魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

188 / 198
並行世界より

 

「避難警告は出ているはずです。 何故この場所にいるのか聞かせてください」

 

(恐らく)グリムグリードによって平行世界に飛ばされた俺とアリシア。 そして目の前には俺達に警戒しているフェイト。

 

あちらは初対面なのだろうが、こちらは長年の幼馴染と姉なので他人行儀に話されるとどうにもむず痒い感覚になってしまう。

 

「み、未発見の危険生物を観察していました。 ああいう手合いはまず観察から始めるべきなので……!」

 

俺は管理局の地上の制服を着ていたので敬礼し、隊士としてフェイトに嘘を言った。

 

ちなみに、アリシアは声をかけられた時点でメガネをかけており。 顔立ちがそっくりなでも髪型も違うので恐らくバレていないでいる。 不審に思われてはいるけど……

 

「そう……でも右腕が骨折しているんだから無茶はしないで」

 

「はい! 気遣い感謝します!」

 

(何とか乗り切ったね。 これからどうする?)

 

フェイトが横を通ってビルを降りた後アリシアが念話で質問し、この後どうするか考える。

 

(このまま流されたら俺達がこの世界の管理局員ではない事はすぐにわかる。 ここはグリードの混乱に乗じて逃げるしかないな)

 

(だね)

 

その時、覚えのある魔力が近付いているのに気付いた。 顔を上げると、桜色の魔力光が見え……

 

(なのはだ)

 

(……………………)

 

2人は地上に降下し、海蛇のエルダーグリード……リヴァイアスと戦闘を始めた。

 

だが、フェイトを見てもそうだが……弱いな、こちらの世界の2人に比べたら。 飛行魔法で感じる魔力量と運用、効率などが違い過ぎる。 だが決して弱くもないんだが……

 

「…………苦戦、してるね…………」

 

「まるで初戦闘の戦い方だな。 恐らくこの世界ではグリードが現れるのは初めてなんだろう。 しかもいきなりグリムグリード……気の毒に」

 

「助太刀する?」

 

「本来なら別世界の情勢に関与はあまりしない方がいいんだが……グリード自体が異常だ。 やるしかないな」

 

「了解!」

 

俺達は胸元から自分の相棒を取り出し……

 

「レゾナンスアーク……」

 

「フォーチュンドロップ!」

 

『セーット、アーップ!!』

 

起動してバリアジャケットを纏い、地上に降り立った。

 

「あなた達は……!」

 

「下がって! 君達が敵う相手じゃ……!」

 

「それはこっちの台詞だよ。 2人はいいから他の隊員を下げて、所詮はA級グリムグリード……私の敵じゃないね」

 

「そういう事、お前達は後ろで見ていろ」

 

「で、でも君は怪我してーー」

 

バキッ!!

 

「多分治ってるだろ」

 

右腕のギプスを思いっきり地面に叩きつけて粉々に砕き、自由になった右手を閉じて開いたりをして調子を確かめる。 それを見た2人はギョッとした顔をする。

 

「ーー状況開始……目標グリムグリードを撃破する。 アリシア、気合いを入れて行くぞ!」

 

「よっしゃあっ!!」

 

「ーーえ……」

 

刀を抜刀しながら激励を言い、アリシアは気合いを入れながら二刀小太刀を構えた。 そして、アリシアの名にフェイトが反応した。

 

《モーメントステップ》

 

夜枹(やなら)!」

 

一瞬でリヴァイアスの眼前に移動し、目に向かって刀を振った。 リヴァイアスは紙一重で避けたが……それは囮で、背後に周り首の後ろを斬り裂いた。

 

「アサルトダンス!」

 

アリシアはその隙に横から接近し、二刀小太刀による流麗な剣戟でリヴァイアスの身体を胴から斬り、尾に移動しながら連続で斬った。

 

だがリヴァイアスはとぐろを巻き……尾をしならせ、自身の周囲を薙ぎ払った。

 

「きゃあ!?」

 

「な、なんて力……!」

 

なのはとフェイトは驚きを見せるが、俺とアリシアはこの程度と思い無反応。

 

「レンヤ!」

 

「ああ!」

 

リヴァイアスの頭を蹴り地に伏せさせ、アリシアと隣に並んで顔の前に立つと……

 

『やっ!/はあっ!』

 

