魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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169話

 

 

同日ーー

 

「でりゃあああっ!!」

 

「はあ!」

 

ミッドチルダ上空、そこでリインとユニゾン状態のヴィータが同じくコルルとユニゾン状態のフェローと交戦をしていた。 ヴィータは怒涛の勢いで攻めに行くが、完全に見切られて対応されていた。

 

「フェローって言ったか……一体何が目的なんだよ?」

 

ランスとハンマーで鍔迫り合いになり、その間にヴィータが質問を投げかけた。

 

「それをあなたに言っても意味はありません」

 

「っ!?」

 

言葉は不要とばかりに自身の周囲に雷球を展開し、爆発させた。 衝撃がヴィータを襲うが、リインがすぐさまに防御魔法を展開していたためダメージはまぬがれた。

 

「さすがは夜天の騎士ですね」

 

『ちぇ、固いなぁー』

 

「……リイン、気づいたか?」

 

『はいです。 彼女らのユニゾンアタック……僅かにズレがあります。 融合の相性があまりよくないようですね』

 

「だが……!」

 

念話をしている隙にフェローが一瞬で間合いを詰め、神速の突きを連続で放った。 リインが防御するがそれでも保たず……とっさにヴィータはハンマーを盾にして防いだ。

 

「ぐうっ……!」

 

「そこは通してもらいます。 コルル」

 

『了解。 轟け……雷鳴槍!』

 

フェローの指示でコルルがランスに電撃を纏わせ、ヴィータに突きつけた。 同時に彼女から放たれる威圧に気圧されながらもヴィータはアイゼンを強く握り締めた。

 

 

 

地上本部、地下……そこでは機動六課フォワード陣がアンノウン2名と騎陣隊2名と交戦していた。

 

「やあっ!!」

 

「はあっ!!」

 

ウルクの盾とソーマの剣が衝突、周囲に衝撃が走り通路にヒビが走る。 ウルクは盾を回転させソーマを弾き、ソーマは着地すると剣を……自身の持つ錬金鋼(ダイト)に目を落とす。 錬金鋼は煙を上げておりオーバーヒート寸前だった。

 

「くっ……」

 

「次の獲物を出しなさい。 それとも……天剣を出しますか?」

 

「……お生憎、天剣は六課に置いてきてね。 悪いけどこのままやらせてもらうよ」

 

そう言いながら剣を待機状態に戻し、腰の剣帯から新たなダイトを取り出し復元した。

 

「私を倒すまでに保ちますか?」

 

「どうだろう……でも、全力でやらせていただきます!」

 

ソーマは剣帯からさらに2つのダイトを取り出し……

 

「レストレーションAD!!」

 

剣の柄に連結、さらに復元すると……ソーマの手には身の丈程の刀身と峰の部分にギザギザのソードブレイカーがあり、3つのインジェクターが取り付けられている片刃の黒い大剣……複合錬金鋼(アダマンタイト)があった。 それと同時に2人の間にオレンジの魔力弾が飛来、爆発して強烈な閃光を放った。

 

「なっ!?」

 

「はあああっ!」

 

ウルクは怯んだが、ソーマは地面を蹴り。 ウルクの盾を殴るように剣を振るい、壁に吹き飛ばした。

 

「っ……逃げの一手と思ってましたが、中々の策士になったようですね」

 

「後でそう伝えておきますよ!」

 

「……とお」

 

「っ……はあ!」

 

気合が入ってないが、目にも止まらぬ速さで振られたファウレの戦鎌をエリオは完全に見切りながら避け、反撃する。

 

「お……やるようになったね」

 

「このっ……!」

 

「させない、ガリュー!」

 

ポニーテールの少女……ウェンディが背後からエリオを狙おうとボードを銃のように構えて魔力弾を撃つが。 ガリューがエリオの背後の影から現れて防いだ。

 

「嘘っ!?」

 

「アビリティーカード、シャドウダイブ。 続けてアビリティー発動! ダーインスレイヴ!」

 

ルーテシアはガントレットにカードを入れアビリティーが発動。 ガリューの両手に魔力の苦無が現れ、ウェンディに向かって高速で接近する。

 

「うわっ……とおっ!?」

 

ウェンディは背後にいたガジェットをガリューに向かわせ、ガリューがガジェットを切り裂いている隙にボードに乗って離脱した。

 

「このグズ、さっさと仕留めろ!」

 

「無茶言うなっす!」

 

短髪の少女……ノーヴェが苛立ちと共にウェンディを罵倒し。 そのままローラブーツでスカイライナーを掛けながら移動し……

 

「だあああっ!!」

 

スカイライナーを飛び出しティアナに蹴りを放つが……直撃の後消えてしまった。

 

「っ!?」

 

