魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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137話

 

 

ゼアドールとキイと別れた後、橋を渡りきって最奥にあった建造物の中に入った。 するとまた橋が架かっており、下には水が流れていて、どうやら地下湖のようたま。 そのまま一本道を進み続けると……しばらくして中央らしき場所に到着した。 そこには湖の上に立つ祭壇が建てられていた。

 

「ここは……」

 

「……地下の湖……?」

 

「こんなものが広がっていたんだ……」

 

「綺麗だね……」

 

「! 皆、あれを……!」

 

すずかが何かに気が付き、指差した方向を見てみると……祭壇の1番上の壁にはD∵G教団のシンボルマークの原型があり、その手前に球体らしき物体が祀られていた。 そして、その球体には見覚えがあった。 ホアキンが残したファイルに入っていた写真……あの球体の中にヴィヴィオが入っているのが映っていたあの写真に……

 

「ヴィヴィオの写真に映っていた……!」

 

「この場所で撮られたものだったのね……」

 

「……………………」

 

「フフ……ようやく来たね」

 

聞き覚えのある声、だが口調と発せられる声色が、俺の知る人物の印象から遠ざける……そして、祭壇の影からホアキン先生が出て来た。

 

「ホアキン・ムルシエラゴ……」

 

「い、いつの間に……」

 

「……どうやらホンマに只者じゃあらへんようやな」

 

赤い瞳をしたホアキンは、D∵G教団をその身で表すような衣装を着ており。 そしてその表情はいつもの呑気そうなものではなく……冷酷で、狂気のような表情を浮かべている。

 

「ーーようこそ。 我らの起源にして聖地へ。 異界対策課の諸君、そしてその友人達……歓迎させてもらうよ」

 

ホアキンは祭壇を降りながら、俺達を歓迎したが。 こちらにはそんな気はさらさらなく、武器を構えてホアキンの前に出る。

 

「ホアキン先生……」

 

「……あなたは……」

 

「随分と余裕だね……」

 

「……………………」

 

すずか、アリサ、アリシアは彼に言いたいことがあるようだが。 一歩前に出て先に言わせてもらった。

 

「ーーホアキン・ムルシエラゴ。 単刀直入に行かせてもらう。 ネクターを投与して操っている人々を今すぐ解放しろ。 どんな方法かは分からないが……あなたが操っているのは判っている」

 

「ああ、別に構わないよ」

 

「え……」

 

やけにアッサリ、まるでいつものノリのように了承したため、思わず疑ってしまう。

 

「DBMビルでも言っただろう。 ーーヴィヴィオ様を引き渡せばいくらでも手を引こうと」

 

「! ふ、ふざけるな……ッ!」

 

一瞬でも気を許した自分が馬鹿だった。 今目の前にいるのが、ホアキンの本性なんだ。

 

「まだそんな世迷言を……!」

 

「あんた……喧嘩売っているの?」

 

「貴方の要求は受け入れられません」

 

「ふざけないで……貴方なんかにヴィヴィオは渡せない!」

 

「この後に及んで、まだそんな事を言えますね?」

 

「そうとう狂気じみてんなぁ……自分、何様のつもりや?」

 

皆の応答はDBMの時と同じ、なのは達も否定してホアキンを睨みつける。 ホアキンは飽きられたように首を振ってため息をつく。

 

「やれやれ……話にならないな。 そもそもヴィヴィオ様は我らが教団の崇める御子ーーそれを返せというのがどうして理不尽なんだい?」

 

「自分達が6年前、どんな事をやったと思っている! そんな連中にヴィヴィオを引き渡せるわけないだろうが!」

 

「それよりも……いい加減、ヴィヴィオは何のために生まれたのか教えなさい!」

 

「ヴィヴィオは人造生命体で、レンヤの……聖王のクローンなのは判っている。 でも、ヴィヴィオを使って何をするつもり⁉︎」

 

アリシアは憤怒の如き勢いで小太刀の剣先をホアキンに向けて問い詰めた。 母の研究が開くようされるのが我慢ならない……フェイトも同様に怒りに満ちた目で睨んでいる。

 

「クク……なるほど。 ーー君達はまだ、ヴィヴィオ様がそんな方法で生まれたと思っているのか」

 

「え……⁉︎」

 

「プロジェクトFではない……?」

 

「ど、どういう意味……!」

 

「フフ、いいだろう。 神威(しんい)に至らぬ者に話すのは禁じられているが……君達には特別に教えてあげよう」

 

真実を知りたいが故になのはは焦る。 ホアキンは背を向け、祭壇を見上げると話し始めた。

 

「つい一月前までヴィヴィオ様は眠っておられたーーこの祭壇の聖なる揺りかごでまどろむように……怪異の手によって生まれるまでは!」

 

「!!!」

 

「なっ……⁉︎」

 

「……ま、まさか……」

 

「てめえ……何デタラメを言ってんだ⁉︎」

 

