魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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33話

7月中旬

 

ミッドチルダで嘱託魔導師の依頼を終わらせ、俺はクラナガンを見て回っている。

 

何でも2、3日前断続的に霧が発生したようだ。

 

こんな大都市で発生するのは、やはり珍しかったようだ。

 

「ふう………これで5件目、予想以上に異界が存在しているんだな」

 

サーチデヴァイスで異界を探し収束しまわっていた。

 

「人が多いならそうなるよ」

 

「アリサ達も呼べばいいだろ」

 

「あっちの事情もあるんだ、そう何度も呼べないよ」

 

路地から出て、次の座標に向かうためディスプレイを出す。

 

「中心部はこれ位だろ、後は東部辺りを見回るか」

 

「そうだね、あそこはテーマパークがあるからね。異界も多そうだよ」

 

「よし、それじゃあ………」

 

「うえええええん!」

 

いきなり女の子の泣き声がして振り返ってみると、すぐ後ろに青い髪をした女の子がいた。まだ小学生くらいだ。

 

「えっと、どうかしたかい?お父さんとお母さんは?」

 

「ぐすっ…お姉ちゃんと……はぐれちゃった」

 

「そうなんだ…」

 

「レンヤ、どうする?」

 

「急ぎの用事でもないし、探すよ」

 

「本当!」

 

「ああ、俺は神崎 蓮也。君の名前は?」

 

「スバル!スバル・ナカジマ!」

 

「スバルちゃんね、それじゃあ行こっか」

 

レンヤはスバルに手を出し、スバルは嬉しそうに手をつないだ。

 

とりあえず迷子には警察、ここでは管理局に頼ろう。

 

管理局のいる施設に入り聞いてみる。

 

「まだ来てないんですか」

 

「はい、スバル・ナカジマの迷子捜索は出ていません」

 

「そうですか」

 

「お兄ちゃん?」

 

「あっいや、大丈夫だよ」

 

「そういう事なら、人探しならこれだな」

 

ラーグが風水版を取り出した。

 

「なにそれ?」

 

「魔力と記憶を元に、ある特定の人物を探す物さ」

 

「へえ〜すごいすごい!」

 

「スバル、ここに手を置いて、お姉ちゃんを思い浮かべるんだ」

 

「うん!」

 

スバルは風水版に手を置き、目を閉じる。

 

すると風水版が光り出し、光りの線が西を指した。

 

「この先にお姉ちゃんがいるよ」

 

「よし、行ってみようか」

 

「うん!」

 

それからしばらく歩き、公園が見えてきた。

 

「あっさっきまで遊んでた所だ」

 

「ならいるかもしれないね」

 

少し進むと、スバルによく似た長い髪の女の子が辺りを見回していた。

 

「お姉ちゃん!」

 

「!、スバル!」

 

スバルが駆け寄り、姉も駆け寄り抱きつく。

 

「もう、どこに行っていたのよ!心配したんだから」

 

「ごめんなさい」

 

姉はこちらに向き直り。

 

「スバルを見つけてありがとうございます、私はこの子の姉のギンガ・ナカジマです。何かお礼をしたいんですけど…」

 

「いや大丈夫だよ、気にしないで」

 

「いえそういう訳には……!」

 

ギンガがいきなり驚いた、あっばれた…

 

「聖王……」

 

「あーーそうだ!もうすぐ夜だ、家まで送っていこう!」

 

「えっ!あっでも」

 

「気にしないで、こんな時間に女の子2人じゃ危ないから」

 

「はっはい!ではよろしくお願いします」

 

「わーい、お兄ちゃんと一緒だー!」

 

喜ぶスバルに俺達は苦笑する。

 

「できれば俺の事は内緒にしてもらうと助かる」

 

「はい、わかりました」

 

ギンガと約束して、少し歩きスバル達の家についた。

 

「それじゃあ俺はこれで」

 

「待って下さい!せめて夕食をご馳走したいのですが」

 

「だから気にしなくてもいいのに」

 

「お兄ちゃん、ごはん食べていくの?」

 

「いやだから…」

 

「わーい、やったー!」

 

嬉しそうにはしゃぐスバル、その時家のドアが開き母親と思われる女性が出てきた。

 

「ギンガ、スバル、何玄関で騒いでいるのよ」

 

「お母さ〜ん」

 

スバルは母親に抱きつく。

 

「ちょっ!もうスバルったら」

 

「えへへ」

 

「それで、あなたは?」

 

「お母さん彼は…」

 

ギンガがここに来るまでの事情を説明してくれた。

 

「そう…スバルがお世話になったわね。私はこの子達の母親のクイント・ナカジマよ」

 