「幻影……!?」

 

次の瞬間、フォワード陣全員の幻影が次々と現れ出した。 その幻影を作り出しているティアナは、崩落した瓦礫の影に幻影を援護増幅、援護しているキャロと一緒に隠れて幻影を発動させていた。

 

「う……くっ……」

 

《リミット、残り3分》

 

『……脱出タイミングまで持ちなさいよ。 戦闘機人2人はともかく……残りの騎士2人を振り切るにはまだ足りないわ……!』

 

《了解》

 

アリシアの薫陶の賜物か、ティアナは汗ひとつかかず大量の幻影を操作し。 辛そうに耐えるキャロの汗を拭いた。

 

「ーーみーつけた♪」

 

「なっ!?」

 

いつの間に2人の背後に黒い服と、黒い帽子を目深く被った男性……空白(イグニド)が身を隠すようにしゃがみながらそこにいた。 ティアナは動揺しながらも冷静に銃口を空白に向けた。 すると空白はワザとらしく狼狽しながら軽く両手を上げた。

 

「おっと……私は手を出しませんよ。 私の目的は別にあります。 彼女らとはあくまで同行しているに過ぎません」

 

「……それを信じろと?」

 

「ええ。 では私はこれにて……幸運を祈ってますよ」

 

すると空白は不気味に口元しか見えない顔で微笑み、闇と同化するように静かに消えていった。

 

「……掴めないやつね……」

 

ティアナは銃を下ろし、少し苛立ちを覚える。 その間もノーヴェとウェンディは見分けのつかない幻影に戸惑うが……

 

「って、そこの男2人は完全に本物だろ!」

 

騎陣隊と交戦していたソーマとエリオは本物だと気付いた。

 

「ですよ、ねっ!」

 

「……そうじゃなくてもバレバレ。 機械に頼るから戸惑う……」

 

「それが差です。 生まれたばかりで圧倒的に気配を察知できる経験が足りてない」

 

「う、うるさいっス!」

 

「なら、これはどうかな!」

 

ソーマは反転してノーヴェに向かって走り出した。

 

「このっ!」

 

ノーヴェは向かってくるソーマの顔面に拳を振るうが……またも直前に消えてしまった。

 

「またかよ!」

 

「いや……まだっス!」

 

一呼吸遅れ、ノーヴェを囲むようにソーマの分身が追加された。

 

「また幻影か!」

 

「……違う。 これ、実体がある」

 

ファウレの言葉を皮切りにソーマの分身が飛び出し、4人全員に攻撃した。

 

「なっ!?」

 

「千人衝……残像から実体のある分身を作り出す剄技だ!」

 

「っ……んなもん、全部まとめて潰せば……!」

 

「ーーうおおおおっ!!」

 

その時、突然ゆっくり歩いていたスバルの分身の一体……幻影に紛れた本物のスバルがローラブーツの加速で飛び出した。 ノーヴェに回し蹴りを繰り出し、ノーヴェの防御を吹き飛ばして瓦礫にぶつけた。

 

「ノーヴェ! ーーはっ!」

 

「はい、失礼♪」

 

気配を消してルーテシアがウェンディの背後に回り、何もする事なく離れるが。 その間にエリオが頭上に飛び上がり、セカンドフォームに変形したストラーダを振りかぶる。

 

《デューゼンフォルム》

 

「サンダー……」

 

「くっ!」

 

「レイジ!!」

 

ストラーダを振り下ろし、周囲に電撃が迸る。 電撃がウェンディを通して地面にながれ、周りにいたガジェットは回路がショートして破壊される。

 

「ーー総員、撤退!」

 

すぐさまティアナが撤退命令を出し、撤退しながら自分達の幻影を四散させた。

 

『……死ぬんじゃないわよ』

 

『分かってる。 ティアを置いていけないしね』

 

『…………バカ』

 

去り際に念話でそれだけを伝え、ソーマは1人その場に止まった。

 

「っのやろぉ!!」

 

「っ……」

 

「やれやれ……それで、あなた1人で私達を相手するつもりですか?」

 

「……無謀」

 

「無謀も百も承知。 それでもやらなきゃいけない……」

 

ソーマは剄を走らせ、剣呑の気迫で睨みつけた。

 

「天剣を舐めるなよ……!」

 

「っ!」

 

「……おお……!?」

 

「……確かに、私達も本気で挑む必要がありそうですね。 この力を手に入れて……久しくなかった挑戦。 ーー中々に血湧く思いです」

 

ファウレとウルクが相対す中、水を差すようにノーヴェとウェンディに通信が入って来た。

 

『ーーノーヴェ、ウェンディ。 2人とも、ちょっとこっちを手伝え。 もう一機のタイプゼロ……ファーストの方と戦闘中だ』

 

