魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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176話

 

 

両陣営……それぞれの目的達成のため、地上本部及び都市に襲撃してきた敵対勢力を機動六課、フォワード陣が対応。 廃棄都市のいたる所で戦闘が開始されていた。

 

「はあっ!」

 

その中の一角、結界で囲われた薄暗い廃棄ビル内ではソーマとティアナが戦闘機人2名と騎陣隊2名と戦っていた。

 

ティアナが魔力弾を撃ちながら走っていると、背後にディードが現れ双剣が振り抜かれた。 だが、刃は抵抗なくティアナを斬り裂き……幻のように消えていった。

 

「……幻影ですか」

 

ディードは目の瞳孔をカメラのレンズのように動かし、彼女のデータ化された視界で幻術の中に混ざっていた本物のティアナを捉える。

 

「同じ手が通用すると……」

 

「ーーはっ!?」

 

「思っているのですか!」

 

迷いなくティアナに向かって行き、蹴りを放った。 ティアナは両腕を交差させてガードするも、壁際まで吹き飛ばされ。 砂塵が舞う中ダメ押しにウェンディが魔力弾を撃ち込む。

 

「ソーマ!」

 

「了解!」

 

だがティアナは無事で、ディードとウェンディに向かって弧を描きながら無数の魔力弾を撃った。 2人が魔力弾を防ぐ中、ティアナは魔力アンカーを上階に伸ばし上へと向かい……

 

「ーー外力系衝剄……」

 

『!!』

 

「竜旋剄っ!!」

 

一瞬でソーマが彼女達の前に現れ……剣を振り上げた。 剄によって練られた竜巻が発生。 2人を上階の天井に叩きつけ、真ん中の吹き抜けを登らせる。

 

「この……!」

 

「ウェンディ、すぐに制動をーー」

 

「させると思ってる?」

 

ディードは体制を立て直そうとするも、吹き飛ばされた先に両手にダガーモードのクロスミラージュを構えたティアナが待ち構えていた。

 

「ツインズレイ!」

 

「ぐあっ!」

 

「うわっ!?」

 

二刀の魔力の刃を交差させるように振り下ろし、ディードを撃ち落としてウェンディにぶつけ。 地上に落下していった。

 

「ーーティアナ! 上!」

 

「なっ!?」

 

「遅い」

 

ウルクがティアナが留まっている階から飛び出し、その階の壁に叩きつけた。

 

「ぐううっ……」

 

「退けっ!」

 

「やっ」

 

ソーマは押し通ろうとするが……ファウレの戦鎌が振り回して行く手を塞いだ。 ティアナは吹き飛ばされた痛みでその場に留まっていると……彼女に向かってウルクが落下の勢いをつけて盾を振り下ろした。 咄嗟に横に転がり避けるが、元いた場所は砕かれ綺麗に穴が開いていた。

 

「っ!! 筆頭はどうしたのよ!? この場にいないみたいだけど!」

 

「ラドムはゼファーと共に外にいるわよ。 それよりも、自身の身を案じていなさい」

 

「IS発動……」

 

「!? 後ーー」

 

「ツインブレイズ」

 

「っ! あっっ!?」

 

一瞬でディードに死角を取られ。 ティアナは片刃を防ぐも、もう片方の刃が腕を斬り裂いた。

 

「っ! 内力系活剄……旋剄!」

 

ソーマ脚力を強化し、高速移動しながら地面に衝剄を撃ち込み、砂塵を空中に舞わせティアナの元に向かう。

 

「ティア、大丈夫?」

 

すぐさま肩を貸して移動、放たれウェンディの魔力弾を回避する。 そのまま一つ上の階に登り柱の陰に隠れる。

 

「あの2組みの連携が出来ていないのが唯一の救いだけど……人数の不利が否めないね……」

 

「……もう大丈夫よ。 応急修理はした」

 

「了解。 それでどうする? 一対一ならともかく、応援が望めない以上、この狭い空間じゃティアナの本領は発揮できないし苦戦は免れない……何とか結界を破壊する時間があれば……」

 

「…………アレを……使うわ」

 

唐突にティアナが口にした言葉をソーマは理解し、驚きで目を見開いた。

 

「もしかして……でもすずかさんがまだーー」

 

「ここで使わないなら結果は同じよ。 使わずに死ぬより、使って生き残りたい。 レンヤさんの要請(オーダー)……死力を尽くして生き残れ、でしょ? 私は全力を出し切りたい。 でも、絶対に死にはしない」

