魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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130話

 

 

同日、22:00ーー

 

俺達はアトラスさんに連れられDBMに身を隠していた。 DBMは俺達が敷地内に入ると同時に重く強固な門を閉め、ビル全体を魔力による物理結界で覆った。 その後リムジン内で眠ってしまったヴィヴィオとユノをメルファの私室のベッドで寝かせた後……総裁室で、事の次第をアトラスさんとメルファに説明していた。 ソーマ、サーシャ、ルーテシアは先の戦闘で気疲れをしていたため、別室で休んでいてここにはいない。

 

「…………………………」

 

「……お父様……」

 

言葉も出ない、と言うのは表現は今のアトラスさんを表すのかもしれない。

 

「ーー現状で判明している事は確証があるわけではありません。 いずれきちんと証拠を揃える必要があるとは思いますが……」

 

「ああ……君達の立場ならそうだろう……だが私は……今、大きな失望感を感じている。 その教団とやらの罪深さはもちろんだが……そんな連中に付け込まれ、ここまでの事態を引き起こした愚か者達には心底呆れ果てたよ」

 

「………はい」

 

「返す言葉もありません……」

 

この事件は未然に防げなかった俺達管理局にも責任がある。 批難されても何も言えないし、弁明のしようがない。

 

「私とて、メッドチルダの状況が簡単なことではないものであるのは判っている。 フェノールのような存在や議員や役人達の腐敗についてもある程度は仕方ないと諦めていたが………どうやら、この事態になるまで中立を保ってきた私も愚か者だったようだな」

 

「そうですね……DBMは少なからず、ミッドチルダの政界に影響力があります。 お父様は今まで、あえて中立であろうとしていましたが……」

 

「その怠慢こそが今回の事態を招いた原因でもある。 ……すまない。 お詫びのしようもないくらいだ」

 

「それは……」

 

「考え過ぎじゃない? さすがに気にし過ぎだよ」

 

「実際、権限や責任があるわけじゃねえだろ?」

 

アリシアとアギトが自分を責めすぎだとフォローするが、アトラスさんは首を横に振った。

 

「いや、時に政権に対して財界がある程度働きかけるのは本来常識的なことだろう。 ……それ以前に、私にもミッドチルダに住む一市民としての自負もあったはずだ。 だが忙しさにかまけ……その心も頭の隅に忘れていたらしい」

 

「………………………」

 

「……それは私達も含めた市民、1人1人がそうだったと思います」

 

「ああ………いずれにせよ、ここで愚痴を言っても仕方ない。 この事態を解決するために我がDBMは総力を持って君達を支援させてもらおう」

 

「アトラスさん……ありがとうございます」

 

「とても心強いです」

 

「といっても、この状況は如何ともし難いです。 管理局本部や警備隊とも連絡が途絶えているのでしたね?」

 

「うん……何度も連絡してみたんだけど」

 

「……何らかの原因で通信妨害がかかっているようなの。 念話もダメ、ネットワークによるメールも無理だったよ」

 

「何者かがジオフロントの導線ケーブルが遮断されていました。 何とか迂回ルートを確保すれば通信網を回復できるとは思いますが……」

 

「ならば技術部のスタッフに最優先でやらせてくれ。 管理局本部、各警備部隊、レンヤくん達の寮との連絡は勿論だが……市内の各端末との連絡も取れればさらに状況も掴めるようになるだろう」

 

「判りました」

 

「そしてもう1つ……ヴィヴィオ君の事なんだが」

 

操られている警備隊が対策課を襲撃した理由……寮の襲撃から考えてもヴィヴィオが狙いなのは間違いないだろう。

 

「はい………操られていた警備隊が俺達を執拗に追った目的はヴィヴィオの可能性が高いと思われます」

 

「実際、私達に撃った時はほとんど威嚇射撃だったしね」

 

「けど、殿だったゼストとクイントには容赦なく撃ったようだね」

 

「ヴィヴィオちゃんを決して傷つけないで身柄を確保せよ………そんな風に操られているかもしれないね」

 

「まあ、ただのロリコンという線もありますが」

 

「ないわよ、絶対」

 

メルファが軽い冗談を言い、アリサが即否定した。

 

「とはいえ、ホアキン准教授といいましたか? 随分、不気味な方のようですね」

 

「いや……正直、あの人が何を考えているの判らないんだ。 何のためにヴィヴィオが必要なのか……白いファイルに挟まっていた写真がどこで撮られたものなのか……」

 

「そもそもヴィヴィオがどうして競売会の会場にいたのかすらまだ分かっていないのよ。 あの子がもう少し何かを覚えていたら、話は別だったんだけど……」

 

だがあんまり無理に聞けるような状態でも無いし、仮に覚えていたとしても……それは辛い物だろう。 そんなものは覚えていない方がいい。

 

「そうですか………確か、ヴィヴィオは聖王の、レンヤさんのクローンでしたよね?」

 

「……そうだな。 正確には色々と違うんだが、俺の血液が使用されたのは事実だ」

 

「でしたら、ゆりかごに使用するためにヴィヴィオを使うのでは?」

 

