魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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135話

 

 

同日、00:30ーー

 

俺達はフェイト達と合流した後……負傷しているシェルティスを安全圏に起き。 グランツェーレ平原、その中心地にある太陽の砦前の入り口に向かった。

 

「グランツェーレ平原……まさかここが……」

 

「教団が潜む拠点(ロッジ)だったなんて……」

 

「来おったな……!」

 

前方にあった開かれている石扉からなのはとはやてが出てきた。

 

「なのは、はやて!」

 

「お疲れ様、大変だったでしょう?」

 

「皆こそ……大変だったみたいだね。 詳しい話はさっき通信でテオ教官から聞いたよ」

 

「2人はどうやってここに? 地上からでもかなり難しかったのに……」

 

「レンヤ君が母艦を停止させた時の混乱に乗じてここまで来たんだ」

 

「それで、さっきやっとそこの入口を開けたばかりなんよ」

 

「あ……閉じていた扉が……」

 

以前、ここに来た時は記念祭が行われている時に人探しをしに来ただけだったので、気にしながらも放置していた。 だがこの短時間で仕掛けを探し出して開けるとは……

 

「変な仕掛けがあって開くのに手間取ってしもうたんよ。 せやけどこれで、連中の拠点に潜入することは出来るで」

 

「……本当に助かったよ。 俺達はこのまま、首謀者を逮捕しに行くけど……なのは達はどうする?」

 

「もちろん、手伝わせてもらうよ! そのためにここで待ってたし」

 

「失踪者も救出する必要もあるんやし、助太刀させてもらうで」

 

「……ありがとう。 2人が入れば百人力だ」

 

改めて太陽の砦を見上げる。 表面上は中世くらいの古い建造物だが、奥から微かに出ている異様な空気が異常の度合いを上げる。

 

「早く捕まえて、問い質さないとね。 なんで、あんな実験をしたのか……どうしてネクターを完成させたのか……そしてヴィヴィオに何をさせるつもりだったのか……」

 

「そうね……」

 

「締め上げることは結局確定みたいだね」

 

「ああ……確実に逮捕しよう。 操られた管理局員を解放して、ヴィヴィオの安全を確保するためにも」

 

「……行くんだね」

 

後方からヴァイスさんに肩を貸してもらいながら、シェルティスがヨロヨロと歩いて来た。

 

「シェルティス……!」

 

「止血したばかりなんだからあんまり動かないで……!」

 

「はは、さすがにこの怪我で付いていくつもりはないよ……」

 

シェルティスは安静にするために近場の壁に寄りかかった。

 

「……だからせめて、見送るくらいはさせてもらうよ。 不甲斐ないけど、僕はここで戦線離脱するしかないよ」

 

「シェルティスの事は俺に任せておけ。 お前達はさっさとこの馬鹿騒ぎを止めてこい」

 

「はい!」

 

俺達は太陽の砦に向かって走り出し。 中に入り、正面広場で1度確認のために止まった。

 

「どうだ……アリシア?」

 

この感じは身に覚えあるが、一応念のためアリシアに確認を取った。

 

「…………悪い予感が的中だね。 異界の力が働いているよ。 塔や僧院と同じだね」

 

「そう、やっぱり……どうやらこの先は一筋縄では行かないみたいね」

 

「グリードも徘徊しているはず、気を引き締めて行こう」

 

「それにしても……まさか、ミッドチルダの各所にグリードが出る場所こんなにもあったなんて……」

 

「基本、心霊スポットとしか見られていないから、放置しがちだったからね……」

 

「せやな……それにここのグリードはかなり強いみたいやで。 万全の体制で臨まなぁあかんなあ」

 

「そうだな……分かった」

 

そして、この最奥にこの事件の元凶……ホアキン先生がいる。 気を引き締め、少し前に出て身を翻し、皆の方を向く。

 

「当然、敵による待ち伏せもあるはずだ……皆、気を引き締めて行こう!」

 

『おおっ!』

 

探索を開始し、すぐ正面に鉄製の扉があったので……無理やりこじ開け先に進むと、謁見の間らしき場所に出た。

 

「ここは……」

 

