魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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141話

 

その後……アザールとエリン両名を逮捕。 後処理を済ませ、今はヴァイゼンの次元港にいる。

 

「ーーそれではティーダさん。 2人の護送はよろしくお願いします」

 

「ああ、任せておけ」

 

エリンは担架に乗せられながら、アザールは両手に手錠を付けられながら次元艦の乗せられ。 ゼストさんとティーダさんはそのまま彼らを収容所に護送して行くため、ここで別れる事になった。

 

「ーージュン。 改めて礼を言おう。 まあ、本当なら事前にこっちに連絡が欲しかったが」

 

「あはは、そうしたかったのは山々なんですが……あまり管理局に干渉は出来なくて……」

 

「……そっちにも事情があるのは分かっている。 無理に聞いたりはしない」

 

「……助かります」

 

「何はともあれ、小日向 純。 とにかく今回は助けられた。 改めて礼を言わせてくれ」

 

ゼストさんは頭を下げてジュンにお礼を言った。

 

「レンヤには以前、助けられましたから。 本当だったら、例の教団の件も含めて僕も付いて行きたい所だけど。 この後も任務がありますし、もし次に何かあったら教えてもらえると」

 

「ああ、教会を通じてそちらに連絡させてもらおう」

 

俺も今回、ジュンと連絡が取れたのは教会を通じたからだ。 意外と聖霊教会が友好的だったのが驚きだが。

 

「ーーレンヤ、フェイトも。 今回は本当によくやってくれた」

 

「い、いえ。 管理局として当然の義務を果たしたまでです」

 

「今回はイレギュラーも多かったですし。 お2人がいなかったら厳しかったです。 本当にありがとうございます」

 

「ふ、むしろ私達がアリサ達の代わりが務まるか心配していたが……お前達の期待に応えられたようだ」

 

「若い者にはまだまだ負けられねえ、と言いたいが。 お前らと比べると負けてもいいかもしれねえな」

 

「あ、あはは……」

 

若い者って……ティーダさんも十分若いでしょう……

 

「それでは私達は一足先に行かせてもらう。 また協力するような事があればよろしく頼む」

 

「はい、こちらこそ!」

 

2人は管理局の次元艦に乗り込み、ミッドチルダに向けて次元空間に入って行った。

 

「君達も恵まれているね。 所属は違っていても、いい先輩じゃないか」

 

「ああ、本当にそう思うよ」

 

「そうだね……クロノもそうだし」

 

「それで、君達はどうするの? このまま次の便の次元船でミッドチルダを戻るつもり?」

 

「ああ、そのつもりだ。 そうだ、ジュンはまだ時間はあるか? 無理言わせて来てもらったわけだし、安易だとは思うけど何か奢らせてくれないか?」

 

「うーん、それはありがたいけど、この後すぐに地球に戻らないといけなくてね。 僕の次元転移法はタイミングを逃すと次に転移出来るのが明日になるんだ。 本当なら、例の教団についても詳しい話を聞きたいんだけど……」

 

「D∵G教団、か……」

 

壊滅してもなお、その名は消え褪せる事はなく、忌み嫌われる名として残るだろう。

 

「やっぱり聖霊教会の方でも何か掴んでいるの?」

 

「いや、それが全く。 僕達が教団と関わったのは4年くらい前の事件が最後」

 

「4年前……」

 

「謎の組織が教団を襲撃した後か?」

 

「ああ、あれから残っていたロッジの一つを制圧したんだ。 ……ここだけの話、教団の中でも最悪と言えるようなロッジでね。 正直、人体実験がマシに思えるくらいイカれた儀式をしていた連中だったよ」

 

「そうだったのか……」

 

「本当に……最低の連中だったんだね」

 

「まあ、今はそのことはいいだろう。 それにあの時の借り作ったままだったから、今回は助けられて良かったよ」

 

借りと言うと、夕闇の時か……

 

「別に借りを作った気はなかったんだが……お陰で犯人を生かしたまま捕まえることができた。 ありがとう……本当に助かった」

 