『とお!/ふうっ!』

 

『はああ……あっ! 滅爪乱牙ッ!!』

 

息のあった連続攻撃を撃ち込み、最後に大きく吹き飛ばした。

 

「す、凄い……」

 

「あの2人は何者……? あの強さで無名なんて有り得ない……それに……」

 

なのは達がさらに不審に思う中……リヴァイアスは砂煙の中から素早く突進して来た。 大きく口を開け、丸呑みしようと飛び込んで来た。

 

「危ない!!」

 

なのはは警告を叫ぶが……俺は既にリヴァイアスの横を通り抜けていた。

 

「え……」

 

「八葉一刀流……伍の型」

 

チン……

 

「残月」

 

横一閃、納刀と同時にリヴァイアスに身体に走り、リヴァイアスは倒れ伏し、塵と消えていった。

 

そして苦戦した相手をアッサリと倒す俺達にこの場にいる管理局員は唖然とする。 だが……

 

「さてと……」

 

「どうしよっか……?」

 

倒したはいいが……なのはとフェイト、そして気を取り戻した先ほどの部隊に囲まれてしまった。 俺はアリシアと背を合わせて彼らと向かい合う。 そしてフェイトが一歩前に出る。

 

「あなた達は何者ですか?」

 

「ただの地上所属の管理局員ですが?」

 

「突如として現れた危険生物を知っていて、かつそれに対処できるだけの実力を持っている。 これがただの管理局員とは言えません。 それに……」

 

そこで言葉を一度切り、アリシアを見据えて口を開いた。

 

「アリシアとは……何の冗談ですか?」

 

「? 冗談?」

 

「フェイトちゃん……」

 

どうやらハラオウン姓を名乗っているのに関係ありそうだな……さて、どうしたものかな。 そう考えていた時……道の片側から魔力の、いや……剄の波動を感じ……

 

「ーー危ない!!」

 

管理局員を吹き飛ばし、中央に茜色の剄を纏ったユエ・タンドラが地面に拳を振り下ろしていた。 しかし、その余波はこっちまで及んだ……

 

「2人とも、無事で良かったです」

 

『ユエが1番危なかったよ!!』

 

「あ、それは失礼しました」

 

自分の非を認め、ユエは綺麗にお辞儀をして謝った。 それはともかく……

 

「それよりもユエもこの世界に来たんだね」

 

「この世界? ここはミッドチルダではないのですか?」

 

「説明は後、今はこの場から離脱しよう」

 

『ーー逃走ルートは確保してあるよ!』

 

声と共に薄紫色の蝶の探査子が飛んで来た。 ツァリの念威探査子だ。

 

「ツァリ! 有難い、行くぞ!」

 

「おおー!」

 

「ま、待ちなさい!」

 

なのはの制止の声が聞こえるが……それを振り切って跳躍し、誘導する探査子を追ってビルからビルへ飛び移る。

 

『僕とユエの他にもリヴァンとシェルティス、ルーテシアちゃんがいるよ』

 

『それよりもどうなってんだ? まるでいきなり傘が現れたと思ったら霧が出て……そしたらこんな状況になって。 意味が分からないぞ』

 

「とにかく一度合流しよう。 まずは掻い摘んで今の状況を説明する。 皆、落ち着いて聞いてくれ」

 

俺はこの世界がミッドチルダの平行世界である事、そしてここに俺達を連れて来たのはグリードの仕業と伝えた。

 

「なるほど……」

 

『まさか……そんな事が……』

 

『でも事実、なんだろうね』

 

『チッ、やっと事件から落ち着いて来た矢先にこれかよ……』

 

ピリリ、ピリリ♪

 

皆の感想を聞いていると、いきなりメイフォンに着信が入ってきた。

 

「なんで繋がるの!?」

 

「メイフォン単機での通信圏内は5キロなんだよ。 もしもし?」

 

『あ、レンヤ! やっと繋がった!』

 

「その声……美由希姉さん!?」

 

通信の相手は美由希姉さんだった。

 

「姉さんもこっちに来てたのか……」

 

『うん。 よく分かんないんだけど……ヴィヴィオちゃんとイット君と一緒だよ』

 

「ヴィヴィオとイットが!?」

 

「え、あの子達もここに!?」

 

