魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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174話

 

 

同日ーー

 

無限書庫、ユーノから得られた情報により聖王のゆりかごが極めて危険度の高いロストロギアに認定。 それにより本局次元航行艦隊、空域航空武装隊も対策協力に合意。 陸、海、空の三勢力が事件解決のため動き出した。

 

そして機動六課、フォワード陣はゆりかごの突入に俺、なのは、はやて、アリサとアギト、ヴィータ。 フォローとしてシェルティス。

 

スカリエッティのアジトにはフェイト、すずか。 フォローとしてユエとリヴァン。

 

首都防衛にはソーマ、スバル、ティアナ、サーシャ、エリオ、キャロ、ルーテシア、ギンガ、美由希姉さんに加えてアリシア、シグナム、ヴァイス、リイン、エナの3グループに分かれ、全体の指揮がはやてに変わりツァリという構成で行動を開始した。

 

『第1グループ降下まで、後3分です』

 

「ーーつまり、ゆりかごを2つの月が交差する軌道上に上がらせる前に止めるしかないのか」

 

『うん。 そうなると手の打ちようがないよ』

 

俺は準備運動をしながら無限書庫にいるユーノと通信を取り、ゆりかごの詳細な情報を聞いていた。

 

『停止方法は3つ。 鍵となる聖王が停止を命じるか、動力炉の停止もしくは破壊。 最後は……ゆりかご本体を破壊する事』

 

「1つ目はヴィヴィオが操られている以上不可。 2つ目は可能だが結界やゆりかごの突入を含めると時間がかかる。 3つ目に至っては最終手段だな」

 

『そこは不可能とは言わないんだ……』

 

『相変わらず規格外だな、オメェも』

 

ユーノの手伝いとして無限書庫にいるアルフは、やれやれと首を振りながら肩を竦めた。

 

『そう言えば……ザフィーラは無事か?』

 

「酷い怪我だが、命に別状はない。 今は安静にしているよ」

 

『そっか、良かった……』

 

『アルフ、ここ最近その事で落ち着きがなかったんだよ』

 

『うっせ! オメェはヴィータの心配でもしてろ!』

 

『痛ッ!?』

 

アルフは照れ隠しのようにユーノを足蹴にし、ユーノは無重力状態で落下していった。

 

「…………………」

 

ふと、視界にアースラの倉庫区画で降下準備をしている最中、シェルティスの顔は少し悪そうにしていた。

 

「何か気になることでもあるのか?」

 

「……そうじゃないよ。 ただ、あの空白(イグニド)っていう人物がちょっと……」

 

「空白か……結局何者なんだろうな。 異編卿にしても鏡界計画にしても、不明な点が多過ぎる」

 

《次元世界征服にしても、似合わな過ぎな気もしますね》

 

魔法文化の破壊……管理世界においては大崩壊を招き、例え非管理世界でも魔力素質のある人々が何らかの影響を与えかねない事態になる。 必ず止めなくては。 と、そこでなのはとアリサがやってきた。

 

「なのは、アリサ。 もうフォワード陣の激励は済んだのか?」

 

「うん。 皆、無事に帰って来れるよ」

 

「あの子達はもう翼を持っている。 巣立ちの時よ」

 

「それはそれで少し寂しいけどね」

 

作戦を開始。 フォワード陣を乗せたピット艦がアースラと分離。 それを確認し、はやては俺達一同の方を向いた。

 

「それじゃあ、私達も行こうか!」

 

「ああ!」

 

「了解!」

 

『降下ハッチ、開きます。 どうかご武運を!』

 

アースラの降下ハッチが開き、俺達は迷わず大空に向かって飛び出した。 まるで自身が風になるような気分で落下し、カリムからの通信が入ってくる。

 

『機動六課隊長、副隊長一同。 能力限定完全解除……皆さん、どうか』

 

「しっかりやるよ!」

 

「気合い十分、問題ないよ」

 

「迅速に解決します」

 

「必ず、無事に帰ってくるわ」

 

「お任せください!」

 

「また、皆で茶会を開きましょうね!」

 

「……カリムはどっしり構えていればいい。 ベルカを頼んだぞ」

 

『はい……リミット、リリース!』

 

カリムの認証による機動六課隊長・副隊長のリミッター完全解除。 力が湧き上がるのを感じながら俺達はデバイスを起動し、目的地に向かって飛翔する。

 

「……皆、聞いてくれる?」

 

「すずかちゃん?」

 

移動する中、すずかが顔を少し伏せた後……顔を上げて俺達全員を見据える。

 

「私ももちろんだけど……レンヤ君となのはちゃん、フェイトちゃんとはやてちゃん、アリサちゃんとアリシアちゃん。 皆にはできればリミットブレイクは使って欲しくないけど……相手が相手だし、大惜しみは出来ないと思う。 だから、絶対に無茶だけはしないでね」

 

「ーーそれは無理かもしれないわね。 だってこの中で誰1人として無茶しない人なんていないでしょう」

 

「だね。 いつだって無茶無謀がない事件なんて一度もなかったよ」

 

「確かに皆の事を考えると辞めて欲しいけど……自分自身も出来るかどうかと言われれば……」

 