「ゆりかごって……聖王が所持していた超大型質量兵器で、数キロメートルほどある空中戦艦だったよね?」

 

「確かにアレの起動の鍵は生体認証みたいなやつだからな。 ヴィヴィオでも十分動くだろ」

 

ラーグはゆりかごを知っている素振りで答える。

 

「だけどよ、未だにどこにあるのか不明なんだろう? 歴史学者や考古学者が言うには、地中に埋まっているとか次元の狭間にあるとか虚数空間にあるとか諸説あるが……壊れてもう無いって線もあるぞ」

 

「……仮に現存して、ゆりかごを起動するためにヴィヴィオが必要とするなら……辻褄は合うね」

 

「それなら俺でも十分行けると思うが……」

 

「レンヤ君は強いからね、抵抗されたく無いのかもしれない。 だからヴィヴィオ君を狙っているのだろう」

 

「でも、アレを使うには聖王核も必要なんだよ。 今聖王核を持っているのはアルフィン……レンヤのお母さんなんだよ」

 

ソエルも同様に知っているようだ。 相変わらず隠し事の多い奴らだ。

 

「ああもう、頭がこんがらがって来た……!」

 

「……いずれにせよ、これだけの事態を引き起こしたと思われる人物だ。 恐ろしく危険な相手であることは間違いないと思った方がいいだろう。 君達をこのビルに匿ったのは簡単には特定できないだろうが……万が一の事はあり得る。 覚悟だけはした方が良さそうだ」

 

「……はい」

 

「ああ……」

 

ここに潜伏していることがバレるのも時間の問題。 ここは少しでも準備を整えて、魔力と疲労を回復させておかないと。

 

「各社との連絡などは引き続き、DBMのスタッフにやらせておく。 ヴィヴィオ君達も休んだことだし、君達も少しは休憩したまえ。 それともベッドを用意しておくかい?」

 

「いえ、それは遠慮しておきます。 それより、このビルの中でデバイスを整備できる場所はありますか? できれば次の戦いまでに準備しておきたいのです」

 

「それなら下の研究室を使うといい。 他のメーカーの使用区だが、使えるように取り計らっておこう。 他にも各メーカーの支社もあるから、補給もしておくといい」

 

「さすがは天下のDBM、なんでも揃いそうだね」

 

ホント、色々とよくお世話になっているよ、DBMには……

 

「……ご配慮、感謝します。 それでは少しの間、休憩させていただきます」

 

それで一旦解散となり、すずかとアリシアも用があるようなので一緒に階下にある研究室に向かった。 到着すると早々に2人は椅子に座り、ディスプレイと睨み合ってキーボードを叩いた。 俺も続いてほぼ同じように行い、レゾナンスアークの調整と……技術的な方面から抜刀の調整をした。

 

「……ふう、上手くいかないもんだな」

 

「何やってるの?」

 

「ん? アリシア、もう終わったのか?」

 

「まあね、フェイトがいないと出来ないし負荷もかかるけどね……ってコレを言ってもしょうがないか。 どれどれー……?」

 

アリシアは頭にのしかかりながらディスプレイを覗き込んだ。 う……重くはないがこの体勢はつらいし、何より……頭に柔らかいのが……!

 

「なんだ抜刀か。 これ、ミウラの抜剣を参考にしたんでしょう? まあ、近接戦のブレイカーなんてかなり使い勝手いいからねー」

 

「あ、ああ、昔の事だし。 見ただけのを真似しただけなんだがな」

 

「それでもよく出来ているよ。 うんうん、これならちょっと細かい調整だけで済みそうだね。 後はやっておくから、レンヤ休んでもいいよ」

 

「いや、これは俺のーー」

 

「いいからいいから、こういうのは私の専門分野なんだから。 それにレンヤは他に補給とかやる事がまだまだあるでしょう?」

 

急な襲撃だったし、手持ちの装備や物資も心許ないし……

 

「……分かった。でも無理はするなよ」

 

「分かってるって」

 

「じゃあまた後でな、レゾナンスアーク」

 

《イエス、マジェスティー》

 

残りをアリシアに任せて、一度ヴィヴィオとユノの様子を見にメルファの私室に入った。 豪華なベッドで2人は仲良く並んで寝ており、側にファリさんが見守るように控えていた。

 

(あ、レンヤ君。 お2人はぐっすり寝ていますよ)

 

(ああ、そのようだな)

 

ベッドの側に行き、ヴィヴィオの寝顔を見下ろす。

 

「……すーすー……」

 

(……よく寝ているみたいだな……無理もない、あれだけの大立ち回りだったし……)

 

「……んんっ………パパ……どこぉ……?」

 

その時、ヴィヴィオは顔をしかめて寝言をポツリと言った。

 

「なのはママ……フェイトママ……はやてママ……アリサママ……すずかママ……アリシアママ……みんな………暗い……怖いよぉ……どこ……どこに行ったのぉ……?」

 

(……ヴィヴィオ……)

 

怖い夢を見ているのかうわ言のように呟く。 俺はヴィヴィオの頭をそっと撫でた。

 

