魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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171話

 

 

同日ーー

 

六課の外でアリシアとサーシャが交戦する中……隊舎内に侵入し、荒らし回っているガジェットを避難誘導をしながら美由希が潰し回っていた。

 

「くっ……木偶が多い事で」

 

非戦闘員の中で唯一逃げ遅れたアイナ、ヴィヴィオ、イット、ファリン、ルーチェを背にし、美由希は小太刀のソウルデヴァイスをガジェットに向かって構える。 ファリンもアイナ達を守ろうと式神を並べて盾にしていた。

 

「きゃあ!」

 

「ーー冥府起(はっくつ)!!」

 

すぐ側の壁が爆発し、ガジェットがヴィヴィオ達に襲いかかった。 すぐにファリンが対応し、床から式神を掘り起こすようにして飛び出させて破壊。 舞い上がった炎はルーチェが食べて消化した。

 

「キュイー♪」

 

「ルーチェすごーい!」

 

「竜って炎が主食なのね……」

 

「大丈夫みたいね……さて。 私にはAMFは関係ないとはいえ……この数を抑えるのは中々堪えるわね……」

 

「お、俺も戦います……!」

 

「こ、こら。 下がってなさい」

 

「無茶ですフよ……」

 

イットが太刀を手に取り前に出ようとしたが、ファリンとビエンフーが慌てて抑える。

 

「下がってなさい! イットには手が余るわ!」

 

「で、ですが……鬼の力を使えば……」

 

「レンヤはそのためにあなたに太刀を持たせ続けたんじゃないのよ!!」

 

「っ!」

 

一体が美由希の防衛線を突破し、ファリン達に向かって突進していく。

 

「しまっーー」

 

助けに行こうにもガジェットのコードが小太刀に絡みついて動けず。 応戦しようとファリンが式神を構えた時……横から魔力弾が飛来、ガジェットを射抜き破壊された。

 

「美由希さん! 大丈夫か!?」

 

「ヴァイス!? どうしてここに……」

 

「六課が襲われったって聞いて、全速力で飛んで来たのさ!」

 

《それでガジェットに撃墜されて隊舎に突っ込みました。 これで2度目ですね》

 

「うっせえ!」

 

そうストームレイダーに指摘され、ヴァイスは魔力弾を撃ちながら否定する。

 

無駄口を叩きながらもヴァイスの射撃は正確にガジェットを誘導し、どんどん一カ所に集めて行き……

 

「今だ!」

 

「ーー荒海(あらがみ)……大蛟(みずち)!!」

 

美由希が無納刀の居合いで小太刀を振り抜いて水の斬撃が放ち。 水の斬撃は同じ大きさのまま枝分かれしガジェットの集団を斬り裂いて一蹴した。

 

「皆!」

 

「シャマルさん!」

 

「リンスさんも無事で良かった!」

 

「心配をかけたな。 他のスタッフは避難が完了した。 来い、ザフィーラが脱出路を確保した」

 

「了解……ヴァイス! 撤退するよ!」

 

「応っ! アイナさん、立てるか?」

 

「は、はい」

 

「ヴィヴィオちゃん、イット君も大丈夫?」

 

「うん!」

 

「大丈夫です」

 

「……! 待って!」

 

撤退しようとしたその時……ファリンが手を横に広げて止めさせた。 すると奥の通路から誰かが歩いて来た。 現れたのは長い水色の髪をした少女……

 

「子ども……!?」

 

「あの子は……」

 

「! クレフ・クロニクル……!」

 

クレフは美由希達を視認すると、無表情でゆっくりとそちらに向かって歩き始めた。

 

「逃げるでフー!」

 

「逃げるが勝ちだね!」

 

「きゃっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「ーーレッツ、爆駆走(すべりだい)!」

 

「キュイー!」

 

ファリンはアイナとイットとヴィヴィオを引き寄せ、式神を大きくしてボードのようにして乗り……その場から離脱、シャマルとルーチェも後に続いた。

 

「ヴァイス、私が前衛で突撃する。 援護をお願い!」

 

「あ、ああ……」

 

「シャマルさんとリンスさんはヴィヴィオ達をお願い。 この六課の中で1番狙われているのはあの2人だから」

 

「ええ、分かってるわ」

 

