魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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49話

「さて、この辺りのはずだが……」

 

「もう少し奥じゃないの?」

 

俺とアリサは本部の要請により、この無人世界にある違法研究所に向かっている。 そこの潜入捜査をし、犯罪者やその関係者を逮捕するためだ。

 

なぜ本部の要請を地上で受けなければならない、とレジアス中将も怒っていたがオーリスさんとゼストさんが抑えてくれた。

 

実際なぜ俺達が受ける事になったのは、俺達より自由に動ける部隊がないからだ。異界対策課は異界限定の独立部隊だったが、これまでの実績によりさらに自由に動けるようになったのだ。いや、やっぱりなってしまったの方が正確だ。無駄にまた働かせているのだから。

 

それにこの前全員、魔導師ランクS取得をさせられた。何だか上がり過ぎなきがするし、俺にはSSランク取得の誘いも来ていた。面倒だからやらないけど、勝手に取られそうで怖い。

 

飛行魔法を使うと魔力と目視で気付かれるから、地上で向かっている途中……

 

「アリサは最近どうだ? 新しく異界対策課に入れられそうな人材は見つかったか?」

 

「全くよ。 でも講義に受けくる訓練生もいるから、そのうち出てくるかもね」

 

「だといいんだが……そうだ! そのうち異界探索ツアーをやるのはどうだ! 異界を実際に見たら何か変わるかも!」

 

「そうね……確かに脅威度の低い異界ならできそうだけど。 やっぱり人手が足りないと連れて行ける人数にも限界があるし……」

 

「それも……そうか」

 

話しながら足を止めずに進む、それだけの余裕と体力はあった。しばらくして……

 

「どうやらアレのようだな」

 

「ええ、そうね」

 

森の中に隠れるように例の研究所を見つけた。

 

「思ったより小さいのね」

 

「地下に伸びているんだろう、似たような物も見たし」

 

「そう、見張りもいないし監視カメラを設置しているわね。どうやって侵入する?」

 

「もちろん下から」

 

俺は地の神器を取り出し、纏う。

 

「ハクディム=ユーバ!」

 

出てきたアームを指を出し地面に刺し、魔法陣を展開して穴を開ける。

 

「行こうか」

 

「ええ」

 

穴を通り抜け、研究所の真下の手前に来て壁の向こうを確認する。

 

「空き部屋のようだな、行くぞ」

 

壁を静かに壊し、中に入る。穴は適当な物を立てて壁を作り塞ぐ。

 

「ここからどうするの?」

 

「そうだな………」

 

その時、扉の向こうから話し声が聞こえた。

 

「アリサ、上だ」

 

「分かったわ」

 

俺達は静かに天井の隅に張り付き隠れる、そしてすぐに入ってきた。男2人だ。

 

「おい、ここにあるのか?」

 

「ここに忘れてきたんだよ」

 

2人は奥に入り、本棚から何かを探している。

 

「……………………」

 

俺は静かに降りて、アームを伸ばし……

 

「ぐっ⁉︎」

 

「むぐっ⁉︎」

 

人差し指で口を塞ぎ、残りの指で掴みそのまま苦悶の声を隠しながら気絶させる。

 

「よし結果オーライだ」

 

「服を拝借しましょう、すぐにバレると思うけど無いよりましでしょう」

 

しかし、このままではサイズが合わなくてダボダボになってしまう。 それを解決する為に……以前使った変身魔法で大人になる事で解決した。 そして男達から服を脱がし、拘束して穴の中に入れる。脱がすと言っても白衣だけだが。

 

「…………? 何よ?」

 

「い、いや……なんでもない……」

 

「? それにしても……なんか臭うわね、この白衣……」

 

いつも白衣を着ているすずかで見慣れている筈だが、アリサが着ると新鮮に感じて少し見惚れてしまった。

 

「行きましょう」

 

「了解だ、とその前に……」

 

男がいた本棚をあさると……1つの記録端末が出てきた。

 

「何かの手がかりになるな」

 

その端末をしまい、怪しまれぬよう……あまり周りを見回さず部屋を出て廊下を歩いていく。 普通の女の子なら身体が強張って動けなくなる事が多いが、流石はアリサであって堂々としている。

 

誰にも会わず進んでいくと……突き当たりに端末室があり、俺達はそこに入った。 中にはそれなりに人がいるが全員端末を見ているのでバレることはなかった。

 

研究員が少ない場所を選び、端末を起動させパスワードはすずか特製のハッキングシステムによって解除した。 表示された情報を見ながら証拠としてデータを集める。

 

「これは……」

 

「なるほどね……」

 

