魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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163話

 

 

7月9日ーー

 

「ごめんねレンヤ、運転を任せちゃって」

 

現在、アリサとフェイトとアリシアと共に聖王医療院に向かって自分の車を走らせていた。 目的は入院している例の少年とエリオの迎えだ。

 

「気にするな。 あっちにはシャッハもいることだし、俺が仲介した方がいいだろう」

 

「……ありがとう」

 

「フェイトはエリオの事が心配で心配で涙で枕を濡らしてたよね〜?」

 

「な、泣いてないよ! 姉さん、あんまりデタラメを言わないでよ!」

 

「心配なのは本当なんだ?」

 

「そ、それは……」

 

図星のようで、フェイトはアリシアにからかわれながら慌てふためく。 まあ保護者としての気持ちも分からなくもないが、本来なのはが行くはずだったのを無理言って変わってもらうのをお願いするとは思わなかったな。

 

「それで、何でアリサも一緒に来たの?」

 

「昨日、前々から聖王医療院に依頼していた2種類のネクターの分析結果が出たみたいなのよ。 私はその結果を確認するためにね」

 

「ホアキンに代わって薬学と神経科の両部門を引き継ぐ人物……まあ、どうしても警戒しちゃうねー」

 

「そこは安心していい。 何でもベルカ流護身術の達人でサーシャの先生でもあり、それに整形外科の先生でもあるそうだ」

 

「うわ〜、聞くからに完璧そうな人だね〜」

 

アリシアは今聞いた情報だけでそう言うが、実際にどんな人かは俺も知らない。 昔、ソフィーさんに聞いた話ではアリシアの言う通り完璧な人と言っていたが……

 

「それにしても……検査が済んで、何らかの事実が判明したとして。 あの男の子はどうなるのかな?」

 

「そうだな……ヴィヴィオの時と似ている状況だけど、色々と難しいだろう。 何より、あの力を野放しにする訳にもいかない」

 

「そう……」

 

アリシアの質問に答えたその時、通信が入ってきた。 回線を開くと相手はシャッハだった。

 

『陛下、聖王教会シャッハ・ヌエラです!』

 

「事前にそちらに向かうと連絡はしておいたはずが……何かあったのか?」

 

『申し訳ありません、こちらの不手際がありまして。 検査の合間に、あの少年が姿を消してしまいました』

 

「え、それホント!?」

 

シャッハに非があるわけではないが、急いだ方が良さそうだな。 アクセルを強め、スピードを上げて走り……数分後に聖王医療院に到着。 それと同時に医療院内からシャッハが走りながら出迎えてくれた。

 

「申し訳ありません!」

 

「状況はどうなっていますか?」

 

「はい……特別病棟とその周辺の封鎖と避難は済んでいます。 今の所飛行や転移、侵入者の反応は見つかっていません」

 

という事は、外部からの誘拐ではなく。 少年自身の意志で逃げ出したという事か。

 

「……外には出られないはずだよな?」

 

「ええ」

 

「では、手分けして探しましょう。 レンヤと姉さんもそれでいいよね?」

 

「ああ」

 

「もちろん」

 

避難している人達の中に紛れてないかの確認をアリサがし、残りはシャッハも含めて二手に分かれて捜索を開始した。 俺はシャッハと共に院内の捜索を始めた。 その過程でシャッハに診断結果を聞いた。

 

「検査では一応危険反応は無かったんだよな?」

 

「はい。 年齢不相応に魔力量が異常に高い事と……魔力光が2つある事以外は」

 

「2つ? 俺と似た感じということか?」

 

「いえ、陛下のは蒼い魔力光を虹色に変化させる事です。 あの少年は赤い魔力光と黒い魔力光が別々に存在しているのです」

 

変化によって2種類あるのではなく、同時に2種類存在しているということか。 そんなの普通じゃない、明らかに後天的に後付けされた力……

 

「そうなると、あの子は……」

 

「はい。 悲しい事ですが……あの子も姫様同様、人造生命体なのは間違いないです。 その影響による潜在的な危険も確認されてます」

 

