魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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今日の敵は明日の友?

 

 

不可解なグリードを倒し、この世界の組織と関わり合わないように俺達は結界の中を走っていた。

 

「まずは結界をどうにかしないとね」

 

「それなら私がーー」

 

走りながらアリシアは片手を上げ、指を鳴らすと……アッサリと結界は破壊された。

 

「ふっふーん、この程度の結界で私が止められると思うなよ?」

 

「アリシアが優秀なのかはともかく、やっぱり俺達の世界と比べると実力や技術レベルが低いな」

 

ティーダさんが破壊された結界を見ながらそう考察する。 確かに、なのはとフェイト、今日のスバルとティアナを見てもそうだが……言っちゃ悪いが弱かった。

 

「恐らくグリードの存在の有無でしょうね。 この世界にはグリードがいないから、なのはちゃん達も慣れてなかったから苦戦していた……それなら辻褄が合うわ」

 

「でも、あそこまで差が出来るかしら? ギンガは知らないけど、スバルの戦い方……普通のシューティングアーツだったわ」

 

「ティアナにしても、魔法にあんまり工夫がなかったな……」

 

考えても答えは出てこない。 その時、目の前に陸士部隊の車が急停止した。

 

「ーーレンヤ!」

 

「ヴァイスにリンス!」

 

「早く乗れ!」

 

どうやらヴァイスが乗ってきた車で、俺達は駆け込むように乗り込んで……すぐにアクセル全開で飛ばした。

 

「助かったよ。 このまま星見の塔までお願いするよ」

 

「ああ。 まあ、安全なドライブとは……いかねぇけどな」

 

俺はメイフォンを取り出し、ソナーアプリを開く。 と、そこで後部座席に……クレフとクローネ、コルルが座っていた。

 

「って、あれ? なんでクレフとコルルまでいるの?」

 

「どうも……」

 

「ピュイ」

 

「いつまでも隔離施設の質素な服という訳にもいかないだろう。 一緒に連れて行って服を買ってあげたのだ。 ここでは、この子達は犯罪者ではないからな」

 

「……別にあのままでもよかったのですが……」

 

「まあまあいいじゃない。 カワイイわよ♪」

 

「あらあら」

 

ルーテシアはクレフに抱きつき、メガーヌさんが微笑ましそうに2人を眺める。 その時、メイフォンに反応があり、後ろから複数人の追っ手が近付いていた。

 

「ご歓談中悪いが……お客様が来たようだぞ」

 

「……ですよねー」

 

「気配は5つ……シグナム副隊長率いるライトニング分隊とヴィータか」

 

上空から追ってきたのはシグナムとヴィータ、フリードに乗るエリオとキャロだった。 まあ、予想通りだな……

 

「ふむ……騎士達に追われる羽目になるとは、おかしな事もあるのだな」

 

「それもそうね。 キャロとエリオが真剣な表情で追ってくる……なんか複雑〜」

 

「キャロ……」

 

クレフは後ろを向いて、どこか悲しそうな目をしてキャロを見つめ……元の姿勢に戻りながら静かに目を伏せる。

 

「シグナム達には悪いけど、振り切らせてもらう。 ヴァイスはそのまま走ってくれ、ルーテシア、迎撃するぞ」

 

「はーい」

 

車の天井を開けてルーテシアと共に屋根に登り……シグナム達と相対す。

 

『そこの車、今すぐ速度を落として路肩に停車しろ』

 

「ーーだ、そうだが?」

 

「……いくらシグナム姐さんの頼みでも、それは聞けねぇな!」

 

リンスはそう隣のヴァイスに聞くが……ヴァイスは停止の呼び掛けを振り切り、さらにスピードを上げた。 それに対してシグナム達は停止の意思なしと判断し、デバイスを構える。 その前に、俺は彼女達に呼びかける。

 

「機動六課、被害を出したくなかったらこれ以上は関わるな。 この事件、既にお前達が手に負える範疇を超えている」

 

「そんな言い分、聞くと思うか!?」

 

「……だよなぁ」

 

っていうか、この言い方もう犯罪者じゃん……俺ってこんな感じだったけなぁ……

 

「はぁい♪ キャロにエリオ、こっちの私は元気してる?」

 

「ル、ルーテシアちゃん……」

 

「本当に……別人みたいだ」

 

「うーん、本人と言えば本人だけど……別人と言えば別人だからねえ。 ま、でも……手加減はしないよ」

 

