高速道ではスバルとギンガがノーヴェとチンクと交戦していた。 その横ではノーヴェに弾かれ、円環のラドムが壁に寄りかかって戦闘を傍観していた。
「でりゃ!」
「ちっ……!」
「遅い遅い!」
「素早い奴め!」
ギンガの隙間ない強力なラッシュにノーヴェは防戦一方だった。 チンクもスバルのローラブーツを使った緩急がついた距離の取り方に翻弄され、思うようにナイフを投げられなかった。
「このやーー」
「ーースバル!」
「とりゃっ!」
放たれたノーヴェの拳は簡単を弾き、ギンガの一声かけて頭を下げる。 間をおかず頭のあった場所から接近してきたスバルの蹴りが放たれた。
「ぐあっ!?」
「ノーヴェ!」
「余所見厳禁!」
「なっ……!?」
「ほう?」
一瞬でターゲットを変更、その切り替わりの早さにチンクはついて行けずギンガの拳をまともに喰らった。 その鮮やかな手並みにウルクは感嘆の声をもらす。
「私達姉妹の連携……」
「あなた達姉妹の連携で崩せるかしら?」
スバルが左側、ギンガが右側に……リボルバーナックルを突き出した構え、シューティングアーツ(クイント・アレンジバージョン)の構えを取りナカジマ姉妹は戦闘機人姉妹を挑発するように鏡のように並び合った。
「舐めやがって……!」
「挑発に乗るな、ノーヴェ。
「手を貸しましょうか?」
「いらねえよ。 オメェはすっこんでろ!」
「やれやれ……これでは何のために出向いたか分かりませんね」
強力関係にあるだけで馴れ合うつもりはない……分かってはいるが、それでもラドムは呆れるように肩をすくめる。 と、その時……
「きゃあああああっ!?」
どこからか甲高い悲鳴を上げながら誰かが高速道上に、両者の間に落下してきた。 そのせいで砂塵が舞い、ギンガ達とチンク達は一度距離を取った。
「イタタ……さすがは騎陣隊の隊士、一筋縄ではいかないですよ」
「って、サーシャ!?」
砂煙が晴れるとそこには、軽傷をして痛む箇所をさすりながら座り込んでいるサーシャがいた。
「あ、スバルちゃん、ギンガさん!」
「サーシャ! 無事だったんだね!」
「はい! 何とか」
サーシャは立ち上がり無事を見せる。 そしてウルクの目の前にゼファーが降り立った。
「ゼファー、どうやら手こずっているようですね?」
「ああ。 こっちの歯をことごとく躱しやがる。 さすがはベルカ流護身術を使うだけはあるぜ」
二刀のソードブレイカーを手の中で回しながらゼファーはサーシャを賞賛する。 そして、ラドムは壁から離れ……
「さて……どうやら、私の相手はあなたになりそうですね?」
「……っ!」
ラドムはロングソードを抜いた。騎陣隊の2人の剣気に当てられ、サーシャは怯みながら輪刀を構える。
「サーシャ!!」
「おっと……お前らの相手はアタシ達だ!」
「早くしないと彼女が死ぬぞ?」
スバルは援護に向おうとするも、行先をノーヴェに塞がれてしまう。 サーシャがピンチなり、途端有利だった形勢は敵の方に傾いてしまった。
「くっ……スバル! 一気に片をつけるわよ!」
「了解!」
『IS……発動!!』
スバルとギンガは同時にISを発動。 2人の足元にテンプレートが展開し、瞳の色が黄色に変わる。
「やっかいな……オーバーデトネイション!」
ISを発動させた事に顔を歪め、チンクはスティンガーを大量に空中に発生させスバルとギンガに集中射撃をかけ……爆破する。 だかチンクもこれでやったとは思わず、警戒を緩めない。
「とりゃあああっ!!」
爆煙の中からローラブーツから火花を散らしながらスバルが飛び出して来た。
「ちいっ!」
ノーヴェは舌打ちをしながらも牽制のため手甲のクリスタル部分から光弾を連射する。 だがスバルもジグザグと曲がる角度と速度に緩急をつけ避けながら接近する。
「ちょこまかと動き回りーー」
「ーーティー・ソーク!」
「な……!? ぐうっ……!」
横を通り過ぎる瞬間、ローラを加速させて一瞬ノーヴェに接近し横っ腹に肘打ちをかます。 突然の事でノーヴェは驚きつつも肘を落として防ぐも……
