魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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31話

のんびりと過ごしている俺達。

 

時期はもう12月、季節は冬に変わった。

 

今は翠屋でお茶を飲んでいる。

 

「もうあっという間に2年経っちゃったね」

 

「勉強と仕事の両立が難しいけどな」

 

「容量を考えれば余裕よ」

 

「それができんから困ってるんや」

 

「フェイトも執務官試験の合格する為に頑張っているし」

 

「うん、次こそは合格する」

 

「張り切っているね、フェイトちゃん」

 

「……………………」

 

さっきからなのはがボーっとしている。

 

「なのは?」

 

「……………………」

 

「なのは!」

 

「ふにゃっ⁉︎」

 

大声で呼ばれ、やっと反応するなのは。

 

「どうかしたか?なのは?」

 

「なんでもないよ、ごめんねレン君」

 

苦笑いしてながら謝るなのは。

 

「どうしたのよ?最近ボーっとしている事が多いわよ?」

 

「何か悩み事でもあるの?なのはちゃん」

 

「もし困っているなら相談して、私達でよければ力になるよ?」

 

「ありがとうすずかちゃん、フェイトちゃん」

 

そう言うが、悩みと言うより疲れているな。

 

「なのは、お前無理してないか?」

 

「ふえっ⁉︎」

 

「いつも以上に顔色が悪い、疲れているなら休め」

 

「だっ大丈夫だよ、少し休めばすぐに良くなるから」

 

「そうか……無理はするなよ」

 

「にゃはは、心配してありがとうなの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

今日、なのはは体調が悪化したまま任務に行っていた。

 

「嫌な予感がする、すっごく嫌な予感が…」

 

「レンヤ、落ち着け」

 

「ソエル!なのはの魔力を探して転移できるか⁉︎」

 

「余裕だよ!すぐに行く?」

 

「ああ」

 

レンヤ達はなのはの元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはとヴィータは次元世界の探索を終えた帰り道。

 

「なのは!後ろ!」

 

「え?」

 

振り返ると、銀色の爪のような物がなのはに襲いかかろうとした。

 

「あ………れ………?」

 

突然、なのはの動きが鈍り目の前に爪が迫る。なのははとっさに目を瞑るが…痛みは来ない。

 

「ぐうっ……だから言ったろうが……無理はするなって」

 

「レン君!」

 

「レンヤ!」

 

目を開けるとそこには爪で胸を切り裂かれたレンヤがいた。

 

「ヴィータ……早くなのはを連れて離脱しろ、こいつらもよろしく」

 

レンヤはヴィータにラーグとソエルを投げ渡した。

 

「行け!」

 

「んな訳に行くか!あたしも残って……」

 

「さっさと行け‼︎」

 

レンヤは聖王の力を解放して、ヴィータを睨む。

 

「っ!〜〜〜〜〜〜っ、わかった!無事でいろよ!」

 

ヴィータはなのはを連れてその場を離れる。

 

「くっ、バリアジャケットを貫通した。AMFか!」

 

《そのようです、回復魔法も阻害されています》

 

「この数相手にどれだけ持つかな」

 

昆虫のような足があるガジェットが10機、周りを囲んでいた。

 

「一気に決める……はああ!」

 

氷の神器を纏う、ガジェットの周り一ヶ所に集め凍らせ、秘力を解放する。

 

「我が身は紺碧!白き氷華に擁護せよ!ノーザンケイジ!」

 

まとまったガジェットを何度も蹴り、吹雪を起こし吹き飛ばして粉々にした。

 

「くっ、はあ、はあ、体が…持たない……」

 

《マジェスティー!バイタルが危険域に入りました!意識を保ってください!》

 

「心霊……蘇生……レイズデット…!」

 

なんとか回復魔法を使い、そのまま倒れ意識を失ってしまう。

 

最後に紫色の雷が見えた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所では薄紫色の長い髪をした女性がボロボロの白衣を着た男性に話しかけていた。

 

「ドクター、ガジェットIV型が全て破壊されました」

 

「ああ見ていたよ。さすが聖王の末裔、そしてAMFをものともしないあの力!体の丈夫さ、屈強な精神!素体に欲しいくらいだよ!」

 

白衣を着た男性は興奮していた、それを女性が無視して結果を報告する。

 

「奴には役に立ちませんでしたが、ガジェットに搭載したAMFは問題なく発動してました」

 

「これで私の研究も一歩進んだ。次に会う時を楽しみにしているよ、神崎 蓮也君」

 

男性はモニターを操作して…

 

「彼の血液を回収しろ、これで聖王の複製体が完璧になる、そして……」

 

後ろに振り返り、ポットに入っている獣の爪のような物を見る。

 

「鬼神の……目覚めは近い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レン君……」

 

なのはは病室の前でうな垂れていた。レンヤあの後クロノの部隊が回収、そのまま病院に運ばれた。胸の裂傷にどうやら爪の破片も入り、大量に血を流しすぎて危険な状態だ。神器の治療がなかったら危ないところだった。