『!』

 

2人はなにを思ったのか、過敏にルーテシアの言動に反応する。 と、そこでふと、ルーテシアはキャロの左腕を見た。

 

「そういえばキャロ、あなたガントレットはどうしたのよ?」

 

「? ガントレット?」

 

「これよこれ」

 

ルーテシアはキャロに見えるように左手を上げ、装着されてある紫色のガントレットを見せた。

 

「どうやら知らないようね。 ねえレンヤさん、シグナムとヴィータも貰っていい? なんか今なら勝てそうな気がする」

 

《Gauntlet Activate》

 

ガントレットを起動しながら、ルーテシアは不敵な笑みを浮かべてお願いした。 ……確かに、勝てるだろうな、多分。

 

「好きにしろ。 車の方は俺が守っておくから、全力で行ってこい。 油断はするなよ」

 

「了解! 行くよ、ガリュー!」

 

(コクン)

 

ルーテシアは気合を入れ、肩に乗っていたガリューがそれに応えるように頷く。 キャロたエリオはあの小さな物体がガリューとは思わず、驚きを露わにしている。 そしてルーテシアはゲートカードを屋根にセットし……

 

「爆丸、シュート!」

 

ガリューは丸まってルーテシアの手の中に飛び込み、ルーテシアは大きく右腕を振りかぶると……上に向かって投げた。

 

「ポップアウト! ダークオン・ヴォイド・ガリュー!!」

 

そして巨大なガリューが現れ、やはり初見の彼らは突然現れたガリューを驚愕しながら警戒する。

 

「な、なんだありゃ!?」

 

「かなり大きいけど……間違いなくあれはガリュー!」

 

「ーーいつまでも付いて来られたら敵わないからね。 一気に決めるよ!」

 

《Ability Card、Set》

 

ルーテシアはガントレットにカードを差し入れ、ガントレットを掲げる。

 

「アビリティー発動! ナイトカーテン!」

 

アビリティーが発動し、ガリューの首に巻いてあるマフラーが闇色に光ると独りでに動き出し……高速で射出されて縦横無尽にシグナム達の周囲を駆け巡った。

 

「なに!?」

 

「これは……」

 

「ガリュー!」

 

(グッ!)

 

ガリューはマフラーを勢いよく引っ張りって巻きとると……一瞬でシグナム達を捕縛し……

 

「アビリティー発動! レムヒュプノス!」

 

マフラーを伝い闇がシグナム達を覆い……力無く倒れてしまった。 ガリューは優しく放ると、ルーテシアはパンパンと手を叩いた。

 

「ほい、一丁上がりっと」

 

「流石だな」

 

「私の知る皆だったら余裕で避けられていたけどね」

 

確かに……そう思いながら車は星見の塔に統治。 そこから転移し、太陽の砦に帰投した。

 

「ーーで、こうなったか……」

 

俺達は再び会議室で話し合っていた。 そして今頭を抱えているのは……ニュースで放送されている内容だった。

 

『現在、突如としてミッドチルダでは正体不明の危険生物が出現しています。 その原因の関係者として、管理局はこの事件に関連のある彼らを指名手配しました』

 

次に、司会者の隣に映し出されたのは……昨日と今日、外に出た俺達の姿だった。 それを見た俺は……ガックシと項垂れた。

 

「……とうとう指名手配されちまったな」

 

「あ、あはは……ちょっと、笑えないかも……」

 

「仕方なし、とはいえ。 いい気分ではないですね」

 

「スカリエッティ達とかもこんな気持ちだったのかなあ?」

 

「……言うな。 考えたくもない」

 

ユエの言う通り、仕方ないが。 心に何かこう……来るものがある。 スカリエッティなら狂ったように笑って受け流すだろうが……俺には無理だった。

 

「日傘の持ち主であるグリムグリードの手がかりはなし。 長期戦になりそうね」

 

「元の世界との連絡もつかないし……第2の拠点として、月の僧院にも行った方がいいかもしれないね」

 

「うえ、あの趣味の悪い場所で寝泊まりしたくないよ〜」

 

確証はないが、血が流れた場所で寝るのは……精神が疑われるな。 だがまあ、最悪の事態として候補には入れないと。

 

「進展が出るまで、こんな事を続けるしかないようだね」

 

「……なんだか悪い事ばかりで気が参りそうだぞ」

 