 

「……しょうがないなぁ……」

 

ソーマはティアナを離れ、柱の陰から出ると……敵4名が反対側におり、両者は吹き抜けを通して対立する。

 

「差は明白、まだ続ける気ッスか?」

 

「ええ。 あなた達程度、すぐに突破してみせるわ」

 

「……ふうん……?」

 

「自信があるのは良いですが……過剰でもなさそう、何か策があるようね?」

 

「さて、どうだろうね?」

 

言葉で牽制し合う中、ティアナは一歩前に出て……

 

「ーー行くわよ!!」

 

オレンジ色の魔力光が彼女を覆うと……突如として、ティアナの両腕と顔にオレンジ色の波打ったような紋様が浮かび上がってきた。

 

「! そこまで入れているなんて……」

 

「流石に2ヶ月じゃこれが限度だけど……充分行けるわ」

 

「な、なんスか……あれ?」

 

「魔力が飛躍的に上昇している……!」

 

「ーー魔紋(ヒエラティカ)……肌に直接魔力刻印を描き、魔力を流す事によってタイムラグなくノータイムで紋章魔法(ヒエラ・マレフィカ)の発動が可能な特殊な魔法術式……」

 

「私が言うのもアレですけど、乙女の柔肌によく刺青を入れる気になりましたね? 確か、1ミリ入れるだけでもとんでもない激痛が走る筈ですよ? しかも神経に直接作用するもので麻酔の類も意味はなく、ただ耐えるしかない。 見た所……核たる胸、心臓の上にあたる部分も含め顔、両腕の肩から手の先まで入れていますね。 最初の邂逅にその素振りがなかった。 ならば、この短期間で入れるとなると……発狂する程の、想像を絶する程の痛みを伴ったはずです」

 

「……あんた達の筆頭の言う通り凡才なものでね。 こうでもしないとあんた達には届かないから。 でも……やるからには勝つ、それだけよ」

 

ティアナは二丁のクロスミラージュを構え、体の魔紋の光が増し薄暗い廃ビル内を照らしていく。

 

「う〜ん……こりゃ認識を改めるしかないようッスね?」

 

「ええ。 類い稀に見る強靭な精神力……捕獲対象に入れても問題はないでしょう」

 

「それは光栄ね。 全然嬉しくないけど!」

 

「ふふ。 他の子達も含めてもあなたの勇気、知恵、力……以前とは比べ物にならないくらい成長しましたね」

 

彼女はティアナを賞賛すると……突然、騎陣隊2名の足元に光り輝く陣が展開され、ウルクとファウレの威圧が一層増してしまった。

 

「!!」

 

「これは……!」

 

「なら、次は示してもらいます。 この壁を乗り越ええるだけの意志があるのかを……!」

 

「……彗煌陣(すいこうじん)……2人しかいないけど、気をぬくとすぐに死ぬよ……」

 

「第2ラウンド、開始って事だね」

 

「ええ。 ソーマ、必ず勝つわよ!!」

 

「はあっ!!」

 

ティアナとディードは同時に飛び出し、吹き抜けの中心でお互いの……二刀の刃を衝突させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃棄都市上空ではキャロとクレフが、ルーテシアとシャランが、エリオとガジェットV型が交戦していた。

 

「ククちゃん! 私、キャロだよ! 分からないの!?」

 

《Ability Card、Set》

 

「アビリティー発動……フライスラッシャー」

 

「っ……アビリティー発動! スピリットロア!」

 

キャロの必死の呼び掛けに、クレフは攻撃によって応答する。 クローネは翼を羽ばたかせ、三日月型の無数の魔力弾を作り出し、一斉に発射した。 それに対してキャロはフリードの背に乗りながらも防御。 光のピラミッド型の結界を展開、攻撃を防いだ。

 

「お願い、話を聞いて!」

 

「……クローネ……」

 

「! フリード……!!」

 

クローネは再び翼羽ばたかせ、今度は羽根が飛来してきた。 キャロはフリードに指示を出し、上中へと逃げるが羽根は追尾してくる。

 

「キャロ! っ!?」

 

キャロの身を案じてエリオは上を見上げるが……余所見している隙にガジェットV型が接近し剣を振り抜いた。 エリオは槍で防ぐも、続けて攻撃され防戦一方だった。

 

「っ!! このガジェット……何て強さだ!?」

 