「どうやらこの砦の城主の間みたいだけど……」

 

「あ……!」

 

フェイトは何かに気付き、思わず声を上げた。 視線の先にあったのは王の座る玉座……その上にある壁画、そこにはある紋章があった。

 

「あれは……!」

 

「僧院の礼拝堂の奥にあった紋章と同じ……!」

 

つまり、ここも含めて月の僧院と恐らく星見の塔は、昔D∵G教団が使用していた施設になるわけだ。

 

「これって……D∵G教団の紋章だよね? 見せてもらった資料とは細部が違うみたいだけど……」

 

「確かにそうだね。 本来なら確か翼が付いていたはずだけど……」

 

「多分、こっちのは簡略化された教団の紋章なんやろ。 もしかすると、現在の紋章の原型(オリジナル)になったものかもしれへん」

 

「それがこの場所にあるという事は……」

 

「………教団のルーツはこのミッドチルダに異界が認知される前よりも……おそらく聖霊教会に聖王教会が接触した時期辺り……30年前からだろう。 そして、この場所が発祥の場所かもしれないってことか」

 

「そして、6年前まではその時の有力者を取り込んで勢力を拡大したかもしれんなあ」

 

「なんてこと……」

 

その事実にすずかは思わず顔に手を当てる。

 

「いずれきちんと歴史を紐解く必要がありそうだな……」

 

「無限書庫やココブックスに何かあるかもしれへんな……」

 

「! 気をつけて……何か来る!」

 

次の瞬間、目の前の地面が紫色に光り出し……目玉を模した魔法陣が現れる。 そしてそこから浮かび上がってきたのは、僧院で出たのと似たグリードだった。

 

「出たな……」

 

「僧院で出たのと同種……!」

 

「やっぱりこの一帯が完全に異界化している……!」

 

「とにかく倒すよ!」

 

異形のグリード……アカ・マナフは巨体を揺らしながら襲いかかってきた。

 

「止めるよ、レイジングハート!」

 

《バイディングシールド》

 

アカ・マナフの振り下ろされた爪をシールドで防いだと同時に拘束、動きを封じた。

 

「今だよ!」

 

「焔よ、ロードカートリッジ!」

 

《エクスプロージョン》

 

「凍てつけ、ファースト、セカンドギア、ファイア!」

 

《ドライブイグニッション》

 

アリサはカートリッジをロードして刀身に焔を纏わせ、すずかはギアを2つ駆動させて刃に氷を付与させる。

 

「はあああっ!」

 

「やっ!」

 

2人は左右から接近し、アカ・マナフは焔と氷の乱舞を受ける。 アカ・マナフはそのままやられるわけもなく、空いている片手でチェーンを砕き、そして乱雑に両腕を振り回して2人を引き離した。 そして異常な速度で回復し、今までの傷を一瞬で直し、魔法を発動するため詠唱を始めた。

 

「させるか! 桐雨(きりさめ)!」

 

詠唱を止めるため、5つの斬りと7つの突きを一呼吸で行い。 アカ・マナフの詠唱を止めた。

 

「貫け!」

 

《ライトニングスピア》

 

詠唱をキャンセルされ、怯んだ隙に……フェイトの周りにスフィアが展開し、雷の鎗がアカ・マナフの四肢を貫いた。

 

「万海灼き祓え! シュルシャガナ!」

 

夜天の書が開き、はやての周りに炎が現れ複数の剣を形成し、アカ・マナフを焼き切り裂いた。 アカ・マナフを倒すと、それを鍵だったかのように教団の紋章が描かれた壁が沈んで行き……奥へと続く通路が現れた。

 

「これって……」

 

「……どうやらこの先が真の意味での拠点(ロッジ)みたいやな」

 

「ああ……入ってみよう」

 

通路を歩き、すぐあった階段を登り、そこにあったのは……

 

「ここは……⁉︎」

 

大きな縦穴……内壁には下に続く通路がある。 問題はその下、紫色の濃いモヤが目に見えて漂っていた。

 

「凄い……」

 

「地の底に続く縦穴……なんて大きさ」

 

「……塔、僧院、そしてこの砦の作られた年代は数百年前と言われているけど……」

 

