魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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15話

 

 

相変わらずなのはの様子がおかしい。

 

温泉から帰ってきてもまだ悩んでいるようだ。最近は特にひどく、授業中でも完全に上の空だ。

 

あれから、なのはなりにまだ迷っているようだが……

 

「いい加減にしなさいよ!この間から何話しても上の空でぼうっとして!」

 

「あっご、ごめんねアリサちゃん」

 

「ごめんじゃない!私たちと話しているのがそんなに退屈なら1人でいくらでもぼうっとしてなさいよ!行くわよ、すずか」

 

教室を出て行くアリサに困惑するすずか。

 

すずかに視線を向けてた、すずかは静かに頷きアリサを追いかけた。

 

「大丈夫か?」

 

「うん、今のはなのはが悪かったから」

 

「わかっているならいい、アリサも少し言い過ぎだと思うがな」

 

なのはが全て悪いわけではないが、このままではまずいな。

 

「あまり根を詰めるな、顔色も悪いぞ」

 

「ありがとう、でも大丈夫だから」

 

「そっか、困ったらすぐに言うんだぞ。絶対に助けに行くから」

 

「うん、ありがとう」

 

さてと、アリサの様子も見ないとな、爆発したらシャレにならん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温泉から帰っても悩み続けた、最初はユーノ君の力になりたかった。こんな私でも役に立てればと思った、でも今はわからない。ジュエルシードが見つからないからフェイトちゃんとも会えない。レン君が励ましてくれたけど前に進めない事に焦りを感じる。

 

最近ずっと考えこんでしまって、あんまり眠れていないし食欲もない。そんな私を気遣ってくれたのか、レン君が心配してくれた。

 

大丈夫、私は……前に進んで見せる。

 

「レイジングハート、お願い……」

 

レイジングハートを握りしめて、静かに涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリサとすずかの魔力を元に歩くと階段の側で話していた、アリサは確かに怒っていたが。

 

「一緒に…悩んであげられる…か」

 

物陰に隠れて話しを聞いてしまった、でもとても友だち思いのアリサだ。力になれないのがよほどつらいんだろう。

 

「フォロー、する必要なかったな」

 

教室に戻ろうとした時……

 

「レンヤ君、盗み聞きは良くないと思うよ」

 

「……気づいていたの?」

 

すずかにばれて物陰から出る。

 

「私って音にも匂いにも敏感だからね」

 

ああ、すっかり忘れてたけどすずかは吸血鬼だった。

 

にこやかに笑うすずかとは逆に、アリサは顔を真っ赤にして口をパクパクしている。

 

「コホン、でレンヤ、あんたは何か知っているの?」

 

「残念ながら何も…」

 

「そう…よね…」

 

「俺たちも人のことは言えない、なのはのは明らさまなだけだ」

 

「うん、そうだね…」

 

「俺たちにできることは、待つしかない。なのはが自分で言える時まで」

 

「……言われるまでもないわよ」

 

「待ち続けるよ、ずっと」

 

その後、俺たちは教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰りなのはの様子が変わらぬまま、今日が終わろうとした。

 

「どうにかしたいんだけどな〜」

 

「しょうがないよ、話してくれないんだもん」

 

「どちらにせよ、俺たちにできることは、励ますくらいだ」

 

ソエルとラーグに相談しても答えは同じか。

 

できることもなく寝ようとした瞬間……

 

ドックン

 

「っ!」

 

体全体が揺れる感覚に陥った、その後直ぐに地震が起きた。

 

「……今のはいったい…なんだ」

 

「レンヤ、大丈夫?」

 

「あ、うっうん!大丈夫だよ、お母さん!」

 

少し落ち着いた後。

 

「ラーグ、ソエル、今のは…」

 

「それは明日、アリサたちと一緒に話す」

 

「私たちも何が起こったのか、よくわからないの」

 

「…わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、放課後、すずかの家。

 

「ラーグ!昨日の地震は何!」

 

「地震が起きる前に気持ち悪い感覚がきたの」

 

「わかった!わかったから離せ!」

 

アリサはラーグをテーブルに置く。

 

「昨日起きた現象はミッドチルダで言えば次元震、異界関係で言えば虚空震《ホロウ・クエイク》って言うの」

 

「次元震?」

 

「虚空震……」

 