「ふふ、それはそうよ。 スカリエッティが丹精込めて生物技術を抜きにして作った最高傑作よ。 中々面白いおもちゃでしょ?」

 

「あなたは黙ってなさい!」

 

《Ability Card、Set》

 

「アビリティー発動! ミスティシャドウ!」

 

ガリューが無数の羽虫となり、シャランの放った攻撃を避けて周りを囲った。

 

「切り刻みなさい!」

 

羽虫がシャランに群がり、身体中を切り裂き始めた。 シャランはそのまま落下し地面に落下した。 だが……

 

「あらあら、痛いわねぇ」

 

「! 傷付く前に再生している……!?」

 

何事も無かったかのように立ち上がり、身体についた砂を払った。

 

「闇の魔乖咒の特徴、忘れたとは言わせないわよ?」

 

「なんてデタラメな回復力……けど、負けられないのよ!」

 

ルーテシアは元に戻ったガリューの肩に飛び乗り、魔力で構成された短刀を展開しながら新たなアビリティーカードを手に取る。

 

「ストラーダ!」

 

《デューゼンフォルム》

 

ストラーダをデューゼンフォルムに変形、ブースターを点火してその勢いで上空に登り。 飛んでいたフリードの背に飛び乗った。

 

「メランジェの元にも行かないといけないのに……!」

 

「ーーククちゃん! 私は……あなたの力になりたいの! 救いたいの!! だから応えて!!」

 

「!」

 

キャロの言葉に、ようやくクレフは反応を見せた。 その反応を見て、エリオとルーテシアも彼女に問いかける。

 

「僕達は君を救いたいんだ! フェイトさんが僕にしてくれたように……僕も、救えるのなら救いたい!!」

 

「……る……さい」

 

「こっちの話も聞きなさい! あなたはレンヤさん達から聞いてる、自分の過去に決着をつけようとしてたじゃないの!? 今更操られてんじゃないわよ!」

 

「……るさい……うるさい……」

 

「私が、私達が絶対にククちゃんを救い出してみせるから! だからククちゃんも負けないで!!」

 

「うるさい………うるさい! うるさい!! 」

 

「ククちゃん!!」

 

「うるさいっ!!!」

 

キャロの呼び掛けを否定し、クレフはその顔に初めて感情を……怒りを露わにした。 そしてクレフは懐からX状の絵が描かれている赤いアビリティーカードを取り出し……

 

「アビリティー……発動!!」

 

ガントレットに差し入れず、直接クローネに投げた。 カードはクローネの胸に向かい……絵のXが伸び出し、クローネの全体に巻きつき始めた。

 

「ピィイイイ!! ピィイイイイ!!!」

 

それが縄のように巻き付き、締め上げる。 何が起こるのを感じながらも……クローネは空中でもがき、苦しみだした。

 

「これは……!?」

 

「止めて! クローネが苦しんでいる!!」

 

キャロが悲痛に叫ぶが、クレフは止まず。 突如、凄まじい勢いの竜巻が発生、クローネがその中に入ってしまった。

 

「強制進化……ゼフィロス・ミラージュ・ジーククローネッ!!」

 

「ーーギャオルルルルッ!!!」

 

翼を広げ竜巻を振り払って現れたのは……翼が三対六翼となり風切羽は刃のように鋭く、剣のような爪を見せる足、翠色の羽根を羽ばたかせ鋭い猛禽類の目をエリオ達に見せるクローネだった。

 

「なっ!?」

 

「い、いきなり進化した……!」

 

「ーーカオス・アビリティX(エックス)……限界を超え、強制的に進化させる事ができるアビリティーカード……」

 

「! そんな事をすれば、クローネの身体が保たないわよ! 今すぐ戦うのをやめなさい!」

 

「ええ、いいわよ。 あなた達が降伏するなら、ね?」

 

「くっ……」

 

「ーーゲートカード、オープン! ゼフィロスリアクター!」

 

地面に展開されたゲートカードの効果を発動し、クローネの魔力が高まりながらクレフは続けて叩きつけるようにガントレットにカードを差し入れる。

 

《Ability Card、Set》

 

「アビリティー発動! ジャッチメントミラージュ!!」

 

ガンドレットの緑色の輝きと共に、クローネが空高く飛び上がる。 そして一気に加速し、降下……その途中でまるで蜃気楼のように分身し、3人に向かって飛来する。

 

「くっ……アビリティー発動! エンシェントグロウ!」

 