「ソーク・クラブ!」
「………………!?」
流れるように回転肘打ちを腹に打たれ、声も出せず怯んでしまう。
「この……!」
「あなたの相手は私よ?」
先ほどのノーヴェの言葉をギンガが口にしながらISの効果で一瞬でチンクの前に出た。
「よっこい、テッ!」
「そんな大振り……」
「からのテッ・ラーン!!」
「ぐはっ!!」
チンクは放たれた回し蹴りを避けるが、そこから蹴り足を変えローキックが放たれ胸に直撃する。
「ギン姉!」
スバルの合図でギンガはチンクから離れ……
「はあああああっ!!!」
リボルバーナックルではない、左手を地面に振り下ろした。 無手でも今のスバルはIS、振動破砕を使用中……衝撃が波となってチンクに向かって行き吹き飛ばした。 そして元々ボロボロだった高速道に一気にヒビが走り、崩壊していく。
「よっと……1人目確保っと」
道路が瓦礫となって落下する中、ギンガは気絶しているチンクを見つけ……ウィングロードで向かい確保した。
「チンク姉!!」
「ーー隙あり!」
一瞬で接近し……両手で首を押さえ込む
「カウ・ローイ!」
「ぐはっ!!」
容赦無く顔面に膝蹴りを入れた。 当然ノーヴェは視界を塞がれ、仰け反ってしまい。 さらに追い打ちをかけスバルは改造シューティングアーツの構えを取り……
「トイヤアアアアッ!!」
「ぶはっ!?」
鋭いストレートがノーヴェの顔面に入り、吹き飛ばした。 ノーヴェはきりもみしながら地面に引き摺られ……止まると同時に気絶してしまった。
「よし! この前のギン姉の借りは返したからね!」
「やり過ぎな気もするけど……それより、早くサーシャちゃんの援護に向うわよ!」
「うん! 了解!」
スバルはノーヴェを拘束し、ギンガはチンクを側に置いた。 そしてサーシャの援護に向おうとギンガがウィングロードを展開しようとした、その瞬間…… 側にあった結界で覆われた廃ビル。 ソーマとティアナを閉じ込めていた廃ビルの結界にヒビが走り……
『ーーうおおおおおっ!!』
結界を力強くで破壊し、ソーマとティアナが戦闘機人2名……ディードとウェンディを蹴り飛ばしながら飛び出してきた。
「あ!!」
「ソーマ! ティア!」
スバルは2人の無事を喜ぶ。 そしてソーマとティアナは2人を踏み台にして上に跳び……
「行くわよ……!」
ティアナは
「はあああああああっ!!」
両手を広げ、魔法陣に向かって圧縮魔力弾を連射する。 魔法陣を通し、魔力弾は2人の左右に展開された魔法陣に転送……2人は雨のように降り注ぐ弾を耐えるしかなかった。
「喰らいなさい、駆け抜ける十字……! クロス……ドライブ!!」
そして銃撃を止めるとすぐさまダガーモードに変え、魔力で刀身を伸ばす。 真上に魔法陣を展開し、それを足場にして一気に降下。 2人を十字に斬り裂いた。
「ふう……」
地上に降り立ち、落下してきたディードとウェンディを魔法で受け止め、拘束した。
「これで半分っと。 ふう……まさかあの2人がここまで強くなるなんて」
「先に戦闘機人を制圧できて良かったよ。 とはいえ……2人が4人になっちゃったけど」
ソーマが上からティアナの隣に降り立ち、彼女の呟きに同意し。 ラドムのゼファーの方を向くと……ウルクとファウレが合流していた。
「2人でも大変だったのに……それが4人になるなんて……!」
「大丈夫。 エリオとキャロとルーテシアがいないけど……この5人なら勝機は必ずある!」
「ソーマ君! ティアナちゃん!」
ソーマとティアナはサーシャと、そしてナカジマ姉妹と合流し。 四隊士とソーマ達5人はビルの上に降り立ち、何も無い空間を挟んで対面する。
「……戦うつもりなんだろうけど、始める前に聞いておきたい。 あなた達が戦う理由はありますか?」
「え……」
「ソーマ君、それはどういう意味?」
ティアナとサーシャはこの意味を理解しているが、ナカジマ姉妹だけはあの緊張から解けて呆けてしまう。