「いや、さっきのオレンジの髪の人も言っていたけど、何とかなったのはレンヤのお陰だよ」

 

「俺の、お陰?」

 

「ああ、あの人がギリギリのところで保ったのは君の言葉があったからだろ。 そうでなかったら僕が処置しても、おそらく助からなかったはずだ」

 

「そう、かな……?」

 

「うん、きっとそうだよ! レンヤが必死に語りかけたから、エリンも自分を取り戻せたみたいだったし!」

 

「フェイト……」

 

俺はただエリンを正気に戻って欲しかったから……いや、ただ死なせたくなかったから。 理由なんてない、無我夢中で叫んでいただけだ。

 

「はは……異界対策課だったっけ? また機会があったら詳しい話でも聞かせてくれ。 これで教団の件も一通りケリが付いたはずだけど、また何かあるかもしれないからね」

 

「うん、その時はお願いね」

 

「……それじゃあ俺達はこれで失礼するよ。 コウ達によろしくな」

 

「ああ、お疲れ様」

 

ジュンに別れの手を振りながら、俺とフェイトは次元港に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達はジュンと別れた後、ミッドチルダ行きの次元艦に乗り込み。 数分後ヴァイゼンを出発、これから数時間は次元空間の中を揺られる事になる。

 

「ふう……でも無事に任務が片付いてよかったよ。 正直、危ない場面がチラホラあったから、レンヤ達の足を引っ張りそうでヒヤヒヤしたよ」

 

「はは、心配性だなぁ。 フェイト程の実力者が遅れを取るはずがないだろう」

 

《その通りです。 サーは自身を過小評価をし過ぎています》

 

「ほら、バルディッシュもそう言っているし」

 

「もう、皆して……」

 

フェイトは困り顔になるが、どことなく嬉しそうだ。

 

「それにしても……はやてはちゃんとやっているかなあ?」

 

「いつもは冗談を言うけど、はやてはちゃんとやっていると思うよ。 皆で掴む夢なんだから」

 

「そうだな……」

 

膝をついて窓から外を眺める。 どこ見ても同じ景色だが、実際に空の上を飛んでも変わらない景色を見ることになると思い、ボーッと眺めた。

 

「……やっぱり、フェノールのことを懸念しているの?」

 

「…………………」

 

「フェノールの存在は結果的に、ミッドチルダの裏の秩序を守る意味で無くてはならない存在だった。 でも、それが教団のせいで前触れもなく消え去った……」

 

「……パワーバランスの崩壊。 今はワシズカさん達レイヴンクロウが睨みを効かせているし、心機一転した管理局も頑張ってくれている。 だが、確実に何らかの組織がフェノールが空けた席を狙っている。 そして、これは失脚した議員達にも言えることだ。 代弁者がいなくなったことで、各方面の政治干渉が強くなる。 だからそうならない為にも、新市長は俺達に期待しているんだ」

 

「うん……だからレンヤ達は六課に来るんでしょ?」

 

「ああ、新たな局面を前に可能な限り各方面と連携して、より高度な活動を出来るようにする。 来年、対策課にも即戦力と新人も入ることにもなっているし。 そういう意味で、六課への出向は意味のある事だと思う」

 

それに、ここ最近の異界化は極端に少なくなっている。 あるとすれば、人為的なグリードの使用……異界対策課にいては何の解決にもならない問題だ。 いつまでもこもっていては現状は変えられない……今できる最善を行動で示すしかない。

 

「さて、ミッドチルダまで数時間……なんだか待ちきれないなぁ」

 

「うん、そうだね……それに数日、留守にしていると何だか懐かしい感じがするね」

 

「そうだな……」

 

フェイトの言葉に同意し、懐から1枚の写真を取り出す。 俺達、レルム魔導学院・VII組としての最後の学院祭の時に取った集合写真……その真ん中で、楽しそうに笑っているヴィヴィオが写っていた。

 

