「ふう、戻ってこれたのか?」
「ここは裏山だな、ほら家が見える」
降ってきたソエルをキャッチしながら言われた方向を見る。
「本当だ」
「レンヤ、日付はどうなっているの」
「待ってくれ、今サイトで見るから」
携帯の扱いに慣れてないため時間がかかった。
「えーと、出た。日付は……うんミッドチルダと同じくらい経っているみたい」
「なら帰ろうぜ」
「なのはを安心させなきゃ」
「わかっているよ、ただお母さんたちになに言われるかが怖いな」
愚痴りながら家に向かって下山した。家の前に立ちインターホンを押そうとするも、指が進まない。
「早く押しちまえよ」
「心の準備をさせてくれ」
深呼吸をして落ち着く。
「よし!」
「いっけー!レンヤ!」
もう一度インターホンを押そうとするも……指が進まない。
「押せよ!」
「この後起こる事件に心が追いつかない」
「えい!」
ソエルがインターホンを押した。
「ちょっとソエル!まだ準備が出来てない!」
「永久ループを止めただけだよ」
く、ヤバイお母さんが近づく音が聞こえる。どこかに隠れないと…
「はーい………あら?」
「ええと?ただいまお母さん」
「…………………」
お母さんはなにも言わず抱きしめた。
「お母さん?」
「どこに行っていたのよ、心配したんだからね」
「ごめん…ただいまお母さん」
「おかえりなさい、レンヤ」
「私もいるよー」
「忘れちゃあ困るぜ」
「ふふ、おかえりなさいラーグ君、ソエルちゃん」
嬉しそうに笑うお母さん、よかったこれで……
「それじゃあレンヤ、今からお話ししましょうか」
……逃げられなかった。
「ふふ、なのはが帰ったらどうなるでしょうね」
やめて!追い打ちかけないで!その後お話しされてしまった。夕方になり俺の意識が戻った。
「はっ!ここはどーこ、レンヤさんはだーれ?」
「なにバカな事を言っている」
「痛っ!」
振り向くと恭弥兄さんと美由希姉さんがいた。
「あ、ただいま〜」
「はー、説明は後で聞くとしてあまり心配させるな」
「ごめんなさい…」
その時美由希姉さんが抱きしめてきた。
「ね、姉さん?」
「全く、なのはの様に心配させないで」
「……ごめんなさい」
目尻に涙を浮かべながら抱きしめてくる姉さん。
「うん、許す!」
先程と打って変わり笑顔になる。
「それでソエルちゃんとラーグ君がしゃべるとはね〜」
「これからよろしくね美由希」
「よろしく頼むぜ美由希」
「うん、よろしくね、2人とも」
「「2人じゃないよ(ぞ)!モコナの数え方は1モコナ、2モコナだ(よ)!」」
「えっそうなの?」
「こいつらが勝手に決めているだけだよ」
その時、玄関が開く音が聞こえた。
「なのはが帰ってきたのか」
「レンヤー、覚悟しておきなさい」
「ぐっ」
扉が開かれ、なのはがいた。
「レン……君?」
「えっと……ただいま、なの……」
言い終わる前になのはが飛び込んできた。
「おっと、なのは?」
「ぐす、今まで……どこ行ってたの……」
「……半年前と同じだよ、俺もなのはの事が心配でしょうがなかった」
「本当?」
「もちろん、でもごめんな魔導士の事黙っていて」
「それこそ私も同じだよ」
「なのは……」
「レン君……」
「…………コホン」
「「!」」
パッと離れる2人。
「えーいい雰囲気の所悪いのですが」
「恭弥ちゃんがご立腹です」
「……………………」
無言で睨まないで下さい、怖いです。
「はあ、大丈夫かなのは」
(あのまま近づいてたら…き、きききっキスを!レン君と……えへへ)
「おーい、なのはー」
「完全に乙女の顔ね」
「ぷぷぷ、面白いね」
「見ていて飽きないな」
「…………俺は認めんぞ」
そんな事もあり、お父さんも帰って来た後事情を説明して。無茶だけは絶対にしないと約束した。自室に戻り、ベットに倒れこむ。
「はー久しぶりの我が家だ」
「そこはかとなく落ち着くよ」
「明日もある、早く寝ようぜ」
「そうだな」
学校の為の身支度を済ませて、寝ようとした時ドアがノックされた。
「レン君、起きてる?」
「なのは?入っていいぞ」
入ってきたなのははパジャマ姿で枕を持っていた。
「えっとレン君、今日は……一緒に寝てもいいかな?」
「え!ええとー……」
どうしようか考え込むレンヤ。
(心配かけたからな)
「いいぞ」
「……!ありがとう!レン君!」
明かりを消してベットに入る。
「こうして一緒に寝るのも久しぶりだな」
「うん、1年振りくらいかな」