「あなた達のマスターは今地上本部に向かっている。 目的はマスターが達成せしめる……なら、あなた達は恐らく他の陣営の協力」
「あ、そっか。 もうここには彼らしかいないから……戦う意味がないんだ」
「……確かに。 我らの指名はスカリエッティへの協力……ここにいる戦闘機人、クレフ嬢とシャランがやられた以上、戦う理由はないが……お前達とは対等な勝負をしたいんだよ」
「え………」
「此の期に及んだまだ僕達と剣を交わそうと?」
「その通り……仕切り直しと行こう。 それで構わないな?」
ティアナは一歩前に出て、頷いた。
「……ええ。 不謹慎だけど……あなた達4人揃っていないとリベンジにならないのよね」
「私1人では届きませんでした。 でも、皆となら必ずあなた達にこの刃、届かせてみせます」
「結構」
「ーーこちらへ。 対等な地で決着をつけましょう」
四隊士は踵を返し、ウルクの先導の元ビルからビルへ移動を始めた。 ティアナ達は何も言わず、疑いもなく彼らに着いて行く。 数秒で到着したが……先程まで、ここではキャロ達が戦闘をしており。 今ここには居ないが……側には高熱の熱線でで抉れたかのような深い谷があり、その辺りはほぼ平地になっていた。
「あの子達……何やったのよ……」
「と、時折凄い音と衝撃が発生していると思ったら……」
「どうやらかなりの激戦だったようね」
「……まあいいでしょう。 我らの戦いには何もない平地が相応しい。 策略などない……互いの技と力の限りを尽くし、勝利を手にするだけの事……!」
騎陣隊の四隊士はソーマ達と対面し、一斉に武器を構えた。
「さて……始めるとしましょう。 当初はこちらが各個撃破を狙っていたのですが……」
「期せずして騎陣隊・四隊士……揃ってしまいましたね」
「……流石は、マスターが目を付けるだけの事はある……」
「……だが。 このまま引き下がちゃあー、騎陣隊の名が泣く」
そう言い切ると……騎陣隊4名の足元に光り輝く陣が展開され、威圧や気迫が増してしまった。
「マスターから全力を尽くせと命を受けています。
『応ッ!!』
騎陣隊はウルクを先頭、ファウレが左翼、ゼファーが右翼、後衛にラドムの菱形の陣形を組んだ。
「こ、これは……」
「気迫が一気に増した……!」
「やっぱり全員使えるんだね……」
「気をつけて! 私達はアレにかなり手こずったわ!」
「それは……一層気を引き締めませんとね」
ソーマ達も気を引き締め、騎陣隊と真正面から対面する。
「騎陣隊の誉れ……」
「……見せてあげる……」
「子ども達は自身の勲を示した。 次はあなた達の番よ」
「雛鳥が嵐を越えるだけの翼を得たのか……確かめさせてもらおう!」
「機動六課、フォワード部隊ーーこれより敵集団の制圧を開始する!」
『おおっ!』
ティアナの号令で、全員がそれぞれの武器を構え、勝利を信じて応える。
「意気やよし」
「……ティマイオスが一柱、雷帝直属ーー」
「騎陣隊が四隊士、お相手仕る!」
「いざ、尋常に勝負!」
ラドムの合図で……両者は同時に飛び出した。
ミッドチルダ東部にある森林地帯……そこの洞窟にあるスカリエッティのアジトではフェイトとリヴァンが戦闘機人2名……トーレとセッテが密室空間での高速機動戦闘を繰り広げていた。
「はあああっ!」
ザンバーフォームのバルディッシュでトーレに斬りかかり、続いて背後からセッテが弧を描いた剣……2つのブーメランブレードをフェイトに向かって投擲する。
「疾ッ!!」
リヴァンは素早く矢をつがえ、矢を射る。 1つを弾くと、矢の尾羽に着いていた鋼糸が2つ目に絡みつき動きを停止する。
「………………」
「穿て……」
《ドリルアロー》
鋼糸を編み込んで矢とし、鏃が螺旋を描いた矢を放った。 セッテは球場の防御障壁を展開し……矢が障壁に衝突。
「ぐうぅ……」
「フェイト!」
「了解!」
リヴァンはセッテを矢で対応で動けないと判断し、トーレに向かって狙いを定め矢をつがえる。
「ふっ!」