「良いことがあるとすればここの天然温泉くらいね」

 

「女子的にはそれも良いんだけどね」

 

「いや……クイントさんはもう女子って年齢じゃーーブハッ!?」

 

ヴァイスが何か言いかけた時……クイントさんが一瞬で背後に回り。 後頭部を強く殴って石のテーブルに叩きつけた。

 

「兎にも角にも、このまま討伐と逃亡を繰り返しては無為に時間を過ごすだけだ」

 

「正体は漠然と……目的、概要もロクに分かっていない。 地味に八方塞がりだな」

 

「だが、このまま続けていても機動六課が必ず出て来るだろう。 色々違うが、なのは達の本質は変わらんだろうし」

 

「闇の書事件のように、首突っ込んで来るでしょうね」

 

「ふふ、そうだな。 彼女達はそうだろう」

 

覚えがあるのか、アリサの言葉にリンスは苦笑しながら同意した。

 

「だから、皆に提案があるんだがーー」

 

俺は皆にある事を提案した。 そして、そんなこんなでグリード退治と逃走を続けて1週間後……

 

「ーーやっと見つけたで」

 

太陽の砦を取り囲むように機動六課が勢ぞろいしていた。 見つかっちゃいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、俺達はこの世界の機動六課隊舎に連行された。 手錠付きで。 指名手配から逮捕……人生の転落ってこんな感じなのかなぁ?

 

だが、この状況は概ね予想通り。 機動六課なら太陽の砦を見つけ出してくれると思っていた。 予想より1日くらい遅かったが……

 

「それで、あんたらの目的はなんや?」

 

そして今、リーダー格の俺が個室ではやてと対面していた。 他の皆は一緒の部屋のようだ。

 

「俺達をこの世界に連れてきたグリムグリードを討伐し、元の世界に変える事」

 

「……ホンマに別の世界……並行世界から来たん?」

 

「証拠はあるだろ。 この1週間でこの世界の事情は調べた。 アルピーノ家族の事情、アリサ達の魔導師か非魔導師の違い、そして……アリシア、クイントさん、ティーダさん、ここにはいないリニスとプレシアさん。 そして、リインフォース・アインスの死去。 これだけで信用出来ないか?」

 

「……………………」

 

得た情報をそのまま言うと、はやては少し顔を伏せる。 と、リンスが死んでいる……家族をそう言われると傷つく、少しデリカシーに欠けていたな。

 

「コホン、俺達のここ1週間の活動は必要以上に並行世界に干渉しないためだ。 まあ、結果的にこうなったんだけど」

 

机の下から両腕を上げ、手錠を見せる。

 

「それにしても、太陽の砦に行き着くまで随分時間がかかったな」

 

「え……結構早かったと思うんやけど……」

 

「1週間の間に出現したグリードは数えて21体。 逃走経路は毎度違うけど付近に星見の塔と月の僧院があった。 そこから予測すれば太陽の砦に陣を構えていることは容易に予想できたはずだが?」

 

「うぐ……」

 

「おおよそ聖王教会かヴェロッサ辺りに情報提供してもらったんだろ。 まあ結果的に良しとしよう。 前述の通り、俺達は太陽の砦に潜伏している情報を意図的に撒いていた。 それはどうしてか……分かるか?」

 

俺の質問にはやては少しの間考え込み……口を開いた。

 

「ええっと……管理局に協力を仰ぐため?」

 

「3割正解だな。 正確には機動六課にだ。 そして実力を図るためにも、な」

 

「実力やて?」

 

「全てグリードを相手にして、この世界の管理局は手も足も出てない。 そして俺達の介入によって解決している。 グリードの存在、全貌も掴めてないんだろ?」

 

事実と驚愕が混じったような顔をし、はやては何も答えられなかった。 俺は軽くグリードについて説明した。

 

「そんなのが君達の世界に……」

 

「そう、世界の裏側で跋扈している。 そして、それらの存在から市民を守るのが……異界対策課だ」

 

はやてに異界対策課がなんなのか聞こうとする前に、俺は用意していた記録メモリをテーブルの上に置いた。

 

「これに俺達が今まで起きた事件のデータが入っている。 これを見て、こちらとここの世界を見比べて吟味して、なのは達とよく考えてくれ。 首を突っ込むにしても、遅くはないだろ?」

 