シャッハが懸念しているのはあの鬼の力か……その後、少年入院していた特別病棟の病室に向かった。

 

「もぬけの殻ですね……」

 

「……シャッハ、あの子の太刀は?」

 

昨日見舞いに来た時、ベットの横に立てかけてあった太刀が刀袋だけを残して消えていた。

 

「検査の時、置いて来させたはずです……まさか!」

 

すぐに病室から出て捜索を再開した。 しばらく捜索を続けると……

 

「ん? あれは……!」

 

中庭に差し掛かると、シャッハは何かに気付いて窓の外を見た。 つられて見てみると……ここの病院服を着て、抜き身の太刀を構えてフェイトとアリシアを威嚇している少年がいた。 ちなみになぜか、頭の上にあの芝犬っぽいぬいぐるみを乗せていた。

 

「ーー逆巻け、ヴィンデルシャフト!!」

 

「ちょっ!?」

 

シャッハは少年の姿を取られると、リングに通した2枚のプレートの形状をしたデバイス……ヴィンデルシャフトを取り出し起動。 バリアジャケットを纏い、一瞬で窓から飛び出し両者の間に降り立った。

 

「あのバカ!」

 

双剣を少年に向けて構え、敵意を見せるシャッハ。 あれでは余計に警戒を強めるだけだ。 あの鬼の力も顕現してしまう。 あの力は身体を酷く酷使する……あの年齢で昨日に引き続き顕現してしまうと最悪命に関わる。

 

「ちょ、ちょっとシャッハ?」

 

「さすがに大袈裟では……?」

 

さすがのフェイトとアリシアも困惑しながらシャッハを呼び止めようとするが、シャッハの視線は少年から離さなかった。

 

「う、うう……」

 

「…………………」

 

「はあ、はあ、はあ……!」

 

「?」

 

シャッハの敵意に当てられ、少年は動悸が起こっているように息を荒げ始め……胸を押さえ出した。

 

ドックン! ドックンッ!! ドックンッ!!!

 

「ーーオオオオオオオオッッッ!!!」

 

少年の胸から黒い魔力が溢れ出し、天に向かって雄叫びをあげると黒い魔力が全体に放出された。 髪は白髪に、瞳は真紅に……そして全身からは赤黒い陽炎のような炎と雷が発生している。

 

「下がってください! 私が抑えます!」

 

「シャアアアアッ!!」

 

少年は獣のようや叫びと同時に、陥没させる程の爆発的な脚力で地面を蹴り上げ、シャッハとの距離を縮め……双剣と太刀が激突した。

 

「は、始まっちゃったよ……」

 

「ーー今すぐ止めるぞ!」

 

「わっ!? レンヤ……?」

 

俺もすぐに窓から飛び降り、フェイトとアリシアの前に降り立った。

 

「早く止めないと、あの子の命に関わる!」

 

「まさか……!」

 

「そりゃそうだよ。 あの力を使い続けたら先に身体の方が壊れちゃうよ。 急いだ方がいいね」

 

そうと決まればすぐに決行。 俺はデバイスを起動してバリアジャケットを纏い、一瞬で拘束できるタイミングを見計らう。

 

「ウウ、ハァッ!!」

 

「早ーーぐあっ!」

 

少年は突きの構えを取ると、静かに姿が搔き消え……一呼吸置いてシャッハの真横に現れ、既に刀を振り切っていた。

 

「今のは……疾風!」

 

「え、はやて?」

 

「違う! 八葉一刀流、二の型疾風だ……まさか、老師から盗んだ技術をあの子に転写したのか!?」

 

そう推測すると、あの定まっていない太刀筋……八葉の知識だけあり、老師の剣を丸々転写されてる所為で身体がついて行けてない。 そんな事御構い無しに少年は太刀を振るい続ける。

 

「オオオオッ!!」

 

「っ!」

 

「ーー今だ……静柳(しずやなぎ)!」

 