「アビリティー発動! ダークアウト!」

 

フリードが自身とガリュー、エリオとキャロとルーテシアの魔力を上げ、ガリューが苦無をゲートカードの四隅に突き刺し、無効化してクローネの魔力を下げ……減速したクローネの突撃を避ける。

 

《ライトスピア》

 

「はあああっ!!」

 

力が増したエリオは高速で飛び出し、槍に雷を纏わせ……裂帛の一撃により、ガジェットV型貫き……横に斬り裂き破壊した。

 

パチパチパチ……

 

「お見事。 隙を見逃さず、一気に勝負を着けた判断……将来が楽しみね」

 

「そんな事はどうでもいい。 クレフの洗脳を解除してください」

 

「ふふふ……ええ、いいわよ」

 

パチン!

 

「………………!」

 

エリオの言葉に応答するように答えるようにシャランが指を鳴らした。 それを合図にして、クレフがダランと頭を下げ……ゆっくり上げるとその顔に意志が無くなっていた。

 

「ククちゃん……?」

 

「…………………」

 

「……………(キッ)」

 

キャロは無表情になってしまったククを一瞥し、元に戻っていない事が分かると次にその上空で見下ろしているシャランを睨みつける。

 

「…………………(フッ)」

 

「………っ………!?」

 

クレフが不敵な笑顔を見せた。 それにキャロは硬く拳を握りしめ、左腕のガントレットが黄色く光輝く。

 

「アビリティー発動……ブラストショット!」

 

フリードは口を開け、巨大な炎の弾丸がシャランに向かって放たれた。

 

「クク」

 

「アビリティー発動、ゾーンヴェルデ」

 

シャランの一声でクレフが対応、クローネが緑色の魔力を纏い高速で移動、火球を翼の一振りで消しとばした。

 

「おやおや、魔法にキレが無くなってきているわねぇ?」

 

「……っ……」

 

「……キャロ」

 

「!!」

 

そこで今まで口を閉ざしていたクレフの口が開いた。 突然の事にキャロはもちろん、エリオとルーテシアも驚きを隠せなかった。

 

「ククちゃん、やっと……!」

 

「本当に、私がシャランさんに操られていると思う?」

 

「………え」

 

「私は自分の意志でこうしているの。 だから、邪魔をしないで。 これが本当の私だから」

 

クレフの口から出た言葉に、キャロは呆然とするが……すぐに否定するように頭を左右に振り正気を保った。

 

「嘘を言わないで! あなたは本当のククちゃんじゃない!」

 

「そう思う? 弱い者を傷つけるのも……」

 

言葉を続けながらククは視線を下げ、足元に咲いていた花を踏み潰した。

 

「美しい物を破壊するのも……楽しくてしかたがない。 今の私が……本当の私」

 

「!?」

 

(マズい!)

 

クレフの言葉にキャロの心が乱されている……それに気付き、エリオはこれ以上言わせぬように彼女に向かって飛び出した。

 

「キャロ! 彼女の言葉に惑わされないで!」

 

一気に距離を詰めクレフに槍を振るった。 クレフはそれをバックステップで躱し、槍が頭上を通り過ぎた時……ガントレットが緑色に輝く。

 

「アビリティー発動、ライフイーター!」

 

「うわあああっ!!」

 

頭上にいたクローネが魔力弾を連射、エリオに降り注ぐと爆発し。 エリオは傷を負いながらも何とか防御しており、キャロの隣まで後退する。

 

「キャロ、しっかりしなさい!」

 

「ーー分かってる! あれもシャランの作戦……私の心を惑わせて集中力を乱そうとしている!」

 

(! ……そうか! 頭では分かっている……けど、動揺は隠せていない! 心に迷いが生まれている証拠!)

 

視線がクレフから離れず目が動揺を表し、先程から額の脂汗が止まらないでいる。 エリオはすぐにキャロの状態を察知、危惧していた。

 

(不味い……魔力が徐々に弱まっている! 早く何とか……いや、すぐに決着をつけないと!)