検査でも人造生命体と出ている。 それが覆ることは……

 

「フフ、別にそんな驚く事もないだろう? 大多数のグリードは本能に従い行動するが……最上位のグリムグリードには意志がある。 我々は遥か昔からあるグリードを崇めていた。 そして神託によりある男から聖王の遺伝子を手に入れ……我らのグリードがヴィヴィオ様を誕生させたのだ!」

 

予想していた事実とは違い、ホアキンが言った真実に呆然してしまう。 それを気に留めずホアキンは続て語る。

 

「……数百年前、ロストロギアを研究していた錬金術師の集団がこの地にあった。 この祭壇は彼らの技術を元に造られたと伝えられている」

 

「……ここ数年の信仰と思っとたけど……まさか、星見の塔を建造した錬金術師達が……」

 

「そ、そんな繋がりがあっなんて……」

 

「ヴィヴィオ様の誕生後、我らのグリードは眠りに就き、現在は7つの本となっている……当然、この事実を知る者は我が教団にすら残っていない……つまりそういう事さ」

 

「……そんな……」

 

遥か昔……恐らく古代ベルカ時代から、この狂気が始まっていたのか。

 

「何てこと……」

 

「……いつかは、真実を伝えるとは思っていたけど……まさか……」

 

「ヴィヴィオちゃん……」

 

俺達が想像しているよりも遥かに、ヴィヴィオの出生は深刻だった。 いつかは……必ずヴィヴィオに話さなければならない現実だが……

 

「フフ……何を哀しむことがあるんだい? ヴィヴィオ様に同情など不要……なぜなら彼女はこれより、真の神になるのだからーー!」

 

「なっ……」

 

「か、神って……⁉︎」

 

「ハハハ、文字通りの意味さ! 君達はいい加減、真実に気付くべきなんだよ! グリードこそ我ら人類が崇めるべき存在! それ以外の信仰など意味もない!」

 

「しょ、正気……⁉︎」

 

「まだそんな世迷言を言うつもり!」

 

「クク、だがそれが我がD∵G教団の説く真理だ。 よく誤解されるのだが……我々は別に、悪魔という存在を崇拝しているわけではない。 ただ、神という概念を否定するために好都合だから概念的に利用しているにすぎない。 毒をもって毒を制す……つまりはそういう事だよ」

 

「ふ、ふざけないで……!」

 

声を荒げ、すずかがホアキンの言葉を否定する。

 

「だったらどうしてあんな酷いことを……あなたのせいで……多く子ども達が命を……それ以上の親が悲しんだのですよ⁉︎ 悪魔なんて崇拝していないのに……どうしてそんな……!」

 

「すずか……」

 

「……すずかちゃん……」

 

悲痛な顔をしてホアキンを訴えるすずか。 だがホアキンはどこ吹く風のように笑う。

 

「クク……月村 すずか……君に理解されようとは思っていないさ。 検体達は神威に至るための贄に過ぎないのさ」

 

「っ‼︎」

 

「すずか、落ち着きなさい。 まだ奴から聞くことはまだあるわ」

 

「……丁度いい。 改めてあなたの口から聞かせてもらおうか……各地のロッジで行っていた数々の非道な儀式の目的……それは恐らく、ネクターの完成も含まれているとは思うが……」

 

「なんだ分かっているじゃないか。 その通り、全てはネクターの完成度を高めるための実験だったのさ。 人が極限状態の時に示す想念の強さや潜在能力の開花……それがネクターの完成度を高める格好のデータだったわけだ」

 

「………!」

 

……別に、こんな悪魔も否定するような所業を行なっている研究者はホアキン以外にも五万といるが……改めて本人口から聞かされると腹が立って仕方がない……!

 

「ちなみに子どもが多かった理由は単にデータサンプルの精度の問題さ。 思春期を迎える前の幼く無垢な検体の方が色々とーー」

 

「……っ……」

 

「やめろ……!」

 

次々と出てくる事実にはやては顔を背け、はやての前に出て庇うように声を上げ、それ以上語らせるのを辞めさせる。

 

『いい加減にしろ! この人でなし‼︎ あたしのいた研究所より外道がいるなんて虫酸が走る!』

 

「……アギト」

 

アリシアが心配そうにアギトの名を呟く中……先ほどから考え込んでいたフェイトが一歩前に出る。

 

「……ーーホアキン・ムルシエラゴ。 察するに、あなたはそうした数々の実験を統括していた責任者だったようですね……?」

 

「フフ、その通りだ。 だからといって教団内の位階が高いわけではない。 そもそも我が教団は真なる神の元、平等のーー」

 

「あなた達の教義なんて正直、どうでもいい」

 

興奮した趣で語ろうとしたホアキンを、なのはの静かな一喝で止めさせた。 そして、なのはの表情はなにやら暗い感じがする……

 

「ーーそれより、だったら知っているはずです。 “楽園”と呼ばれていたロッジのことを……」

 