太刀が振り下ろされ、シャッハが防ぎながらも弾かれる……その隙を狙って間に割って入り。 短刀で太刀を抑え、重心をズラした後足を引っ掛けて転倒させ、片腕を背中に回して抑えつける。

 

「ウアアアアッ!?」

 

「凄い力だな……!」

 

「レンヤ!」

 

「今すぐ拘束するね!」

 

「ーー大丈夫だ。 ここは俺に任せろ」

 

近寄ってきたフェイト達が少年を捕縛しようとするが、その前に説得を試みた。

 

「落ち着け。 ここは君のいた場所じゃない、誰も君を傷付けたり邪険にしたりしない。 ああ、今回のは相手の勘違いだから。 出来れば許してほしい」

 

「うぐっ……」

 

図星のようで、シャッハはぐうの音を出して引き下がった。 シャッハもまだまだ修行が足りないようだな……

 

「信じて欲しいとは言わない。 けど……怖がらないで欲しい、俺は絶対に君を見捨てたりはしない」

 

「ウウ……ウアアッ!!」

 

「おっと……」

 

「レンヤ!」

 

「待ってくれ……!」

 

少年は尋常じゃない力で拘束を振りほどき、俺を投げ飛ばした。 伝わったかどうかは分からないが……攻撃はしてこなかった。

 

「グッ……オオオオオッッ……!」

 

突如、少年は胸を押さえ天に向かって咆哮、力を抑さえようとし……

 

「うあ……」

 

「おっと……」

 

フッと消えるように黒い魔力が消滅し、髪も瞳も元の色に戻った。 少年は糸が切れたように倒れ、地面にぶつからないよう急いで抱き止めた。

 

「ふう、気絶しただけか」

 

「ーーふむ、どうにか丸まったようだね?」

 

「きゃあっ!? い、いつの間に後ろに……!?」

 

フェイトの背後に、気配を消して現れたのは白衣着た細い目が特徴な年若い男性だった。

 

「はは、驚かせたようだね。 私はここの医療院で整形外科の医師をしているオーラル・セルシオというものだ。 そしてホアキン教授の後任、と言えば聞こえは悪いが。 まあ、事実だから仕方ないか」

 

「い、いえそんな事は。 サーシャの先生なんですよね? だったら信用できます」

 

「そう言ってもらえるとありがたい」

 

フェイトが体裁を言うと、はっはっはっとオーラル教授は気にしてない風に笑った。

 

「それでオーラル教授、ネクター服用者の診断結果は?」

 

「ああ、今朝方最後の問診表が届いてね。 これでひとまずネクター服用者全員の治療が完了したことになった」

 

「そうですか……!」

 

思いがけないところで情報が得られたな。 ずっと六課のことで手一杯で聞く暇もなかったし。

 

「ふふ、良かったね」

 

「では早速だが、ネクターの分析結果を君達に報告しよう。 少々、付き合ってもらうよ」

 

「あ、はい。 お願いします」

 

少年を看護婦ーーナースかシスターか判別が付きにくいがーーに預け。 俺達はオーラル教授の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後退院準備していたエリオと合流し、そのままついて行く事になり。 聖王医療院の医学研究棟、その見覚えのある研究室……以前ホアキン元教授が使用していた研究室に俺達は案内され。 オーラル教授から話を聞くことになった。

 

「ーーネクターを徹底的に分析した結果……まず第一に、ネクターには脳のリミッターを強制的に外す効果があることが分かった」

 

「脳のリミッター……とういうと?」

 

「そもそも人間というものは、本来持っている身体能力の半分も使えてないとされている。 身体への負担を減らすため、脳が引き出せる能力に無意識の制限をかけるからだ。 このリミッターを意図的に解除することがもし可能なら……理論上、その個人が持つ限界までの能力を発揮できるようになるはずだ」

 

「つまり、ネクターとは単に筋力を強化する薬ではなく……普段使われていない潜在能力を強引に引き出す薬というわけですね?」

 

「その通りだ」

 

