魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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161話

 

 

同日ーー

 

ルーテシアからの通信を受け、ソーマ達の4人と美由希が急いでルーテシア達の元に向かった。 ソーマ達は美由希と合流すると、目的地方面から大きな戦闘音が轟いて来た。 ソーマ達はその地点に向かうと……

 

「オオオオッ!!」

 

「うあああっ!!」

 

白髪の少年の必死めいた猛攻に、エリオは冷静に対処し耐えていた。 そのすぐ側にあったビルの陰にキャロとルーテシアがいた。 どうやら気付かれないようにエリオを援護していた。

 

「エリオ、キャロ、ルーテシア!」

 

「あ! スバルさん、ティアさん!」

 

「現状は?」

 

「見ての通りよ。 気付かれないように援護はしているけど、後衛の私達だけじゃ横槍は入れらなかったわ」

 

「た、確かに……凄まじいですね」

 

少年とエリオの攻防は徐々に勢いを増しており。 辺りの被害がどんどん大きくなっていっている。

 

「ぐっ! はあはあ……」

 

「ホロビヨ……」

 

大きく弾かれ、エリオは槍を地面に刺して支えにし息を荒くする。 その隙に少年は太刀を持つ右手を上げて、刀身を左側に置きながら剣先を下に、左手を刀身に添える独特の構えを取り。 刀身に禍々しい紫色の炎が纏われる。

 

「ーーオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

「くっ……」

 

「エリオ君!」

 

キャロの叫びに答える事が出来ず、エリオは振りかぶられる太刀を耐えようと目を閉じ……

 

「ウッ……アアアア……」

 

「ーーえ?」

 

突然、少年は勢いを失い。 黒い魔力もフッと消え、力無く倒れた。 間をおかず少年の白髪は元の黒髪に変化した。

 

「……た、助かったー……」

 

同様に限界だったようで、緊張が解けエリオは地面に大の字で倒れた。

 

「エリオ!」

 

「大丈夫!?」

 

「う、うん。 何とかかんとか……」

 

ソーマ達は2人の元に駆け寄り、キャロがエリオに回復魔法で応急処置を施し。 ソーマとティアナは少年から太刀を取り上げ、心苦しいが念のため拘束した。

 

「サーシャ、その子の容態はどう?」

 

「…………気を失っているだけのようです。 命に別状はありませんが……消耗が激しいですね。 ちゃんと検査しないとどうとも」

 

「そう……それにしてもかなりボロボロね。 これは戦闘で?」

 

「元からこうだったわ。 それに地下水路をかなり長い距離を歩いたんでしょう」

 

「……エリオ達と同じくらいだね」

 

エリオと同じくらいとはいえまだ子ども。 それもこんな服でレリックと一緒となると……余りにいい考えは思い浮かばなかった。

 

「……レリックの封印処理は?」

 

「あ、それは私が封印を施したので、ガジェットが襲ってくる心配はないと思います」

 

「それとこれを見なさい」

 

ルーテシアはレリックが入っているケース、それを縛っている鎖を手に取った。 ケースが縛ってある判断の鎖、ケースが縛れるくらいの隙間があった。 そこからティアナは推測を立てた。

 

「……レリックは2つあった?」

 

「今、ロングアーチに調べてもらっている」

 

そうなると、残りのレリックはどこにあるのか……ティアナは顎に手をあて、どう判断するか模索する。

 

「……隊長達とリイン曹長とアギト曹長、シャマル先生とリンス先生がこっちに向かっていくれてるそうだし……とりあえず現状を確保しつつ、周辺警戒ね」

 

『はい!』

 

「了解です」

 

冷静に正しい判断、あの一件以来ティアナは大きく成長した。 それから数分後、レンヤ達を乗せたヘリが近くのヘリポートに着陸した。 すぐにシャマルが少年の、リンスがエリオの治療を始めた。

 

「……危険な反応はないけど、バイタルが乱れているわね。 さっきの変化が影響してるのかもしれないわね」

 

「そう、ですか……」

 

「あれは一体、何だったんでしょうか?」

 