「ここからの目測だと深さ500mくらいだね。 ふう……骨が折れる深さだよ」

 

あまりの光景に言葉を失うが、D∵G教団が関わっていると思うと建設された理由はロクでもないと思う。 その考えを答えるように、アリシアは思った事を口にした。

 

「……多分、この縦穴は煉獄に続く黄泉路を見立てて建設されたと思う。 怪異に近づいて、利用するため……そしてあいつらが供物を捧げる儀式を執り行うために」

 

「……最低の連中ね」

 

「許せない……そんな下らない事のために、子ども達を……!」

 

「ーーだったら、俺達の仕事はただ一つだけだ。 俺達の道を作ってくれた人達のためにも。 そして、俺達の帰りを待っているヴィヴィオのためにも……この辛気臭い幻想を叩き壊して、陽の光の下に引きずり出してやる! もう誰1人として、辛くて悲しい思いをしなくても済むように……!」

 

胸に燻っていた熱を言葉として吐き出し、拳を固く握り締めた。

 

「あはは、レンヤって妙な所で熱くなるけど……今回ばかりは乗らせてもらうよ」

 

「ふふ、私も乗ったわ。 敵は、全てを陰から操っていた得体の知れない蜘蛛のような存在……でも、私達なら必ず届くはずよ」

 

「うん……この戦い、絶妙に負けられない! ヴィヴィオちゃんのためにも……私自身のためにも……!」

 

アリシア、アリサ、すずかも同じ気持ちのようで。 苦笑しながらも賛同してくれた。 なのは、フェイト、はやても頷いてくれた。

 

「私達も力を貸すよ!」

 

「全力で皆を支援するから!」

 

「その大船、乗らせてもらうで!」

 

「よし……それじゃあ行こうか」

 

皆の正面に立ち、作戦行動開始の前置きを言った。

 

「時空管理局・異界対策課所属、神崎 蓮也三等陸佐以下4名ーー」

 

「同じく、戦技教導隊所属、高町 なのは二等空尉ーー」

 

「同じく、本局所属、フェイト・テスタロッサ執務官ーー」

 

「同じく、捜査部所属、八神 はやて三等陸佐ーー」

 

「ーーこれより事件解決のため、強制潜入捜査を開始する……!」

 

今更強制潜入捜査もなにもないと思うが、D∵G教団がこの太陽の砦の不法占拠しているし、問題ないだろう。 奴らの影響か、変異しているグリードを倒しながら下に降りるように進み、第二層に差し掛かった。 少し進むと、床や外壁に人工的な舗装がされており。 明らかに現代の人の手が加えられている。

 

「この辺りは近代的な設備が入っているわね……」

 

「もしかしてホアキン先生が改装させたのかな?」

 

「……多分そうだろう。 ネクターを完成させるための研究設備かもしれない」

 

「なるほど……医療院にその設備が無かった以上、可能性は高いかもしれへんなーー」

 

ふと、先の通路から人の気配がしてきた。 だがなんだ……2人いるが、両者共に気配が安定していない?

 

「……っ……!」

 

「誰か来るよ!」

 

奥から出てきたのはフェノールの構成員だ。 だが様子が変で、目の焦点が合ってなく、フラフラしている。

 

「あんた達……」

 

「こんな所にまでいるなんてね。

 

「あなた達! 大人しく投降しなさい! いくら薬で強くなっても、この人数を相手にーー」

 

「ま、待って!」

 

アリシアは手を横に出して止まるようにし、相手を観察するように見つめる。

 

「様子が……おかしい……」

 

「えっ……」

 

「……ァァアアア……」

 

「……ギギギギギ……」

 

突如、構成員2人が苦しみ悶えながらオーラを放ち始めた。

 

「な、なんなの……⁉︎」

 

「こ、これは……」

 

次の瞬間、2人は轟くような咆哮を上げながら一瞬でグリードと化した。

 

「えええっ……⁉︎」

 

肉体変異(メタモルフォーゼ)……⁉︎」

 

「ううん、どちらかといえば怪異化(デモナイズ)に近い……!」

 

「だが、迷っている暇はない……!」

 

「とにかくブチのめすわよ!」

 

