあるごとに……写真見せてあげませんよ!」

 

「しっ試験の時期に私が色々心配掛けたりしました。」

 

「俺も、心配をかけたな」

 

シグナムにからかわれ頬を赤らめながら反論するフェイトとフォローするなのはと俺。

 

「その点はやてさんと異界対策課の皆さんは凄いわよね?」

 

「はやてちゃんは上級キャリア試験一発合格!レンヤ君も同じく上級キャリア試験一発合格に聖王教会の執務官試験も合格!他の皆も一発合格、本当に凄いよ!」

 

「ふぇ……私はそのタイミングとか色々運が良かっただけですからーレアスキル持ちの特例措置もありましたし///」

 

2人の言葉にはやては顔を赤らめながらフェイトを気遣い謙遜する。

 

執務官試験はともかく、上級キャリア試験は無理やり取らされたんだけど、それはあえて言わないでおく。

 

「あ~……凄い勉強してましたもんね?」

 

「あの時から試験と聞くともう心配で心配で」

 

なのはの言葉にシャマルは溜め息を吐きつつ言う。どうやらその時期は俺も含めて誰もが気が気じゃなかったみたいだな。

 

「いいもん…どうせ私なんて……」

 

フェイトに漫画で見る様な縦線が見える、取り敢えずフォローを入れておくか。

 

「レアスキル保有者とかスタンドアロンで優秀な魔導師は結局便利アイテム扱いやからなー。適材が適所に配置されるとは限らへん」

 

はやてが椅子に座りながら溜め息混じりに言う。

 

「はやてとヴォルケンズの悩み所だなー」

 

「でもはやてちゃん部隊指揮官に成りたいんだよね?」

 

「その為の研修も受けてるじゃない」

 

なのはとなんとか復活したフェイトがはやてに言う。

 

「準備と計画はしてるんやけどなー。まだ当分は学生兼特別捜査官や」

 

「最近は減ったけど、はやてちゃん……色んな場所に呼ばれてたからお友達とかできづらいのがねー」

 

かつてのはやての現状を思い心配そうにするシャマル。

 

「いや、友達は別に…もー充分恵まれてるし」

 

「でも経験や経歴を積んだり人脈作りができるのは良い事ですよね?」

 

「まあ確かに」

 

「コッチの人脈は半端なくデカイがな」

 

市民と1番近い管理局員だからな、異界対策課。

 

「確かにね、それにレンヤは確か中隊指揮官の資格があってよね」

 

「でもはやては大隊でしょ、レンヤより大変だよ」

 

「大丈夫だろ、はやてなら」

 

「そうだね、それに高校を卒業したら大変だろうね~」

 

「でも自分達で選んだ道だしね?」

 

「せやな……あ!そや、3人共ゴールデンウイークの連休!」

 

軽くそれぞれの将来を話しているとはやてが思い出した様に言う。ああ、そんな話があったっけ。

 

「はやてちゃんの研修先近くの温泉地だよね?」

 

「今回任務を受けたから……暫らくはお休みの申請取れたよ!」

 

「ホテルはも取ってあるからな~。アリサちゃん、すずかちゃん、アリシアちゃんも来れるみたいやし」

 

「レン君も行くんだよね!」

 

「行くも何も、はやての研修先って陸士104部隊だろ?」

 

「前に会ったよね?」

 

「あ、あはは〜そうやった……」

 

「まあ大丈夫だ、部隊を定休日にしておくさ」

 

「えっできるの?」

 

「レンヤは部隊長だしもうそれなりの権限を持っているから余裕だろ」

 

「いいのかな……」

 

「異界も最近大人しいし、大丈夫だろう」

 

となるとメンバーは俺、なのは、フェイト、はやて、アリサ、すずか、アリシア、リイン、ソエル、ラーグの8人と2モコナか。結構多いな。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

「留守は任せて下さい♪」

 

今回は小旅行だからそんなに大所帯では行けないからな、他のメンバーは留守番だ。部屋も取れなかったみたいだし。

 

「よろしくな~」

 

「楽しみだね!」

 

「レン君も楽しもうね!」

 

「久しぶりの休みだからな」

 

「それじゃあ日程を纏めとくね〜〜」

 

「ああ、そうだな」

 

「はいですぅ♪」

 

俺達は来る日に向けての話し合いを始める。これからもこんな大変だが楽しい日々が続くんだろうな。

 

 


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