そこから沈黙が続いた。
「あれから襲って来たやつらにはあったのか?」
「ううん、まだ一度もデバイスもまだ直っていないから」
「そうか無茶だけはしない様にな」
「うん、お母さんとの約束だもん」
また沈黙が続く。
「レン君」
「なんだ」
「レン君は…いつかこの家を出て行くの?」
「えっ」
突然の質問に驚く。
「ソエルちゃんから聞いたの、中学を卒業したらミッドチルダに行って両親を探すって、そうじゃなくても家から出るって。なんで今更親孝行なんて…どうして改まって言うの?」
「……………………」
「レン君」
「………ああ…俺はこの家を出て行くつもりだ」
「!」
「だってそうだろ、本来俺がこの家に居るのは両親を探すたの条件として住んでいるだ、でもこの2年間何の手がかりも無くただただ時間が過ぎていった。俺はミッドチルダ出身だった…当然手がかりなんて無かった、これ以上お父さん、お母さんにも、恭弥兄さんや美由希姉さん、もちろんなのはに迷惑はかけたくないんだ」
「…………………」
「だから、どうか分かって欲しい。…家を出たとしても海鳴にはたまに顔を出すつもりだ。お父さんとお母さんにだってここまで育ててもらった恩はずっと……」
「……分かってない」
「え」
「レン君、ぜんぜん分かってない……」
なのはが体に抱き着き強く抱きしめる。
「お父さんの気持ちも………お母さんの気持ちも………」
なのはの顔を覗き込む、目に涙を浮かべていた。
「私の気持ちも………」
「なのは……」
「レン君に……レン君にとってここは出て行く様な場所なの…!私たちは家族じゃないの…!」
「…………………」
「レン君は胸を張ってそれが逃げじゃないって、本当に言い切れるの…!」
「…………………!」
「私は………レン君に……ずっと……ここに……いて欲しいよぉ」
なのはは泣いてしまう。俺はなのはを抱きしめて。
「………ごめん………本当に………ごめん…」
自分の過ちに気づきただ謝った。
「俺は……ここにいるよ……ずっと…なのはの側にいるよ」
「……ふえええぇぇぇぇぇん‼︎」
大声を出して泣き始めたなのはを優しく抱きしめ泣き止むまでずっと…頭を撫で続けた………
そのまま俺たちは眠ってしまった。
部屋の向こうでは。
「ラーグ」
「ソエルちゃん」
「士郎に桃子か」
「起こしちゃったかな」
「ううん、大丈夫よ」
「2モコナとも盗み聞きは良くないぞ」
「お互い様だ」
「ふふ、そうね」
雰囲気が暗くなり。
「私は、本当の意味でレンヤの気持ちを分かってなかったのだな」
「それはレンヤも同じだよ」
「あの子は、今まで自分を押し殺して頑張ってくれた。私は…それに正しい答えをあの子にあげられなかった…」
「桃子たちは頑張っているよ」
「それでも…!あの子を…救ってあげられなかった…!」
桃子は涙を流す。
「私も同じさ…レンヤの両親を探す事を……諦めていた……最後まで味方になれなかった…!」
「士郎、仕方ないさ。レンヤはミッドチルダ出身、分かってくれる」
「私は……あの子を…裏切ってしまったのだ……!」
士郎は自分の不甲斐なさに怒りを覚える。
「士郎…」
「なら、やり直せばいいじゃない」
「俺たちには、まだ時間がある」
部屋から恭弥と美由希が出てきた。
「恭弥……美由希……」
「あなたたち……」
「私たちは今日、本当のレンヤとなのはを知った」
「そこからまだ、やり直せる」
「桃子、士郎、だから諦めないで」
「お前たちが挫ければあいつらはどうする気だ」
「「……………………」」
桃子は涙を拭い、士郎は頬を叩く。
「そうね、私たちがしっかりしないとね!」
「まだ諦めるのは早いな」
「その意気だよ!お父さん、お母さん!」
「俺も協力する」
「私も!私も!」
「言わずもがな、だぜ」
「みんな……ありがとう」
翌朝ーー
「う、うん……」
元に戻ったベットの感触が自分の部屋だと認識させる。
「っ……うん?」
体が動かない、下を見てみると……
「すう……すう……」
なのはが俺に抱きついていた。
(ああ、そうか……あのまま寝ちゃったのか)
目尻を見ると赤く腫れていた。
「ごめん……なのは……」
そのまま頭を撫でる。
「………レン……君…?」
「おはよう、なのは」
「………にゃあ!」
抱きついた恥ずかしさに飛び退く。
「ありがとう、なのは」
「にゃ?」
「おかげで目が覚めた、本当にありがとう」
「え、あ、うん///」
顔を赤くするなのは、風邪か?