それだけを言い残し……俺は席を立ち、シグナムに連れられて皆が待っている部屋に入った。

 

「どうだった?」

 

「当然の反応だった。 確かにこの世界のなのは達の実力は上位に行くが……それは魔導師レベルだ。 もっと身体能力がないとエルダーグリードも相手に出来ないだろう」

 

「グリードに対する経験値も足りてないしね。 このまま私達に任せてくれるといいんだけど……」

 

「無理無理。 あのなのは達よ、絶対に首を突っ込んで来るに違いないわ」

 

見た限り、戦闘能力はともかく性格にそんな違いはない……必ずと言っていいほどこの件に介入してくるだろう。

 

「あ、そうだ。 時間も余っているし皆でコレやらない?」

 

「ああ、それね。 良いわよ、ルールは分かっているわ」

 

「いざ……決闘(デュエル)!」

 

「ルーテシア、それは色々と違うから辞めろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻ーー

 

「な、何やこれ……」

 

はやてはレンヤから受け取ったメモリの中身をなのは達と一緒に見ていた。 映し出されたのは霧の魔女事件からこの世界でも起きたJS事件までの特筆して起こった事件と……D∵G教団、スカリエッティ陣営、異篇卿、魔乖術師集団などの犯罪組織の大まかな情報があった。

 

そして、それらを解決したレンヤ達の戦闘映像を見たはやては思わず驚愕の声を漏らし、なのは達は呆然としていた。

 

「ほ、砲撃を魔力刃に……」

 

「凄いけど……変なシューティングアーツ……」

 

「私の身体に刺青が……」

 

「イクシードシステム……なんて凄い力。 私より速い」

 

「あれがルーテシアちゃんが言っていたガントレットの能力……フリードが凄いことに……」

 

「キュ、キュク〜……」

 

「あ、あっちの僕はあんな凄い人と戦ったの……? しかも、キャロがすごくカッコイイ……」

 

スターズ、ライトニングは並行世界の自分を見て、驚く事しか出来なかった。

 

「ふむ、あちらのアギトの主人はバニングスか」

 

「つうかアタシがデカイ……メッチャデカイ!」

 

「おお、確かに。 メッチャ良い胸しとるなぁ」

 

「はやてちゃん、気になるけど今はそこじゃないわ」

 

「初代祝福の風……並行世界では生きているのか……」

 

「あの人が私のお姉ちゃんですかぁ……」

 

夜天の騎士はヴィータとの大きな違い、そしてリインフォース・アインスの生存に静かに驚いた。

 

「お母さん……ちょっと違うけど、ほとんど思い出の中のお母さんと一緒だ。 ねえティア、ティーダさんもーー」

 

「あれは兄さんじゃないわ!」

 

スバルがティーダの事をティアナにきくと……ティアナは乱暴に立ち上がり、声を上げて否定した。 すぐにハッとなり、バツが悪そうな顔をして座り直した。

 

「すみません……でも、兄さんはあんな豪快な人じゃないです。 一人称も僕でした……あれは、ティーダ・ランスターかもしれませんが……兄さんじゃありません……」

 

「ティアナ……」

 

「……コホン。 っていうか、俺もいるのかよ。 ドッペルゲンガーを見るようだ」

 

空気を変えるように咳払いをし、ヴァイスは他人を見るようにディスプレイに映る自分を見る。

 

「どうやらあっちの俺が持っている弓矢、なのはさんのお姉さんが持っていた小太刀と同じのようだな」

 

「聞いた話やとあれはソウルデヴァイス。 適格者と呼ばれる人物の魂が具現化した武器らしいんよ。 グリードと戦う時において重要な力になるそうや」

 

「魂が……武器に……」

 

単純に言えばレアスキルに該当する能力。 特にヴァイスは本当に羨ましいとボヤき、続けてシャーリーが説明を始めた。

 

「そして、こっちの世界でヴィヴィオを保護した時期、あちらの世界はイット君を保護して……さらにヴィヴィオは2年以上も前に黒の競売会(シュバルツ・オークション)という違法のオークションで偶然に保護……だからあちらのヴィヴィオはすごく明るいんだね」

 

「む……私達のヴィヴィオも明るいよ」

 

「あ、ごめんなさい……」

 

その説明になのはは少し憤慨し、シャーリは慌てて頭を下げた。

 

