魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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42話

レンヤ達はダンスクラブから少し離れたらレゾナンスアークに着信が入った。

 

《すずか様からです》

 

「確か、人伝で聞き回っていたはずよね?」

 

「開いてくれ」

 

ディスプレイが展開され、すずかが映る。

 

『レンヤ君、今大丈夫⁉︎』

 

「どうした?そんなに慌てて」

 

『実はついさっきティーダさんを見かけたの!あのファクトって人と一緒に中央区のガード下に向かっていて……!』

 

「なんだと……⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティーダがファクトを連れて、ミッドチルダの中央区にあるガード下に向かっていた。

 

「……へっ、懐かしいな。オレにとって、全てが始まった場所。そしてアンタにとっちゃ、全てが終わった場所、か?」

 

「………ファクト。いい加減話してもらおうか。異界から採ってきた材料で調合したHOUNDというドラッグ。そいつをハンティングに持ち込んで分部相応の力を手に入れて、とうとうヤクザにまで手を出して……ハンティングは、いやお前は何をするつもりだ?」

 

「クク、色々調べたじゃねえか。いいぜ、アンタが戻ったら話しをしてやる約束だったしな。答えは簡単、ケジメをつけるためさ」

 

「ケジメ、だと……?」

 

「俺達新生ハンティングは明日にでも戦を仕掛ける。ミッドチルダ最大のチーム、オーダーにな」

 

その言葉にティーダは驚き、口調が崩れる。

 

「お前……」

 

「ヒャハハ、当然だろ⁉︎あいつらを皆殺しにしない限り、新生ハンティングは始まらねぇ‼︎アンタだって憎んでいる筈だろうが⁉︎」

 

「……………………………」

 

言い返せないのか口を紡ぐティーダ。

 

「確かにオーダーはデカイ。オレらの数倍はいるだろう」

 

ファクトはHOUNDの入った箱を取り出し掲げる。

 

「だが、このHOUNDがありゃあザコ同然。あの武闘派レイヴンクロウの組員すら簡単に叩きのめしたからなぁ!」

 

「ファクト、てめぇ……」

 

「クク、どうだティーダさん?そろそろ戻っちゃこないか?アンタがオーダー狩りに参加すりゃ、士気も上がるだろう。何だったら、リーダーの座だってアンタに返してもいいんだぜ?」

 

「ーー断る」

 

ティーダは考えることもなく、はっきり言った。

 

「…………へぇ?」

 

「…ファクト、お前だって本当は判ってるんだろう?アイツが敵討ちなんか望むヤツじゃねえことを……ルシス・シックルって男の器のデカさを」

 

「アンタがそれを言うんじゃねえ‼︎」

 

ティーダの言葉にファクトは激情し、HOUNDを飲み込んだ。すぐに目は赤くなり禍々しい赤いオーラが出てくる。

 

「逃げたアンタにルシスさんを語る資格なんざねぇんだよッ!もういい、話しは終わりだ……弔い合戦の肩慣らしにこの手でブチのめしてやらあッ‼︎」

 

「上等だ……」

 

ティーダは拳を鳴らして……

 

「ルシスに代わっててめえの目を醒まさせてやる‼︎」

 

ティーダとファクトの殴り合いが始まりそうな中、離れた場所ですずかがレンヤ達に連絡しながら見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディスプレイ越しに殴り殴られるの鈍い音が聞こえてくる。

 

『ああっ!始まっちゃた……!何とか止めた方がいいのかな……⁉︎』

 

喧嘩をあまり見たことがないすずかは混乱している。

 

「迂闊に手を出すな!ファクトってもはヤバい!俺達もすぐに向かう……そのまま待機してくれ!」

 

『わっわかったよ!』

 

ディスプレイが消えて、通信が切れる。

 

「……状況は判ったわ。すぐに向かいましょう」

 

「ああ、行くぞ!」

 

レンヤ達はすぐにガード下に向かった、こう言う時に飛行魔法が使えないのが悔しいが着く頃には夕方になってしまった。

 

離れて見ていたすずかの顔は辛そうだ。

 

「ーーすずか!」

 

「レンヤ君、アリサちゃん!」

 

「状況は?」

 

「そっそれがーー」

 

すずかの言葉を遮るように、大きな殴る音が響く。

 

ファクトがティーダの胸倉を掴み、壁にぶつけ持ち上げていた。

 

「がはっ………」

 