矢は射ると同時に放射に広がり、狭い空間に鋼糸を張り巡らせる。 トーレは鋼糸を避けようとし機動力が落ちるが……フェイトは変わらない速度でトーレに接近する。
「ちっ!!」
大剣が横薙ぎに振られ、それをトーレはギリギリで避け、手足についた羽根のような刃……インパレスブレードで斬りかかった。
「うおおお!」
「っ……!」
《サンダーアーム》
バルディッシュが左手の籠手に雷を纏わせ……フェイトがそれでトーレのブレードを防ぎ、雷撃が飛び散る。
「ぐうっ……だあ!! トーレ!」
そこでセッテが時間が経ち威力が落ちた矢を弾き、すぐさまブーメランブレードを投擲した。 だが……この場所は既に鋼糸が張り巡らせている。 ブーメランブレードは鋼糸に遮られ……
「……スノーホワイト」
《ロックオン》
「なっ!?」
「ちっ……」
「ーーはああっ!」
「ぐっ! ぐあああっ!?」
後方で待機していたすずかがスナイプフォームのスノーホワイトでトーレの空いた腕を弾き、続いてセッテの足元を撃ち抜き牽制させる。 その隙にフェイトはバルディッシュを離し右手でトーレの腹部を殴った。 トーレは吹き飛ばされ、途中で鋼糸で腕を切ってしまった。
そしてフェイトは地面に着陸。 フェイトとすずか、リヴァンはお互いの背中を見せながらトーレとセッテと対面する。
「AMFが重いな。 剄を出すには影響はねぇが……フェイト、すずか、お前達は平気か?」
「問題ない。 この程度の負荷……充分耐えられる」
「でも、余力は残さないとね」
「そりゃ結構。 早くこいつらを倒して先に進んで、ユエとシャッハと合流しねぇとな」
トーレとセッテは構え直し、フェイト達を睨みつける。
「ぐうっ……よくこの鋼糸が張り巡らされた場所で速度を落とさず突っ込めるものだ」
「リヴァンとの……VII組の皆との3年間は私達を強くした。 私達はどんなペアでも最高のパフォーマンスで戦う事ができる」
「レルムの精神は……私達の糧となっている。 あなた達にはない絆が私達にはあるの」
「そう言うこった。 多分お前ら以上に経験を積み、その何倍の修羅場をあいつらと潜り抜けた。 お前らが機械の通信で連携しているのとは大違いなんだよ。 それに、そこのピンク髪の奴と、俺との相性は良さそうだしな」
「……あなたにとっては……の間違いでしょう……」
「……レルム魔導学院・旧VII組……侮っていたか」
その時……突然フェイト達の目の前に空間ディスプレイが展開された。
「!?」
『いやぁ、御機嫌よう。 フェイト・テスタロッサ執務官。 そしてリヴァン・サーヴォレイド准尉』
「スカリエッティ……!」
「ここで出てくるなんて……」
「おいおい、いきなり大将が何のようだよ?」
フェイトとすずかが警戒を強める中リヴァンが質問するが、スカリエッティは無視して話を続ける。
『私の作品と戦っているFの遺産と2人の召喚士。 聞こえてるかい?』
どうやらこの場所の他にエリオ達の元にも通信を送っているようだ。 しかし、突然スカリエッティは驚きた表情を見せた。
『って……おや? 既に決着が着いているではないか? それにあそこで伸びているのはシャラン君ではないか。 ふふ、ふははは! これは予想外だ! 彼女が着いていながら負けるとは! いや……かの竜召喚士君のクレフ君の想いがそれだけ強かったのかな?』
「エリオ、キャロ……」
「クレフちゃんを救い出せたんだね」
「へぇ、やるじゃねえか」
エリオ達が無事だと言うことにすずかとリヴァンはもちろんの事、特にフェイトが安堵した。
『ふっ……まあいい。 我々の楽しい祭りの序章もそろそろクライマックスだ』
「っ……何が……何が楽しい祭りだ! 今も地上を混乱させている重犯罪者が!」
『重犯罪? 人造魔導師や戦闘機人計画の事かい? それとも私がその根幹を設計し、君の母君……プレシア・テスタロッサが完成させた、プロジェクトFの事かい?』
「全部だ……!」
フェイトの怒りに満ちた答えに、スカリエッティはワザとらしく肩を竦める。