「! その名前は……⁉︎」

 

「あの黒いファイルにあった……」

 

どうしてなのはが今それを口にしたのかは分からないが、ホアキンは楽園という単語を聞くと少し驚きを出した。

 

「ほう……その存在を知っているのか? あれは教団の有力者がわざわざ作らせたロッジでね。 各地の有力者を取り込み、弱味を握って教団の手づるとする。 正直、僕が考えていた実験の趣旨からかけ離れてしまったロッジだったよ」

 

「……やっぱり……」

 

「……推測通りだったね……」

 

なのはとフェイトは何か知った素ぶりで、予想通りだった事に気を落としする。

 

「ちょ、ちょっと2人とも! もしかして楽園を知っていたの⁉︎」

 

「……2年前かな? フェイトちゃんと協力して次元犯罪者を捕まえた時、ある記録媒体を押収したんだ。 その中にあったファイル記録されていたのは……この世の物とは思えないくらいの地獄だったんだ……」

 

「ファイル名は楽園……当時は何にも分からず。 今になってようやく彼らの仕業だって気付いた……本当に、この事をレンヤ達に教えていればこんなことには……」

 

「なのは、フェイト……」

 

……なのはとフェイトが見た映像はどんなものなのか分からない……だが、そんな心境を悟らせないためにいつも健気に振舞っていたのか……そう思うと胸が締め付けられる感覚に陥るが、2人のおかげで気付いた事もある。

 

「なるほど……そういう事か……その楽園とやらに引き込んで議長の弱味を握ったんだな⁉︎」

 

「あ……!」

 

『そう繋がんのかよ……!』

 

「フフ、全てのロッジの実験結果に目を通していたからね。 6年前、実験の停止と同時に襲ってきた組織により殆どのロッジが失わされた後……丁度いい後ろ盾を手に入れることが出来たわけだ。フェノールなんていう、便利な手足のオマケ付きでね」

 

「やっぱりか……警備隊を操れているのもその辺りの関係だな……?」

 

「そういえば……」

 

「あ! あの栄養剤や!」

 

「恐らくね、多分議長から警備隊司令に回させたんだと思う。 何でもいいから説明を付けて、効果の高い栄養剤の名目で」

 

「まさしくその通り! クク、まさかこんなあっさりと信じるとは思わなかったが……」

 

「くっ……」

 

「ゲンヤさんの部隊以外の司令って……海や空に勝ちたいからって以前から焦っていたけど……」

 

「さすがに迂闊すぎるわよ……!」

 

しかし、この場にいない人物を罵倒しても意味はない。 今はゲンヤさん達に任せるしかない。

 

「ーー楽園に話を戻すが、あれは妙な終わり方をしたようだな。 どうやら例の襲撃と同様に、異篇卿とやらに潰されたようだが……やれやれ、何のつもりだったのやら」

 

「異篇卿……」

 

「聞いたことのない組織だね……」

 

「ああ、しかし楽園には一つだけ大きな心残りがあったな。 天才的な適応力を持つ、1人幼い検体がいたんだが……これがまた傑作でね! 周囲にいた別の検体の人格をネクター投与をきっかけに自分のものとして取り込んだのさ! いや、その実験データだけでもせめて回収できていればーー」

 

「ーーもういいです」

 

ピシャリと、なのははそれ以上何も言わせないように、静かに奥底から怒りの重圧を言い放った。

 

「知りたいことは全部判りました。 もう、それ以上話す必要はないです」

 

「……ごめん、レンヤ。 少し出しゃばっちゃっみたいだね」

 

「いや、おかげでこっちもかなり整理できた。 ーーこれで心置きなく、逮捕に踏み切れそうだ」

 

一歩前に踏み出し、徽章を取り出してホアキンに見せるように突き出す。

 

「ーーD∵G教団幹部司祭、ホアキン・ムルシエラゴ。 法に基づき、傷害、騒乱、不法占拠、薬物使用、虐待、拉致、怪異の使用など数多の容疑で逮捕する……!」

 

「略式ではあるけど、捜査令状、および逮捕状も既に出ているわ!」

 

「大人しくお縄に付いてもらうよ!」

 

「ーーフフ、いいだろう。 僕と君達のどちらが目的を達せられるのか……ここは1つ、賭けをしようじゃないか」

 

ホアキンは笑い声を上げながら手を頭上に掲げ、魔乖咒を身体から発せられ……髪が一瞬で真っ白になり、頭上の空間から魔乖咒が迸り、錫杖が出現し、それを掴んだ。 俺達は警戒しながら一歩下がり、武器を構える。

 

「その髪は……⁉︎」

 

「しかも、どうやらその杖はデバイスですらないね……」

 

「フフ、僕の髪はこちらの方が地の色でね……ネクターを投与し続けて少々風変わりな体質になったんだ。 何せここ数年、まったく睡眠を取っていないくらいだからねぇ」

 

『おいおい……シャレになってねぇぞ』

 