「現状ではレアスキル、としか言いようがないわね」

 

まるで、鬼を彷彿とさせるような力……ここでは何も出てこないだろうとレンヤは静かに首を振った。 ちょうどそこでリンスがエリオの治療を終えた。 腕や顔はもちろんの事、バリアジャケットの下に至るまで治療がされている。

 

「大きな外傷はないが、全身切傷か。 あの猛攻もよく耐えたものだ」

 

「あ、あはは……防御には自信がありませんでしたし、回避に専念しましたからギリギリ何とか」

 

「エリオ、本当に大丈夫? 痛いところがあったらちゃんと言うんだよ?」

 

過保護で心配性なフェイト。 心配なのは分かるが、エリオを揺するのは辞めてもらいたい。

 

「フェ、フェイトさん……揺らさないでください。 全身が痛いです……」

 

「あ! ご、ごめん……」

 

「フェイト、心配なのは分かるけど後のことはリンスに任せましょう」

 

「それと済まないな、皆。 せっかくの休みだったのを」

 

「いえ、気にしないでください」

 

「平気です!」

 

「私は少し不満だけど……」

 

「み、美由希さん……」

 

「はは……本当に済まないな」

 

美由希の正直な不満に苦笑するも、レンヤは本当に済まないと思って謝罪した。

 

「ケースと男の子はこのままヘリで搬送するから。 皆はこっちで現場調査ね」

 

『はい!』

 

「っと……レンヤ君、この子をヘリまで運んで」

 

「分かりました」

 

レンヤが男の子を抱きかかえ、なのはとフェイトと一緒にヘリに向かう。 ソーマ達が現場調査に向かう中、立ち上がろうとしたエリオをリンスが抑えた。

 

「エリオはドクターストップだ。 理由は言わなくても分かるな?」

 

「で、でも……」

 

「お願いエリオ、これ以上無茶はしないで」

 

「フェイトさん……はい」

 

「大丈夫! エリオの分もしっかりやるから!」

 

「私達に任せて、さっさと怪我を治しなさいよね」

 

エリオを慰めつつ、レリック確保のためソーマ達はデバイスを、美由希はソウルデヴァイスを起動し、地下水路に入って行った。

 

「ーーパパ!」

 

その時、ヴィヴィオがレンヤ達の元に現れ。 ヴィヴィオは走って近寄り、その勢いのままレンヤに抱きついた。

 

「パパ、けがしてない?」

 

「ヴィヴィオ! どうしてここに?」

 

「ヴィ、ヴィヴィオちゃ〜ん……待って〜……!」

 

「ファリンさん。 もしかしてヴィヴィオと一緒にこの付近を?」

 

「ふう、ふう……はい、ちょうど近くにいたんですよ。 それでさっきの爆発音から逃げようとしたら、ヴィヴィオちゃんがいきなりここに向かって……」

 

追いついてきたファリンは、なのはの質問に息を整えながら説明した。 偶然かどうかは分からないが、ここに残しても危険なのでこのままヘリに乗せる事にした。 全員がヘリに乗り込み、すぐに離陸すると……

 

『アグスタを襲撃してきたロボットが現れました! 地下水路に数機ずつのグループで数は……40機です』

 

『海上方面からも確認しました。 地下水路と同じで数機ずつのグループで数は80です』

 

「……はやて、地下水路の方はソーマ達に任せて。 俺、なのは、フェイト、アリサは海上から来る敵の迎撃に当たる」

 

ロングアーチからの報告を受けたレンヤは、少し考えた後はやてにそう提案した。

 

『うん、それが一番やろね』

 

はやてもそれが最善と考え、案に賛同した。そして、演習を行っていたヴィータが敵を感知し、演習にいた上官……ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐が気を利かせ、こちらに向かって来ているとの報告を受けたはやては、レンヤとアリサ、なのはとフェイトの組みに分け。 残りのシャマルとヴァイス、リンスとアギトはヘリで待機指示を出した。

 

「頑張れよ、リイン」

 

「はいです! アギトちゃん!」

 