(……ヴィヴィオ……寂しがってないといいんだけど…………それに、学院の卒業か……)

 

「学院祭の時の写真だね。 あの時は楽しかったなぁ」

 

「そうだな、はやてとアリシアが企画したゲーム大会で学院祭が体育祭混じりのお祭り騒ぎになったしな」

 

腕相撲とか椅子取りゲームとか押し相撲とか、魔法抜きのゲームをやって優勝者を決める大会。 以外にも盛り上がり、いい思い出になったのは確かだが……

 

「色々あったよな……」

 

「あ、うん……特にすずかのが凄かった……」

 

「…………………」

 

運動系なのでジャージでの参加だったが、すずかは前が閉まらず上を羽織っただけだった。 1年の時は閉まっていたのに……やっぱりアレのせいだとは思うが。 それをはやてとアリシアが僻んで叫びまくり、すずかは無理矢理を前を閉めたのだが……ヤバイくらい張りまくっていた。 そんな状態で運動をすれば結果は一目瞭然、チャックが吹っ飛んで……不幸にも俺の頭に直撃した。 その後の記憶は無くなっていた……

 

「……チャックぼーん事件……」

 

「言うな、すずかの名誉の為に言うな」

 

学院祭後、その際ですずかとはギクシャクしていたんだから。 しかもその事件のせいで一時期レルムでは超くだらない事件が多発したのだから……

 

結局、その後は沈黙が続き……戦いの疲労が出たのか、俺とフェイトは寝てしまった。 それからどれくらいの時間が経ったのか、船内放送が流れてきた。

 

『まもなく、第1管理世界・ミッドチルダ、首都クラナガンに到着いたします。 各管理世界方面、定期次元船をご利用のお客様はお乗り換えください』

 

「……ん……」

 

……そろそろミッドチルダに到着するのか。 軽く伸びをして、固まっていた身体を解きほぐす。 ふと、肩に重みを感じ、横を見ると……フェイトが寄りかかって寝ていた。

 

「フェイト、フェイト。 そろそろ着くぞ」

 

「んんん……ふあああ〜……」

 

フェイトは大きな欠伸をして目を覚まし、しばらくボーッとしている状態になった。 いつもなら見られないフェイトの行動に苦笑しながら窓の外を見ると……そこには大都市、クラナガンの光景が広がっていた。

 

それからすぐにミッドチルダ中央次元港に到着。 軽くここ最近のニュースを見ながら到着ロビーに向かうと……

 

「パパーーーーっ!!」

 

「あ……」

 

出口からヴィヴィオが全速力で走ってきて、お馴染みのお帰りタックルをして来た。

 

「ヴィヴィオ……! 迎えに来てくれたのか」

 

「うんっ! 今日帰ってくるって聞いたから! だいじょうぶ!? どこもケガしてない!?」

 

「ああ、平気だ。 ただいま、ヴィヴィオ」

 

「おかえりっ、パパ!」

 

ヴィヴィオは一度俺から離れ、今度はフェイトに抱き着いた。

 

「えへへ……フェイトママもおかえりなさい!」

 

「ふふ……ただいま、ヴィヴィオ」

 

フェイトは嬉しそうな表情でヴィヴィオの頭を撫でる。 こうしてヴィヴィオと接していると、帰って来たと実感できる。

 

「フェイトーーー!」

 

と、今度はプレシアさんが走って来て……フェイトに飛び付いた。

 

「か、母さん!?」

 

「ああ、フェイト! 無事で良かったわ! おかえり! ケガは無いわよね!? もしフェイトが傷物になったら……そいつを……」

 

「プレシア! 気持ちは分かりますが落ち着いてください……って、う……」

 

追い付いてきたリニスが抑えようとするが、プレシアが溺愛状態から一瞬で黒くなるとちょっと引いた。 相変わらずの親バカっぷりだなぁ。 って、人の事言えないか……

 

「だ、大丈夫、大丈夫だから! ていうか、たった数日なのにそんな大げさにしなくても……」

 