シャッハの質問にオーラル教授は頷く。 確かに、それならあの異常なまでの力が出るのは頷ける。

 

「無論、無意識にかかっていたリミッターを外せば、体への負担は相当なものだけどね」

 

「確かに、教団事件の後の陸上部隊の皆は相当疲弊してたからね。 しばらくは指一本動かすのもキツイようだったし……」

 

「まあ、みっちりリハビリ訓練をやったおかげで、ようやくカンなどを元に戻したわ」

 

「あ、あははー……」

 

アリサは腕を組み、うんうんと頷きながら何かを思い出すかのように同意する。 実体験があるのか、軽くエリオが引いているが……

 

「……カン、といえば。 高まったツキとカンを頼りにギャンブルで連勝をしていた人もいましたね。 それと同時に性格や言動が豹変したようでしたが……それらも、ネクターが脳のリミッターを外しているから、で説明がつくのでしょうか?」

 

「うむ、そう考えてもいい。 この薬には五感の働きを飛躍的に高める作用も確認されている。 副作用として神経質になり、情緒不安定な状態になることも分かっている。 それが凶暴な性格への変化につながるのだろう」

 

「なるほど……」

 

「確かに一通りの説明が付きそうですね」

 

「ーーだが、あくまで生化学的に説明できるのはここまで」

 

エリオもここまでの内容を理解する。が、そこでオーラル教授は静かに首を横に振った。

 

「え……」

 

「いくつかの効能については非科学的としか言いようがない。 具体的には、先ほども話に出たツキを呼び込むという効能……そして、君達も何度か目撃したという魔人化(デモナイズ)という肉体変異現象だ」

 

「……た、確かに……」

 

「それがあったわね……」

 

魔人化……人体を怪異(グリード)に近い形で変異させる現象。 これは科学的に解明するのは確かに難しいだろう。

 

「……魔人化を引き起こすのは紅いタイプのネクター……やはり翠のタイプのものとは異なる成分だったわけですか?」

 

「それなんだが……実は、翠のタイプのネクターも紅いタイプのネクターも成分的には何ら変わりはない。 少なくとも生化学的にはね」

 

「そうですか……」

 

フェイトとシャッハ、エリオは驚きを露わにするが。 俺、アリサ、アリシアは納得している感じで受け取った。

 

「おや、レンヤ君とアリシア君、アリサ君はあまり驚かないんだね?」

 

「2つのネクターの違いは色と魔人化できるかどうか……その違いを出すための物質なんて現実にあるかどうか」

 

「それに、色の違いは精製時の処理の差で変わるとして……主成分は同じなんでしょう?」

 

「ああ、分子構造もほぼ一致している……にも関わらず、紅いタイプは肉体変異などという説明不可能な現象を引き起こしている……まあ、異界化(イクリプス)や怪異に常識な通用しないな」

 

「あ、あはは……」

 

オーラル教授の言った事は事実で否定できないのか、フェイトは苦笑いをする。

 

「それに、幻覚の類いではない事は紛れもない事実よ。 あの肉切る感覚がハッキリと、この手で感じたわ……」

 

「判っているとも。 だからこそ、ここが限界なのだ。 私の方面からネクターを調べてみた結果ではね」

 

「……なるほど……」

 

「サーシャさんの先生でも、これ以上分からないのですか?」

 

「私とて万能ではない。 こと心と魂の問題についてはね」

 

異界の専門家でも心と魂のような形なきものの解明はされていない。

 

サーシャと初めて出会った時の事件でこのにの結び付きは切っても切れない関係という事は証明されているが……それ以外は何も。 そしてこのミッドチルダでは魔法が科学的に証明、魔力という形がないものが解明されていても……この2つは未だに謎のままだ。

 

「そしてネクターはおそらく、それらと肉体を共鳴させるような何らかの働きを秘めているのだろう。 恐らく、ホアキンもネクターの全貌は掴めてはいまい。 教団に伝わっていた秘儀を元に試行錯誤を繰り返して完成させ、量産化に成功しただけのはずだ」