変わり果てた2人の構成員……デモニクスが襲いかかってきた。

 

「くっ……」

 

「う……!」

 

突然の事でフェイトとはやては対応できず、振り下ろされた爪を怯みながらプロテクションで防いだ。

 

「しっかりしなさい! とにかく制圧するわよ!」

 

「元に戻すのはそれからだ!」

 

アギトが2体に火球を撃ち込み、フェイトとはやてから離れさせた。

 

抜楸(ぬきひさぎ)!」

 

接近して抜刀。 振り抜かず1体に柄頭をぶつけ、続けてもう1体を斬り裂いた。

 

「レン君! 離れて!」

 

《ショートバスター》

 

「シューート!」

 

背後から発射された砲撃を避け、砲撃は片方のデモニクスに直撃し、吹き飛んだ。

 

「行くよ、

 

《エクスコンビネーション》

 

「それっ!」

 

両手の小太刀をブーメランのように投げ、片方のデモニクスを考察するように斬りつけた後、すぐさま2丁拳銃で撃ちまくり……先ほど投げた小太刀が戻ってきてまた斬りつけアリシアの元に戻り、掴んだと同時に構え……

 

「まだまだ、続けるよ!」

 

デモニクスの眼前に近付き、何度も斬り裂く。

 

「これで……終わり!」

 

最後に突きを繰り出しながら通過し、一瞬で拳銃に持ち替えてデモニクスを撃ち抜いた。

 

《チェーンフォルム》

 

「はあっ!」

 

アリサはフレイムアイズをチェーンフォルムに変形、そしねチェーンを構えて螺旋を描くように投げ、デモニクスを完全に拘束した。

 

「フェイト!」

 

「りょ、了解!」

 

《プラズマスマッシャー》

 

環状魔法陣が複数生成し、接近して空いている左手で殴り。 ゼロ距離で発射し、もう1体吹き飛ばし、衝撃で煙が舞う。 煙が晴れると……2体のデモニクスは苦しむように唸り、体からオーラが霧散すると……残ったのは完全に気絶した先ほどの構成員2人だった。

 

「こ、これって……」

 

「悪夢でも見ているみたいだよ……」

 

「怪異化……まさかそんな現象が現実に起こるなんてな思いもよらんかった……」

 

制圧を確認し、膝をついてマフィア達の状態を確認する。

 

「ーー気絶している。 かなり衰弱しているけど、命に別状はないよ」

 

「ほっ……良かった」

 

なのはは命に別状がないのが分かると、ホッとする。

 

「恐らくこれもネクターの力……ううん、魔乖咒に辿り着けず、力を暴走させた時に起こる現象……」

 

「精神の変容が肉体に作用したのかもしれないな」

 

「そんな……出鱈目過ぎるよ。 いくらフェノールでも、こんな目に遭わせるなんて……」

 

「ホアキン、絶対に許せない……!」

 

「ああ……」

 

ホアキン先生の所業に、フェイトは怒りをあらわにする。 立ち上がり、辺りを見回す。 どうやらこの層には何かありそうだな。

 

「ーーとりあえず、この一帯を調べてみよう。 教団に関する情報が手に入るかもしれない」

 

「ええ……!」

 

「了解や……!」

 

先に進み、曲がり角の突き当たりにロックされた隔壁があった。

 

「これは……」

 

「ロックが3つ……この先に何かありそうね」

 

「うーん、この隔壁の材質は対魔力素材で出来ているね。 力づくで壊すのは無理だね」

 

隔壁をコンコンと叩かながらアリシアはやれやれと首を振る。

 

「この辺りにロックを解除するための端末があるはず、まずはそこを探してみよう?」

 

「そやな、その方がええ」

 

グリードを倒しながらこの層を歩き、とある部屋に旧式の端末があった。 すずかが軽く観てみると、どうやら生きているようで。 情報を得られないかさっそく起動した。

 

「動いた……!」

 

「どうやら数年前にイーグレットSSが開発した情報処理システムのようだね。 今となっては旧式だけど、当時はかなり高価だったはずだよ」

 

「多分資金はアザール議長が工面したのでしょうね……」

 