「分かってないわねフェイト! 時間なんて関係ないのよ! そうよね、ヴィヴィオちゃん?」

 

「うんうん、そのとーり!」

 

「はは……」

 

ヴィヴィオとプレシアさんのやり取りを見て思わず苦笑してしまうが、気持ちは分からなくもない。

 

「何だか戻ってきたって実感があるね……」

 

「レンヤ君……おかえんなさい」

 

「あ……」

 

出口から今度ははやてとシグナムが出てきた。

 

「はやて……はやても別に出迎えなくても良かったんだぞ?」

 

「あはは、仕事に一区切りがついたんや。 それで迎えに来たんや」

 

「そうか……」

 

「フェイトちゃんもお疲れ様。 危険な事はあらへんかったか? レンヤ君、たまーに無茶する事があるからなぁ……」

 

「うん、もちろんあったよ。 見ているこっちがハラハラするくらいだよ」

 

「事情はゼストから聞いている。 相当無茶をしたそうだな?」

 

シグナムに指摘され、ぐうの音も出ない。

 

「まあそれは置いておくとして。 レンヤ、ちゃんとケリは付けてきたか?」

 

シグナムは真剣な眼差しで俺を射貫くような眼光で見られ、無意識に背筋を伸ばす。

 

「……はい。 無事、両名共に逮捕しました。 ゼストさんとティーダさんが軌道拘置所の方に護送しています」

 

「そうか……これで教団絡みの事件は一段落したと見ていいだろう」

 

「はい。 でも、俺達にはまだまだやる事があります」

 

「そうやで、まだまだやる事はぎょうさん残っておるで!」

 

「そうだけど……とりあえず、今は休ませて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月中旬ーー

 

桜がチラホラと咲く中、今日は学生として最後の自由行動日……ソーマ達が気を利かせてくれたおかげで対策課の仕事もなく。 久々の休日を過ごそうと思うが……

 

「…………………」

 

特に予定もなく、ベットに寝転び天井をボーッと眺めていた。 学院の依頼は1年の通過儀礼のようなもので、今は受けてないし。 とはいえ、このまま惰眠を貪っても意味はないし、気晴らしにお菓子でも作ろうと食堂に向かった。

 

「あ、レンヤ。 アンタにしては遅いじゃない」

 

一階に降りたら玄関にアリサがいた。 手には服などが入っていそうな紙袋が2、3袋持っている。

 

「まあ、ちょっとな……」

 

「どうせアンタの事だから、暇でする事ないんでしょう?」

 

「うぐ……い、今からお菓子を作ろうと思ってな……」

 

「そう。 でもそれなら後でいいわね。 ちょっと待ってなさい」

 

許可も取ることもなくアリサは階段を登り、自分の部屋に向かった。

 

「……まあ、いいけどさ」

 

ふと、自分のポストに手紙が届いていたを見つけた。 手紙を取り、宛名を見ると……ユン・カーファイと書かれていた。

 

「老師からか。 住所は教えたけど、今まで手紙なんて出さなかったのに」

 

しかもこっちから手紙を送ろうにも老師は流浪の旅人、デバイスはおろか通信機器も持っていないから連絡の取りようがない人だ。 封を開けて手紙を読むと……

 

「…………はは、相変わらずの旅道楽だな。 各地をのんびり放浪してるんだな」

 

前半はユン老師がどこで何をしているかの報告のようなもので、思わず笑ってしまう。 ご壮健そうでなにより……続いて後半の文面を読んでいくと、そこには重大なの事が書かれていた。

 

〈この(ふみ)が届く頃には1月くらい前になろう。 前触れもなく謎の集団がワシを襲ってきた。 心配せんでもかすり傷の一つもありゃせん、軽くひねってやったわ。 だが、奴らはワシを殺そうとも、捕らえようともせず、ただただワシの攻撃を耐え続けていた……戦いを長引かせるのに意味があったのか? そう仮定すると八葉の技を全て出した時、奴らは早々に撤退した。 これが何を意味するのかは分からん、じゃがもしかしたらおぬしとも無関係ではないと思い文を出した次第じゃ。 レンヤ、おぬしがこれを読み、どう思うかは定かではないが…………心せよ、近いうちに戦乱が始まるやもしれん。

ユン・カーファイ〉

 

「……………………」

 

手紙を読み終え、黙って手紙を見つめる。

 

(老師に接触して八葉一刀流を盗んだのか? だが、それで何の意味がある? 襲撃者の目的は……そして正体は?)