「最近少なくなってきた気もするけど……振り返ると多い気もするなぁ」

 

「あはは、毎回ギリギリでの勝利だったからねぇ」

 

「もう! 皆して……! 今回ばかりは私は本気で……!」

 

「心配しないくてもいい。 俺達は生き残る、必ずな。 あの子達に帰る居場所を、幸せに生きる未来を作るまでは……この命、散らせはしないさ」

 

誓いを確認するように、胸に手を当てる。 それに見て、なのは達は同意するように頷く。

 

「うん……ヴィヴィオのためにも」

 

「イットのためにも。 私達は勝たなくちゃいけない」

 

「例え……どんなに辛くても、どんなに苦しくても。 どんな結末になっても……必ずあの子達の手を掴まないと」

 

「ーーあ、そうや他にも大事な事があったわ。 これが終わったら正妻決めなぁあかんなぁ」

 

「……そうだね……確かに大事だね」

 

「それは………本当に大事な事なのか?」

 

『大事だよ!』

 

重苦しい空気から一転、自身を取り合う姦しい争いに変わってしまった。 事の発端である俺は、理解はしているが……今更ながらの後悔の念がこみ上げ……

 

「何で毎度毎度……戦いに赴く前に、敵は遠くじゃなくてすぐ側にいるんだよーー!?」

 

雲一つ何もない大空、宇宙に向かって悲痛そうに叫んだ。

 

「何をしてるんだお前達は……」

 

「皆さん、こんな時でも仲良しですぅ」

 

「相変わらずおめえらは緊張感ねぇなあ……」

 

「あ、あはは……ちょっと妬けちゃうな」

 

頭上を飛んでいるシグナム達の会話が聞こえ、恥ずかしくて頰が熱くなるのを振り払う。 と、そこで他の2グループのコースが外れるポイントに差しかかろうとしていた。

 

「……それじゃあ、私達はこれで」

 

「お互い、頑張ろうね」

 

「了解!」

 

フェイトはなのはと、すずかはアリサと拳を合わせ……2人は加速、スカリエッテのアジトに向かった。

 

「では、我らも」

 

「はやてちゃん、ヴィータちゃん、気をつけてくださいね」

 

「おう」

 

「リィンも気ぃつけてな」

 

「きっちり決着をつけるから、皆も負けないでよね?」

 

「ああ。 もう、負けやしないさ。 奴らを倒すまで……絶対に倒れない」

 

「うん!」

 

アリシア達は直進コースを外れ、地上本部に向かった。

 

「ーー見えてきたわね」

 

ゆりかごと、点にしか見えないが大量のガジェットとグリードを視界に捉えた。

 

「これは……」

 

そこは、既に戦場だった。 既に、航空武装隊がガジェットと飛行型のグリードと交戦に入っていた。

 

俺達、ゆりかご突入部隊は他の航空魔導師隊と合流、協力してガジェットを撃破しながらゆりかごへの突破口を開こうとする。

 

「ーーアリシアによればあの球体の内部には異界が存在しているらしく、俺達は各自異界に突入。 異界を攻略してゆりかごを覆う結界を破壊する」

 

「了解だよ」

 

「でもそうなると外の指揮が足りなくなるなぁ……そこはどうする気や?」

 

「そこはティーダさんに頼もうと思う。 あの人なら単独での戦闘力は申し分ないし、指揮も問題ないはずだ」

 

ガジェットを撃ち、グリードを切り裂いているティーダさんを見つけ、念話を飛ばした。

『ティーダさん!』

 

『! 来たか……要請は聞いている、外は俺に任せて本丸を叩いて来い!』

 

『了解!』

 

意識をなのは達に向け、号令をかける。

 

「機動六課! これよりそれぞれが球体内部の異界に進入、結界を解除する。 皆、必ず生きて戻ってこよう!」

 

『おおっ!!』

 

一斉に、自分が向かうべき目標に砲撃を放ち、ガジェットとグリードを撃ち落として道を作る。 俺は上方、なのはは前方、ヴィータは右方、はやては左方、アリサは後方、シェルティスは下方の球体に向かい、空いていた穴に向かって突入した。

 

 

 

「っ……! これは………」

 

球体内部に入った途端、ゲートを潜るような感覚に陥り……いつの間にか異界に入っていた。 そして眼前に広がる異界迷宮は空の下、雲の上に作られた石橋の一本道。 ただし、夥しい程の怪異で道は埋め尽くされており、さらに数十キロ先には巨大な石舞台が見える。

 

《どうやらあの球体の内部自体が異界で構成されていたようです》

 

「球体がゲートの役割を果たしいたって事か。 しかし……」

 

後ろを振り返ると……そこには出口たるゲートがなかった。 一方通行、この異界迷宮を攻略するまでは帰れないというわけか。

 

「行きはよいよい、帰りはこわい、か……言い得て妙だな」

 

《どう見ても行きもこわいと思いますが?》

 

「だよな。 恐らく他の場所もこんな感じだろ……急ごう」

 

長刀と3本の短刀を抜刀し、怪異の軍団に向かって走り出した。

 

 


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