「そして犯罪組織です。 スカリエッティ陣営は怪異を使用している以外こちらと変わりありませんが……教団事件を引き起こしたD∵G教団の異端性、魔乖術師、異篇卿と呼ばれる集団の異常な力……もしこの世界に彼らが現れていたらと思うと……」

 

「……勝てる気がまるで無いな……」

 

シグナムの呟きに、全員が同意するしかなかった。 次にディスプレイに映し出されたのは……各地で起きたJS事件での戦闘映像。 特にレンヤとアルマデスの壮絶な戦いに、なのは達はポカーンと口を開けるしかなかった。

 

戦闘狂のシグナムですら、戦う前から勝てないと思うしかなかった。

 

「しかも、1番驚いたのは彼の素性ですよ。 まさかかの聖王の末裔だったなんて」

 

「シスターカリムとシャッハに伝えた方がいいのかな……」

 

「あっちの世界では聖王家は途絶えていないようだな。 それにあいつの血液でヴィヴィオが……っと、これは言っちゃいけねえな」

 

「ううん、気にしないで」

 

「……これらの情報は正しいんやろう。 結果だけを言えば、今ミッドチルダで起こっているグリードは彼らに任せるしかない、というわけやな」

 

「歯がゆいですが、それしかないかと。 あのソーマという少年、一太刀交えましたが相当な実力の持ち主……神崎達もそれ以上の実力と思われます」

 

この中で実力を図る目があるシグナムがそう言い……なのは達は意気消沈してしまう。 自分達の世界なのに、彼らに任せるしかない事が歯がゆがった。

 

と、そこで考え込んでいたシグナムが、はやてに向かって頭を下げた。

 

「主、お願いしたい事があります」

 

「ん? なんやシグナム」

 

「彼らの誰かと……剣をまじ合わせたいです」

 

先ほど言っていた事を考えると、シグナムの行動を全員が驚くしかなかった。

 

「おいおい、勝てないんじゃなかったのかよ?」

 

「これは勝利を求めるための戦いではない。 剣を交え、彼らの意志を感じるための戦いだ。 記録だけでは分からない……彼らの誰かを守ろうとする意志を……」

 

「な、なるほど……」

 

「……それはええ考えや。 これ以上唸っても何も答えは出んし、会議はこれでお終い。 早速聞きに行ってみるとしよか」

 

そうと決まり、なのはとシャーリーは先に訓練場に向かい、それにフェイト達がついて行き。 はやてとシグナムはレンヤ達のいる部屋に向かった。

 

「おおーい、今ええかーー」

 

「そこだ! 魔法発動、ヴァニッシュ! 自分のマスターがパラディンのため、相手マスターに7のダメージ!」

 

「うわっ!? やられた!」

 

「グリオンを召喚! 飛行を有していて、二回の行動が可能! マスターに連続速攻攻撃!」

 

「ちょ、ちょっとは手加減しなさいよ!」

 

「シーフのスキル、1枚ドロー! いいカードが来たぁ!」

 

「くっ……このターンを耐えきれば……!」

 

はやて達がレンヤ達を入れていた部屋に入ると……レンヤ達は楽しそうに、カードを片手に盛り上がっていた。

 

「な、なにやっとるんや……」

 

「あ、はやて! やっと会議が終わったの? かなり時間がかかってたね」

 

「いや、だから何をやっていて……」

 

「ああ、これ? ヴァンテージ・マスターズって言って、ここ最近ミッドチルダで普及しているカードゲームだよ」

 

レンヤ達は待っている間暇だったので、ある企業からからもらった人数分のデッキを使い、時間を潰していた。

 

「……自分ら捕まっている自覚あるん?」

 

「あんまり無いわね」

 

「緊張感無いのが私達だし」

 

「緊張感がないにもほどがあるよ!」

 

「はあ……まあええ。 ちょっと提案があるんやけどーー」

 

はやてはレンヤ達に微力ながらの協力と、相手を知るためシグナムとの模擬戦を提案した。

 

「なるほど……いい考えだ。 口より剣で語った方が分かりやすい」

 

「それで誰が戦うの? 私でも構わないけど」

 

カードを片付けてながらアリシアは全員に聞く。 するとアリサが手を上げた。

 

「私が行くわ。 この世界の私は非魔導師で地球にいるそうだし……それに、この世界の強さの基準を確認してみたいし」

 

「決まりだな」

 

こうして、アリサとシグナムの互いを理解するための模擬戦が決定した。

 

 


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