「さてと……行くか」

 

「皆、気をつけてね」

 

アギトとシャマルに見送られながら、レンヤ達は近くにあったビルに降ろしてもらい。 出撃の準備をした。

 

「それにしてもフォワードの皆、ちょっと頼れるような感じになってきた?」

 

「ふふ、これからもっと頼れるようになってもらわないと」

 

「……それじゃあ行きましょう」

 

アリサの言葉に頷き、レンヤ達はデバイスを起動した。

 

「早く事件を解決して、また皆に休みを上げよう」

 

「うん」

 

先の事を考えながら、レンヤ達は敵機を迎撃するため飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーマ達は地下水路を走りながら、応援として来てくれたギンガと連絡を取っていた。

 

「ギンガさん、お久しぶりです!」

 

『うん、ティアナ。 チームリーダーはあなたでしょう? そっちに向かうから指示をくれる?』

 

「はい! 一先ず南西の……ジオフロントE区画を目指してください! 途中で合流しましょう!」

 

『ジオフロントE……開発予定区画だね。 了解!』

 

メイフォンで位置を確認し、ギンガはメイフォンに示された地点に向かって走り出した。

 

「ギンガさんって、スバルさんのお姉さんでしたよね」

 

「そう! 私のシューティングアーツの先輩なんだ。 すっごく強いからとても心強い」

 

「へー、1度会ってみたいなぁ〜」

 

「しっ! 通信は最後まできちんと聞くように」

 

美由希の軽口にルーテシアが注意する。 その後すぐにギンガから担当していた捜査内容を伝えられた。 どうやら担当していた事件で人造魔導師を創り出す生体ポットを見つけ、調査している最中にこの事件が起こったようだ。

 

「人造魔導師って……!?」

 

「いい聞こえはしないけど、それってどう言う意味なの?」

 

「ーー優秀な魔導師の遺伝子を使って、人工的に生み出した子どもに。 投薬とか、機械部品の埋め込みとかで、後天的に強力な魔力を能力持たせる……それが人造魔導師」

 

美由希の疑問に、意外にもスバルが答えた。 その内容に、ヘリで通信で聞いていたエリオとヴィヴィオが反応する。

 

「非人道的な実験のため管理局はそれを固く禁止しているけど……秘密裏に行われていたようだね」

 

「ええ、倫理的な問題はもちろん。 今の技術では色々な問題があってどうしても無理が生じる」

 

「コストもかかりますし、よっぽどの事がない限りその技術に手を出す人達なんて普通はいないいはずなのに……」

 

「……だけど、もしロストロギアが関わっているとしたら、どうなる?」

 

「まさか……」

 

その時、ケリュケイオンが点滅、何かに反応した。

 

《動体反応確認、ガジェットドローンです》

 

「来ます! 小型ガジェッド、10機がこちらに向かってます!」

 

ソーマ達は足を止め、すぐさまフルバックのキャロとルーテシアを囲むように隊列を組んだ。 地下水路という狭い空間を視野に入れた隊列だ。

 

「総員迎撃準備!」

 

「機動六課フォワード部隊、ガジェッドを一掃するよ!」

 

『了解!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フェザーズ1、スターズ1、ライトニング1、ともに3グループ目を撃破……順調です!』

 

「せい!」

 

どうやら順調のようだな。 だが、ガジェットの性能が最初より3倍の速度になっている点を見ると……実験に付き合わされているようで腹立つが。 どっかの赤い彗星かっての。

 

「! この気配……!」

 

その方向を見るが、目視でも何もなかった。 しかし、確かにそこには何かがあった。

 

「アリサ、北西方向に何か感じないか?」

 

「……確かに、妙な気配がするわね……強力な幻影でガジェットを隠しているようね」

 

次の瞬間、レーダーに大量のガジェット反応が検出された。

 

『航空反応増大! これ……嘘でしょう!?』

 

「こちらフェザーズ1。 ロングアーチ、冷静になれ。 敵は光学迷彩、および幻影で奇襲をかけたに過ぎない」

 