「そちらも気をつけろ。 ヴァイスも………ヴァイス?」

 

「! だ、大丈夫です……少し魔力の消費し過ぎただけです。 いやぁ……こういう時にスタミナがないってキツイっスねぇ」

 

リンスはヴァイスの顔色が少し気になり、声をかけるとヴァイスは苦笑いでヒラヒラと手を振った。

 

「……手が震えているぞ」

 

「っ!」

 

ヴァイスはリンスに指摘され、慌てて利き手である右手を左手で抑える。

 

「やはり、脳裏にあの時の場面が蘇ったか。 私はここに残って美由希の援護に回る、ヴァイスは先に退避していろ」

 

「で、ですが……」

 

「引き金を引けない状態で、一体何ができる? 大方、あの娘が妹と重なったのだろう」

 

「それは……」

 

図星なのか、ヴァイスは何も言えず俯いてしまう。 リンスはそんな彼の肩に手を置いた。

 

「責めはしない。 私はお前の代役をしただけだ。 ヴァイスは私の代役……ヴィヴィオ達を頼む」

 

そのまま肩を引いてヴァイスを半転させて背中を押し出し、リンスは美由希の元に向かった。 ヴァイスはここにいては足手まといになると自分に言い聞かせ走り出そうとするが……すぐに足を止めた。

 

(……おいおい、違うだろ。 俺はまた……大事な所で引き金を他人に任せて、後ろで縮こまって成功を祈っているだけか?)

 

「……? ヴァイス?」

 

「ーー違うだろ。 あれからずっと逃げてばっかで……ここまで来て尻尾巻いて逃げんなんて……そんなの、ただのチキン野郎じゃねえかぁ!!」

 

ヴァイスは力の限り天に向かって吠えた。 その時……突如ヴァイスの左胸が輝きだした。

 

「これは……!」

 

「その光は……まさか!」

 

美由希は驚きの表情をしながら光の正体を察し、ヴァイスは無意識に正面に手を伸ばし……

 

「ーー撃ち抜け……ストライクレーブ!!」

 

光が形を持ち出し、その手に掴んだのは……両側の節が刃のように鋭く、弦がほのかに光っている弓だった。

 

「こいつは……」

 

「弓のソウルデヴァイス……まさかヴァイスが適格者だったなんて!」

 

「適格者……? 俺が……嘘だろ……? っていか何で弓!? 使い方は分かるちゃあ分かるが……」

 

「………………………(スッ)」

 

「ピィイイッ!!」

 

「あ……」

 

クレフは美由希達に向かって手をかざし、クローネがそれに応じていくつもの刃のように鋭い羽を飛ばしてきた。

 

「っ!」

 

ヴァイスが慣れたように弓に3本の魔力で構築された矢をつがえ、射る。 3本の矢は複雑な軌道を描き、全ての羽を撃ち落とした。

 

「……新たな……適格者………」

 

クレフはヴァイスの手にある弓を一瞥し、左腕の緑色のガントレットにカードを差し入れた。

 

《Gauntlet Activate》

 

「ガントレット……チャージオン」

 

ガントレットを起動し、両者は同時に駆け出し……そのフロアから轟音が鳴り響いた。

 

「……ふふ……頑張ってくださいね」

 

「………………………」

 

クレフと美由希達が交戦する中、影から2人の人物が……ザフィーラの確保した避難路に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはぁ!! ふう……まったく手こずらせて」

 

息を上げ、汗を拭いならアリシアの背後でガイアが崩壊する中。 サーシャが戦闘機人2名を制圧していた。

 

「さて、あなた達も頑張ったけど……まだまだ経験が足りなかったようだね?」

 

「はい。 力を使っているだけで、応用などもなく。 使いこなせてなかったです。 神話級グリムグリードも対処すれば勝てない敵ではなかったです」

 

サーシャがオットーとディードを無力化し、アリシアが倒れている2人に話しかける。

 

「……いえ、私達の任務は達成できています」

 

「今さら負け惜しみ?」

 

「あなたの足止め…それが僕達の任務」

 

「足止め?」

 

「! まさか……シャマル!ザフィーラ!」

 

アリシアは通信を試みるが……応答は返ってこなかった。

 

「まさか……お2人が……!?」

 