2人がここに来てしまった事に、俺とアリシアは驚いてしまう。

 

「と、とにかく合流しよう。 今どこにいる?」

 

『中央区にある……あれ、あんなのあったっけ? まあともかく、大通り近くの公園だよ!』

 

「……うん、分からない!」

 

「フォーチュンドロップ、通話の発信源を逆探知!」

 

《イエス、ロード》

 

フォーチュンドロップが逆探知を開始し……ここから東へ4キロ先にいる事が判明した。 俺達は進路を変え、その場所に向かった。

 

「皆さん、無事ですか!?」

 

「パパァ!!」

 

「おっと……」

 

到着し、3人の姿をすぐに見つけた。 すると、俺を見るなり飛び込んで来たヴィヴィオを受け止め、よしよしと頭を撫でる。

 

「イット、怪我はない?」

 

「は、はい。 大丈夫です……」

 

「ほら、堅苦しいからもっとリラックスして。 そろそろお母さんって呼んでもいいんだよ?」

 

「ぜ、善処しましゅ……」

 

イットの頰を優しく左右に引っ張り微笑むアリシア。

 

「ーーな、なんでヴィヴィオがここに!?」

 

「それにあの人は……」

 

いつの間にか、目の前にはスバルとティアナが立っていた。 反応から見るからに……この世界の2人だろう。

 

「マズい…………」

 

「逃げるよ!」

 

《スレットマイン》

 

アリシアが正面に向けて、広範囲に四角い魔力弾をばら撒き……小規模な爆発と目くらましの爆煙が発生した。

 

「うわっ!?」

 

「煙幕……!」

 

「ちょ、なんで逃げるの!?」

 

「事情があるの! 早く行くよ!」

 

俺はヴィヴィオを、アリシアはイットを抱えて飛び。 一気に6人に増えた一団はこの場から離れた。

 

『皆、この先にある廃工場へ。 ルーテシアが転移の準備をしているよ』

 

「それでこの場所からオサラバってわけだね!」

 

急いで指摘された廃工場に向かった、が……

 

「止まれ!!」

 

「時空管理局だ」

 

昔サイズのヴィータとシグナムが行く手を塞いだ。

 

「あれ突破するの難しくない?」

 

「不意打ち出来ればあるいは……」

 

「なにをごちゃごちゃ言ってやがる!」

 

「大人しくその少女を解放し投降しろ」

 

「悪い事をした覚えがないのですが……」

 

「さっき管理局員をぶっ飛ばしてたじゃん」

 

すると、シグナムが飛び出し、レヴァンティンを振り下ろしてきた。

 

すると姉さんが飛び出し、小太刀型のソウルデヴァイス、アストラル・ソウルを顕現させて振り下ろされたレヴァンティンを受け止めた。

 

「ひゅう♪ さすがシグナム、強烈だねぇ」

 

「なっ!? これは一体……!?」

 

シグナムは美由希姉さんが受け止めた事よりも、小太刀を見て驚愕している。

 

その時、横から紺色の剄弾が飛来。 シグナムを吹き飛ばした。 そして出てたのは……

 

「くっ……!?」

 

「ソーマ!」

 

「レンヤさん! よく分からないんですけど、シグナムさんを吹き飛ばして良かったのでしょうか!?」

 

「問題なし!」

 

「テメェーー」

 

「穿て!」

 

青白い細い集束砲撃がヴィータを射抜き、サーシャが目の前に飛び降りてきた。 そして……慌てふためきながらヴィータに頭を下げた。

 

「あうあう、ごめんなさい……」

 

「サーシャ、こっちに来て!」

 

「は、はいぃ!!」

 

どんどんこちらの世界の人間が増えていく中、廃工場に向かって駆け出すと……

 

「ーーヴィヴィオを返せええぇぇ!!」

 

「うあああああっ!?」

 

いきなり頭上から砲撃が接近し、それをギリギリ避けたが余波で少し吹き飛ばされてしまう。 こっちのなのはもヴィヴィオを溺愛しているよで、かなり怒ってる。

 

「なのはママ!? どうしてパ……ムグムグ……」

 

「ヴィヴィオ、ちょっとだけいい子にしていてくれ」

 

この世界のなのはは俺を知らない。 つまりパパは俺ではないので、ヴィヴィオが俺を父親と呼ぶと、あの自分の娘を攫われて怒り狂っている母親がどうなるか分からない。

 