『ロ、ロングアーチ、了解。 しかし、対処方が検討つきません!』

 

「今からガジェットをまとめて殲滅するから……消滅時のデータから幻影と実機の判別パターンを割り出せ!」

 

『りょ、了解!』

 

《オールギア……ドライブ。 ロードカートリッジ》

 

応答しつつ、3機のガジェットを斬り裂いた。 だがやはり……光学迷彩で実体のあるガジェットが消えており、幻影で作り出された実体のないガジェットはそこら中にいる。 その区別は実際に現場にいないと判断のしようがない。

 

そして判別パターンを出すべく、レンヤは刀身のギアを全て駆動させ、さらに3本の短刀のカートリッジをロード、一気に魔力を高め……

 

「ーースカイレイ……ブレイカーー!!!」

 

裂帛の声と共に刀を振り下ろし、巨大な蒼い魔力斬撃が放たれた。 斬撃は2グループに迫り、跡形もなく殲滅した。

 

『ありがとうございます。 このデータを元に全力で見つけます!』

 

「よろしくな。 ふう……さすがに併用はキツイな」

 

シャーリーが意気込む中、レンヤは一息吐きながら短刀のカートリッジを交換する。 2グループを潰したとはいえ、周りにはまだまだガジェットが残っている。 その時、アリサがレンヤに近寄り、2人は背を合わせた。

 

「ーーどう思う?」

 

「……確実に引きつけられているな」

 

『本命は地下、もしくはヘリの可能性が高いね』

 

『うん。 主力もそっちにいるかもしれない』

 

つまり、この大量のガジェットは実験兼囮というわけだ。 そうと決まればすぐにこの場を切り抜けなければならず、フェイトがある提案を出した。

 

『なのは、私が残ってここを抑えるから。 レンヤ達と一緒に』

 

『フェイトちゃん!?』

 

『何言ってんのよ! 置いて行けるわけないでしょう!』

 

『このままだと時間をかけてしまう……限定解除すれば、広域殲滅でまとめて落とせる』

 

『それはそうだけだど……』

 

もちろん、今のリミッターが掛かっている状態でも殲滅は可能だが。 1分1秒も無駄に出来ない以上、時間はかけられない。

 

『なんだか、嫌な予感がするんだ』

 

『……確かに、俺もそんな感じがするし。 ここで時間を取られるのは得策じゃないな。 フェイト、神威を使うか?』

 

『うん。 お願ーー』

 

『割り込み失礼!』

 

フェイトが了承しようとした時、突然はやてが会話を止めるように通信で割り込んできた。

 

『ロングアーチからライトニング1へ。 その案も、神器の仕様も、限定解除申請も部隊長権限にて却下します』

 

『はやて……!』

 

『なんではやてが出動を?』

 

『嫌な予感は私も同じでなぁ。 空の掃除は私達がやるよ』

 

はやてと共にすずかとアリシアがこの場に現れた。

 

『皆、後は私達に任せて』

 

『ここ最近出番なかったから、身体が鈍ってしかたなかったんだよねー』

 

『ちゅうことで、レンヤ君アリサちゃん、なのはちゃんフェイトちゃんは地上に向かってヘリの護衛。 ヴィータとリインはフォワード陣と合流。 ケースの確保を手伝ってな』

 

『了解!』

 

はやての指示で、レンヤ達は地上に向かい。 入れ替わりにはやて、アリシア、すずかが海上に出た。

 

『本当に限定解除はいいんだな?』

 

「かまへんかまへん。 地上部隊の上層部は面倒だってレンヤ君言っとたし、それに許諾取り直しが面倒やし。 まあ、昔ならいざ知らず、レンヤ君とテオ教官に鍛えられた私は一味ちがうでぇ。 自信過剰じゃあらへんで?」

 

『ふふ、分かってるわよ。 頑張ってね、はやて』

 

「うん、任せとき!」

 

『ちょっとちょっと! 私達がいるから、でしょう?』

 

『そういう所が自信過剰じゃないのかな?』

 

「そ、そんな事あらへんよ!」

 