「神崎 蓮也です、当たり前の事をしただけです」

 

「それでもよ、夕食をご馳走するわ。入って頂戴」

 

「えっいやだから……」

 

「行こう!お兄ちゃん!」

 

スバルに引っ張られて、家に入った。

 

リビングには父親と思われる男性が座っていた。

 

「どうやら娘達がお世話になったらしいな、私はゲンヤ・ナカジマだ。以後よろしく頼む」

 

「神崎 蓮也です。こちらこそよろしくお願いします」

 

「ほう、どこかで見たと思ったらかの聖王じゃないか」

 

「えっ嘘!でもよく見たら似ているような…」

 

「あはは、できれば御内密に」

 

テーブルにつき夕食を頂くが…

 

「なんですか、この量は」

 

「家じゃあこれが当たり前だ」

 

そう言うとクイントさん、ギンガ、スバルがものすごい勢いで食べ物を食べていく。

 

「嘘!」

 

「早くしないとなくなるぞ」

 

目の前の光景に驚き、遠慮を忘れてごはんを食べた。

 

ものの30分で全部無くなってしまった

 

「「「「「ご馳走さまでした」」」」」

 

食べ終え、食器の片付けを手伝う。

 

「ゲンヤさん」

 

「………言わなくていい」

 

「………はいっ」

 

心中お察しします。

 

「っとそうだ、お二人は数日前の霧についてどう思いますか?」

 

「いきなりだな、確かにここ数年霧なんて発生して無かったからな」

 

「海が近いとはいえ、そうそう起きなかったわよ」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

「そう、それと……」

 

クイントさんは顔を近づける。

 

「あなた、私と会った事ある?」

 

「えっ、前の演説とかじゃなく」

 

「そうよ、例えば…無人世界でとか」

 

その言葉にギクリとする、確かに一年位前にあの施設から助けた2人の女性、1人はクイントさんだったような。

 

「やっぱりあなたね」

 

「えーと、あの時は偶然で」

 

「それでもあなたが来ていなかったら隊長も私もメガーヌも死んでいたかもしれないの、だからお礼を言わせて頂戴」

 

「俺からも礼を言わせてくれ、妻を救ってくれて感謝する」

 

「いえ、当然の事をしただけです」

 

「そうか、困った事があれば相談してくるといい。何時でも力になるぞ」

 

「はい、感謝します」

 

それから会話をして、家から出ると外はすっかり夜だった。

 

「バイバイお兄ちゃん」

 

「また遊びに来て下さいね」

 

「気をつけてね」

 

「はい、それではさよう……」

 

その時、目の前に白い靄が現れた。靄がどんどん増えて霧が出てきた。

 

「これは!」

 

「霧?」

 

「なんでまた、一体何が……」

 

アハハハハ

 

「「「「⁉︎」」」」

 

霧に驚く中、女性の笑い声が聞こえてきた。

 

「ひい!」

 

「スバル!」

 

「笑い声⁉︎」

 

「これは…」

 

『異界絡みだね』

 

『しかも、厄介な奴のな』

 

俺達は覆い尽くす霧の前に、呆然と立っている事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日

 

放課後にレンヤ、アリサ、すずか、アリシアはすずかの家の会議室にいた。

 

「今回ミッドチルダに発生した霧は、十中八九異界絡みだ」

 

「しかもグリムグリード、脅威度Sランク以上の現実世界に直接干渉できるグリード」

 

ラーグとソエルが今回の事件の説明をする。

 

「それってナハトヴァールの時の⁉︎」

 

「いやあれはただのエルダーグリードがナハトヴァールによって突然変異したものだ、列記としたグリムグリードじゃないだろう」

 

「その通りだよ、ここでグリムグリードのちゃんとした説明をしておくよ。通常の迷宮の主………エルダーグリードに可能なのはあくまで特異点を介した干渉のみ。しかしグリムグリードは現実世界の環境すら変化させ、自らの眷属を異界の外に送り出せるほどの力を持っているよ。前回のグリムグリード擬きの比じゃないくらいにね」

 

「今回の霧がそれか」

 

「ああ、過去に町一つが全滅した例もある」

 

「そんな事がミッドチルダでも起こるって言うの!」

 

「ミッドチルダは魔法があるから、時間をかければいずれ解決するけど…」

 

「そんな悠長に待っていられないね」

 

「もうミッドチルダのニュースで行方不明の人が続出しているみたい」

 

「とにかく今は情報収集だ、2人1組で編成する。俺は異界に関わって間もないアリシアと行く、それでいいな」

 

「ええ」

 

「わかったよ」

 

「よろしくね、レンヤ」

 