 

分からない……情報が少な過ぎる。 せめて写真……はデバイスも持ってないのから無理だとしても、似顔絵くらいは同封して欲しかった。

 

「パパーー!」

 

考えを辞めさせるように元気な声と共にヴィヴィオが背中に抱き着いてきた。

 

「おっと……ヴィヴィオ、危ないからいきなり抱き着くのはやめなさい」

 

「はーい」

 

ヴィヴィオが離れ、後ろを向くと……

 

「えへへ、どうパパ? 可愛い?」

 

そこには綺麗に着飾ったヴィヴィオがいた。 ヴィヴィオは服を見せるように一回転する。

 

「ああ、可愛いよ。 アリサに着させてもらったのか?」

 

「うん! アリサママが可愛いからって!」

 

「ふふ、さっそくお披露目してるわね」

 

後に続いてアリサが降りて来た。

 

「アリサがコーディネートしたのか?」

 

「ええ、今日くらい着飾ってもいいと思ってね」

 

「パパ! お散歩行こ、行こ!」

 

「分かった分かった」

 

ヴィヴィオは先に寮を取り出し、自分も出ようとした。 ふと、先の手紙に何か引っかかりを覚え、もう一度読み返してみるが……

 

「レンヤ?」

 

「あ……いや、何でもない。 すぐに行く」

 

結局分からずじまい。 手紙を懐にしまい、アリサとヴィヴィオを追いかけて寮を出た。 気にはなるが、今は隅に置いておこう。

 

ピリリリリリリ♪

 

不意に、じぶんのメイフォンに着信が入ってきた。

 

「誰から?」

 

「えっと……はやてからだ」

 

何の用かはわからないが、とりあえず出てみた。

 

「もしもし、レンヤだ」

 

『あ、レンヤ君。 今ルキュウにおるん? それと近くに誰かおるか?』

 

「ああ、今ルキュウだし、アリサとヴィヴィオが一緒にいるけど……」

 

『なら、2人と一緒にレルムの第1ドームに来といて。 面白い事があるから』

 

「面白い事?」

 

『そんじゃあ、絶対来るんやで!』

 

行くとも言っていないのに一方的に切られた。

 

「はやてはなんだって?」

 

「……なんでも第1ドームに来て欲しいって。 アリサとヴィヴィオにも一緒にって」

 

「ヴィヴィオも?」

 

「全く……今度は何を企んでいるのかしら?」

 

アリサは嘆息するが、ここで考え込んでも仕方なく。 魔導学院に行き、客席方面からドーム内に入った。 すると、そこには俺達以外にツァリ達がいた。

 

「あ、レンヤ」

 

「ツァリ。 それに皆も……」

 

「私達ははやてちゃんに呼ばれてここに来たんだけど……」

 

「どうやらVII組が集められたようだが……」

 

「お、皆来たなぁ」

 

「こっちだよ!」

 

少し困惑する中、フィールドのど真ん中にはやてとアリシア、そして何故かテオ教官がいた。

 

「アリシアちゃん、はやてちゃん。 一体何するつもりなの?」

 

「それはなあ……!」

 

ババン! という効果音と共に空間ディスプレイが展開された。 そこに映っていたのは……

 

「レルム魔導学院の最強は誰か?」

 

「ほんきのもぎせんたいかいー?」

 

「そう! 私達、VII組最後の本気の模擬戦をやるよ!」

 