「なるほど……それで医療院勤めをしながらここまでする時間が取れたのか」

 

「フフ、さすがは捜査官。 いい所に気付くじゃないか」

 

ずっと寝ていないのなら、策を講じる時間はいくらでも作れるわけか。 それに、先ほどの水色の髪がネクター、投与により変色したものなら……同じ水色の髪をしたクレフも……

 

「ーーちなみにこの杖は例の錬金術師達が造り上げた魔導具の最高傑作の1つさ。 ロストロギアすら凌駕する力を秘めていてね……」

 

杖の力を証明するようにホアキンが魔法陣を展開し……奴の左右から凄まじい力を持った2体の翼を有した人形型のエルダーグリード……レグナ・アグエルが顕現した。

 

「こんなものまでの使役できるくらいさ……!」

 

「くっ……!」

 

「うっ……」

 

「……ここで、負けるわけには……!」

 

フェイトはバルディッシュを握る力を込める。

 

「さて、そろそろ幕切れとさせてもらうよ。 多分、今日という日は記念すべき1日になるだろう……ヴィヴィオ様が神となって我らが悲願を達せられる日にね!」

 

「ふざけた事を!」

 

「あなたなんかに……絶対に負けない……!」

 

刀を構え、俺達はホアキンとレグナ・アグエルに向かって駆け出した。

 

「偉大なるヴィヴィオ様のために……消えてもらおうか!」

 

ホアキンが杖を掲げ、奴の指示で2体のレグナ・アグエルは左右から焔を刃状に飛ばして来た。

 

葉杓(はのひしゃく)!」

 

刀を振るい、2つの焔の刃を受け流しながら絡め取り……跳ね返すように2体に撃ち出した。

 

《ザンバーフォーム》

 

「ホアキン!」

 

「フフ……」

 

杖の先端から魔乖咒で構成された闇色の刃が展開され。 振り下ろされた大剣を苦もなく受け止めた。

 

「っ……⁉︎」

 

「僕が非力だと思ったかい? ネクターを投与しているんだから……当然だよ!」

 

大剣が弾き返され、フェイトは大きく吹き飛ばしされる。

 

「はああああっ!」

 

「フハハハハッ!」

 

間髪入れずすずかが裂帛の声と共に怒涛の突きを繰り出し、ホアキンはそれを笑いながら全て避け、受け止める。

 

『なんて奴だ、ただの優男じゃなかったのかよ⁉︎』

 

「あいつに、常識なんて通用しないわね……」

 

「フハハハハ! その通り!」

 

ホアキンは杖を突き出し、先端から魔乖咒の弾丸を発射する。

 

「させない!」

 

《アクセルシューター》

 

「弾幕……シューート!」

 

撃たれた魔乖咒の弾丸を複数の魔力弾で相殺し、残りがホアキンに迫る。 魔力弾が当たる直前にすずかがホアキンから離れ…… いくつもの魔力弾が炸裂する。

 

「……フフ、フハハハハ! 痛いじゃないか!」

 

「やっぱりタフでもあるね……」

 

「これは、骨が折れるでえ……」

 

そう愚痴る中、はやての足元から熱が発せられて来た。 発生源を調べると……レグナ・アグエルが地面に炎を送っていた。

 

「! はやて、避けろ!」

 

「え……」

 

「全く!」

 

注意がホアキンに向いているのか、レグナ・アグエルの警戒が散漫したいたようで、はやてはすぐに理解できなかった。 すぐさまアリサがはやてに向かって飛び出し、タックル気味に押し退け……次の瞬間、その場から焔が放射され、アリサはそれに巻き込まれた。

 

「ア、アリサちゃん!」

 

「そんな……⁉︎」

 

「……ーーいや」

 

『フェアライズシーケンス、コンプリート』

 

炎の中から機械的なアギトの声が聞こえ……炎を剣で薙ぎ払い、現れたのはフェアライズを完了させ、紅い装甲を身に付けたアリサだった。

 

「無事だったか?」

 

「ええ、アギトが居てくれたおかげよ」

 

『烈火の剣精が炎に負けてたまるかよ!』

 

「ーーアリシア、敵の撹乱を!」

 

「了解!」

 

《スレットマイン》

 

アリサの指示でアリシアが敵正面に向けて広範囲に四角い魔力弾をばら撒き……小規模な爆発と目くらましが連鎖して起き、奴らの視界を塞いだ。 そしてアリサは剣に焔を纏わせ、片方のレグナ・アグエルに接近した。

 

『リミットアタック、バーニングストライク!』

 

「燃えろ!」

 

『やややややややっ!』

 

レグナ・アグエルを超える焔で何度も切り刻む。 最後に左手の拳を握り焔を纏わせ……

 

「ーー吹っ飛べ!」

 

燃え盛る拳を胴体に叩き込み、正面に向かって爆発させ。 レグナ・アグエルは消滅した。

 