「普通の地震とは何が違うんだ?」

 

「地殻運動の結果である地震とは根本的に異なり、時空間そのものが震動する極めて特異な超常現象……その後に起こった地震は、あくまで余波だ」

 

「時空間そのものが……」

 

「でもそれなら納得する、体全体が揺さぶられる感じだったわ」

 

「ならなんでその虚空震が起きたのかわかるのか?」

 

「わからないよ、確かに極めて稀にしかでないけど、発生する理由もわからないんだよ」

 

「しかし、時空間が揺らいだおかげで異界が発生しにくくなっている」

 

「……とにかく、今は現状維持が限界だな」

 

「それと、ようやくペンダントと連携をして念話ができるようになったよ!今2人のデバイスにデータを送るね」

 

ソエルがフレイムアイズとスノーホワイトにデータを送った。

 

《ありがとうございます》

 

《感謝します、ソエル様》

 

「試してみようか」

 

俺は2人に念話した。

 

『聞こえるか?2人とも』

 

『ええ聞こえるわよ』

 

『問題ないよレンヤ君』

 

《お嬢様、マルチタスクお見事です》

 

《練習の成果が出ましたね》

 

「ありがとう!これもあなたのおかげよ!」

 

「これからもよろしくね、スノーホワイト」

 

《感謝します、お嬢様》

 

《もちろんです》

 

「はは、ちょっとうらやましいかな」

 

「レンヤには私たちがいるよ」

 

「浮気はいけねえな〜」

 

「ふふ、レンヤ君のデバイスは私が作るんだから」

 

「できるだけ早く頼むよ、早くしないと魔力が空になる」

 

「進捗状況はどう?」

 

「もうすぐ、組み立てに入るよ。すずかはすごい勢いで覚えていくんだ、将来いいデバイスマスターになるよ!」

 

「ほっ褒めすぎだよ〜」

 

「いやいや、実際すごいよ」

 

「いつかフレイムアイズのメンテナンスを頼むわよ」

 

《よろしくお願いします、すずか様》

 

「もう!みんなでハードルを上げないで!」

 

その日はそれで解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日ーー

 

「えっ!しばらく帰れない⁉︎」

 

「うん」

 

今家には私とレン君とお母さんしかいなく、他の3人は裏山に出かけていた。

 

「それは、なんでなの?」

 

「それはー…」

 

私は自分の思いを伝える為に話し始めた、ユーノから出会ってから今日までのことを……

 

「もしかしたら危ないかもしれないことなんだけど、大切な友だちと始めたことを最後までやり通したいの。心配かけちゃうかもしれないけど」

 

「それはもういつだって心配よ、お母さんはなのはのお母さんなんだから」

 

「そうそう、やっと話してくれたんだむしろ嬉しいよ」

 

お母さんの顔を見ればわかる、私の事を心配していること全部。けど……

 

「なのはがまだ迷っているなら止めるけど、もう決めちゃっているんでしょう?」

 

「うん…」

 

「なら……行ってらっしゃい、後悔しないように。お父さんとお兄ちゃんはちゃんと説得しておいてあげるから」

 

「俺も協力するから、行ってこいなのは!ちゃんと出来るって信じているぞ!」

 

レン君が頭を撫でて、励ましてくれた。私のことを信じてくれた、それが何よりも嬉しかった。

 

それから着替えを持って外に出たら、レン君がいた。

 

「なのは、これ」

 

取り出したのはオレンジの模様がある心の羽根だった。

 

「レン君…うん!」

 

私も青い模様のある心の羽根を出してレン君の羽根とくっつけた。

 

「絶対に無事に帰ってこいよ!」

 

「うん!必ず帰ってくるよ!」

 

私たちの羽根は黄色く染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、聖祥小学校ーー

 

なのはが家庭の事情という名目でしばらく学校を休むことになった。

 

「では高町さんがいない時のプリントノートを………」

 

「それなら俺が……」

 

バッ!