『あはは♪ まあそれはそれとして、ガジェットを殲滅ポイントに誘導するよ。 準備を始めてね』

 

《スレットマイン》

 

次の瞬間、アリシアが海上に向かって飛翔。 周囲に四角い魔力弾をばら撒き……1秒遅れて広範囲に爆発、閃光、煙幕が張られた。 誘導しつつも自由気ままに戦っているアリシアを見て、はやては苦笑しつつ空高く飛び上がり、雲の上で停止した。

 

「おし……久しぶりの遠距離広域魔法……行ってみよか!」

 

足元に白い古代ベルカ式の魔法陣を展開し、魔力を高める。 はやては魔力を上げていき、魔法発動可能となった所でメイフォンを取り出した。

 

「こういう時、メイフォンのアプリって結構便利なんよなぁ。 ホンマはどういう原理かは未だに知らんけど……」

 

はやてはアプリを起動。 目標ガジェットを捕捉、自身の座標と比較して発射方向を確認する。 はやては精密なコントロールは出来るが、遠距離照準は出来なくもないが機械の方が正確なため、サーシャお手製の遠距離照準補助アプリを使用した。

 

「ーー来よ、白銀の風……天よりそそぐ矢羽となれ!」

 

騎士杖を掲げ、はやての前方にミッド式の魔法陣が展開。 その周りに小さくなっているが、同様の4つの魔法陣が展開された。

 

『フェザーズ1、スターズ1、ライトニング1、安全域に退避。 着弾地点の安全……確認』

 

「おっし……第1波、行くよー!」

 

掛け声と共に4つの魔法陣に魔力が収束していき……

 

「フレース……ヴェルグ!」

 

遥か先にいたガジェットII型の集団を一掃した。 その光景を間近で見ているアリシアの心境は呆れと感心の半分だった。

 

『うわぁ……すごい絶景だなぁ……』

 

「ーーすずかちゃん!」

 

『了解! クレードル1、目標を狙い撃つよ!』

 

《高密度圧縮魔力、チャージ完了。 フライシュッツメーザー》

 

「ショット……!」

 

ビルの屋上で、腹這いになりながらスナイプフォームのスノーホワイトを構えたすずかが……はやてが撃ち損じたガジェットを超遠距離から放たれた魔力レーザーで次々と撃ち落とした。

 

「まだまだ、第2波もすぐに行くで!」

 

『私に当てないでよ〜?』

 

『ふふ、あんまりウロチョロしていると私が当てちゃうかもね?』

 

「怖っ! すずかちゃん怖っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!!」

 

ソーマの一閃で、最後のガジェットを破壊した。 フォワード陣はレリックを探索している途中、ガジェットと遭遇、戦闘に入っていた。

 

「ふう、外は何だか大変みたいね」

 

「大丈夫だとは思うけど」

 

「……レリックの推定予測ポイントまで後少しです」

 

「よし、気を引き締めて行ーー」

 

ドガンッ!!

 

美由希がそう言いかけた時、スバルの横の壁が突然爆発し、それにソーマが巻き込まれ吹っ飛んだ。 ティアナ達が警戒する中、爆煙が晴れると……そこにはギンガが立っていた。

 

「ギン姉!」

 

「ギンガさん!」

 

「2人とも久しぶりだね。 って、あれ? ソーマ君は?」

 

「こ、ここです……」

 

声のした方を見ると瓦礫の山からソーマが出てきた。 ギリギリの所で防御に成功したようだ。

 

「ギンガさん。 壁抜きする前に安全確認をしてください。 後少しで死んでましたよ……」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「はあ……まあそれはともかく。 この先にレリックがあるはずです。 ガジェットを警戒しつつ迅速に向かいましょう」

 

「了解しました」

 

作戦を確認しながら、ギンガはスバル達の後ろにいたキャロとルーテシアと美由希に視線を向けた。 その視線に気付き、キャロは慌てて敬礼し。 ルーテシアと美由希は笑顔で手を振った。

 

その後、予想通りガジェットと遭遇。 交戦に入った。

 

「せやぁ!」

 