クロノに許可をもらい、ミッドチルダに向かう。レンヤ達が西を、アリサ達が東を捜索する事になった、モコナ達にはもしものために留守番してもらっている。

 

「アリシア、行方不明者はどこから出ている」

 

「この先のデパートと中心部に近い住宅街だね」

 

(中心部に近い住宅街……ナカジマ家がある地点だな)

 

「レンヤ?」

 

「なんでもない」

 

デパートに行き、従業員に話しを聞きまわる。

 

「どうやら数日前から無断欠勤している人が多いらしいな」

 

「1人暮らしの人ばかりで連絡もつかないね」

 

アリシアがディスプレイを展開し、ニュースサイトを見る。

 

「頭に響くような女性の笑い声が聞こえる……霧の異常発生……行方不明者続出……広範囲で事件が起きすぎだよ」

 

「管理局も動いているようだがな……やっぱりクロノに公表すべきだったかな」

 

「魔力を持っていても認識できる人は少ないからね…1度ゲートに入るかしないと見えないし」

 

「とりあえずアリサ達と合流しよう、情報の共有を……」

 

その時、レゾナンスアークに着信があった。

 

《クイント氏からです》

 

「開いてくれ」

 

ディスプレイが展開され、クイントが映し出される。

 

『レンヤ君!スバルとギンガを知らない!いきなり消えちゃったのよ!』

 

「「!」」

 

レンヤとアリシアはその言葉で理解した。

 

「クイントさん、今どこにいますか?」

 

『私の家の近くよ』

 

「わかりました、すぐに向かいます。クイントさんは誰かと一緒に待っていて下さい」

 

通信を切り、アリシアの方を向く。アリシアも誰かと通信していた。

 

「フェイト!フェイト!」

 

「フェイトがどうかしたか?」

 

「フェイトが中心部の住宅街に調査に行くって言って、そしたら通信がいきなり切れて……」

 

「どうやら厄介な事になったらしいな、レゾナンスアーク、アリサにメールで住宅街に向かうようにしてくれ」

 

《イエス、マジェスティー》

 

レンヤとアリシアは急いで住宅街に向かう。

 

着いた時、住宅街周囲の霧は異常なほどの濃くなった。

 

「なにこれ!」

 

「ここに来た瞬間、一気に霧が濃くなった!」

 

「レンヤ君!」

 

正面からクイントさんと薄紫の髪色をした女性が来た。

 

「クイントさん、無事でよかったです」

 

「それよりもギンガとスバルを探さないと!」

 

「落ち着いて下さい、この霧では危険です」

 

「そうです、お二人は……」

 

「お二人?」

 

薄紫の髪色の女性が辺りを見渡す。

 

「ルーテシア?どこにいるの、ルーテシア!」

 

「…………………ママーーー!……………」

 

さっきクイントさん達が来た道から、女性似の少女が走って来た。

 

「よかった、ルーテシア!」

 

女性は少女に……ルーテシアに近づくが…

 

アハハハハ

 

「!、離れて!」

 

「えっ」

 

笑い声が響き、霧の中から巨大な手が現れたルーテシアを掴み、霧の中に消えていった。

 

「ルーテシア!」

 

「落ち着いて下さい!私達が行きます、お二人は管理局に連絡してここら一帯を封鎖して下さい!」

 

「でも君達は…!」

 

「俺達なら原因を解明し、解決できます!ですから任せて下さい!」

 

レンヤ達の説得に2人は顔を見合わせて頷く。

 

「わかった、ギンガとスバルをよろしく頼むわ」

 

「あの子を…ルーテシアを救って頂戴……!」

 

「はい!任せて下さい!」

 

「それでは行ってきます、クイントさんと……」

 

「メガーヌよ、メガーヌ・アルピーノ」

 

「メガーヌさんは安全な場所へ!」

 

「レンヤ君!ゲートを見つけたよ!」

 

アリシアの後を追い、ゲートの前に立つ。

 

「レンヤ!」

 

「アリシアちゃん!」

 

ちょうどアリサとすずかと合流する。

 

「今からこのゲートに突入する、ソエル達の話しが正しければこの先にいるのは眷属だ」

 

「気を引き締めていくわよ!」

 

「アリシアちゃん、頑張ろうね」

 

「うっうん!」

 

レンヤ達はゲートに突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷宮に入り、デバイスを起動して構える。

 

「迷宮の中にも霧が出てる」

 

「攫われた人は奥みたいね」

 

「気を抜かず、慎重に奥に進もう」

 

迷宮を進み、最奥の手前の部屋で攫われたと思われる人達が倒れていた。

 

「どうやら、霧の中で行方不明になった人達ね」

 

