魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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大渦巻の龍

 

 

塔に向かうため、ヘリで南東にある近海に向かい。 シェルティス達は龍を引きつけている隙に遠回りで飛んでいた。

 

「! レンヤ、あれ見て!」

 

塔の近付くと、アリシアが塔の真下を指差した。 そこを見ると……小型のグリードが民間人を攫い集めていた。

 

「人が……攫われている!?」

 

「マジかよ!!」

 

「ーー総員、降下開始! 速やかに市民を救出する!!」

 

予定を早めてヘリから飛び降り、パルクールステップで空中を蹴り一気に距離を詰め……小型の鳥型のグリードを斬り裂いた。

 

そして落ちてきた市民を魔力ネットで受け止め、この一連の間に先に塔に向かっていたアリサ達に追いついた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あ、ああ……なんともないよ。 ぐっ……」

 

「血が……!」

 

着陸すると、何人かの市民が負傷しており。 その中の眼鏡をかけた太った男性の腕から多量の血を流していた。

 

「っ……」

 

「ちょ、レンヤ!?」

 

俺はすぐさま左腕の二の腕にあったリボンを解き、彼の腕の付け根を強く縛って止血する。

 

「あ、ありがとう……」

 

「それお母さんの形見のリボンでしょう!? 使っていいの!?」

 

「今は人命が優先だ。 ちゃんと後で返してもらうから安心しろ。 美由希姉さん、リンス、ヴァイス! この人達を安全な場所まで、なのは達に応援も頼む!」

 

「了解!」

 

「任せて!」

 

しかし、一体どこから市民をここまで……この人数、塔が現れてから集めたにしては多い……ここ最近、失踪や行方不明者の続出などのニュースもなかったはずなのに……

 

「……まさか、今日一日だけで集めたというのか……?」

 

「恐らくそうだね。 さっきの鳥型のグリード、影属性だった……空間転移で一気に集めたんだと思う」

 

「人々を集めて、一体何をする気だったんだろうね?」

 

今までグリードにしてきた事を考えると……ロクなことではないことは確かだ。

 

「……考えても仕方がない。 俺達は予定通り塔の攻略を開始する!」

 

「了解!」

 

「来て早々いきなりこれですか……」

 

「やるっきゃないね!」

 

「が、頑張ります!」

 

「ーーはい」

 

「ピュイ」

 

「……ん?」

 

今、なんかここにはいない人物の声と鳴き声が聞こえたような……

 

「って、うわ!? クレフにクローネ!?」

 

「僕もいるよ♪」

 

「コルルまで……」

 

いつの間にかクレフとクローネ、コルルが背後にいた。 この子達は危険だからイット達と一緒に置いてきたはずなのに……

 

「……気配を消す事には自信があります」

 

「こんな大事な時に置いてきぼりなんてヤボな事は言いっこなしだぞ。 僕を頼れよ、相棒」

 

「……全く、本当に自由な相棒だね」

 

「はあ、来てしまっては仕方がないわ。 市民もかなりの人数がいるし、美由希さん達に任せるのも忍びない……一緒に来てもらった方がむしろ安全ね」

 

「クレフちゃん、ちゃんと私達の後について来てね?」

 

「はい」

 

軽く嘆息しながらキャロル……って、今はいないからいいか。 とにかくキャロとエリオの元に向かった。

 

「キャロ、エリオ、2人を見ててくれな?」

 

「はい!」

 

「任せてください!」

 

俺達は塔の入り口から内部に入り、かなりの高さの吹き抜けがあるフロアに出た。

 

「ここが塔の下層のようだね」

 

「これが塔の内部……異様な雰囲気ね」

 

「……? この気配は……」

 

それぞれが周囲を警戒しつつ見回す。 すると……

 

「ーーあれは……!?」

 

正面に石碑のようなものがあり、そこに刻まれていたマークに見覚えがあるも、急いで近寄って確認し……

 

「嘘だろ……」

 