アリシアは高らかに宣言し、フォーチュンドロップを起動させてバリアジャケットを纏った。

 

「レギュレーションはバトルロイヤル! 最後の1人になるまで戦い、レルム魔導学院最強を決定するよー!」

 

「ほら、かかってこいよ」

 

一瞬、俺達はポカンとするが……

 

「ふふ、いいじゃない。 燃えてきたわ……!」

 

「いい加減、VII組最強を決めるのも悪くないなぁ」

 

「記録として残す戦い……今までにない趣向ですね」

 

テオ教官が大剣を構えて挑発し。 アリサ、リヴァン、ユエは早速参加、バリアジャケットを纏ってフィールドに降りた。

 

「フェイトちゃんーー」

 

「いいよ……なのはとは、いずれ白黒付けたかったし!」

 

「うん、お願いするね……フェイトちゃん!」

 

続いてなのはとフェイトがフィールドに飛び降り……

 

「うう、こんな所で引いてたら……よし! 必ず勝手やるぞ!」

 

「ふふ、ツァリ君。 いつになく本気だね」

 

ツァリとすずかも参加した。

 

「ほらレンヤ! 後はレンヤだけだよー!」

 

「あ、ああ。 今行ーー」

 

「ちょっと待ったーー!」

 

いきなり背後からランディとエステート達、I組が現れた。

 

「僕達を差し置いて学院最強を決めるなんて言語道断!」

 

「VII組の皆さん! ここでどちらが最強か白黒ハッキリさせましてよ!」

 

「ホホウ、最強ときたか」

 

「え……この声は……」

 

すると下からヴェント学院長とエルメス教官が現れた。

 

「が、学院長!?」

 

「どうしてここに……確かドームの使用許可はちゃんと取ったと思うやけど……」

 

「フフ、気になって見に来たんじゃが。 なかなか面白い事をしている、久々に血湧いてしまったわ」

 

「やれやれ、無茶はよしてほしいですが。 昔から言い出したら聞かないのですから」

 

「ええっと、もしかして……」

 

「ウム、ワシらも混ぜてもらおうかのう。 学院最強を名乗りたいのであればワシらを倒していかんとな」

 

…………マジですか…………

 

「仕方ありません、学院長が無理をしてもいけませんから私もサポートするとしましょう」

 

ヴェント学院長は巨大な斬馬刀を、エルメス教官はライフルを構えると……とんでもない気迫を放ってきた。

 

「マ、マジかいな……」

 

「さあ、全員でかかってくるがよい」

 

「雛鳥をいじめるようで気が咎めますが、今回はしかたありませんね」

 

「な、なんて迫力だ……」

 

「ほれレンヤよ、おぬしも早う降りてこんか」

 

学院長に手招きで誘われ、少し口元が緩んでしまう。 毎度毎度強敵と戦って来たが、挑戦という形はあまりなかった。 これが……挑戦か!

 

「その胸……お借りします! レゾナンスアーク! セットアップ!」

 

《イエス、ユアマジェスティー》

 

バリアジャケットを纏い、フィールドに飛び降りて長刀と三本の短刀を抜刀した。

 

「その意気や良し……!」

 

「パパー! ママ達ー! 皆、頑張ってーー!!」

 

「コホン……さあて、変則的になっとるけど。 これより卒業バトルロイヤルの開幕や!」

 

「全員、張り切って行こーー!」

 

『おおっ!!!』

 

開幕と同時にバリアジャケットを纏ったはやてが空に魔力弾を打ち上げ……花火のように炸裂。 それと同時に、俺達……レルム魔導学院最後の本気の模擬戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月25日、魔導学院・最終日ーー

 

桜が咲き誇る中。 前日、俺達はめでたくレルム魔導学院を無事に卒業……第3学生寮の荷物は全て片付けられ、

 

VII組は新たな門出をルキュウ駅前にいた。

 

「ーーそれじゃあ、行くかな」

 

「皆、元気でね」

 