「ああ……いずれその辺りも徹底的に洗う必要がありそうだ。 すずか、他に何か分かるか?」

 

「うん………」

 

すずかはキーボードを弾き、情報を探した。

 

「ーーどうやらこの端末だと隔壁のロックの解除と情報の閲覧が出来るみたい。 でも、どうやら情報は一部しか残っていないみたい……」

 

「十分だ……さっそく調べてみよう」

 

まずは情報を閲覧する。 表示された文面を読んでみると……どうやらホアキン先生が作成した教団についての報告書だった。

 

「これは……ホアキン先生が残したものか」

 

「教団についての概要が残されているみたいだけど……」

 

「所々、読めなくなっているね」

 

「それもかなり重要な部分を。 これは恐らく……」

 

「うん、意図的に削除されたと思うよ。 データの復旧は難しいね」

 

「でも、ここで消されているのって聖霊教会とか夕闇の使徒だよね? 怪異の存在を肯定するって言っていたし……」

 

「うん、間違いないやろうな。 それ以外にも、気になる単語が削除されとるみたいやけど……」

 

この場ではこれが限界だろう……次の端末に向かうことにし、ロックを解除するための操作を行った。 これで1つ目、残りを探しに探索を続ける。

 

「んー、ユーノが見たら喜びそうな遺跡なのに……見事に荒らされているね」

 

「そういえば……ユーノ君ならとっくにここを探索していそうなのに。 どうして探索してなかったのかな?」

 

「前に聞いてみたが……どうやらその度に仕事が入ってお預けになってたらしい。 そしてその仕事を送っていたのは上層部」

 

「わっかりやすい妨害やなぁ。 ま、それでも気付かへんかった私もマヌケやけど……」

 

「はやてちゃん……」

 

「はやてだけじゃないさ。 俺やゼストさんやメガーヌさん、クイントさんだって出し抜かれたんだ。 気にするな……って、これ慰めになるのか?」

 

結局全員が出し抜かれた訳だし、傷の舐め合いになるのか? 慰めにならないな……

 

「ふふ、なんやそれ。 でも、少し安心したんよ」

 

「……そうか」

 

それからしばらくして2つ目の端末を発見。 起動し、中に残されていた報告書にはネクターについてが記されていた。

 

「かなり情報が削除されているな……」

 

「ええ……例の薬についての情報がまとめられているみたいだけど」

 

「せやけど、ここの研究施設を使って完成させたのは確かみたいやな」

 

「たった数年で、量産段階まで漕ぎつけたのか……」

 

アギトがその執念に畏怖するように唖然と驚く。 そこでなのはがある単語を指差した。

 

「この青精鉱(せいせいこう)っていうのは何だろう? 薬の原材料みたいだけど……」

 

「青精鉱……聞いたことのない名前だね」

 

《データベースに該当はありません》

 

「……そう。 そうなると無限書庫で調べる必要があるね」

 

「うへぇ、あそこからかぁ?」

 

「文句言わない。 とにかく先に進みましょう、すずか」

 

「うん」

 

ロックを解除をお願いし、隔壁に掛かっている2つ目のロックを解除した。

 

「…………………」

 

「ほな次に行こか……ってレンヤ君、どないしたん? そんなに考え込んで」

 

「え? あ、いや……何でもない。 次の端末を探しに行こう」

 

俺は青精鉱の名に引っかかるも、それを一旦後回しにし。 最後の探索を捜索する。 サーチャーも使いながら捜索すると、最後の端末がある部屋を見つけたが……その部屋の入り口は分厚い鋼鉄の扉で閉ざされていた。

 

「この先、みたいだね……」

 

「かなり厳重に閉ざされているな。 ここだけセキュリティが最新だぞ」

 

パスコードに指紋認証にカードキー、どれを簡単には行かなさそうだ。

 

「どこかに抜け道とかないのかな……?」

 

「えーっと……あ、あそこから入れるそうだよ」

 

なのはが指さしたのは……ダクトだった。 入り口だけ見ても人がちょうど1人入れそうな大きさだ。 入れるかどうかは置いておいて、サーチャーで繋がっているかを確認すると……

 