思わずそう声を漏らすしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして、シェルティス達はツァリの指揮の元、龍型のグリムグリード……リヴァイアスと対面していた。

 

「改めて見るとホントにデカイね……」

 

『全長は軽く1キロを超えているね』

 

「これは骨が折れるな」

 

「ですが、やらなければなりません」

 

シェルティス達がそれぞれの武器を構えている中、その後ろではなのは達はリヴァイアスを前にして怯んでいた。

 

「あ、あれと戦うの?」

 

「今までとは威圧も大きさも段違い……」

 

「まさしくスケールが違うなぁ……」

 

『ーーはやて、今レンヤから伝令が届いたよ。 至急、塔に向かって。 どうやら一般市民が連れ去られたみたい』

 

「なんやて!?」

 

思いがけない報告に、はやては驚く。

 

『今すぐフォワード陣と救護班を塔にまて寄こして、今は市民の安全確保が最優先……護衛としてリヴァン、ヘリを手配したからお願いするね』

 

「たっく……戦わずして戦線離脱かよ……了解した。 フォワード、着いてこい、安全なルートで最速で向かうぞ」

 

「は、はい!」

 

「分かりました!」

 

リヴァンはティアナ達を引き連れ、後退した。

 

「エリオ、キャロ、気をつけてね……」

 

「フェイトさんも!」

 

「どうかお気付けて!」

 

後退際にフェイトが声をかけ、エリオとキャロは心配無用な振る舞いをし……ヘリに乗って行った。

 

「さあ、始めようか。 異世界同士、最後の共闘……さっさと倒して、元の平和な日常を勝ち取るぞ!!」

 

『おおっ!!/お、おお……!!』

 

ユエ達はシェルティスの激励に応え、なのは達も若干怯みながらも激励に応え……

 

ギャァアアアアッ!!

 

リヴァイアスは咆哮を上げながらその身翻して天高く飛び上がった。

 

「いきなりか!」

 

『皆、リヴァイアスの正面に立たないで散開しつつ接近して!』

 

周囲に念威探査子の花びらが舞い散る中、基本陸上戦のシェルティス達はティーダとなのは達に引っ張ってもらって上昇し、その後になのは達も続く。

 

するとリヴァイアスは巨大な口を開け、咆哮と共に激流を放出した。 全員それを避けるが……激流は海を切り裂き、陸に直撃すると刃物が切れたように大きく裂かれた。

 

「な、なんて奴だ……」

 

「水を高圧で放出する事で刃とする……珍しい事じゃない。 美由希もよくやる手だ」

 

シグナムはこの威力に戦慄するが、ティーダは当然のように軽く流す。 するとリヴァイアスは身を捻らせ……突進して来た。

 

「あの巨体でなんて速さ……!」

 

「手のかかる事を」

 

『ーーソーンバインド!!』

 

周囲に飛び散っていた花びらがバインドを展開し、リヴァイアスの進行方向に網目状のネットを張るが……絡まっても勢いは止まらず、無理矢理引き千切って突進する。

 

『質量が違い過ぎるね。 まるで勢いが止められないよ』

 

「だろう、ね!」

 

シェルティスは突進を避けながら巻き起こる突風に耐え、剣を振るい翡翠の結晶を形成する。

 

「剣晶二二四……洸輪牙(こうりんが)!!」

 

双剣の刀身に結晶を纏わせ、刀身を大きく延長して振り下ろし、リヴァイアスの胴体を切り裂いた。

 

《ソニックムーブ》

 

「はあっ!」

 

フェイトは高速で背後からリヴァイアスに接近し、4枚あるヒレのうちの1つにザンバーフォームのバルディッシュを突き立てた。

 

「ぐうう……うあっ!」

 

だがリヴァイアスは縦横無尽に動き回り、大剣が抜けてフェイトは放り出されてしまったが……すぐさまユエが同じ箇所に向かった。

 

「うおおおおっ!!」

 