ここは人体実験や合成魔獣の類の研究所ではなく、とある場所で発見されたデバイスをサンプルとして様々な実験を行い、その結果を元に新たなデバイスを非合法に生産すると言う内容だった。しかもそのデバイスが普通のデバイスではなくユニゾンデバイス……複製品ではなく純正のオリジナル、古代ベルカ式のものだと言う事だ。

 

「内容が変わってもやる事は一緒か……」

 

「イライラするわね」

 

「それよりもこの記録端末を見てよう」

 

入手した端末を差し込み、記録を見る。

 

「どうやらさっきのユニゾンデバイスの記録データだな、識別個体名は【烈火の剣精】か」

 

「場所もわかったわ、この研究所の地図も手に入れたし早速行きましょう」

 

端末室を出て、烈火の剣精がいると思われる研究室に向かう。

 

「ここね、部屋には絶対に人がいるとして、魔力を感じないから全員非魔導師ね」

 

「それなら余裕かな、それと入る為には認証が必要だけど。これなら……」

 

奪ったカードを使い、扉を開ける。

 

「何時でも動けるようにしとけ」

 

「ええ」

 

中に入ると薄暗く、大きなディスプレイに赤い髪をした少女が映っていた。彼女が古代ベルカ式のユニゾンデバイス、烈火の剣精。 その時、研究員の1人が近づいて来た。

 

「おおようやく持ってきたか、早く記録データをよこせ」

 

端末を見ながら手を出しているためこちらの顔を見てないが、どうやら先ほどの男性2人と勘違いしているようだ。 それを聞き、アリサと目を合わせて頷く。

 

「ん?……お前はーー」

 

言い終わる前に俺は白衣を脱ぎ捨てる。 遅れてアリサも脱ぎ捨てようとするが……ボタンが引っかかっていて脱げてなかった。

 

「お、おい……」

 

「フンッ!」

 

どことなく閉まらない感じはしたが……結局気合いで引っ張って脱ぎ、ボタンが引き千切られて宙に舞い、床に飛び散る。

 

「時空管理局だ‼︎ 全員無駄な抵抗はせず大人しく投降しろ‼︎」

 

誤魔化すようにデバイスを起動させ、バリアジャケットを纏う。

 

「馬鹿な⁉︎ 何故管理局がこの世界に⁉︎」

 

「情報が漏れる事などあり得なかったはずだ!」

 

「に、逃げろーー!」

 

研究員が逃げようとするも、アリサが出口を塞ぎ研究員を拘束する。

 

「ごめんなさいね、ここは通行止めよ」

 

「くっ!コイツら異界対策課か!」

 

警報を鳴らされる前に全員を拘束した。やはり非魔導師しかおらず簡単に終わった。

 

「よし、俺はこいつらを見張っている。アリサは烈火の剣精を」

 

「わかったわ、そこのアンタ。さっさとユニゾンデバイスの居場所を吐きなさい」

 

ゆっくり壁を焼き切りながら魔力刃を首に近づけ脅すアリサ。

 

「ひいいいい!廊下を出て右に行って奥の部屋だ!」

 

「本当に?」

 

さらに首筋に近づける。 首筋に浅く切り込みが入り、血が垂れる。

 

「ぎゃあああ!? ほ、本当だ‼︎本当に本当だ! 女神に誓ってもいい‼︎」

 

「フン!」

 

それを聞くと……鳩尾に蹴りを入れ、部屋を出て行った。

 

「えーと、ご愁傷様で」

 

俺はへたれ混んでいる研究員はそう言うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は廊下を走り奥に進んで行く。

 

『……か……………て……』

 

「ん?」

 

進行方向から弱々しい念話が聞こえてきた。

 

『だ……か……た……………て……』

 

奥に進むにつれて、ハッキリ聞こえてくる。

 

『だれ……か……たす……け……て……』

 

ハッキリと理解すると走る速度を一気に上げた、やがて廊下の最奥にこれまでとは違う重厚な扉が目に入る。

 

念話もこの奥から発せられている、この扉の向こうに……

 

「フレイムアイズ!」

 

《ロードカートリッジ》

 

「スカーレット……ブレイク!」

 

炎を魔力刃に圧縮し纏わせ、扉を容易く斬り裂き室内に足を踏み入れる。

 

大きな部屋にはいくつもの細かいコードが散乱していて、その先端が全て1つの小さな人影らしきものまで伸びていて繋がれいた。

 

「見つけたわ」

 

近づいて見ると、リインサイズの女の子だ。顔は俯き気味で瞳は虚ろ、呼吸も弱々しかった。幾度な実験で肉体、精神的にも疲労しきっているのが一目で解る。

 

「イライラするわね」

 

そう呟き、コードを斬り裂き拘束している錠を外すと倒れてきたので受け止める。私は治癒魔法が使えない、早くレンヤの元に行かないと。

 

しっかり抱きかかえ、来た道を引き返す。

 