《ファースト、セカンドギア……ドライブ》

 

「はあっ! 白檀(びゃくだん)!」

 

歯車を駆動させながらもう1体の力を溜めていたレグナ・アグエルに接近し、両腕を切り払って上空に蹴り上げ。

 

「まだまだ! 黒檀(こくたん)!」

 

追撃。 跳躍してレグナ・アグエルを追い抜く間際に斬り、空中を蹴って何度も繰り返す。

 

「はあああ……灰檀(かいだん)!」

 

身体を捻り、勢いを付けて頭上に踵落としを喰らわせ。 地面に叩きつけ……

 

「これで終わり! 栴檀(せんだん)!」

 

刀を地面に向けながら急降下、レグナ・アグエルの胴体を貫いた。 落下時の衝撃が刀から爆発的に広がり、レグナ・アグエルを消滅した。

 

「やるねえ……だがこれまでだ!」

 

ホアキンは両手で杖を握り、足元に魔乖咒によって描かれた魔法陣が展開される。

 

「ハハハ……真の起源を見せてあげるよ」

 

「なにを……」

 

「! あれは……⁉︎」

 

アリシアが上に何かあるのに気付き、同様に上を向くと……そこにはどの体系にも当てはまらない魔法陣……巨大な魔乖咒の魔法陣が展開されていた。

 

「来たれ……災厄の宝珠!」

 

魔法陣に紫電が走り……突如、魔法陣と同等の大きさの球の形をした物体が出てきた。 球無機物の物体と言うより、丸い生き物のような有機物特有の感じがするが……本能的に受け付けない外見をしている。

 

「うわっ……」

 

「これまたけったいなもんが来おったなあ……」

 

「気を付けて皆……

 

ホアキンは掲げていた杖を振り……

 

「カラミティスフィア! フフフフ……ハァーハッハッハッハッハ‼︎」

 

宝珠にあった紅い部分から魔乖咒の砲撃が発射された。 砲撃は細く鋭利な形をしている……それに、砲撃は全員を捉えている。 このままだと全滅は免れない……

 

「なのはちゃん!」

 

「はやてちゃん!」

 

2人が同時に宝珠に向かって飛び上がり、協力して巨大な障壁を展開した。

 

「ぐううっ……」

 

「な、なんて力……!」

 

展開とほぼ同時に砲撃が障壁に突き刺さり、2人は苦痛の表情をして耐える。 しかしいくら2人の防御が強固であろうと、このままだと押されるのは時間の問題だ……

 

「どうしたら……」

 

『アレを先に壊すしかねえな』

 

「……あんな巨大な物体、今の状態じゃあすぐには破壊出来ないわ……」

 

先ほどのリミットアタックが身体に来ているのか、アリサは悔しそうな表情を浮かべる。 代わりに俺が破壊しようと柄に手を掛けようとした時……

 

「無駄だよ! あの宝珠はかなりの硬度を持っていてねえ。 特に斬撃には耐性があって、破壊するの至難の業……諦めるといいよ!」

 

「くっ……」

 

遠距離から壊そうと考えていたが……近付けば砲撃の餌食。 かと言っても遠距離だと砲撃魔法で壊すしかないが……

 

(ここ最近砲撃魔法使って無いし……)

 

全く使えなくなったわけではないが……ここ最近、どうにも俺は砲撃魔法とは相性が良くなかったのが分かった。 だからといって、訓練を疎かにする理由にはならないが……

 

(単発、圧縮した魔力弾による射撃魔法……それしかない!)

 

レゾナンスアークに中型機関銃を1丁展開してもらい。 カートリッジを装填、1発の魔力弾を銃内に形成する。

 

「レ、レンヤ君……?」

 

「……俺が破壊する。 それまで耐えてくれ」

 

「りょ、了解や……!」

 

「ちょ、ちょっとレンヤ……! あんた、砲撃魔法と相性が良くないんじゃ……!」

 

「今はとやかく言っている暇はない。 アリシア、宝珠破壊と同時にホアキンを」

 

「了解。 ちゃんと破壊してよね」

 

責任重大、だがこんなプレッシャーはいつも通り。 宝珠を睨みながら銃に魔力を込め続ける。 その時ーー

 

【ーーー撃ち破りなさい!】

 

「!」

 

当然頭に聞こえた女性の声。 知り合いの女性の声でない……が、聞いた事のある、無茶振りを言っているがどこか安心するような声。

 

「ああ……そうだね。 夢とはいえ、あなたはそんな人だった……」

 

「?」

 

「レンヤ?」

 

『何言ってんだ?』

 

皆が怪訝に思う中、俺は後方に向かって駆け出した。

 

「レン君⁉︎」

 

「レンヤ! 危ないよ!」

 

なのはとはやての防御内から出たため、砲撃がこっちに向き。 貫くような砲撃が降り注いで来た。

 

「逆境を……」

 

砲撃を回避しながら振り返り、同時に銃を両手で構え銃口を宝珠に向け……

 