「こっこんなにいるなんて」

 

「今まで、異界の被害に遭ったのは1人だったのに……」

 

「うっ…」

 

レンヤ達は倒れているギンガ、スバル、ルーテシアに近づく。

 

「ギンガ……!無事だったか!」

 

「ルーテシアちゃん!大丈夫!」

 

「しっかりしなさい!」

 

「…れっレンヤさん……」

 

「…あの…時の……」

 

「うっ奥に………」

 

3人とも気を失った。

 

「ギンガちゃん⁉︎」

 

「大丈夫、皆気を失っただけよ」

 

「ふう、びっくりした」

 

3人を優しく横たえる。

 

「奥か…」

 

「早く行こう!」

 

奥の扉を開けると中には。

 

「!、これは……!」

 

「フェイト!」

 

フェイトが影の手と対峙していた。

 

「皆!どうしてここにーーー」

 

「危ない!」

 

フェイトの気がこちらに向き、影の手が振り下ろされた。

 

「ふっ!…やあ!」

 

フェイトは攻撃をかわし、バルディッシュで切りつける。

 

「フェイト!」

 

「さすがだね」

 

「前より動きがよくなっている」

 

(けどなんだ、焦っているのか?)

 

「フェイト!今、加勢してーー」

 

「ーー皆は下がって!」

 

フェイトの発言にレンヤ達は驚く。

 

「ここは私に任せて、行方不明の人達を連れて脱出して!」

 

「何言ってんのよ!」

 

「フェイトちゃん⁉︎」

 

フェイトはすぐに影の手に向き直りバルディッシュを掲げる。

 

《ハーケンスラッシュ》

 

「はああああ!」

 

バルディッシュを影の手に振り下ろした。

 

影の手は後ろを向き、奥に進んでいった。

 

「逃がさない!」

 

フェイトはものすごいスピードで追いかけ、見えなくなった。

 

「待て、フェイト!」

 

「深追いはしないで!」

 

「!、皆!」

 

アリシアが異変に気付き、次の瞬間影の手が現れレンヤ達の前に立ち塞がる。

 

「これって……さっきのヤツと同じ⁉︎」

 

「影の手、マリスクロウ!」

 

「さっきのが右手なら、これは左手!」

 

「こんな時に邪魔を……」

 

「とにかくぶっ倒すわよ!」

 

マリスクロウが手の平を上に向き、光弾を撃ちだした。

 

レンヤ達は散開する事で避ける。

 

「フォーチュンドロップ!」

 

《カーブショット》

 

2丁拳銃を左右に撃ち出し、弾丸が曲がり側面に当たる。

 

「はあっ!」

 

すずかが手の平に高速で3段突きを繰り出すがマリスクロウがそのまま手を広げ振り下ろす。

 

「させないわよ!」

 

《ゼロインパクト》

 

アリサがフレイムアイズを振り、当たる瞬間爆発させ吹き飛ばす。

 

マリスクロウはすぐに止まり拳を握り、人差し指と中指を立てて正面にレーザーを発射する。

 

《アバートレイ》

 

「せいっ!」

 

レンヤがレーザーを逸らし防ぐ。

 

「アリシア!」

 

「オーケー、決めるよ〜!」

 

《サウザンドブリッツ》

 

マリスクロウの周囲に魔法陣がいくつも展開される。

 

「いっけーー!」

 

アリシアの前にある魔法陣に無数の弾丸を発射し、マリスクロウの周囲にある魔法陣に転移させて蜂の巣にする。

 

マリスクロウは倒れ、消えていった。

 

「ふう、手強かったね」

 

「そうでもないわよ」

 

「比較的楽な方だね」

 

「これも経験の差だ、落ち込むな」

 

「うん…」

 

「それよりもさっきの魔法」

 

「うん、レンヤから教えてもらったんだ」

 

「転移が得意なアリシアだから使いこなせると思ったんだ」

 

「すごいね、アリシアちゃん」

 

「えへへ」

 

「でもこれ相手にフェイト1人はキツイわよ」

 

「急いで行こう」

 

レンヤ達は奥に進む、そこは行き止まりであった。

 

「!」

 

「そんな……!」

 

部屋の中心にバルディッシュだけがあった、レンヤ達はバルディッシュに近づき。

 

「バルディッシュ!フェイトはどこに行ったのよ!」

 

アリサが問いかけるも反応がない。

 

「……ダメ、フリーズしている」

 

「くっ、フェイト、どこにいる⁉︎返事をしろ!」

 

レンヤが大声で叫ぶが…

 

アハハハ

 

不気味な笑い声しか聞こえてこなかった。

 

 


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