「ヒャハハ……!さすがだぜ、ティーダさんよ!まさかこの状態のオレにデバイスも使わずここまで食い下がるとはなァ!」

 

「ぐっ……ゴホッ……」

 

ティーダの顔は傷だらけで体はもうボロボロだ。

 

「ーーぬりぃな……1年半前のお前の拳の方が気合いが入っていたぜ……?ハンティング特攻隊長、……ファクト・ルッケンスの方がよ……?」

 

「ハッ……そんな状態のでよくも減らず口を叩けるもんだ。いいだろう……!そろそろトドメを刺してーー」

 

「ーーやめろ!」

 

「管理局よ、大人しくしなさい!」

 

レンヤ達が止めに入った。

 

「ああん……?なんだテメエら………ああ、クラブの前で見かけたヤツらか」

 

そう言いファクトは胸倉を掴む力を強める。

 

「グッ……」

 

「おい……!やめろって言ってんだろ!」

 

「ティーダさんを離してください!」

 

「さっさとティーダ一尉を離しなさい!」

 

「一尉、だあ……?」

 

ファクトは少し考え。

 

「ーーそういや、もうそこまで昇格してたんだっけな。前から管理局にいるのは知っていたが……」

 

ファクトはレンヤ達の方を向き、真っ赤な目を向け殺気を放つ。

 

「ーーテメエら、コイツのなんなんだ……?」

 

「っ……」

 

(なんて殺気……!)

 

「ーー手を、出すんじゃねえ……!」

 

ティーダはファクトに掴まれている腕を掴む。

 

「ッ……⁉︎まだそんな力が……!」

 

「ゴホゴホッ……ヨソ見してるんじゃねえ……てめえの相手は、このオレだ……!」

 

「あ……」

 

「どっどうして……」

 

ティーダの行動にファクトは目を細めて……

 

「………萎えたわ」

 

赤いオーラを収めティーダを離し、腹に蹴りを入れた。

 

「ぐはっ……」

 

「ああっ!」

 

「お前!」

 

「なんてことを……!」

 

レンヤ達の言葉を無視し、ファクトはティーダに話しかける。

 

「……アンタにゃ失望したがこれで心残りも無くなったぜ。オーダーとの戦争は明日のつもりだったが……気が変わった、今日中にケリを付けてやる」

 

「ッ……!待て、ファクト……!」

 

「あばよ、ティーダさん。せいぜいアンタは指を咥えて眺めてるんだな」

 

「………ぅ…………」

 

ティーダは気絶してしまった。

 

「クククク……ヒャハハハハハ……‼︎」

 

ファクトは笑いながら去って行った。

 

「くっ……あいつは後だ!ティーダさんを地上本部に運ぶぞ!」

 

「うっうん!」

 

「慎重に運ぶわよ」

 

ティーダを異界対策課に運びアリシアに治療をしてもらい、今はベットに寝かせている。

 

夜になり、ティーダが目を覚ました。

 

「ハッ……!……ここは……?」

 

「ティーダさんーー起きましたか」

 

ティーダが横を見るとレンヤ達がいた。

 

「……大丈夫ですか、ティーダさん?」

 

「意識が戻ったのならひとまず安心でしょう」

 

「しっかしタフだねえ、あれだけボロボロだったのに。骨折はしてないから安心してね、妹さんもすぐに来るみたいだから無茶しちゃダメだからねっ?」

 

「……お前ら……」

 

ティーダは起き上がり、状況を確認する。

 

「そうか……俺は……助けられたんだな。……ハッ、カッコつけといてなんてザマだ」

 

「ティーダさん……」

 

「……ここは、どこなんだ?」

 

「地上本部にある異界対策課です、ガード下から程よく近かったんで」

 

「おっ起きたか」

 

「目立つ怪我がなくてよかったよ」

 

ラーグとソエルが入ってきた。

 

「レンヤ〜俺達最近書類整理ばっかしてるから、連れって行ってくれよ〜〜」

 

「そうそう、私達も役に立つんだよ!」

 

「ボールとして?」

 

「2つの意味でお荷物として?」

 

「身がわり?」

 

「「違う!」」

 

そんな子どもらしい風景にティーダは呆れる。

 

「ハッ……おかしな連中だ」

 

ティーダは怪我をしてないように立ち上がる。

 

「ーー世話になったな。後日改めて礼に伺わせてもらうよ」

 

「えっ……」

 

「まさか行くの、ファクト・ルッケンスの所に?」

 

「だっダメですよ!まだ怪我が治っていないのに!」

 