すると、突然隊舎の一角が爆発。 爆炎が舞う中、色褪せた黄土色のローブの男……黄金のマハがイットとヴィヴィオを抱えており、もう1人の肩に白い隼をのせた水色髪の少女がガジェットII型に乗って離陸していた。

 

「ああ……!」

 

「ヴィヴィオ!!」

 

アリシアがすぐに救助に向かおうとすると……それよりも先に救援に来たエリオがストラーダのツヴァイフォルムで突っ込んでいった。

 

「規定する。 天()く地母。 巨槍にて隆起せよ」

 

振り返らず、マハが詠唱により海から巨大な黄金の槍が高速でせり上がり、それが壁となりエリオの進行は阻まれた。

 

「っ……まだだ!」

 

「千の鎗にて射撃せよ」

 

「な……!?」

 

間髪入れずマハが巨大な槍の表面から無数の鎗を生成……一斉に発射され、エリオは防御しながらも撃墜された。

 

「エリオ君っ!!」

 

「人の心配をする暇があるかしら?」

 

「え……うっ!?」

 

「グオオ……!」

 

いつの間にかキャロの背後に淡い金髪の女性……シャラン・エクセが立っており、女性は指を鳴らしてキャロとフリードを纏めて拘束。 海に落とされてしまった。

 

「エリオ、キャロ!!」

 

「上手くいったようですね」

 

「あなた達……!!」

 

バリアジャケットを着ているので大怪我はしていないと思うが……かなりの高さから落下したため安心は出来ず。 サーシャはオットーとディードを睨みつける。

 

「ーーアリシアちゃん、サーシャ!」

 

「皆、無事か!?」

 

その時、隊舎から美由希とリンス、ヴァイスと片腕がないファリンが出てきた。

 

「リンス! エリオとキャロをお願い!」

 

「わかった!」

 

「何があったのですか?」

 

「済まねえ、伏兵が潜んでいて……シャマルさんとザフィーラが……!」

 

「見つけた! あんたよくも不意打ちしてくれたわね! ヴィヴィオちゃんを返してもらいます!!」

 

「片腕がもげているのに痛みすらみせないとはね……戦闘機人以上に機械みたいね」

 

「うるさいです! ヴィヴィオとイットを返してもらいます、ビエンフー!」

 

「で、でもその体では……」

 

「いいからやる!」

 

「は、はいでフー!」

 

ファリンが何かをしようとした時……突然拘束されていた戦闘機人2名が闇に覆われ始めた。

 

「なっ!」

 

驚愕する中、闇が晴れるとそこには誰もいなかった。

 

「この子達は返してもらうわね」

 

「っ……いい加減に好き勝手は……!」

 

「ーー今、ここで戦うつもりはない」

 

アリシアが飛び立とうすると……突如男性の声とともに背後からアリシアの肩の上、顔の横に大剣が出てきて止められた。

 

「白銀の……アルマデス……!」

 

「俺たちと剣を交わすより、大事な事があるのではないか?」

 

「………それでも!」

 

アリシアは振り返り側に小太刀を抜刀し、アルマデスに斬りかかった。 アルマデスは瞬時に大剣を戻し、剣の腹で受け止める。

 

「美由希、サーシャ、ヴァイス! シャマルとザフィーラ、そしてロングアーチの救助を!」

 

「分かったわ!」

 

「は、はい!」

 

「了解です!」

 

両者が鍔迫り合いをしながら場所を遠くに移す中、アリシアからの指示で美由希とサーシャとヴァイスは急いで隊舎に向かい、その隙に拘束が緩んだため戦闘機人2名は自分で拘束を解いて逃走する。

 

「ーー逃がすかー!!」

 

《Ability Card、Set》

 

その時、埠頭にルーテシアとダークオン・ヴォイドガリューが立っており。 魔力を上げながらシャランとマハを睨みつけていた。

 

「別行動で行こうとした矢先……よくもエリオとキャロを落としてくれたわね! 千倍にして返してやる!!」

 

(グッ……)

 

エリオとキャロを落とされたのが頭にきているようで、ガリューも同じ気持ちで腰を下げ構えを取る。 そしてルーテシアは左腕の紫色のガントレットにカードを差し入れる。

 

「アビリティー発動! ブラックスター!」

 