「ガリュー!」

 

(コクン)

 

ソーマは高速で移動しながら通り抜け側にガジェットを斬り裂き。 ルーテシアの指示で通常状態のガリューがガジェットをまとめて破壊する。 スバルとギンガの進行方向にガジェットIII型が道を塞いだ。

 

「スバル! 一撃で決められる?」

 

「決める!」

 

《ロードカートリッジ》

 

その会話だけで決まり、ギンガがガジェットIII型に接近、その背後でスバルがカートリッジをロード、リボルバーナックルが回転を始める。

 

「ふっ……!」

 

ガジェットIII型が放った3発の魔力レーザーを、ギンガはフィールドシールドとシューティングアーツの体捌きで最小限の力で弾いた。 続けてギンガは左手のリボルバーナックルを回転させ、拳を振り抜いた。 ガジェットIII型は2つのアームを交差させて防ぎ……

 

「はあああっ!」

 

拮抗もせずアームを破壊、そのまま本体を殴り。 吹き飛ばした。 そして、スバルがローラブーツで天井を走り、追撃をかける。 目の前に魔力スフィアを、両手に加速帯を展開させ……

 

「ディバイーーン……バスタァァーーッ!!」

 

AMFを容易く貫通。 腕をガジェットに捻じ込ませ、その状態のまま砲撃……破壊した。

 

「やるようになったわね、スバル。 でも、少しシューティングアーツが疎かになってないかしら?」

 

「う……訓練で使う時はあるけど、シューティングアーツをメインにした訓練はしてないから……」

 

「そう。 今度お母さんにたっぷりと鍛え直させてもらいなさい」

 

「そ、そんなぁ〜……」

 

「あ、あはは……クイントさんは手加減がないからね……」

 

クイントの特訓が嫌なのか、ガックシと項垂れるスバル。 ソーマも他人事のように同情する。 気を取り直し、地下水路の奥に行くと。 キャロが流されたレリックの入ったケースを発見した。

 

「あ、ありました!」

 

「ホント!?」

 

「これで任務完了ね」

 

レリックが無事発見され。 ソーマ達は一息ついた……その時、突然ソーマがバッと上を見上げた。

 

「! 何、この気配は……?」

 

「ソーマ?」

 

「どうかしたの?」

 

羽のようなものが高速で飛来、キャロのすぐ側に着弾し、衝撃で吹き飛ばされてしまう。

 

「きゃあっ!?」

 

「キャロ!」

 

「ーーさせない!」

 

砂塵が舞い上がる中、追撃をしかけてきた正体不明の敵を。 美由希が飛びかかり、その人物を弾き飛ばした。

 

「美由希さん!」

 

「っ……何者!」

 

美由希が小太刀を突きつけた暗がりに、小型車サイズの鷲のような猛禽類の特徴を持つ緑色の鳥がいた。

 

「キルルル……」

 

「鳥……?」

 

「…………………」

 

美由希達が突然現れた鳥に警戒する中……先ほどの爆風でキャロの手から離れたケースをフードを被った人物が拾った。 背はキャロと同じくらいで、子どもなのが見て取れる。

 

「ん? あっ!」

 

「…………………」

 

キャロはすぐに気付き、慌てて近寄るが……フードの子どもは無言で手を前に出し。 スフィアを展開、発射した。 キャロはそれに驚愕しながらもすぐさま防御魔法を展開するが………

 

「きゃああっ!!」

 

「キャロ!」

 

「キャロちゃん!」

 

咄嗟の事で防御が甘く、容易く破壊されてしまいキャロは吹き飛ばされてしまい、ルーテシアが急いで駆け寄った。 ソーマ、サーシャ、美由希はフードの子どもを敵と判断し、拘束しようと動き出そうとすると……

 

《Ability Card、Set》

 

「アビリティー発動……破邪・流星嵐」

 

「ギャオルルルル!」

 

フードの子どもから発せられた呟きの後に。 緑鳥の鳥らしくない咆哮と共に全身が緑色の炎を纏い、ソーマ達に向かって突撃した。

 