掌底がヒレに衝突し、根元からヒレを破壊した。 リヴァイアスは痛みに悶え苦しむが、次の瞬間……流れるように、だが目にも留まらぬ速さで彼らの周囲を周り始めた。

 

「なっ……!?」

 

「速い!」

 

「! マズい……これは……!」

 

リヴァイアスは何度もその場所を回り……巨大な竜巻を発生させた。 その大きさはリヴァイアスの大きさを優に超える範囲……ミッドにも被害が及んでいる。

 

「くっ……負けるかってんだよ!!」

 

《シュワルベフリーゲン》

 

ヴィータは複数個の鉄球を展開すると、グラーフアイゼンを振って全力で撃ち、リヴァイアスを攻撃するが……リヴァイアスは虫を払うかのように身震いで鉄球を弾いた。

 

「ま、まるで効いてねえ……」

 

「くっ……レヴァンティン!」

 

《ボーゲンフォルム》

 

剣と鞘を連結させてカートリッジをロードし、弓となったレヴァンティンに矢をつがえ……

 

「翔けよ、隼!!」

 

《シュツルムファルケン》

 

矢が放たれ、炎の隼となって飛翔し……リヴァイアスの顔面に直撃したが、かすり傷程度の傷しか出来なかった。

 

「硬すぎる……!!」

 

『ヴィータとシグナムの攻撃が軽いだけだよ! 2人の魔力はこちらの2人と差異はない……けど、同じ魔法なのにこうも違うのは技量の差。 いくらアリサ達に師事を受けても短期間では埋まらなかったね』

 

「チッ……役立たずなのは分かっているが、どうしようもならねえか」

 

「気にしないで下さい。 皆さんは充分にやってくれています」

 

慰めと分かっているが、なのは達はユエの言葉を受け取った。 その時、リヴァイアスは咆哮を上げながらその身に竜巻を纏った。

 

「おっと……」

 

「霊と風属性が強いな……」

 

『ーーなのは、全部薙ぎ払って!』

 

「え、ええ!? わ、私が!」

 

『やり方はアリサから教えてもらったでしょう? 急いで!!』

 

「うっ……レイジングハート!」

 

《ロードカートリッジ》

 

多少しふりながらもカートリッジをロードし、リヴァイアスの尾に狙いを定め……

 

「ディバイン……サーーベル!!」

 

尾に向かって砲撃を放ち、思っ切り横に動かして胴体を伝って薙ぎ払うように顔面まで砲撃を放ち、竜巻を払った。

 

「ヒュウ、やるじゃねえか」

 

「はあはあ……キ、キツイ……」

 

「大丈夫か、なのは?」

 

『この程度でへばっていないで、まだ終わってないよ』

 

「来るぞ!」

 

リヴァイアスは大口を開けると……巨大な燃え盛る火球を放ち。 さらに海底の地面を隆起させて大地を盛り上がらせ、地上から鋭利な鎗を射出してきた。

 

「うそっ!?」

 

「焔に鋼属性……それはそうか、なんせ11体のグリードの集合体なんだからね」

 

『ーーあった! リヴァイアスの霊核が見つかったよ。 リヴァイアスの喉元……そこに霊核がある!』

 

火球、鎗、嵐を同時に対処しながら避ける中、念話でツァリがリヴァイアスの弱点を発見したと報告を受けた。

 

「だからといって、わっ!? どうやってあそこまで行くの!?」

 

「台風の目すらない暴風……突破するのは難しいね」

 

「突破が無理なら……道を切り開くまで!」

 

荒れ狂う暴雨の中ユエは飛び出し、全身の剄を高め……

 

「外力系衝剄……竜旋剄(りゅうせんけい)ッ!!」

 

活剄により強化した腕力で体をコマのように回しながら、正面に竜巻を模した衝剄を放つ。 竜旋剄はリヴァイアスに衝突すると、纏っていた暴風を打ち消した。

 

「今です!」

 

『ソーンバインド!』

 