「…………あ、繋がっているよ」

 

「それなら行くわよ。 アギト、先導してくれる?」

 

「おう、分かった」

 

金網を外し、アギトが余裕でダクトに入る中、俺達はうつ伏せになってほふく前進でダクト内を進んだ。

 

「ふうふう……せ、狭い……」

 

「しかも汚い……」

 

「バリアジャケットを着ておいて良かったよ」

 

「う、進み辛いよ……」

 

すずかはキツそうに進んでいる。 フェイトも同様にどこか辛そうだ。 だが、それ以前に俺がヤバい。 アリサ、アリシア、はやてに次いでダクトに入ったため……目の前が……

 

「すずかとフェイトは抵抗が大きいからねぇー……」

 

「抵抗……?」

 

「そ、そそ、そんなことより! 先に急ぐわよ!」

 

「ア、アリサちゃん……⁉︎」

 

何かから逃げるようにアリサが素早くダクト内を進む。

 

「アリサちゃん……抵抗、小さいなぁ……」

 

「すずかとフェイトの抵抗がでかいだけだっての……アリサのは少し抵抗があるくらいなんだよ」

 

「せやなぁ、私もそんくらいや……ーーそれよりもレンヤ君。 見た?」

 

「な、なんだよいきなり……」

 

さっきから話が付いていけなかったのに、いきなりはやてが俺に振ってきた。

 

「いややなぁ〜、レンヤ君の熱い視線がお尻に刺さるんよ♪」

 

「……レン君?」

 

「違う違う! 誤解だ、これは不可抗力で……!」

 

「いやん、レンヤ君のエッチ♪」

 

「レン君!」

 

前も地獄、後ろも地獄。 そんなせめぎ合いを短時間の間に応酬しながら目的地に到着してダクトを出た。

 

「つ、疲れた……」

 

「っていうかはやて、タイトスカートなんだから見える訳ないじゃん」

 

「レンヤ君の熱い視線は、それだけでもう……」

 

「いい加減にしなさい」

 

「……はい」

 

アリサの静かな一喝ではやては黙った。 なのはも矛を収めてくれ、とにも角にも色々と助かった……って、なんでグリード戦以外で命の危機にさらされているんだ……

 

「ん……あ、あれ? ひ、引っかかった……?」

 

「え……」

 

今度はすずかがダクトを出ようとした時、何かが支えて出られなかった。

 

「だ、大丈夫すずかちゃん⁉︎」

 

「ん〜! んーーー!」

 

なのはに引っ張ってもらうが、中々出られなかった。

 

「嘘……フェイトでもFなのに、まさかすずかは……」

 

「ね、姉さん……! 言わないでよ……!」

 

「あーあ、見事につっかえてんなぁ……胸」

 

アギトが指摘し、つられて見てみると……なのはに引っ張られると同時にすずかの大きい胸が柔らかそうに形を変えて引っかかっていた。

 

「何マジマジと見てんのよ!」

 

「痛っ⁉︎ いや、これはだからーー」

 

(……レンヤって結構ムッツリだったりする?)

 

(せやな、その方がこちらとしてもええんやけどなあ。 でもやっぱりムッツリとちゃう?)

 

「そこ! こそこそ話さない!」

 

何だろう……この状況。 何でこんな目に遭っているのだろうか……すずかがなのはに引っ張られてダクトから飛び出るのを眺めながら茫然と思った。 そして、いつかまたダクトに入ったら絶対に先に入ろうと心に誓った。

 

それから気を取り直し、端末を確認する。 他と比べて比較的新しいが、3つ目の端末を発見し、同様に起動。 残されている情報を閲覧する。 どうやらこの端末には御子の……ヴィヴィオについての報告書のようだが……

 

「何じゃこりゃ……虫食いだらけじゃん」

 

「……どうやら教団にとって最大機密にあたる情報みたいやな」

 

「この、御子っていうのが、ヴィヴィオの事なんだよね?」

 

「……ええ……DBMビルに現れたホアキンがあの子のことをそう呼んでいたわ」

 

それを聞くと、なのはは何とも言えない表情になるが、レイジングハートを握る手は強くなっていた。

 