『いつの世でも、革新的な人間は虐げられるものだよねぇ』
「……そんな傲慢で……人の命や運命を弄んで……!」
『貴重な材料を無差別に破壊したり、必要以上に殺したりはしないさ』
(なら……意味があれば壊し。 必要最低限は殺しているんだな……ホアキン並みの外道だな)
『尊い実験材料変えてあげたのだよ。 価値のない、無駄な命をね』
「!!」
そのフェイトの感情にバルディッシュが応える。 大剣がさらに電源を纏い、出力を上昇させ……
「このおおおおおっ!!」
どこに狙いをつけているのかは分からないが、フェイト怒りに任せて大剣を振り上げる。
「フェイトちゃん! 落ち着いて!」
「ちいっ!」
『ふっ……(パチン)』
すずかがフェイトを抑えようとした瞬間……画面の中のスカリエッティが指を鳴らした。 するとフェイトの周りを囲うように地面に赤いテンプレートが展開された。
「飛べ、フェイト!」
「っ!」
するとテンプレートから赤いラインが伸び、フェイトはその場から離脱すると……ラインが軌道を変えフェイトの足に、大剣に巻き付いた。
「フェイトちゃん!」
「大丈夫。 問題ーー」
フェイトは大剣を振るい拘束を抜け出そうとした時、通路の先から誰か歩いた来た。 暗がりで良くは見えないが……
「…………! お前は!」
「ふふ、ふはははは……」
次第に顔が見えてきたその人物は……先ほどディスプレイの中にいた人物、ジェイル・スカリエッティだった。
「普段は温厚かつ冷静でも……怒りと悲しみにはすぐに我を見失う」
「動かないで!」
唐突に現れた彼の右手には鉤爪がついたデバイスに似た籠手を装着していた。 すずかは長銃をスカリエッティに向けるが、彼はそれを無視し。 鉤爪を掲げ、空を握り潰すと……バルディッシュの大剣が破壊されてしまった。
「フェイ……っ!?」
「あなたの相手は私です」
「ふふ……」
「しまっーー」
リヴァンが直ぐに救出しようとするが、その眼前にブーメランブレードが横切り踏み止まった。
フェイトが拘束されている隙にスカリエッティは赤い光弾を放ち、フェイトは地面に叩き落とされた。 そして先ほどのラインで角錐のような形で捕獲されてしまった。
「ドクターはやらせん」
「……大人しく投降は……してもらえないね」
制圧しようとすずかが放った魔力弾は一瞬でスカリエッティの前に移動したトーレによって防がれる。
「君のその性格は……まさに母親譲りだよ。 フェイト・テスタロッサ。 まあ、姉は父親似だけどね」
「その言葉……プレシアさんの目の前でハッキリ言えば!? 喜ぶと思うぞ!」
リヴァンは冗談を言ったが、スカリエッティは無視して流した。 その時……すずかに向かって煙を球状にしたような光弾が飛来してきた。 すずかはその場を飛び退き避けると……光弾は地面を抉って消滅した。
「なっ!?」
「これは……魔乖咒!」
「滅の……嫌な予感はしたけど、エリンさんのとは比べ物にならない!」
「ーーそれはそうだよ。 あんな紛い物と一緒にしないでもらたいものだね」
すずかの言葉に答えるように、スカリエッティの背後から声が聞こえた。 暗がりから現れたのは……スーツを着た、二十代くらいの白髪の男性だった。
「ナギ……エスパイア!」
「やあ、そこの2人とは2年ぶりかな?」
「どうしてあなたがここに……!?」
「それを答える義理はないかな? 確かに、僕も野望があり、彼とはお互いを利用し合う協力関係にあるが……僕の目的は今日中に達成はできないんだよね」
「ペラペラと喋りやがって……ならそのまま吐いてもらおうか! その野望とやらを!?」
「それはお答えできないね」
リヴァンの質問に、ナギはやれやれと首を振って回答を拒否した。
「ちっ……」
「ふふ、雑談はそのくらいにしておこう。 では……」
ナギは両手を軽く広げ。 その手から、身体中から滅の魔乖咒が溢れ出してきた。
「始めるとしようか?」