ガントレットの画面が紫色に輝き、ガリューの両手に巨大な紫色の魔力で構成された十字形の投剣……手裏剣が展開された。

 

「イットとヴィヴィを返してもらうわよ!」

 

その言葉と同時にガリューは手裏剣を投げた。 手裏剣は投擲されると同時に闇夜に消え、飛来する音も立てずガジェットII型に向かって行く。

 

「無駄よ」

 

しかし、シャランが大き目の球状の闇の魔乖咒を放ち。 それが2つの手裏剣を覆うと……手裏剣は風船のように膨らみ、崩壊した。

 

「な……!? 手裏剣の魔力を増幅、飽和させて自壊させた!?」

 

「闇の魔乖咒の真骨頂は回復や蘇生だけど、こんな事も出来るのよ。 それじゃあお嬢ちゃん……バーイバイ♪」

 

「! 待て!」

 

シャランは手を横に振り抜き、そこから闇の霧が発生。 ルーテシアはすぐにガリューの肩の上に乗り彼女らに向かって飛んだ。

 

「ヴィヴィーー!」

 

闇に突っ込んだが……ガリューの手は空を切るばかりで。 闇が晴れると……そこには誰も、何もなかった。

 

「〜〜〜〜!! クソっ!!」

 

ルーテシアは胸の中が怒りでいっぱいになり、上を向いて叫んだ。 そしてどうやら、シャランも含め戦闘機人も引いたらしいが……余計な置き土産を残したようだった。 それは六課の施設殲滅を狙ったガジェット、起爆を待ちながらそこらかしこにいる。

 

「ルーテシア!」

 

「あ……アリシアさん! アルマデスは!?」

 

「……ダメージは負わせたけど、隙を突かれて逃げられた」

 

アリシアは悔しそうな表情をするが……個人の気持ちを優先さている暇はなかった。

 

「そういえばフェイトは? 一緒じゃなかったの?」

 

「フェイトさんはここに来る途中、ママとクイントさんが交戦していた戦闘機人2人を相手にして私達を先に行かせたの。 ママ達も一緒だから大丈夫だとは思うけど……」

 

「……そう」

 

アリシアはフェイトの事が心配になるが、すぐに気持ちを切り替えてロングアーチに連絡を取った。

 

「グリフィス! 聞こえてる!?」

 

『……はい……なんとか。 すみません…イットとヴィヴィオが連れて行かれて……』

 

「……いや、これは私の責任だよ……それより今は避難状況を教えて」

 

『はい、バックヤードの人間は全員シェルターに避難できています。 しかし、私達ロングアーチはまだです。 負傷している人間ばかりで避難は少し難しいです』

 

「一つ一つ落としている時間もないし……かと言って殲滅魔法を使えば皆に被害が行くし……」

 

「ここはサーシャとヴァイスを待とう。先ずはリンス達と合流するよ……状況を確かめないと……!」

 

「……はい!」

 

 

 

リンスとファリンは海に撃墜されたエリオ、キャロとフリードを助け出していた。 現在2人はファリンの式神の上に横たわり、リンスが診察している。

 

「……キャロは軽症だが、エリオはマズイな。 今すぐ治療しないと……!」

 

「キュイー……」

 

リンスはすぐさまエリオの上着を脱がせ、治療を開始した。 その隣ではルーチェが心配そうな顔をしてキャロを見ていた。

 

「う、ううん……」

 

「キュ!」

 

「あ、キャロちゃん」

 

「目が覚めたでフー」

 

キャロは目を覚ましたが……燃える六課を目の当たりにして目を見開いた。 その時、機動六課爆破が全体に放送され……キャロは俯いてしまう。

 

「! な、なんで……こんな……」

 

「キュキュイー!」

 

「む……キャロ、気が付いたか……」

 

治療をしていたリンスがキャロの方を見ると、彼女の下に大きな魔法陣が展開されていた。 その両頰には涙が伝っており……キャロの足元に巨大な四角い召喚陣が展開された。

 

「これは……!」

 

「ーー竜騎……召喚……ヴォルテール!」

 

背後にさらに巨大な魔法陣が展開、泣き叫ぶようにキャロが召喚したのは……体長15メートルにもおよぶ希少古代種『真竜』、ヴォルテールだった。

 