「正直、あんまり理性的な発言とは思えなかったけど」

 

「……いずれにせよ、この情報は直接本人から聞くしかなさそうだな」

 

報告書を読み取り、最後のロックを解除した。 これであの隔壁から奥に行ける。

 

内側からロックを解除して隔壁のある場所に戻り、開け放れた隔壁を通り奥へと進む。 下に降り、三層目に突入すると……奥から水の流れる音が聞こえ、その場所に向かうと……そこは下水道のような場所で。 赤くてドロドロしたような物が流れていた。

 

「これは……!」

 

「ま、まさか血の池か⁉︎」

 

「ヒッ……⁉︎」

 

「ーーううん、血の匂いはしないよ。 だけど、普通の液体でも無さそうだね……」

 

フェイトはこの異様な光景に恐怖して抱きついて来た。 頭を撫でて落ち着かせる時……アギトが驚愕して言ったことを、すずかが即座に否定した。

 

「……ひょっとすると何かの排水かもしれなんなあ。 ちょうどこの上の設備でネクターを大量に製造していたみたいやし」

 

「確かに、色は違うけどあの薬と似た匂いがするね……毒性は強くないと思うけど、触れない方がいいよ」

 

「誰が好き好んで触れるのよ」

 

「……そうだな、足元には気をつけよう」

 

「そ、そうだよね……こんなに血があるわけが……」

 

「でも、ここまで見た目が似ているの精神的にはちょっと辛いけど……めげずに先に進むしかないね!」

 

「ああ……!」

 

沸いて出てくるグリードを退けながら慎重に進むと、進行方向から複数の人の気配を感じた。 その場所に向かうと……そこには檻があり、中にはネクターを使用していた疑いのある失踪者が囚われていた。 どうやらここは牢屋のようだ。

 

「あ……!」

 

「もしかして、行方不明になっていた……」

 

「! あ、あんたらは……!」

 

すぐ側にあった牢屋に、クイラさんがおり。 こちらに気付くとどこかホッとした。

 

「クイラさん……無事で良かったです」

 

「管理局の兄ちゃん達……! た、助けに来てくれたのか⁉︎」

 

「ほ、本当に……⁉︎」

 

「あたし達、出られるの⁉︎」

 

「それは……」

 

一応、俺達は潜入してここに来ている。 彼らを脱出させるとなると相当時間がかかるはず……

 

「……とにかく扉だけでも開いてしまいましょう」

 

「そうだね……」

 

「あ……どうやらあれが扉の開閉装置みたいやな」

 

はやてが指差した方向にレバーらしき物があった。 同様に奥にも開閉用のレバーがあった。

 

「向こう側にもありみたいだし、早く開けてあげようね」

 

「ああ」

 

近付いてレバーを見てみると……古風だが、頑丈なレバーだ。 レバーを下ろすと片側の扉が開き、囚われていた人が檻から出た。 続けてもう片側のレバーも下ろし、ここに囚われていた人を解放した。 その後、いったん行方不明者達を集め、すぐに脱出は出来ないと説明した。

 

「す、すぐには出られない⁉︎」

 

「……すみません。 自分達も敵の目を盗んで潜入している状態です」

 

「グリードや操られたマフィアが辺りをウロウロしている……この遺跡もそうだけど、街までの安全も保証できねぇ」

 

「しばらくは、ここで救助を待ってしただくしかありません。 どうかご了承を」

 

「そ、そんな……」

 

いますぐこの地獄から抜け出せそうだと思ってたのに……そんな感じに行方不明者全員が落胆する。

 

「じきに混乱が収まれば警備隊も駆けつけると思います。 それまでの辛抱です」

 

「残っている管理局員も総力を挙げて収拾に挑んでいます。

 

「皆さんの事は絶対に助けますから、どうか安心してください!」

 

「わ、分かった……」

 

「念のためこの付近に結界を張るから。 皆はここで救助が来るま待っていてね」

 

なのは達の説得でどうにか了承してもらい、アリシアが結界を張った後探索を続けた。 まだまだ先は長い……気を抜かずに進まないと。 手を握りしめる力を入れながら、目の前のグリードに立ち向かった。

 

 

 


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