「撃ち破れ!」

 

《ドライブバレット》

 

トリガーを引き、銃口から放たれた球体状の魔力弾。 高速に縦に回転している魔力弾は宝珠の中心を狙って飛来。 魔力弾が宝珠に撃ち抜き、宝珠からの砲撃が止まった。

 

「なに⁉︎」

 

「アリシア!」

 

「ほい来た!」

 

宝珠が破られた事に驚愕するホアキン。 アリシアはその隙を見逃さず、駆け出す。 小太刀を構えて刀身に魔力を纏わせ、3段階加速し、加速しながら3人に分身した。

 

《カタストロフィドライブ》

 

『せいやっ!』

 

「ぐうっ……ああああっ‼︎」

 

3人のアリシアはホアキンに向かって三方向から接近。 分身2人が左右から交差するように小太刀を振り抜き。 最後に本体のアリシアが中央に向かって小太刀を振り下ろし……3つの斬撃が交差、地面に*を描き、魔力エネルギーが飽和し……爆発した。 その中心点にいたホアキンは吹き飛ばされ、祭壇の壁に激突し膝をついた。

 

「……よし……!」

 

「賭けは私達の勝ちだね!」

 

「大人しく投降してもらうわよ……!」

 

膝をついて顔を俯かせているホアキンはクツクツと笑い出した。

 

「クク……やれやれ。 ……1つ教えてあげよう……知っての通りネクターの効能は単純な身体能力の強化などではない……感応力の強化、引いては服用者の潜在能力を引き出すものだが……その使い方を極めれば……こんな事もできるのさ……!」

 

ホアキンは立ち上がるのと同時に魔法陣を展開し……頭上に一瞬目玉が現れ、赤い涙を流しながら開眼。 魔乖咒が発せられると、俺達は一瞬で結界に囚われ、圧力がかかり膝をついてしまう。

 

「な……⁉︎」

 

「な、なんなのコレは⁉︎」

 

「く、空間が……呪縛されている……⁉︎」

 

「うっ……く……」

 

「い、一体何が……」

 

「! これ、夕闇の使徒が使っておった……⁉︎」

 

はやてがそれを言ったおかげで思い出した……これは夕闇の使徒に封じられていた時に使用された結界!

 

「レンヤ君を含めたそちらの3人は面白い体験をしていたようだね。 杜宮市、ネメシス、ゾディアック……それに、夕闇の使徒か……」

 

「! まさか……私達の記憶を⁉︎」

 

「まさか……そこから再現したんか⁉︎」

 

「おや、空白(イグニド)に真紅とも会っていましたか。 それに黄金も……何故我らを手助けしたのか……やはり異篇卿は何を考えているのか判りませんね」

 

何? マハはホアキンに頼まれて妨害していたわけではないだと? だったらどうして……だが、記憶を奴に見られているのは、どうやら事実のようだ。

 

「クク……賭けは僕の勝ちだ。 ーーさっそく君達にはネクターを飲んでもらうよ? そうすれば君達は僕の思うがまま……ヴィヴィオ様も納得してお戻りになってくれるだろう」

 

『! てめえ……!』

 

「それが狙いで私達をここまで……⁉︎」

 

「クク、君達のような愚物にどうしてわざわざ面会の時間を割いたと思っている? 全てはヴィヴィオ様のため……それ以外の理由がどこにあるといんうだい⁉︎」

 

「……あ、あなたは……」

 

「ふ、ふざけないで……!」

 

こんな状況だが……いや、だからこそ聞いておきたい事があり。 俺は顔を上げて質問をしてみる。

 

「……そこまでの力を手に入れておきながら……その上、ヴィヴィオに拘る理由が一体どこにあるんだ……?」

 

「ほう……?」

 

「あの子の出生が複雑だったとしても……あくまで普通の女の子であるのは変わらないんじゃないのか……? それだけの力を手に入れておきながらどうしてヴィヴィオに拘る……?」

 

繰り返すように、質問し。 ホアキンに答えさせるようにするが……結構お喋りな彼なら意味はないかもしれないが……

 

「た、確かに……」

 

「根本的な問題だね……」

 

「クク、言っただろう。 彼女は神となる御方……ヴィヴィオ様の前には、この力など比較するのもおこがましいだろう。 いや、クク……そもそも比較すること自体、意味の無いとも言えるのかな……?」

 

「またワケの判らないことを……」

 

「狂っている……」

 

「まあいい……この際だから聞いておく。 ーーどうしてヴィヴィオは競売会の場にいたんだ?」

 

「…………………」

 

空気を読まない質問だとは思っているが……ホアキンのお喋りな口は開かなかった。

 

「確かにそれも……まだ判っていないわね……」

 

「マフィアの方でも……心当たりは無かったそうだけど……」

 

「……続けて聞くぞ。 俺の両親を……シャオ・ハーディンとアルフィン・ゼーゲブレヒトは知っているか……?」

 