 

魔力が弱まるのに同調するように、ガントレットの輝きが徐々に弱まってきていた。

 

「おやおや。 あなたはククの言動を私の作戦だと? だとしたからあなたはククの事を何にも分かっていなかったようね。 人は表面はニコニコと愛想よくしているけど、心の奥底では相手の憎悪や憎しみに満ちている。 それが……人間でしょう?」

 

「っ〜〜!! 黙れーー!!」

 

怒りに比例するようにケリュケイオンが強く点滅し、同時にガントレットも輝く。

 

「アビリティー発動! ボルテックスキャノンッ!!」

 

キャロは感情に任せてアビリティーを発動。 フリードの眼前に白い雷の球体を発生させ、咆哮によって砲撃として放った。

 

「アビリティー発動、フェンサーシールド!」

 

しかし、クローネが羽ばたきによって竜巻を起こし。 容易く砲撃を防いだ。

 

「そして、追加効果として相手のアビリティーを無効化する」

 

「! エンシェントグロウが……!」

 

邪な風がキャロ達の合間を抜けてエンシェントグロウの効果が消え、無効化されてしまった。

 

「中々の威力ね。 そろそろ本気になったのかしら?」

 

「くっ! あの砲撃があの程度の防御で防がれたですって……!」

 

「キャロ、落ち着いて。 魔力が乱れて魔法もフリードのアビリティーも本来の威力が出ていないよ」

 

「ーークク、こっちにおいで」

 

「はい」

 

シャランの命令に従い、クレフはシャランの元に向かい。 シャランはクレフの腕を掴み、少し前側に置いた。

 

「少しは盾になるでしょう」

 

「ククちゃんを盾に……」

 

シャランの非道な扱いにキャロは怒りを覚える。 だが、クレフはそんな事も御構い無しに魔力を込め始める。

 

「……アビリティー発動、ドレイクツイスター!」

 

「!! アビリティー発動! シャイニングフォース!!」

 

クローネは目の前に巨大な竜巻を作り出し、その風圧が伴う斬撃を放ち。 フリードは鏡の翼で光のエネルギーを充填し、口から砲撃として放った。

 

「くっ……」

 

「なんて威力……」

 

両者の攻撃が中間で衝突、強烈な衝撃を辺りに轟かせる。 アビリティーのレベルは互角……拮抗状態が続く。

 

「キャロ。 私が本当にあなたの友達でいたと思っているの?」

 

「…………………」

 

「確かに。 キャロとはル・ルシエとも関係なく遊んで、助け合っていた。 でも、私とあなたとでは立場が違う。 全てが対等の立場にない……私達に……」

 

クレフは悲痛に顔を歪め、緑色に輝くガントレットの光が増していく。

 

「どういう絆が築けると言うの!!」

 

クレフの怒りの感情に比例し、クローネの竜巻の威力が増した。 それにより拮抗が偏り、フリードの砲撃がかき消されるように押され……竜巻が直撃した。 その光景をシャランは笑みを浮かべる。

 

「フフ、フフフ………」

 

「この力……ククちゃんは本当に、私に強い憎しみを……」

 

「グルル………」

 

「くっ……」

 

「ーーそれでも私は頑張った。 あなたに負けまいと召喚士として一人前になれるよう努力した。 でも、その途中で私は教団に攫われた。 非道な実験を毎日のように受けた。 私と同じ境遇の子達の悲鳴を毎日聞いて……1人、また1人と消えていった。 いつ自分があの中に入るのかと思い夜も眠れなかった。 私は……人生を憎んだ。 そして、あなたも」

 

「っ……!」

 

「アビリティー発動、フライデストロイヤー!!」

 

クローネは目の前にレンズのような空間を作り出し、そこに光線状にした魔力エネルギーを口から発射することでレンズを通り抜けた魔力エネルギーを光線状から電撃状に変えて攻撃してきた。

 

「っ………アビリティー発動、スパークロア!」

 

すぐさま防御に回り。 フリードは鏡の翼を広げ、放射状に伸びる光線を放射して構成された盾を作り、飛来した雷撃を相殺した。

 

「フフフ……まだ跳ね返す程の力があるようね?」

 

「ーーふ、ふふ……」

 

「あら?」

 

シャランは相殺したのに関心していたが……キャロは似合わず小さく笑い声を上げた。 その間にシャランはクレフを近くにあった廃ビルの屋上に下ろす。

 

「ククちゃんの今の言葉が本当なら、私と一緒にいたククちゃんが笑顔でいるはずがない。 作り笑いは……管理局に保護されて以来、フェイトさんに保護されるまでよく見ていたから」

 

「キャロ……」

 

(そう、嘘。 全部あの人がククちゃんに言わせている作り話)

 

(フフフ……もうひと息かしら)

 

洗脳によって言わされている、そう理解しているがキャロの心が確実に大きく揺れ動く。 それをシャランは不敵な視線でキャロを見下ろす。

 

「キャロ。 あなた、あの出来事を覚えている?」

 

(っ……まだ……!)