 

「確かに、そのようなことを本人も認めていました」

 

「ああ、各世界で行われていた儀式のデータを元に、試行錯誤しながら完成させたと言っていた……」

 

「ふむ、やはりそうか。 彼は有能で熱意もあったが天才というほどズバ抜けた発想の持た主ではなかった。 それが悪い方向に出てしまったか……」

 

その言葉に、どうやらオーラル教授は以前からホアキンと関係が会ったらしい。

 

「ひょっとして……」

 

「あのホアキンと面識があったのかしら?」

 

「ああ、医科大学で学んでいた頃の後輩さ。 卒業してからは会ってはいなかったが、時たま研究成果などについての連絡はしていた。 だが、まさかこのような形で医の技術を悪用し、自らの身まで滅ぼすことになるとは……」

 

「教授……」

 

「……お察しします」

 

「いや、詮なき事だ」

 

首を振り、話を続けた。

 

「ーーいずれにせよ、私から報告できるのはここまでだ。 ネクターの真相に迫るには別のアプローチが必要になるだろう。 そしてこれは私のカンだが……ネクターの原料であるという青精鉱なる鉱石の特質が鍵になるのではないかと思う」

 

「青精鉱……」

 

「教団のデータベースに記されていた名前ですね……」

 

教団事件の時に教団の端末から回収したD∵G教団の詳細なデータ、そこに記載されていたネクターの原料が青精鉱だ。

 

「しかし、結局どんな鉱石でどこから手に入れていたのかも判ってはいないわよね?」

 

「ああ、私も知り合いの鉱石学者などに当たってみたが該当するものは見付からなかった。 教団にのみ伝わっていた新種か、それとも……いずれにせよ、薬の効能を考えると、その鉱石もあり得ない性質を持っているのではないかと推測できる」

 

「あり得ない性質ですか……」

 

「な、何だがよく分からなくなってきました……」

 

どうにかここまで話についてきたシャッハは、ここでお手上げの状態になった。 俺は少し考え込んだ後、教授に軽く頭を下げた。

 

「ーーオーラル教授。 どうもありがとうございました。 おかげで、今まで漠然としていた事がある程度整理できた気がします」

 

「そうか、ならばよかった。 ネクターの成分調査についてはこちらでは一旦打ち切るが……また、何か判ったことがあれば遠慮なく訪ねるといい。 私でよければ意見を言わせてもらおう」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

「あ、そうそう。 サーシャにも時々顔を出すよう言っておいてくれ。 試したいマッシ〜ンが出来たのでね……」

 

「それって、あのグローブを着けた木人形ですか?」

 

部屋の隅に置かれたミットグローブを着けた木人形を指差し聞くと……オーラル教授は誤魔化すように笑った。 その後研究室を後にし、病棟屋上で一度足を止めた。

 

「……なんか色々判ったようで謎がさらに増えたような気分ね」

 

「よくは分かりませんけど、何だがモヤモヤします……」

 

「うん、ホアキンが亡くなった今、あまりに手がかりが少なすぎる……せめて教団のデータベースの解析が進めば何か判るかもしれないけど……」

 

「すずかもロングアーチ陣も手こずっているようだし……そこは今後の課題だな」

 

デリートされている事もあるが、元々の端末が旧式なのと破損が酷いためバグやラグやらが発生して、消失したデータの復元は難航している。

 

「私達騎士団も、出来る限り陛下達をお手伝いします」

 

「ああ、その時はよろしく頼むよ。 さて、あの子を連れて六課に戻るか」

 

「では、手配は私がしておきますので」

 

「ありがとうございます、シスターシャッハ」

 

「あの子が寝ている間にサッサと六課に運びましょうか」

 

「ア、アリサ……もうちょっと優しく言おうよ……」

 

「あはは! 物事をズバって言うアリサには無理な相談だよ♪」

 

その後、寝ていた少年を車に運び、エリオも含めて6人が乗った車が発進。 シャッハに見送られながら医療院を後にした。

 

 


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