「剣晶五四二……緑柱光牢《りょくちゅうこうろう》!」

 

ツァリが茨のバインドで拘束、シェルティスが地上から隆起したいくつもの巨大な翠の水晶の柱がリヴァイアスを挟み込み動きを封じた。

 

「行くぞ、アイゼン!」

 

《ラケーテンフォルム》

 

巨大化し、魔力噴射で加速したハンマーを大きく振りかぶり……

 

「ラケーテン……ハンマーーーッ!!」

 

リヴァイアスの頭に振り下ろし、海面に叩きつけた。 そしてシグナムは急降下してリヴァイアスに接近し……

 

「はあああああっ!!」

 

裂帛の気合いを叫びながら納刀状態でカートリッジをロードし……

 

「紫電……一閃ッ!!」

 

抜刀により放たれた火炎の一閃はリヴァイアスの右側面にあった二枚のヒレを両断した。

 

「おお……らああっ!!」

 

ティーダが海面スレスレで飛翔し、リヴァイアスの真下に行くと急上昇し……下からリヴァイアスの顎をかち上げて天を向かせ……

 

「ディバイン……バスターーー!!」

 

杖を構えて魔力を溜めていたなのはが砲撃を放ち、直撃と同時に爆発が起きる。 そして……フェイトがリヴァイアスの喉元に大剣を突き刺し……

 

「おおおおおおっ!!」

 

一気に振り下ろしながら降下し、リヴァイアスの身体に斬撃の軌跡を描いた。 リヴァイアスは断末魔を上げると自身が起こした竜巻に呑み込まれ、崩れ落ちていった。

 

「はあ、はあ……や、やった……!」

 

「な、何とか倒せた……」

 

なのは達はリヴァイアスによって隆起した大地に着地し、息を荒げながら座り込む。

 

「ふう、当面の危機は脱したな」

 

「後はレンヤ達を待つだけですね」

 

『探査子と届かないし、何もないといいんだけど……』

 

ユエ達が紺碧の塔に向かったレンヤ達の安否を心配していた時……海に沈みかけていたリヴァイアスは消滅すると……大量の小さな水の龍となって襲いかかってきた。

 

「なっ!?」

 

「まだこんな力が!」

 

「悪あがきを……!」

 

水龍は小回り効き、迎撃の弾幕を擦り抜けて接近し……なのは達の身体にまとわりついた。

 

「キャア!」

 

「なのは……ぐっ!」

 

「チッ!! 離せよ!」

 

拘束から逃れようともがくが……次の瞬間、水が固まり、凍り始めた。

 

「凍って!?」

 

「う、動けない……!」

 

「こっのぉ!!」

 

水が完全に凍り、さらにそこか徐々に気温が下がっていく。

 

《気温、急速に低下。-138.5……-185.4……-216.0…………-273.15、絶対零度、到達しました》

 

「嘘だろ!?」

 

レイジングハートの測定結果にティーダは思わず声を上げる。 それぞれが脱出しようと氷を砕こうとするも……それよりも早く修復されてしまう。

 

「シグナム! 何とかならねえのかよ!!」

 

「今やっている!」

 

シグナムはカートリッジをロードし、炎を燃やして氷を溶かそうとするも……溶ける気配はなかった。 その間にも氷はどんどん広がって、盛り上がっていた陸を超えて海を侵食していく。 ツァリが美由希達に救援を求めたが、それでどうにかなる状況でもない……

 

「くっ……どうすれば……!」

 

「ーーあら? まあ、これは大変」

 

『!?』

 

唐突に、頭上から声が降りかかりシェルティス達の前に舞い降りたのは……腰まである長い金髪を風になびかせ、翡翠と紅玉の瞳のオッドアイの女性だった。

 

「え……」

 

「そ、その目は……!」

 

「どうやらお困りのようね?」

 

女性は驚愕するシグナム達の視線を流し、口元に手を当てて微笑みながら彼らに質問するのだった。

 

 


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