「うわぁ……なのは、マジギレしてるよぉ……」

 

「って、お姉ちゃん!? なんでここに……!?」

 

「すまんな……我が妹よ。 世界は違えど、なのはは私の可愛い妹だよ……(グスン)」

 

「え、え?」

 

「御免!」

 

姉さんは酷い芝居をしてなのはを動揺させ、一気に距離を詰めて一刀の元、斬り伏せてしまった。 芝居は酷いけど、剣の腕は確かだから変にタチが悪い。

 

「ああもう、なんで誘拐犯の逃亡者紛いな事やってんだろう……」

 

「仕方ないですよ。 流石に騒ぎになり過ぎました、落ち着くまで離れた方が得策です」

 

「フェイト達に敵意剥き出しにされるなんて……なんか超複雑」

 

同感だ。 模擬戦や試合でもここまでなのは達に敵意を向けられた事はないだろう。 本当に複雑だ……

 

「こっちよこっち!!」

 

(ピョンピョン)

 

「ルーテシア、ガリュー!」

 

廃工場の敷地内には集団転送の準備をしていたルーテシアがいた。

 

「この世界の潜伏先まで転移するわ。 早く魔法陣の中に!」

 

「潜伏先って……ますます犯罪者チックになってきたような……」

 

「いいから入る!」

 

「フベラッ!?」

 

美由希姉さんに蹴られ、アリシアは吹き飛んで陣の中に入った。

 

「え、ルーテシアちゃん!?」

 

「あ……ヤッホー、キャロ。 元気してる?」

 

「え゛」

 

上空にフリードに乗ったエリオとキャロが現れ、ルーテシアは軽く手を上げて挨拶する。 エリオはそんなルーテシアを見て絶句する。

 

「それじゃあまた、あの怪物を追っているならまた会えるだろうね」

 

「待ちなさい!」

 

追いついてきたフェイトが接近してくるが……その前に俺達は転移して行った。

 

 

 

少しの浮遊感から解放され、地面に足をつける。 辺りを見回すと……どこかの古い建物の中、というより……

 

「もしかして……ここは太陽の砦か?」

 

「正解ー♪ ここにきたほとんどが太陽の砦に飛ばされたんだ」

 

どうやらここは教団が研究施設として使っていた区画のようだが……機材がまるで見当たらず、砦そのものの壁や床が見られた。 どうやら、この世界ではあの悲しい出来事はないようだと少しホッとする。 すると通路の先からツァリが走って来た。

 

「皆、無事!?」

 

「ちょっと精神的に疲れたかな……?」

 

「まさかフェイトに敵意剥き出しにされるなんて……」

 

「ーーそうみたいね」

 

「アリサママ!」

 

遅れて、アリサとすずかが出てきた。 ヴィヴィオはアリサを目にすると喜び、俺はヴィヴィオを下ろすと……一目散にアリサに抱きついた。

 

「2人もここに?」

 

「ええ、ついさっきね」

 

「一度奥に行こう。 他の皆も待っている」

 

「一体どれだけの人がここに飛ばされて来たんだ……?」

 

「あうあう……」

 

すずかの案内で奥に進む。 あの事件時のような禍々しい雰囲気はなく、至って静かで普通の建造物だ。

 

しばらく進み、牢屋があるフロアに到着し。 その牢屋の手間にあった部屋に入ると……

 

「よお、来たか」

 

「お前さんらも無事なようだな?」

 

「怪我がないようでなによりだ」

 

「お互い、面倒な事に巻き込まれたわね」

 

「ルーテシアちゃん、お疲れ様」

 

「全く、お前達といると退屈しないで済む……」

 

大きな長方形のテーブルを囲うように、リヴァンとシェルティスに他にアギト、ヴァイス、リンス、クイントさん、メガーヌさん、ティーダさんが座っていた。

 

そしてメガーヌさんの後ろに、誰が隠れていたのを見つけた。 身長からしてルーテシアくらいだとは思うが……

 

「さっきの報告より多くないか……?」

 

「あはは……皆が来る間にどんどん来ちゃってね……」

 

一体何人の人がこっちに飛ばされて来たんだよ? そして、メガーヌの陰にかけれるようにしていたのは……

 