 

レンヤは今、集中治療室でシャマルが治療を行っている。

 

「私が………クロノ君の注意を聞いていれば…」

 

「なのは……」

 

なのはは自分を責めていた。最近ハードな訓練に任務の連続だったので疲れがたまっていた。レンヤに見抜かれたのに強がり、否定した。だから一瞬反応が遅れた、レンヤが助けに入らなかったら自分が大怪我を負っていただろう。

 

そんな様子のなのはに誰も声を掛けることができなかった。フェイトは声を掛けようとしたがシグナムに止められ、ヴィータは壁に拳をぶつけ歯を食いしばっている。アリサとすずかも、守れなかった自分を責めていた。

 

誰もが自分の無力さを嘆いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ここは…?」

 

レンヤは目を覚ました、辺りはまだ暗く月明かりが窓から差し込んでいる。

 

「うっ!いてて…動けないな、当たり前か」

 

起き上がろうとするが痛みでまた横になる。体を見るとあちこちの包帯が巻かれている。

 

《マジェスティー、大丈夫ですか?》

 

横のテーブルにレゾナンスアークが置かれていた。

 

「ああ、大丈夫だ。なのはは無事か?」

 

《軽傷で済んでいます、マジェスティーの状態は…》

 

「いいよ、言わなくて。しっかしクリスマスまでに動けるようになるかな?全く俺の誕生日は厄介ごとばかりだ」

 

ベットに体を預け、1人ぼやく。そこにラーグとソエルが入ってきた。

 

「起きたのレンヤ」

 

「無事でなによりだ」

 

「どれ位眠っていた?」

 

「3日だね、死んでるみたいだったよ」

 

「そうか、ソエル、明日なのはを呼んできてくれないか?」

 

「うん、いいよ」

 

「今はゆっくり休め」

 

そして後日

 

レンヤは車椅子に乗り、屋上で待っていた。

 

「レン君……」

 

「来たか、なのは」

 

振り返って話しをする。

 

「なんで嘘をついた」

 

「えっ」

 

自分が責められるのを覚悟してたのに、全く違う言葉で驚いた。

 

「なんであの時疲れていないって嘘をついた」

 

「それは……あの時は本当に大丈夫だったの」

 

視線を逸らして答えるなのは、明らかに嘘をついている。

 

「ふう、本当は気づいていたよ、お前が嘘をついている事ぐらい」

 

「え……」

 

「何年一緒にいると思っている、お前の体調が悪い事はとっくにわかっていたさ」

 

「じゃあ…何で?何であの時に言わなかったの⁉︎」

 

近づいて俺の胸倉を掴み、なのはが叫び出すように声を張り上げる。正直痛い。

 

「なら俺も聞くが、何んであの時嘘をついた?体調が悪い事を誤魔化す必要は無いはずだ」

 

「だって…私には皆の役に立てる力が…困っている人達を助けられる力があるんだよ⁉︎だから私の頑張らなきゃいけないの!」

 

「でも結果はこれだ、自分の身も守れず人も守れていない。体を酷使した結果がこれだ」

 

「う……」

 

「それとも…お前にそこまで働けと言ったのはリンディさんか?それとも管理局の上司か?」

 

「ちっ違うよ!これは私が皆に嘘をついて無理をしただけなの!」

 

「ならば何故、そこまで頑張ろうとする?」

 

「それは………」

 

そしてレンヤと視線を合わさないまま俯いてしまう。

 

「怖いんだな、1人になる事が、自分の周りから皆が離れていくことを」

 

俯いたまま、レンヤの言葉にビクリと肩を震わせるなのは。

 

「全く、そんなはずないだろ。別に……」

 

「……………………で」

 

「ん?」

 

俯いたまま小声でつぶやく様にしゃべるなのは。

 

「………に………いで」

 

「なのは?」

 

「嫌いにならないで!」

 

顔を上げたなのはは懇願する様に声を張り上げる、胸倉を掴んでいる手にはますます力がこもり、目には涙が徐々に溜まり始める。

 

「嘘をついた事は謝るから……もう嘘はつかないから……ちゃんと良い子になるから……なのはの事嫌いにならないで……1人にしないで……」

 

涙声になりながらも言葉を発するなのは。

 

「まさか……お前まだ…」

 

「もう…もう1人ぼっちになりたくない……なりたくないよう………」

 

遂には泣き出してしまった。

 

「全く、あの時から変わってないのは良いことか悪いことか」

 

なのはの頭を撫でながら、泣き止むのを待った。

 

しばらくして…

 

「うっ…ぐすっ…」

 

「落ち着いたか?」

 

俺の問いに小さく頷く、胸倉を掴んだ手も話してくれた。

 

「あの時から変わってないな、1人でブランコに揺られていたあの時に」

 

「あっ…」

 

「なのはは、本当に自分に魔法しかないと思っているのか?」

 

「…うん、他に何もできないし」

 