「次、アイツとやり合ったら本当にして死にますよ?」

 

「幸い、頑丈なのが取り柄でね。ハンティングを……今のファクトを止められるのは俺だけだ。もう時間がない。……今夜でケリを付けてやる」

 

ティーダは扉に向かって歩くと……

 

「お前も、そのファクトってヤツと同じだな」

 

「ーーーーー!」

 

「自分だけで全てを背負うなんてただの驕り、未熟者が陥りがちな思い込みだな、そのファクトってヤツも同じ心境じゃないのか?」

 

「ッ……⁉︎」

 

ラーグに見透かされ、驚くティーダ。

 

「見た所、身体の芯もフラついているよ。せめて後30分は休まないとダメだよ」

 

ソエルもそう言い、ラーグと一緒に部屋を出た。

 

「………くっ…………………」

 

やはり無理をしていたのか膝をつくティーダ。

 

「ったく……言わんこっちゃない」

 

「とっとにかくティーダさん、もう少し休みましょう?」

 

「まったく、頭より体が動いちゃうんだね」

 

「ほら、早く寝なさい」

 

ティーダをベットに座らせて、時間をおく。

 

「少しは落ち着きましたか?」

 

「……ああ。やっと調子も戻ってきた。ったく、お前達にはつくづく無様な所を見せるな」

 

「あはは、そうかもね〜」

 

「こら、アリシアちゃん!」

 

「……ハンティングですが、後は私達に任せて下さい。異界に関しては私達、異界対策課がよく知っています」

 

「人間相手ってのが面倒だけどね」

 

「そうだね、本当ならHOUNDの原料がある異界をどうにかしたいけど……」

 

「…………分かっているさ。俺より君達の方がハンティングを何とか出来るってことも。だが、それでも俺はその役目を他人に譲るわけにはいかないんだ」

 

「ティーダさん……」

 

「……ルシスっていう人のためにですか?」

 

「ああ……ハンティングは、俺とルシスが立ち上げた居場所だったからな」

 

それからティーダは語り始めた。

 

「ーー両親は妹が生まれて早々事故で亡くなった。妹と生きる為に管理局に入り必死で働いた。そしてある日、ルシスに出会った。ルシスも似たような境遇ですぐに打ち解けた、優しくて強くて、度胸も根性もあって……面倒見もよかったから、妹や子ども達に好かれて皆の兄のような人だった。だがーーある孤児院でえげつない虐待騒ぎがあって……ルシスと俺は、院長を叩きのめして事件を明るみにした。そのおかげで昇格もできたが、帰る家の無くなった子ども達を放っておく事は……俺にもルシスにもできなかった。それから死に物狂いで2人で働いて、何とか生活を軌道に乗せているうちに……似たような連中の面倒を見ることになっていった……それがハンティングの始まりだ。下らない虐めや一方的な暴力、金に汚い社会、ズル賢い大人達……そんな理不尽を狩るための居場所。……それが俺達のハンティングっだったんだ。よく自分でも管理局をクビになっていなっかたのが不思議なくらいだ、ハンティングを利用するようで昇格していたが、孤児院も豊かになるから罪悪感は無かった。チームが大きくなった頃、ミッドチルダ最大のチーム、オーダーが一方的な抗争を仕掛けてきた。孤児院を守るため、俺達は何度もそれを退けたが…………ある日、ファクトが隙を突かれて人質になってしまった。ルシスと俺は2人だけであのガード下におびき出され……数倍以上の挟み撃ちに遭ったが、何とか返り討ちにすることができた。そして無事、ファクトを取り戻したと思ったその時………血迷った相手のリーダーがナイフを構えて突っ込んできた、そしてそれは……ファクトを庇ったルシスの身体に深々と突き刺さった。………今でもファクトの叫びを忘れた事はない」

 

ティーダは思い出すように頭を伏せる。

 

「…………………………」

 

「……そんなことが……」

 

「ぐすっ……」

 

「その後……俺は抜け殻のようになってハンティングを解散させた。忘れるように仕事に没頭して、一人称も口調も変えて。それから1年半……過去を全て捨て去ったつもりだった。……だが、ファクトにとっては何も終わっていなかったんだろうな」

 

「それは……」

 

「ハンティングの復活とルシスさんの敵討ちね」

 

「ああ……ルシスを死なせたのが自分だと思い込んでやがる。いつ異界に取り憑かれたのは知らないが……分部相応な力を手に入れて……周りが見えなくなっているに違いない」

 