「それじゃあ!また後で!」
「分かった」
なのはは自分の部屋に戻って行った。その後、俺も久しぶりの制服を着て準備を済ませた後、下に向かった。テーブルにはなのは以外のみんながいた。
「おはよう、お父さん、お母さん、恭弥兄さん、美由希姉さん」
「おはようレンヤ」
「よく眠れたかい?」
「おっはよーレンヤ」
「……ネクタイが曲がっているぞ」
そう言い恭弥兄さんはネクタイを直してくれた。
「ありがとう、恭弥兄さん」
「みんな、おはようなの!」
「「「「「おはよう、なのは」」」」」
なのはが降りてきた、泣きはらした顔はなくなっていた。
「それじゃあみんな」
「「「「「「いただきます」」」」」」
その後朝食を食べ終え、登校する。
「お父さん、お母さん、行ってきます!」
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい」
「気をつけるんだぞ」
「「はーい」」
「…………………」
「これでいいんだよ、桃子」
「士郎さん…」
「少しずつ、家族になればいいんだ」
「……はい!」
聖祥行きのバスのも久しぶりに乗るな、て言うかアリサたちに何て言おう。
「久しぶりね……レンヤ」
「本当に…久しぶり、レンヤ君」
アリサはともかく、すずかまで怒ってらっしゃる!
「怒っていないよ」
………手に持っている真っ赤な羽根は何ですか。
「えっと……」
なのはをチラリと見ると無言で頷いてくれた、魔法の事を話していないな。
「ごめん!後で絶対に説明するから!」
手を合わせて何とか謝る。
「はあ、いいわ」
「ふふ、ちゃんと帰ってから説明してね」
「ああ必ず」
『レン君大変だね』
『……ほっといてくれ』
そしてバスは聖祥に着き、みんなと別れ俺は復学のため職員室に向かう。
「………なるほど、それで休んでたのね」
「はい」
海外に行っていたと言い訳をしておいた、間違っていないはず。海外じゃないから異世界の外で界外?
「分かったわ、休学中のノートとプリントは高町さんがとっているから、後でもらってね」
聞いてないんでけど、まああんなにドタバタしたら忘れても仕方ないか。教室に向かい、入る。
「おはよ…」
「レ〜〜ン〜〜ヤ〜〜!」
「うわ!アリシア!」
いきなりアリシアが飛び込んで来た。
「えへへ、久しぶりのレンヤだ〜」
「アリシア、聖祥に入れたのか?」
「それどういう意味!」
「見た目からして」
「むー、こう見えても私は頭良いんだから!」
「おお、すごいな」
「………褒められている感じがしないんだけど………」
素直にすごいと思うが。
「レ、レンヤ!」
「フェイト!お前も入ったんだな!」
「うん、姉さんと一緒に」
「そうか、そのリボン似合っているぞ」
「あっありがとう///」
フェイトのリボンは、なのはと交換した物だ。
「レンヤ君」
「やっと来たわね」
「レン君!」
ちょうどなのはたちが来た。
「そうか、もう仲良くなったんだな」
「ビデオメール越しでも顔を知っていたからすぐに仲良くなれたよ」
「私も〜」
「アリシアの心配はしてない」
「ひどい!」
「はは、ん?そういえばフェイト、アリシアのことお姉ちゃんって呼ばないのか」
「うっうん、恥ずかしいから…」
「フェイトもひどい!」
「あはは…」
そう言えば……
「なのは、先生から聞いたんだが。休学中の俺のノートとプリントを持っているんだって」
「あ、忘れてたの…」
「ドタバタしてたから仕方ないよ」
「とにかく見せてくれ」
その時チャイムが鳴った。
「ノートはまた後ね」
「その様だな」
すぐに先生が来て久しぶりの授業だが付いて行くのがやっとだった。
昼休み、屋上ーー
「頭がパンクする〜」
「休み時間の間に予習しても間に合わなかったね」
「所詮付け焼き刃よ」
「でもレン君頑張ったと思うの!」
「レンヤ君、お疲れ様」
「まだ授業はあるけどね」
追い打ちかけるな、アリシア。
「そうだレン君、放課後空いている?フェイトちゃんたちの携帯電話を見に行くんだけど一緒に行こ」
「昨日今日で予定なんかないんだけど…」
アリサとすずかに顔を向ける。
「私たちも付いて行くわよ」
「それが終わった後で大丈夫だよ」
「ありがとう」
放課後にみんなでフェイトたちの携帯を見に行く事になった