「っ!? あいつはヤベェ……マジでやらないと死ぬぞ!!」
「……出し惜しみはできなそうだね」
《ネクストフォーム》
「すずか!?」
スノーホワイトのフルドライブが発動し、バリアジャケットの形状が変化した。 カチューシャで止められた長い髪は頭の上に結い纏め上げられ。 機動性を重視したのか、大胆にもヘソを出している服装だ。 そしてその手には矢印の形をした槍を持ち、その姿はまるで戦いに赴く、戦姫のような姿だ。
「スノーホワイト。 ファーストギア……ファイア」
《ドライブ》
槍に装着されている歯車が駆動し、魔力を上げすずかは目を閉じる。 そして、目を開くと……その瞳は血のように赤かった。
「ほう……?」
「吸血鬼の力! 怪異とは違う、私の知らない幻想の一端! 興味が唆られる!!」
「すずか……」
「大丈夫。 レンヤ君も自分と似たような感じって言ってたし。 私は私の……皆を守るためにこの力を使う」
「どりゃあああっ!!」
《ビットレーザー》
市街地上空、そこでは星槍のフェローこと雷帝フェルベルトと、機動六課所属のアリシアとシグナムinリインが交戦していた。 アリシアは両手の拳銃と周囲に浮遊する青いビットレーザーで弾幕を張る。
『アルティウムセイバー!』
「喰らうがいい……滅!」
だが、フェローは力を込め……ランスを横に渾身の一撃で薙ぎ払い弾幕を消し飛ばした。 その余波はアリシアとシグナムの元まで到達した。
「嘘おおっ!?」
「さすがは武の至境に到達しかけたと言われるだけはある。 尋常ではない魔力だ……!」
『……ゼストさん……テオさん……ものすごく強い人はことごとく見慣れていましたけど……あの人もかなり……』
リインはフェローの戦いぶりに戦慄していた。
「ーーレヴァンティン!」
《シュランゲフォルム》
だが、シグナムは怯まず。 鞘を展開しながらレヴァンティンはモード変換の準備をし、鞘に収め……その状態でカートリッジを炸裂させる。
『炎熱加速!』
リインによる援護とともに抜剣。 同時に蛇腹剣となり、伸ばされた刀身に炎が纏われる。
『「飛竜……一閃!」』
全力でフェローに向かって螺旋を描きながら振るい、炎を纏った砲撃級の魔力斬撃を放った。
『炎熱防御、衝撃加速……雷撃付与。 シュトルムランツァー』
「行きますよ……貫け!」
コルルが補助を行い。 フェローはランスに雷を纏わせ、突きの威力で前に突進する。 ランスは飛竜一閃を正面から撃ち破り、そのまま突撃する。
「まだだ!」
《蛍火》
牽制のため魔力弾を乱射し、連続で爆発を起こすが……フェローの速度は衰えず真っ直ぐランスを向けて突撃してくる。
「シグナム!」
《シールドビット》
シールドとランスが衝突。 止めたのは一瞬だけだが……それだけあればシグナムの前にアリシアが出られた。
「でやあっ!」
小太刀を交差させ、ランスの軌道を横に逸らした。
「やりますね」
「霊山の時から3年は経ってるし、今でもあのランスの一撃は身に染みているの!」
「ーーですが……まだまだ甘い!」
『雷雲よここに! アングリアハンマー!!』
「荒ぶる神の
コルルが雷雲を呼び、天に向けたランスの周囲に展開した雷の魔力球に落雷を落とし……全方向に雷撃と衝撃波を起こす。
「ぐっ!」
「な、なんて魔力!」
「ーーはあっ!」
「ああっ!?」
「うあああっ!!」
驚く間も無くフェローが接近と同時に一呼吸の間に高速で二突き、放ってきた。 ランスは2人の防御を貫き……飛行魔法が消されて吹き飛ばされてしまい、アリシアとシグナムは重力に従って落下してしまった。
地上に激突しかけた時……リインの機転で魔法陣を重ねて緩衝と利用、トランポリンのように少し跳ね上がり着地した。
「抜けられちゃったね……」
『反応はロストしてません。 すぐに追いかけるですよ!』
「……フェルベルト……まるで衰えを感じさせなかったな……」
「シグナム?」
「何でもない。 行くとしよう」
2人は飛び立ち、フェローを追いかけ地上本部に向かった。