「なっ!? ギンガさんが!?」

 

通信を聞いていたソーマは驚きを露わにし。 その隙にウルクが飛び出し、盾を振るった。ソーマはハッとなって防御するも壁まで吹き飛ばされてしまった。

 

「行きなさい。 ここに居られると足手まといです」

 

「な、なんだと!?」

 

「ああもう、そんな安い挑発に乗らなでくださいっス。 ここはお二方に任せて、チンク姉と合わせて3人でファーストの方を確保するっスよ」

 

「くっ……行かせるか!!」

 

剄で足を強化し、高速でウェンディに向かって接近するが……ファウレが行く道を塞いだ。

 

「……早く行け」

 

「どうもっス!」

 

ウェンディはイラついているノーヴェの首根っこを掴み、早々とその場を離れた。 ソーマは追いかけようと振り切ろうとして加速するが……瓦礫が目の前を通り抜け、今度はウルクが道を塞いだ。

 

「……なら、押し通るまで!!」

 

「では、こちらも少し本気を出しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー陛下!」

 

俺達は合流ポイントであるロータリーホールに到着すると……背後からシャッハが追いかけて来た。

 

「シスターシャッハ!」

 

「……何かあったのか?」

 

「いえ、シスターカリムから皆様の応援にと駆けつけた次第で。 現在、すずか一尉が地上本部のシステムの一部を奪還したそうです」

 

「そう……さすがはすずかちゃん」

 

少なからず予言の件も含めてカリムに心配されたようだな。 その時、背後からフォワード陣が走って来た。

 

「あ、いいタイミング」

 

「……あれ? ソーマ君は?」

 

走ってくるフォワード陣の中に、ソーマの姿がなかった。

 

「はあはあ……お待たせしました」

 

「お届けです……!」

 

スバル、エリオ、ルーテシアの開かれた手の上には俺達のデバイスがあった。

 

「確かに」

 

「うん!」

 

「ありがとう、皆」

 

それを受け取り、改めてソーマがいない事を質問する。

 

「それでソーマはどこに?」

 

「ソーマは……先ほど戦闘機人2名と騎陣隊2名と交戦しました。 その殿にソーマは……」

 

「そうか……」

 

未だに交戦中と知り、デバイスを握る力が自然と強まる。 そしてシュベルトクロイツとレヴァンティンはシャッハが届ける事になり、キャロの手から渡された。

 

「お願いします」

 

「はい。 責任を持って私がお届けします」

 

「頼んだぞ」

 

「はい!」

 

「ーーギン姉? ギン姉!」

 

その時、スバルが耳に手を当ててギンガに連絡を取っていたが……どうやら繋がらないようだ。

 

「スバル?」

 

「ギン姉と通信が繋がらないんです!」

 

「さっきの戦闘機人の胸元に9と11のナンバーがあったわ。 最低でも残りの10人……その戦闘機人の誰かと交戦している可能性が高いわね」

 

「ギン姉……まさかあいつらと……?」

 

「恐らくは」

 

スカリエッティ一味に加え異編卿、騎陣隊も出て来ている。 一度ロングアーチと連絡を取ろうとフェイトは頭上を飛んでいた蝶の端子を見上げた。

 

「ツァリ、ロングアーチと繋いで」

 

『了解』

 

「ーーロングアーチ、こちらライトニング1」

 

『……ザザ……ライトニング1、こちらロングアーチ』

 

フェイトは六課のロングアーチに連絡を取るが、通信は雑音混じりでグリフィスから応答が来た。

 

「ロングアーチ、何かあったの?」

 

『こちらは今ガジェットとアンノウンの襲撃を受けています。 クレードルが持ち堪えていますが……クレードル2から、ライトニング分隊に応援を要請しています!』

 

推理は当たっていたが檻から脱出するのに手間取って対応が遅れてしまったな……だが悔いている暇はなく。 俺達は顔を見合わせ、頷いた。

 

「役割を分担するよ。 スターズはギンガの安否確認と襲撃戦力の排除」

 

「ライトニングはアリシア隊長の要請通り、六課に帰還」

 

『はい!』

 

「フェザーズ3はライトニングに同行。 俺はソーマの応援に向かう」

 

「分かったわ」

 

(コクン)

 

「ーーシャッハ、上の皆を頼んだぞ」

 

「非才な我が身の全力を持って」

 

シャッハは胸に手を当て、敬うように礼をする。 少し気恥ずかしくなるが、俺は全員の正面に立ち……

 

「ーー機動六課。 これより任務を開始する。 それぞれの要請(オーダー)を完遂し……死力を尽くして生き延びろッ!!」

 

『了解!』

 

それぞれの要請を完了するため、六課は四散して走り出した。

 

 


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