「って、クレフとコルルも!?」

 

「ども」

 

「どうも……」

 

「ピューイ」

 

「あ、クローネも」

 

あの隔離施設の質素な服を着たクレフとコルルがいた。

 

「どうして2人まで……」

 

「ますます関連性が分からなくなって来たわね……」

 

「ーー先ずは状況の把握と情報の整理だよ。 レンヤ君、ここがどんな場所か気付いたんだでしょ?」

 

「ああ。 ツァリから大まかに聞いていると思うがままに、説明するから落ち着いて聞いてくれ」

 

改めてこの平行世界の事、俺達がここに連れてこられたのはグリムグリードの仕業と伝えた。

 

「なるほど……それで霧に包まれたと思ったらこんな場所に……」

 

「皆、霧が出る前に一度傘を見たんだよな?」

 

「うん! お兄ちゃんとお散歩してるとフワフワ飛んで来たよー!」

 

「……私も、見ました……」

 

「隔離施設の中なのにいきなり現れたからビックリしたよ」

 

「パラレルとパラソルかけてんじゃねぇだろうな……?」

 

「そ、そこは深く読み過ぎなような……」

 

ここに連れてこられる状況は皆同じなようだな。 今度はこの場にいる人を整理する。

 

「えーっと……この世界に連れてこられたのは俺とアリシア、アリサ、すずか、ソーマ、サーシャ、ルーテシアとガリュー、アギト、リンス、美由希姉さん、ヴァイス、ツァリ、リヴァン、ユエ、シェルティス、クイントさん、メガーヌさん、ティーダさん、イットとヴィヴィオ……そしてクレフとクローネ、コルルの22人と2匹というわけか……」

 

「かなりの大世帯だけどなのは達も含めれば少ないほうね」

 

「連れてこられた基準も明確ではないし……とにかく、当面は情報を集めながらここに潜伏しよう」

 

「そうだね」

 

「それにしても……」

 

そこで言葉を切り。 リヴァンは辺りを、部屋を見回した後……嘆息した。

 

「まさか太陽の砦(ココ)に潜伏する羽目になるとは……洗ってない2日目の風呂に入る気分だぜ」

 

「グリード相手にプライド語ってたら、命がいくつあっても足りないよ」

 

リヴァンの言葉にシェルティスは皮肉気味に言うが……珍しくリヴァンは反論せず、むしろそうだなと言って納得した。

 

「ともあれ、今後の方針はあの日傘の持ち主であるグリムグリードの撃破と元の世界の帰還。 これで行きましょう」

 

「問題ないわ」

 

「ただし、グリムグリードを探し出す過程でこの世界のなのはちゃん達……機動六課が立ち塞がります」

 

「本来なら協力した方がいいんだが、あまり並行世界に干渉するのはよろしくないと思う。 出会ってしまうかもしれないが、交戦は控えてくれ」

 

「了解です」

 

一応、これで納得してくれたようだが……

 

「……ティアナと、か……おかしな巡り合わせもあったものだな」

 

「我が主と……いや、この世界の主は彼らが守ってくれる。 ここは割り切ろう」

 

「リンスさん……」

 

「なのはとねぇ……なんか面白そう♪」

 

「ふふ、こっちのスバルはどれ程の腕前なのかしらねぇ」

 

やはり複雑なのだろう……身内や知り合いと完全に敵対するというのは……約2人、例外がいるが。

 

「しっかし、なんでこうなっちまったのかねぇ……」

 

「グリードにとやかく言っても意味ないよ」

 

「……それになんか、私達犯罪組織みたいね……」

 

「この場所がそうだしな」

 

「ええい、そこは言わないでよろしい!」

 

「ふふ……」

 

うんうん、この緊張感がない所が俺達らしいな。 と、そこでパンパンと、すずかが手を鳴らして雑談を止めた。

 

「さて……会議はこれで終わりとして。 次の問題はーー」

 

「今晩の夕食をどうするかだな」

 

アギトがそう答えると、クゥ……っと、ヴィヴィオがお腹を鳴らし。 えへへと頭をかいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動六課、会議室ーー

 

そこでは隊長陣とフォワードメンバーが集まっていた。 議題は未確認の危険生物の出現と……レンヤ達の事だった。

 

「ーーこの危険生物……彼らの言葉を借りるならグリムグリードと呼ばれるそうです」

 