「キュイーー!?」

 

「私達の居場所を……壊さないで!」

 

悲痛な叫びに呼応するかのように、古の竜はその一撃で上空のガジェットを一掃した。 しかし、これだけでは終わらなかった。 ヴォルテールは暴走し、海に向かって無差別に砲撃を撃ち続けた。

 

「キャロ! キャロ!」

 

ファリンは式神で風圧を防ぎながらキャロに呼びかける。

 

「ファリン……さん?」

 

「よかった、正気に戻って……」

 

ファリンはホッと一安心する。 と、ちょうどそこにアリシアとルーテシアがやってきた。 ルーテシアはキャロを視界に入れると……無事を確かめるように猛スピードで抱きしめた。

 

「キャロ〜!」

 

「わっ!? ル、ルーテシアちゃん……苦しいよ〜……」

 

「キャロ、キャロがヴォルテールを召喚してくれたおかげで六課の安全は確保された、ありがとと言いたいけど……」

 

アリシアはチラリと横を見る。 そこにはヴォルテールがいるのだが……怪獣映画よろしく口からの砲撃を撃っている。 幸いなのが砲撃が市街地ではなく海を荒らしているくらいだが、いつ市街地に撃ってもおかしくない状況だ。

 

「キャロちゃん、止められる?」

 

「あ、はい。 今すぐに…………ダ、ダメです。私が感情のままに呼んでしまったから暴れています。 ある程度魔力を使うか、気絶させないと……」

 

「ふ〜ん、気絶ってどうさせるの?」

 

「高魔力の一撃……とにかく強力な一撃ならあるいは来ると思います。でも、ファリンさんがどうしてそんな事を?」

 

キャロは疑問に思うが、答える前にファリンとビエンフーはヴォルテールの方を向いた。

 

「ビエンフー! 今度こそやるよ!」

 

「はいでフー!」

 

2人は互いに頷きあうとファリンは式神を取り出し、ビエンフーは式神に魔力を込め始めた。

 

「伸びろ〜、伸びろー!」

 

そしてファリンは片腕で式神を掲げると……式神は天高く、グングンと一気に雲の上まで伸び……

 

「ーー光翼天翔くん!」

 

ファリンはそのまま勢いをつけて式神をヴォルテールの脳天に振り下ろし、強烈な一撃を与えた。

 

グオオオオ………

 

これでどうにか意識が朦朧、気絶したらしく。 ヴォルテールは弱々しい咆哮を上げながら元の場所に転送されて行った。

 

「ふう、お疲れビエンフー」

 

「お疲れ様でフー」

 

2人は勝利を喜び合うようにハイタッチした。

 

「す、凄いですね。 ファリンさん、魔導師だったのですか?」

 

「ん〜、厳密には違うけど。 だいたいビエンフーのおかげだよ」

 

「僕はこれでもAランクでフからね」

 

何のAランクかはキャロは分からなかったが……とにかくすごい事だけは理解した。

 

「キュイー!」

 

「あ、ルーチェ。 ごめんね、心配かけちゃって」

 

「ーー皆!」

 

と、そこに六課の炎を水飛沫を上げながら斬り裂き、そこから美由希達が歩いてきた。 美由希の先導の元ボロボロのシャマルがサーシャの肩を貸りて、傷だらけのザフィーラは重そうに息を上げているヴァイスが抱えていた。

 

「っ!!」

 

「ひどい怪我……」

 

キャロはシャマル達を見て息を呑み、ルーテシアは痛々しくて見てられなかった。 2人はシャマルとザフィーラをファリンの式神の上に横たわらせ、アリシアも補助として協力しすぐにリンスが治療を始めた。

 

「シャマルまで……これ以上は私の手に負えない。 ヴァイス、六課の地下からピット艦を出してこい、全員病院に搬送する!」

 

「了解です!」

 

「私も行く! ガリュー、瓦礫をどかして!」

 

(コクン)

 

ヴァイス、ルーテシアとガリューは地下に停めてあるピット艦を取りに向かった。 その後、地上本部はどうにか立て直し。 本部を襲撃したアンノウンを取り逃がしつつも残存ガジェットを撃退、事態が収拾しつつある中……地上本部にジェイル・スカリエッティから声明が出された。

 

 


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