「! ああ、そうだったね!」

 

俺に質問で今思い出したかのような素振りを見せ、俺をジッと見つめる。 こんな質問をしたのにはもちろん理由がある。 あの2人は夕闇の使徒の時と同様になぜか巨大な事件と関わっている節がある。 どうやら予想は外れてはいなかったようだ。

 

「なるほど……赤ん坊の時に捨てられ……以来一度も会っていない……ミッドチルダと関わってから両親の逸話は耳にするが発見の糸口にもなっていないか……ははーーこれは傑作だ!」

 

記憶を見られ、自分の思い出が汚されたようで怒りがふつふつと湧いてくるが……なんとか寸でのところで抑え込む。

 

「そういえば君はあの厄介な奴らの息子だったな……!」

 

「……それは肯定の言葉と受け取ってもいいのか?」

 

「フフ、確かに当時、彼らは僕の存在を追っていた。 厄介だから秘密裏に聖王教会に彼らの存在の情報を流してながら、フェノールに頼んで抹殺するよう依頼したんだが……どうやら別の勢力が彼らを追い払ってくれたみたいだな。 カクラフはさも自分達の手柄のように僕に恩を着せてきたが……ゼアドールの方は否定していたからその可能性は無いだろう」

 

「なるほど……だろうと思ったよ。 ーーあなたみたいな男に、両親が負けるわけがない」

 

「‼︎」

 

挑発的な物言いに、ホアキンは眉を吊り上げる。

 

「ほう……面白い事を言うじゃないか」

 

「ヴィヴィオが競売会の場にいた経緯……多分それも、あなたにとっては想定外の出来事だったはずだ……自分から神と崇める存在を手放すわけがないからな……」

 

「……確かに……」

 

「手放す理由がないね……」

 

「……くっ………」

 

図星だったのか、ホアキンは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「……確かにあの日……ヴィヴィオ様は永き眠りからようやくお目覚めになった……だが、僕がそれを知った時にはこの祭壇から居なくなっていた………おそらくご自分で地上を彷徨い出たと思ったが……」

 

「そして偶然、出品予定だった人形のトランクに入り込んだ……? 馬鹿げている。 そんな事がありえる訳がない。 空白から聞いた情報もある。 つまりーー今回の事件に関しては黒幕であるあなたも知らないことが少なくないという事だろう」

 

「ぐっ……」

 

『はは……いい気味だ!』

 

「やめなさいアギト、品がないわ……」

 

「でも、レンヤ君、凄い……!」

 

「うう、同じ捜査官なのに……レンヤ君に敵わんなぁ……」

 

はやてはなぜか落ち込んでいるが……そこは放っておき。 ホアキンは先ほどの事実をぬぐい払うように首を左右に振ってから口を開いた。

 

「だ、だからどうした! ヴィヴィオ様がお戻りになればそのような粗末な疑問はーー」

 

真なら生命(ネクター)? 冗談も大概にしたらどうだ……? あなたが今していることは、誰かの記憶を盗み見て、誰かの力を真似しただけだろう……あなたが非道な実験を元にして完成させた薬も同じ……罪のない子ども達を弄んで愚かな試行錯誤を繰り返した挙句、偶然見つけた結果でしかない……そんなものは、決して“生命”であるはずがない……!」

 

「き、貴様……」

 

「確かに“生命”というには下劣すぎるたわね……」

 

「……意地が悪い、って言ってもいいと思うよ」

 

「……所詮、あなたは偶像にすがりついている哀れな人だったんですね……」

 

「そやな、同感や」

 

アリサ達の言葉に、ホアキンは動揺しさらに顔を歪める……そして、刀を強く握り締め、足に力を入れて大地を踏みしめる。

 

「……そして今もなお……あなたはその下らない幻想をヴィヴィオに押し付けようとしている。 あの陽だまりのように明るい、無邪気で天真爛漫で……そして思いやりもある俺達の大切なあの子に……!」

 

蒼い魔力が身体から漏れ出し……

 

「ーーそんな馬鹿げた事をさせてたまるか‼︎」

 

魔力を爆発的に放出しながら声を轟かせながら立ち上がり、結界を破壊した。

 

「ば、馬鹿な……」

 

「あ……」

 

「身体が動く……!」

 

「呪縛が解けた……⁉︎」

 

「そうだ……所詮、夕闇の使徒の真似をしていただけのもの……動揺すれば保てない程度の不完全なものだったんだ……!」

 

「レンヤ君の気合いがブチ破ったちゅうわけや……!」

 

『やるじゃねえか!』

 

身体中に魔力が行き渡るを感じ、力を込めながら刀の剣先をホアキンに向ける。

 

「ーーホアキン・ムルシエラゴ。 あなたの器はもう見切った。 この上、何をしようとも俺達は絶対に屈しない。 大人しく投降してもらおう」

 

ホアキンはさらに動揺を露わにし、杖を落としながら後退していく。

 