その時、烈火の剣精はアリサの持っている燃え盛るフレイムアイズを目にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく研究員を尋問しながらアリサが戻って来るのを待っている。

 

「ふわああ〜〜はーい次、正直に言わないと頭ぶち抜くよ〜」

 

「ひいいいい!」

 

尋問のやり方なんて分からないから、とりあえず脅してやっている。

 

「ーーーレンヤ!」

 

ちょうどその時、アリサがリインサイズの女の子を抱えて戻って来た。

 

「レンヤは治癒魔法を使えるね、早く治して!」

 

「分かったから落ち着け、すぐに治癒する」

 

女の子に治癒魔法を施し、外傷を治していく。終わる頃には呼吸も安定して来た。

 

「よし、それじゃあコイツらをーーー」

 

言い終わる前に警報が鳴り始めた。

 

「悠長に言っている暇わないな。アリサ、ハッキングの方はどうだ?」

 

「問題なく作動しているわ、これで外に出られないし、中に入ってこれない。転移魔法も使えないわ」

 

「了解、全員拘束するぞ!」

 

それから研究所を駆け回り、研究員を拘束していった。

 

「おかしいな、魔導師が1人もいないなんて」

 

「そうね、アンタ何か知っている?」

 

拘束した研究員に聞いてみた。

 

「いっ今は全員別の場所に出動している!」

 

「なぜ?」

 

「ひいっ!詳しくは知らないが無償で魔導師を強化をしてくれると言う事しか……」

 

「どうやらそいつが黒幕だな」

 

「そうらしいわね」

 

その時通信が入ってきた。

 

「研究所の者達よ応答せよ!今から我々100人の魔導師が救出に向かう!管理局ども覚悟していろ!」

 

そこで通信が切れた。

 

「あは、あははははは!残念だったなぁ」

 

「うるさい」

 

アリサが研究員を気絶させた。

 

「それでどうするの?神衣を使えば楽勝だと思うけど?」

 

「まっやれるだけやってやるさ、外に出よう」

 

地上に出ると、正面から大量の影が見えてきた。 かなりの数だが……よくここまで用意出来たと逆に感心してしまう。

 

「あれだけいると面倒だな」

 

「そうね、ごめんね。少し待っていてね」

 

アリサが女の子を降ろそうとすると……

 

「ーーユニゾン………イン………」

 

「えっ?」

 

女の子が何かを呟くと……女の子とアリサの体が光に包まれ、紅い炎が激しく燃え上がる。

 

「うあああっ!? か、体が……熱い!!」

 

「アリサ!!」

 

手を伸ばそうにもすごい熱で近づけない。 しばらくすると焔が落ち着いてきた。

 

「はあ、はあ、これは…………」

 

「アリサ?」

 

そこにいたのはアリサだが……髪が炎のように綺麗な紅に変わり、目は薄い紫だった。

 

『はは、やっぱりアンタが私のロードだ………』

 

「ロード?………まさか私が⁉︎」

 

『ああ!これからもよろしくな、マイスター‼︎』

 

どうやらリィンと同じらしく、半ば強制にアリサが彼女の主人になってしまった。

 

「……全く勝手に決めて……私はアリサ、アリサ・バニングスよ!マイスターじゃないわ!」

 

『分かったぜ!アリサ!』

 

「それじゃあ早速力を貸して貰うわよ、えっと……」

 

『アタシには名前がねえ、アリサがつけていいぞ』

 

「ええっと、それじゃあアギトで。ラテン語で覚醒と言う意味よ」

 

『アギト……気に入った!これからアタシはアギトだ!』

 

「アギト!最初から全力よ!私達の初陣、ド派手な祝砲を鳴らすわよ‼︎」

 

『おう!』

 

……………なんかどんどん話しが進んでいくんだけど。 そして、アリサの周りにさっきよりも激しい炎を纏う。

 

「『はあああああ!』」

 

剣を振り上げ、炎が迸る。

 

「焼き尽くせ、双炎!」

 

『全てを焦土と化せ!』

 

「『ブレイジング………フレア!』」

 

放たれた巨大な炎の斬撃、それは瞬く間に100人の魔導師を飲み込んだ。

 

「あらら、人が真っ黒焦げだ」

 

落ちていく人々を眺めながらそう言う。なんかこの光景なんかの映画で見たぞ、なんだっけ……見ろ!人がなんたらのようだ!……だったけ?

 

「「イエイッ!」」

 

アリサとアギトはハイタッチして喜んでいる。

 

それから管理局に連絡して研究員と魔導師は逮捕された、しかも裏で手引きしていたのはなんと本部上層部の人間だった。

 

アギトの処遇については医療施設での治療後、アリサに引き渡されることになった。

 

何はともあれ一件落着ってことかな。

 

 


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