 

アリサが勢いよく手を挙げて立候補した。

 

(やれやれ、口より先に手が出たか…)

 

昼休みなり屋上で、なのはの事を話していた。

 

「そう…もう吹っ切れたのね」

 

「大切な友だちの為か……なのはちゃんらしいね」

 

「ああ、俺たちも頑張らなきゃな、虚空震の調査、頑張るぞ!」

 

「「おーー!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虚空震の調査を始めてはや1週間、異界の変化もなく滞っていた。

 

「レンヤ、私たちは別行動で調べるよ」

 

「このままじゃ埒があかないからな」

 

唐突に言い始めた。

 

「……何か策があるんだろうな」

 

「「もちろん!」」

 

「なら約束してくれ、絶対に俺の所に帰るって」

 

「うん!約束するよ!」

 

「ああ、絶対に戻ってくる」

 

俺はソエルとラーグを抱きしめた、なのはたちより1番付き合いが長く、本当の意味で家族だった。離ればなれになるのはもちろん初めてだ。

 

「行ってくるよ!」

 

「朗報を待っててくれよ」

 

ソエルとラーグは転移で行ってしまった。

 

「……あの変な呪文…言わなかったな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アースラの和室ーー

 

リンディは異常に砂糖の入ったお茶を飲んでいた。

 

「ふう、やる事が山積みですね」

 

現在、プレシア・テスタロッサの捜索にあたっている。ジュエルシードの次は次元犯罪、正直疲れる。

 

「さてと、頑張りますかな」

 

「ちょっといいか」

 

突然話しかけられて私は構える。

 

「誰?ここにどうやって侵入したの」

 

「簡単だよ、なのはにマーカーをつけていたからね」

 

しまった!忙しくてそこまで手が回らなかった!

 

敵は2人の男女、姿はまだ見えない。

 

「おいおい、そう身構えるな」

 

「私たちは交渉に来たんだよ、敵対するつもりはないよ」

 

「………いいでしょう姿を見せなさい」

 

「ほい来た〜」

 

現れたのは白と黒のうさぎみたいに長い耳をした生物だった。

 

「……………えっ?」

 

「私はモコナ・ソエル・モドキ」

 

「俺はモコナ・ラーグ・モドキだ、リンディ・ハラオウン、交渉と行こうぜ」

 

「……わかりました、まずあなたたちの条件は?」

 

「プレシア・テスタロッサのいる、時の庭園に連れて行って欲しい」

 

「なっ!プレシア・テスタロッサの居場所が分かるんですか⁉︎」

 

「いいや、わからないよ、ただ名前を知っているだけ」

 

「そうですか……それであなたたちの出す条件は?」

 

「まず約束して欲しい、この事は他言無用だと」

 

「ええ、約束します。信用は交渉の第一条件です」

 

「そうか。なら俺たちは…………」

 

彼らに聞かされた条件は……

 

「……それは本当ですか?」

 

「うん、嘘偽りなく本当のこと」

 

「俺たちの存在自体も証明になる」

 

「…………いいでしょう、その条件をのみましょう」

 

「ありがとう、こんな話しを信じてくれて」

 

「いいえ、実際に大きなニュースにもなりましたから、十分信用出来ます」

 

「そうか、時の庭園に突入する時、隠れて侵入するからサーチャーに引っかからないようにしてくれよ」

 

「わかりました」

 

「それじゃあね」

 

「またな」

 

そう言い残し、2匹は転移した。

 

「ふぅ」

 

まさかこんな事があるなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはが家を出て10日後ーー

 

なのはが久しぶりに帰って来てた。

 

リンディ・ハラオウンさんという女性が事情を説明してくれた。

 

「これから学校だけどなのはも行くか?」

 

「うん!もちろん!」

 

前よりいい顔になった、友だちに伝えられたようだな。

 

その後学校が来て……

 

「おはよー」

 

「おはようなのー!」

 

「あ!なのはちゃん久しぶり!」

 

「久しぶりね!なのは!あんた、休みの間何してたのよ?」

 

「え!う〜〜ん………秘密かな?」

 

「なんかすごい気になるじゃない!なのは、教えなさーい!」

 

「ええ⁉︎たっ助けて〜レン君〜〜」

 

「ちょっと!俺を壁にするな!こらアリサ!叩く相手が違う!すずか〜助けてくれ〜」

 

「ふふふっ」

 

「いや笑ってないで助けてよ!」

 

俺たちが騒いでる様子をすずかは笑って見てた。

 

休み時間ーー

 

「今日は私の家で遊ぶわよ!」

 

いきなりそんな事を宣言してた。

 