「ハハ……参ったな……これじゃあ……しか……じゃないか……」

 

「……?」

 

「何をブツブツ言っているの⁉︎」

 

痺れを切らしたアリシアが叫んだと同時に、ホアキンは俯かせていた顔を上げた。 その表情は狂気に満ちている。

 

「ヒハハ……! これじゃあ切り札を使うしか無くなったじゃないか‼︎」

 

狂ったように笑い、懐から小瓶を取り出した。

 

「な……⁉︎」

 

「そ、それは……」

 

「まさか……」

 

小瓶の中にはネクターと同じ形状をしたタブレットが多数あった。 ただし、その色は翠ではなく……血のように紅い色をしている。

 

「クク……教えてあげよう。 これぞ完成したネクターの最終形とも呼べるもの……君達が手に入れたものが“翠の生命”と言うならば……さしずめこれは“紅の生命”と言ったところかな……?」

 

「も、もしかして……」

 

「エリンやマフィア達を怪異に変えた……⁉︎」

 

「魔乖咒もそれで……!」

 

「はははーーその通り!」

 

言うや否やホアキンは小瓶の蓋を投げ捨て……自殺するかのように紅いネクターを一気に飲んだ。

 

「しまった……!」

 

「あんな大量に服用したら……!」

 

『な、何が起こんだ……?』

 

ホアキンの身体の内側から鼓動する心臓の脈動が目に見えて、身体全体が振動する。 何が起こっているのかは定かでないが……どう見てもマズイ事が起きている

 

「中毒症状が……⁉︎」

 

「と、とにかく急いで吐かせんと……!」

 

「早くしないと命に関わる!」

 

「視える……視えるぞ……!」

 

すずか達の心配とは裏腹に、幻聴を見ているかのようにホアキンは呟く。

 

「……大いなるD………失われた力の源が……!

ヒャハハハハハハハハハ!」

 

今まで以上に狂ったように笑い、身体からとんでもない量の魔乖咒が溢れ……ホアキンの額から角が生えてきた。 目に見えるように身体が膨張、変異していく。 巨大化してくホアキンに地面が耐えきれずヒビ割れ、魔乖咒が全体に放れる。

 

「っ……!」

 

「きゃっ⁉︎」

 

「な、何が起こっているの⁉︎」

 

目を覆い、魔乖咒に耐え。 目から腕を離すと……そこには下半身が地面に埋まり、上半身だけが地上に出ている程巨大な人形のグリードがそこにいた。

 

「なっ……⁉︎」

 

「……こ、これは……」

 

「うっ……なんて霊圧……⁉︎」

 

「じょ、冗談だよね……?」

 

『マジかよ……』

 

「ば、馬鹿げとる……これはもうあかんよ……」

 

「フェ、フェイトちゃん……これって……」

 

「うん……夕闇と同等……ううん、もしかしたらそれ以上……⁉︎」

 

フェイトは大袈裟そうに言うが……どうやら冗談抜きの比喩抜きでマジっぽいな。

 

『アア……ココチヨイ……今コソ我ハ……総テノ真実ヘト至ッタ……世界ノ在リ方………ソノ秘メラレタ意図モ……』

 

「っ……気を確かに持て! そんなものはまやかしだ! “真実”というのはそう単純に掴めるものじゃない……!」

 

『クク……ソレハ単二人身ノノ限界……我ニハ総テガ視エルノダ……ゔぃゔぃお様ノ失踪ノカラクリ……ソシテ貴様ノ両親ガ消エタ真相モ……コレカラみっどちるだ二起コル災厄モ………ソシテ、大地ノ法ノ塔ハ虚シク焼ケ落チルダロウ』

 

「くっ……」

 

「出まかせを……!」

 

「! ……カリムの予言とも……一致しとる……⁉︎ まさかホンマに……⁉︎」

 

「はやてちゃん……?」

 

『モハヤ貴様ラヲ生カシテオク意味モ無クナッタ……至レヌ身ノ不運ヲ嘆キナガラココデ果テルガヨイ……」

 

黄色一色だけとなった眼で俺達を見下ろし、膨大な魔乖咒を発しながら銀の巨体を軋ませる。

 

「……エリンさんの怪異化とは格が違うみたいだね……」

 

「うん、さすがにちょっとばかり戦力差があるかも……」

 

「でも、どうやら避けられる戦いでは無いみたいね……」

 

『ま、最初から逃げる気はさらさらないがな』

 

「ああ……覚悟を決めよう。 ーーアリサ、アリシア、すずか、アギト。 それに、なのはにフェイトにはやて」

 

皆の名を呼び、刀よ剣先を魔人となったホアキン向けて叫ぶ。

 

「これが最後の戦いだーー皆、必ず倒すぞ‼︎」

 

『おおっ!』

 

ミッドチルダのため、そして……ヴィヴィオの未来のため。 今日最後の戦いが始まった。


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