一呼吸おいて、レンヤ達を見る。

 

「これで分かっただろう。コイツは、あくまで俺の役目だ。ルシスの代わりに、あの馬鹿野郎の目を醒させるのも……元リーダーとして、ヤクザに手を出しっちまった落とし前をつけるのも。どんな力を持っていようが、お呼びじゃねえんだよ、お前達は」

 

「……………………」

 

「でっでも……!」

 

「放ってなんか、できないよ……!」

 

「ティーダさん、アンタ、ちょっと頭が固すぎるでしょう?」

 

「なに……?」

 

「ラーグも言っていただろう。自分だけで全てを背負うなんて驕りに過ぎないって、何かをやり遂げる必要があってそれでも手に余るなら……なんで助けを求めないんだよ?」

 

「!……それは………」

 

「こっちだって、このミッドチルダでこれ以上騒動は続いて欲しくない。得体の知れないドラッグなんて万が一でも出回って欲しくないんだよ。その鍵はハンティングとファクト……ティーダさんの昔なじみが握っている。だけど、今の俺達にはそれに辿り着く道が見えていない」

 

レンヤはしっかりとティーダを見て……

 

「だから……力を貸してれ、ティーダさん。代わりに俺達がティーダさんに力を貸す。それならどうですか?」

 

「…………………………」

 

「レンヤ君……」

 

「うんうん、そうだね!」

 

「細かい事は気にするんじゃない!」

 

ティーダは少し考えて……

 

「ったく……」

 

ベットから立ち上がった。

 

「ーーハンティングが本拠地にしていた場所がある。ミッドチルダ北部、廃棄都市区画にあるビル……大規模のケンカをするなら最後の準備をしているはずだ」

 

「あ……」

 

「……そんな場所が」

 

ティーダはレンヤの前に立ち。

 

「いいだろう。お前らの力、改めて貸してもらおう」

 

ティーダは拳を出して……

 

「俺とファクトの……最後の決着に付き合ってもらうぞ」

 

「へへ……」

 

レンヤはティーダと拳を合わせた。

 

「おう、任せてくれ……!」

 

それから準備をして、地上本部の前に来た。ラーグ、ソエル、ゲンヤが見送りに来ていた。

 

「皆、無茶しないでね」

 

「頑張れよ」

 

「事後処理はこっちに任せとけ」

 

「ありがとうラーグ君、ソエルちゃん」

 

「行ってくるよ〜」

 

「ーーー兄さん!」

 

その時、後ろから女の子が来てティーダに抱きついた。

 

「兄さん!大丈夫なの!早く寝ないとーー」

 

「ティアナ、大丈夫だ。必ず無事に帰ってくる」

 

「うん……?兄さん、口調が元に戻ったの?」

 

「はは、そうだな。自分に嘘をつくのに疲れただけさ」

 

「ーーー皆さん!」

 

今度はソーマが来た。

 

「ソーマ君、どうかしたのか?」

 

「いえ、僕はティアナちゃんの付き添いで」

 

「ソーマとティアナは幼馴染なのさ」

 

「ありゃ、世間って結構狭いね」

 

「ーーーそうらしいな」

 

今度はエイジが来た。ティアナとソーマはエイジの迫力に怯えティーダの後ろに隠れる。

 

「ここにランスターの坊主が運ばれたと聞いたものでね」

 

ティーダはエイジと向き合い。

 

「ーーファクト達のことはもう少し待っていてくれ。多少、みっともない形にはなっちまいそうだが……何とか落とし前を付けてみせる」

 

「ほお……?あれから仲間も作らず、一匹狼を気取っていた小僧がひと皮剥けたじゃねえか?」

 

「ぐっ……ほっとけ」

 

「クク、いいだろう。今日一杯は待ってやる。お前なりのケジメの付け方……せいぜい見せてもらおうか」

 

「おお……!」

 

「早速出発だ〜!」

 

「兄さん、気をつけて……!」

 

「無理はするなよ」

 

レンヤは前に出て、全員に向き合い。

 

「異界対策課、チーム・ザナドゥ及びティーダ・ランスター一等空尉。これより異界に関わっているであろうハンティングのいるミッドチルダ北部、廃棄都市区画のビルに向かう。全員、気合いを入れて行くぞ!」

 

「「「「おおっ!」」」」

 

「お兄ちゃん達、カッコいい……!」

 

レンヤ達はハンティングを止めるべく、廃棄都市区画に向かった。

 

 


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