「そういえばアリサの家って遊んだことなかったな」

 

「決まりね!みんなで遊ぶわよ〜!」

 

「「「おおー!」」」

 

アリサの家は2年前に行ったきりだ。

 

「あっ、そういえばね、昨夜ケガをしている犬を拾ったの」

 

「へぇ〜どんな犬?」

 

「すごい大型で毛並みがオレンジ色で…見たことのない種類」

 

「アリサちゃんが知らないとなると……その子、ミックスかな?」

 

「そうなるのかな〜〜…あっ後おでこに赤い宝石が付いているの!」

 

「っ!」

 

「赤い宝石?」

 

「知っているの?レンヤ君?」

 

「うーーーん、気のせいだろう、とにかく会ってみようか」

 

放課後になり、アリサの家に行った。庭の檻を見るとアリサが言った通りの特徴をした犬がいた。

 

「うーーん…元気が無いわね…大丈夫?」

 

「……アリサちゃん、すずかちゃん、レン君、先に遊んでてくれる?」

 

「え?なんでよ?」

 

「………アリサ、行こうか」

 

「レンヤ…わかったわ、なのは!すぐに来なさいよ!」

 

俺とアリサとすずかは先に家に入った。

 

「なのはちゃん、どうしたんだろう」

 

「………多分、この10日間に関係するだろ」

 

「なら聞けるわけ無いわね」

 

「レンヤ君、ラーグ君たちから連絡は?」

 

「未だに1つもよこさないよ、大丈夫だと思うけど」

 

「虚空震の調査もまるで進んでいないわ、いつまた起きるかわからないんだし」

 

「ラーグ君たち心配だね」

 

「そうだな……ほらしっかりしろ!辛気くさい顔しているとなのはにも心配されるぞ」

 

「…うん!そうだね!」

 

「とにかく私たちに今できる事をやりましょう」

 

その後なのはが戻ってきて、みんなでゲームをする事になった。

 

夕方になりアリサとすずかと別れ、なのはがあの犬は知り合いの物なので家に連れて帰る事になった。

 

「ふっきれた顔をしているな」

 

「えっ!」

 

「決心した顔だ、今日も行くんだろ?頑張ってこい」

 

俺はなのはの頭を撫でた。

 

「あ///、うん!ありがとうレン君!」

 

夜、家にある道場になのはがいた。

 

「眠れないのか?」

 

「あ、レン君」

 

「明日も早いんだろ」

 

「レンヤ、なのは」

 

「「あ、お父さん」」

 

入り口でお父さんがいた、なのはの事を見ていた。

 

「私が悩んでいた事、知ってたの?」

 

「お父さんは、お父さんだからな」

 

「ぷっ!お母さんと同じ台詞」

 

「わっ笑う事無いだろ」

 

「あはは」

 

「コホン、なのはは強い子だからな。お父さんはそれほど心配してないよ。しっかり頑張って来なさい」

 

「うん!ありがとうお父さん!」

 

「はは、もう遅い早く寝なさい」

 

「はーい」

 

「先行っててくれ、ちょっと犬を見てくる」

 

なのはと別れて庭にいる犬と会った。

 

「やっぱりどこかで見た事のあるんだよなぁ、おでこの赤い宝石」

 

「くぅーん」

 

「うーん、あっ!温泉の時、絡んできた女の人もおでこに赤い宝石が付いていた!」

 

「きゃん!」

 

「おまえ……まさか……」

 

「わっワン!」

 

「まっそんなわけないか魔法じゃあるまいし」

 

「ワン!」

 

「はは、お前を見ているとフェイトを思い出すよ」

 

「!」

 

「ん?ああフェイトっていうのは、金髪でツインテールのかわいい女の子だ。初めて会った時は驚いたなぁ、あなたの持っているジュエルシードを渡してください、だって言ってたんだから、でもちょっと心配なんだよね、ちゃんとごはん食べてるかな」

 

「くぅーん」

 

「ああ済まないな、お前に言ってもしょうがないよなぁ」

 

犬の頭を撫でた。

 

「おやすみ、いい夢を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつがフェイトの言ってた…あいつなら、もしかしたら…フェイトの心を救ってくれるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、早朝に犬と一緒になのはは家を出た。

 

「頑張れ、なのは」

 

 


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