「きゃあ!」

 

「ぐっ……」

 

「な、なんてパワーにスピード……」

 

「キルルルル……!」

 

「うおおおおっ!」

 

緑鳥が追撃をしかけようとすると……スバルが緑鳥に向かって飛びかかり、跳び蹴りを仕掛けるが……緑鳥は軽やかに飛び、蹴りを避ける。 緑鳥とスバルは真横を通り過ぎ……

 

「まだまだ!」

 

ようとしかけた時、スバルが身体を捻り右足を地面に突き立て制動をかけ。 跳んだ勢いを利用して回転、左足で回し蹴りを繰り出した。

 

「キルル!」

 

「これもダメ!?」

 

「ーートイやあああっ!」

 

スバルの回し蹴りが避けられた瞬間、ギンガが飛び出し。 鋭いパンチを放ち、緑鳥は翼で弾いて後退した。

 

「何、この感じ……」

 

「キルルルル……」

 

「こら! そこの君! それ危険な物なんだよ! 触っちゃダメ、こっちに渡して!」

 

「……………………」

 

ソーマはフードの子どもにレリックを渡すよう話しかけた。 フードの子どもは一瞬振り向いたが、すぐに踵を返した時……

 

「っ……!」

 

「ーーごめんね、乱暴で」

 

フードの子どもは肩を抑えられるのを感じて足を止め。 次の瞬間、背後にティアナが現れフードの子どもにダガーモードのクロスミラージュを添えた。 どうやらティアナはオプティックハイドで静かに接近していたのだ。

 

「でもね、これホントに危ないものなんだよ? 」

 

「……………………」

 

『ーークク。 カウント3で目を瞑って』

 

その時、フードの子どもに向かって念話が届いた。 念話を飛ばした人物は、了承を受け取らないままカウントを始める。

 

『1、2の……』

 

「…………………」

 

「! しまった!」

 

「ーーシュペヒトモメント!」

 

サーシャがフードの子どもが顔を……視界を隠した行動の意味に気付いた瞬間……突然2人の頭上から黄色い魔力弾が発射され。 ティアナ達の目の前に着弾、轟音と閃光が辺りに広がり、ティアナ達は目を閉じ耳を塞いで膝をついてしまった。 それと同時に子どものフードが外れ……中から長髪で水色の髪をした少女が出て来た。 少女はティアナを一瞥すると、気にせず離れた。

 

「っ……待ちなさい!」

 

「キルルッ!」

 

「きゃああああっ!!」

 

「ティア!」

 

ティアナは制止を呼びかけ、追いかけようとするが……緑鳥が道を塞ぎ。 翼の羽ばたきで起こった突風で吹き飛ばされてしまう。

 

「っ!」

 

しかし、ティアナは受け身を取って体勢を立て直し、クロスミラージュの銃口を向ける。 狙いはフードの子ども、気絶を狙い引鉄を引いた。

 

「っ!」

 

「キルルル……」

 

放たれた魔力弾は緑鳥が弾き、少女は視線を上に向けた。 そこの排水管に腰掛けていたのは………黄色い髪をした、人形サイズの少年だった。

 

「ーー水臭いじゃないか、僕達に黙って行くなんて。 ククもクローネも」

 

「え……」

 

少年の言った言葉に、キャロは呆けた声を出し。 顔を上げ、フードから外気にさらけ出した少女の顔を見ると……声も出せず、目が動揺を表すように震えた。

 

「コルル……」

 

「本当に心配したんだからね。 そのせいで姉さんに探しに行けって駆り出されるし……ま、僕が来たからには大船に乗った気になってよね。 この雷鳴の槍精! コルディアが来たんだからね!」

 

スポットライトを自分に当て、コルディア……コルルは意気揚々にポーズを決めた。

 

「さてと……じゃ、逃げよっか」

 

「…………泥舟の間違いじゃない?」

 

意気揚々と、堂々と名乗ったコルルは、今言った事と一転して真逆の事を言った。 その温度差に、表情は変わらないがククは冷えた目で見つめた。

 

 


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