「ああ、皆も元気で。 と言っても……どうせすぐに会えそうな気もするしな」

 

「ふふっ……そうね」

 

「私達7人は六課に行くだけで……本格的な職場復帰みたいなもんだからねぇ」

 

「ね、姉さん……」

 

アリシアはこんな時でもブレないなぁ。

 

「でも、こうしてVII組の繋がりが消えるのは……寂しいかな」

 

「VII組としての繋がりが全てではありませんよ、フェイト。 これはあくまで一時の別れ……私はそう信じています」

 

「今はそれぞれ、為すべきことを果たすだけだよ」

 

「うん、そやな!」

 

「道は分かれたけど……またきっと交わる。 私達はVII組だからね!」

 

「ああ……お互い頑張ろう」

 

卒業の祝いは昨日の卒業式でも言ったが、俺達は改めて祝いを口にした。

 

「うんうん、桜もいい感じに咲いてくれたし」

 

「門出の季節、ですね」

 

「まあ、この風景は少し名残惜しいでフねー」

 

テオ教官やファリン達も俺達の門出を祝ってくれる。 そして、俺達は頷き……テオ教官の方を向いた。

 

「ん? 何だ?」

 

「ーーテオ教官」

 

「この三年間……」

 

『どうもお世話になりました!』

 

「…………ぁ…………」

 

俺達はこの三年間、俺達を指導してくれたテオ教官に感謝し……お礼を言った。

 

「私達がこうして、新しい門出を迎えられたのも教官のおかげです」

 

「無茶苦茶な指導だったけど……まあ、色々とためになったし」

 

「テオ教官がいてくれたから、私達は心身ともに強くなれました」

 

「ふふっ、最後に皆で一言お礼を言おうと思って」

 

「こうして……不意打ちさせてもらいました」

 

「また機会があれば、よろしく指導をお願いします」

 

「お前達……」

 

テオ教官は少し呆けた後、バッと背を向けた。 その背は少し震えている。

 

「……ふ、ふざけんじゃねえぞ……最後まで……威厳のある姿を見せようとしたのによ……」

 

「教官、ムシが良すぎ」

 

「ドッキリ大成功やな」

 

「ちょ、ちょっとやりすぎたかも……」

 

「……すずか、さすがにあざと過ぎたんじゃないか?」

 

「そ、そうみたいだね……委員長として最後に何か提案できればと思ったんだけど……

 

「って……おめえらの発案かよ……!?」

 

涙をぬぐい、テオ教官は振り返ると同時に驚愕した。

 

「やれやれでフー」

 

「フフ……いいオチが付いたね」

 

少し離れた場所で、ファリンさんとビエンフーが微笑ましそうに俺達を見つめる。 そして、クラナガン行きのレールウェイが来る定刻になり……

 

「それじゃあ、テオ教官。 さようなら!」

 

「さようなら、テオ教官!」

 

「また会いましょう!」

 

「おう! 怪我病気すんなよ!」

 

手を振って、テオ教官と……レルム魔導学院と別れ。 駅に入ると、先に待っていたヴィヴィオがこちらに気付いて近寄って来た。

 

「パパ。 お話は終わったの?」

 

「ええ」

 

「ああ、待たせてごめんな、ヴィヴィオ」

 

「ううん! ヴィヴィオ、くうきがよめる女だから!」

 

「………それは…………ちょっと違うかな?」

 

「ふえ〜?」

 

「……はやてちゃん……?」

 

「〜〜〜〜〜♪」

 

「あからさまに口笛を吹かないでよ……」

 

一悶着ありながらも到着したレールウェイに乗り込み、今度はルキュウと別れを告げ……レールウェイは首都クラナガンに向けて走り出した。 それと同時に、俺達は新たな道を走り出したのだった。

 

 

 




今度は閃の軌跡II(仮)完です!

今回の投稿でちょうどこの小説を書き始めて一年……案外あっという間でした。

次回! StrikerS編に入ります! 後半の人外対戦に乞うご期待!

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