「テスタロッサ、相手をしてどうだった?」

 

「……不確定な能力を有していて、身体能力も飛び抜けて高かったです」

 

「倒せなくもないのですが……現状では苦戦は免れないでしょう……」

 

「でも、それを彼らはいとも簡単に倒してしまいました」

 

「そして……」

 

次にシャーリーはレンヤ達の映像を映し出した。 その中で、フェイトは1つの映像に目を止めた。 そこに映っている長い金髪を三つ編みにした、自分とほぼ同じ顔立ちの女性を……

 

「アリシア……テスタロッサ……」

 

「フェイトさん……」

 

「そこも問題なのですが、1番問題なのはヴィヴィオちゃんとルーテシアちゃんの事です」

 

ディスプレイにヴィヴィオとルーテシア、服装の違う映像が2つずつ表示された。

 

「最初、ヴィヴィオが攫われたと思ったけど……あのレンヤって人に懐いていたし、何よりーー」

 

「今、ここにいる」

 

全員の視線がフェイトの膝下に向けられた。 そこにはヴィヴィオが寝ており、フェイトはスヤスヤ寝ているヴィヴィオの頭を撫でた。

 

「ルーテシアちゃんの方も確認取れたで。 あの時間の間、監視から離れとらんし、隔離施設から一歩も出ておらんそうや」

 

「それに……まるで別人のように明るかったです」

 

「私達に向かって笑顔で手を振ってました……」

 

「そうやな、いくら洗脳から解かれたとしてもあれは変わりすぎや。 さて、次は……なのはちゃん」

 

はやてはなのはの方を向き、なのはは意図が読め頷いた。

 

「こっちも確認は取れたよ。 お姉ちゃんは海鳴市にいたし、ミッドチルダにも行ってないし行ったことはない……」

 

「だが、あの刀は……」

 

次に表示されたのはソウルデヴァイスを持つ美由希。 結果だけを言えば、美由希にリンカーコアも魔力も有してはいなく。 小太刀にいくつものデータが表示されていたが結局の所は何も分かっていなかった。

 

「デバイスでもレアスキルでも、質量兵器でもない……観測では現象としか捉える事は出来ませんでした」

 

「意味が分からなくなってきたな……」

 

「それに、確認できるだけでも刀の男性とフェイトさん似の女性の魔力量はオーバーSを有しています。 特にこの黒髪の男性と茶髪の男子の魔力、密度が半端ないです! AMFでも簡単には解けない結合力です! さらに、この蝶のようなサーチャー。 これも先ほどの高密度の魔力で構成されていて、それに加えて超遠距離の念話が可能。 傍受も出来ません!」

 

「そんな嬉しそうに言われても……」

 

「……ホンマ、一体何者なんやろうなぁ……」

 

「勘違いしたとはいえ、いきなり敵意を見せたのは不味かったわね……」

 

「…………あの、先ほどから気になっていたんですけど……」

 

ルーテシアの右肩にズームアップされ、球状態のガリューが映し出された。 もちろん全員ガリューの事は知っているが、こんなに小さいのがガリューだという事は誰にも想像出来なかった。

 

「ルーテシアちゃんの肩に乗っているこれ、何でしょう……?」

 

「黒い……何だろう?」

 

「考えても仕方ないよ。 分からない事だらけで頭が混乱しようだし……」

 

「あんたはもう少しは頭を使いなさいよ……」

 

「……まあ、結果だけ言えば……私達はこのグリードが現れたとしても彼らに頼るしかない事、それだけは分かってしもうたな……」

 

「何かが起きているのは確かですが、その原因や概要すら掴めていません……致し方ないでしょう」

 

「でも、諦める気はないし……彼らとも和解したい」

 

「うん。 誤解も解きたいし、ちゃんと話もしたい」

 

「できれば手合わせも願いたいな」

 

「オメェはいっつもそれだな」

 

それで会議は終了となり、ぞろぞろと会議室を後にする中……

 

「……あれ?」

 

ふと、なのははレンヤに目を止め、ある一部をズームアップした。

 

(あのレンヤって人が左の二の腕に巻いているリボン……どこかで……)

 

なのははレンヤの左腕の二の腕に8の字で巻かれているリボンをジッと見つめ、首を捻った。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。