「確かに魔法があったおかげでフェイトやはやて達と出会う事になったかもしれないが、それはあくまできっかけに過ぎない。フェイトと友達になった時や、リインフォースを説得したのは魔法じゃない、なのは自身の言葉だ。なのはの想いがフェイト達を救ったんだ」

 

「……………………」

 

「それにアリサとすずかにしてもどうだ?その時なのはは魔法を使えて、2人はなのはの事を魔導師と知っていたか?」

 

なのはは首を横に振って答える。

 

「なら答えは出ている、魔法があっても無くても皆はなのはの元を離れない。魔法が使えるかじゃない、なのはだから一緒に居たいんだ」

 

「レン君も?」

 

「ああ、そもそも俺に居場所をくれたのはなのは何だから」

 

「え」

 

「俺は最後の最後まで高町家に住む事を拒んでいた、最後の決定をなのはに決めてもらったんだ」

 

「そうなの?」

 

「なのはは反対してくれると思った、でも大喜びで受け入れてくれた。あの時は後悔していたけど、今は感謝している、俺に温かい居場所をくれたから本当に感謝している」

 

「レン君……」

 

「それとごめんな。なのはがそんな不安を抱えている事に気付いてやれなくて。もっと早く気付いていたらこんな事にならなかったのに」

 

「…そんな…事ないよ………なのはも…正直に言っていたら…」

 

再び涙声になっているなのは、レンヤは優しく頭を撫でる。

 

「大丈夫だ、皆ちゃんとお前の側にいるから」

 

「うん…」

 

「なのはができない事はフェイト達を頼れば絶対に力を貸してくれるし、俺達、チーム・ザナドゥも力を貸すさ。だからもう1人で頑張ろうとするな」

 

「…うん…レン君…ありが……とう……」

 

「我慢しなくていい、今は泣いていいんだ」

 

その言葉を聞いて、なのははもう限界だったのだろう。涙腺が決壊し、レンヤに抱きついて。

 

「みんな…わたしから…はなれるとおもって……こわかった…こわかったよう………ふええええぇぇぇんん‼︎」

 

大声で泣き始めた、そんななのはをレンヤは優しく受け止めて泣き止むまでずっと頭を撫で、背中をさすってやっていた。

 

あれからしばらく泣いていたなのはだが…

 

「もういいのか?」

 

「も、もう大丈夫なの////」

 

なのはの表情もとても良くなっている。

 

「それで、これからどうするんだ?」

 

「うん、私みたいな人が出ないように。これから管理局で働こうと考えている人達に無茶をしない様にって教えられるお仕事に就こうと思うの」

 

「なるほど、教導官に」

 

「うん、少なくとも私と同じ目に遭う人も、フェイトちゃん達みたいに心配する人も増やしたくないから」

 

そう言うなのはの瞳からは力強い意思を感じる。

 

「そうか、もう無茶はしないな」

 

「うん!」

 

なのはは選べた、いい加減俺も前に進まないとな。

 

「レゾナンスアーク、剣を」

 

《イエス、マジェスティー》

 

レゾナンスアークは目の前に剣を出してくれた。

 

「レン君、何を……」

 

レンヤはリボンを解き、剣を髪に当てて。

 

「俺も……過去に縛られるのも終わりだ」

 

髪を切った、ツヤのある長い髪は手の中にある。

 

「これでいいんだ」

 

切った髪をリボンで縛りまとめる。

 

「なのは、病室まで連れて行ってくれ」

 

「!、うん!」

 

なのはに車椅子を引いてもらい、病室に戻った。

 

戻る途中に他の皆と会う。

 

「レンヤ、なのは!」

 

「どこに行ってたんや!」

 

「レンヤ!あまり動かないの!」

 

「レンヤ君……!その髪……」

 

「切っちゃったの⁉︎」

 

皆に心配された様だ。

 

「屋上に居ただけだ、なのはと話しがあってな」

 

「もう、いいの?」

 

「うん!私はもう大丈夫なの!」

 

「あまり心配をさせるな」

 

部屋からお父さんとお母さんが出てきた。

 

「もう、髪をこんなにして。後ろだけ切って、髪が滅茶苦茶じゃない」

 

「あはは、ごめんなさい」

 

「とにかく今は休め、散髪はその後だ」

 

「そうだ、クリスマスパーティーどうしようか」

 

「あっ私、病室で誕生日会をやっていいか聞いてくるね」

 

「それはいいアイディアよ!」

 

「早くレンヤ君が元気にならるようにお祝いしよう!」

 

「ちょっと待て!恥ずかしいから止めて!」

 

「堪忍せなあかんよ、レンヤ君」

 

「我慢する事だよ」

 

「わーいわーい、パーティーだー」

 

「士郎、一杯やろうぜ」

 

「はは、それは帰ってからね」

 

「ほどほどにして下さいね」

 

その後病室でクリスマスパーティーと俺の誕生日会を開いた。

 

なのはも、皆も、元気になってよかった。

 

 


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