 

「6年前……私が攫われる1ヶ月前、祭りの最中にル・ルシエの家に泥棒が入ったでしょう? そして祭事のため飾られてあった家宝たる首飾りが盗まれた。 部屋はメチャクチャに荒らされて、犯人も未だに分からず……ちなみにねキャロ、犯人は私なの」

 

「…………え…………」

 

「あなた達ルシエは事あるごとに私達家族を足蹴にしてきた。 その意趣返しに私がやった事なのよ!」

 

事実、過去に起きた事件の主犯がクレフだと。 その理由が自身への恨みだと突きつけられ……キャロは動揺を隠せなかったが、直ぐに否定した。

 

「あ、あ……っ! ふざけないで! ククちゃんにそんな事が出来るわけないでしょう!?」

 

「フフフ。 でも犯人は捕まらなかった。 そうでしょう、クク?」

 

「それに私は祭事の時、あの首飾りが家にあるとキャロから教えてもらった事がある」

 

「それが何の証拠になるって言うの……!? 泥棒なら、鍵をこじ開ける事くらいーー」

 

キャロが必死に否定するように叫ぶ最中、ククは懐を探り……竜の牙に装飾が施された首飾りを出した。 それを目にしたキャロは目を見開いてその首飾りを凝視しする。

 

「キャロ、見て? 宝石のような輝きはないけれど壮麗と言う言葉が似合うでしょう?」

 

「ーー!」

 

「これが何だか……分かるわよね? あなたの家の家宝の首飾りだから。 どう、似合う?」

 

クレフは首飾りをワザとらしく自身の胸元に当てキャロに見せつける。

 

「あの時盗み出してからずっと私が大切に磨いていたから」

 

「あ……あ……ああ……」

 

呆然とクレフと首飾りを見て……キャロはその瞳に涙が留めなく、溢れるように流れ落ちる。

 

「う……そ……嘘……」

 

「ーー所詮は、才能がある家の人間に……虐げられ、蔑まれた者の心なんか……分からないのよ!!」

 

《Ready、Karma Spinner》

 

「バトルギア……セットアップ!!」

 

強く首飾りを握りしめ、怒りに比例するようにガントレット上で緑色のパーツがパズルを組み合わさるようにして円柱型の緑色のバトルギア形作り、クレフはそれを掴みクローネに向かって投げ……クローネの背の装置を起点とし、非固定型の刃が付いた4つの円盤が周りに浮遊した。

 

「バトルギア・アビリティー……発動!! カルマスピナー・バニッシュ!!」

 

続けてバトルギア専用アビリティーを発動。 4つの円盤が高速に回転。 さらにクローネの囲うように回転し、クローネの口に魔力が集まり……巨大な竜巻を纏った巨大な砲撃が放たれた。

 

「嘘……嘘だよね……」

 

「キャロ! しっかりしてキャロ!!」

 

「っ……! もう避けられない……ガリュー! 防ぐわよ!」

 

(コクン)

 

「アビリティー発動! バインドシールド!!」

 

ガリューは籠手を身の丈ほどの盾に変化させ、さらに自身のマフラーを伸ばし、とぐろを巻いてルーテシア達を守ろうとする。

 

「キャロ!!」

 

「っ……アビリティー……発動……ボルテックス……キャノン……」

 

エリオの叱咤にキャロは涙を流しながら左腕を、ガントレットを上げ発動しようとするが……ガントレットは光もせず、フリードも困惑してキャロを見つめる。 そんなキャロをクレフは微笑みながら見下ろす。

 

「ふふふ……」

 

「……出て……ボルテックスキャノン!!」

 

ガントレットを突き出し、ほぼやけくそに叫ぶが……結果は変わらず。 何も起きなかった。 そして……

 

ドオオオオオオンッッ!!!

 

砲撃がキャロ達に直撃、地面を大きく抉り強烈な衝撃が辺りに響いた。

 

「……おもしろいぃ……全くもっておもしろい……! 人の心が崩れるのは、いつ見ても快感ね!」

 

キャロの涙を嘲笑うかのように、シャランは笑い狂う。 その隣でククは意志のない瞳、しかし笑みを浮かべている表情で見下ろしていた。

 

 




……いつかはこうなると分かってはいたが。 途中から作品が変わった気がする……

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