「……大丈夫。 必ず俺達が守り抜くから。 だからヴィヴィオ……安心してくれ」

 

「…………ん……………スゥ………」

 

ヴィヴィオに伝わったのか表情は柔らかくなり、穏やかな寝息を立てた。

 

(ああ、必ず守ってみせる……この子の明日は……未来は……俺達が作らないとな)

 

静かに部屋を後にし、何気なく最上階から3階下まで吹き抜けになっている展望に向かった。

 

「ん?」

 

「あ……」

 

吹き抜けにある落下防止用の手すりの上に……ビエンフーがいた。

 

「レンヤ、お疲れでフー」

 

「お疲れ様、ファリンさんと一緒にいないと思ったら……こんな所で何しているんだ?」

 

「ちょっと空を眺めていたんでフー。 こんな時でも、夜空は変わらないでフねー」

 

「そうだな……」

 

ビエンフーの隣に達を、一緒に空を見上げた。

 

「あ、そうだ。 前からビエンフーに聞きたい事があったんだ」

 

「? なんでフか?」

 

「お前、本当にあのビエンフーか?」

 

「ギクッ⁉︎ な、なんのことでフ……?」

 

「……………………」

 

俺は無言でビエンフーの頭……というよりハットを鷲掴みし、吹き抜けを下にして吊るした。

 

「ビ、ビエンーン⁉︎」

 

「いいからキリキリ言え。 他のノルミンならまだしも、お前みたいなキャラの濃いヤツがすずかのアイデアで作られるなんて無理あるだろ。 前々からおかしいとは思っていたが……もしかしてその身体を器にしているのか?」

 

「……………はいでフ……僕達はすずか様の意識に少し干渉してこの身体を作る事を誘導したんでフー。 騙すつもりは無かったでフ、すずか様やファリン姐さんも知っていたみたいでフし」

 

「そうか……」

 

初めてあった時からあり得ないと思うほど疑問に思っていたが……皆の前で無闇に質問もしたくなかったからな。

 

「それじゃあもう一つ聞いておく。 なんで俺達は()()()()なっているんだ? 霊力は十分にあると思うが?」

 

「そ、それは先代の……レンヤのお母さんのせいでフー。 あの人は神器に細工して、神衣化するとその人物に見えないようする術式を施すようにしたんでフー」

 

「……なるほど。 それで俺より霊力があるアリシアも見えなかったわけか……」

 

ビエンフーを足元に下ろし、手すりに寄りかかる。 引っかかることはまだまだあるが……今はこれでいいだろう。

 

「済まなかったな、脅すようなことして」

 

「いいでフよ。 レンヤの疑問も当然のことでフー。 それじゃあボクはファリン姐さんの所に戻るでフー」

 

「ああ……」

 

ビエンフーはファリンさんのいるメルファの私室に向かうと……入れ替わるようにアリサがエレベーターから降りて来た。

 

「レンヤ」

 

「外の様子を見ていたのか?」

 

「ええ、今のところは問題はなさそうね。 でも……ここからじゃ市民の安全なのかが見えないのが歯痒いわね……」

 

外の景色を見ながら、アリサは苦痛の表情をする。

 

「……大丈夫だアリサ。 なのは達ならきっと平気さ。 あいつらの実力は俺達がよく知っているだろう?」

 

「……ええ……そうね。 なのは達に限って不意打ち程度でやられるような子じゃないわ。 それに、VII組の皆もね」

 

「そういうこと。 特になのははウォーミングアップなのに真剣勝負するようなヤツだ、問題ないだろう」

 

しかも、真剣がダメなら全力に変わるし。 理由は楽しいからだし……

 

「……………………」

 

そこまで考えると少し思う事があり、口を閉じてしまった。

 

「また深く考え込んでいるわね」

 

と、見透かされたのか、アリサが顔を覗き込まれた。

 

「あんたはいつも1人で抱え込んで……ヴィヴィオが大切に思うのはあんただけじゃないのよ。 次そんな事考えたらその頭に風穴開けるわよ」

 

「……はは、肝に命じておく。 しっかし、俺とアリサは高い場所と夜景に縁があるのかな……イラの時もこんな会話していたよな」

 

「そうね。 その後には必ず大きな事件があったわ………そして何度も乗り越えて来た。 今回も何とかなるわよ」

 

「ア、アリサにしてはアバウトだな……」

 

「ふふ、そうかしら?」

 

悪戯っぽくクスクスと笑うアリサ。 こんな時なのに、相変わらず胆力があるというか、怖いもの知らずというか……

 

「……失礼なこと考えていないわよね?」

 

「そ、そんなことないぞ……」

 

「声が上ずっているわよ」

 

「……まあ、結局いつも通りって感じだな」

 

誤魔化すように拳をアリサの前に出した。

 

「この先も頼むぞ、アリサ」

 

「⁉︎ ……え、ええ……まあ、付き合ってあげなくもないわよ///」

 

拳を合わせ、友情みたいなものを確かめた。 何故かアリサの顔が赤くなっていたが………その後アリサと別れ、1度と補給をするため1階に降りた。 外の情報を詮索しながら補給をした後、休もうとエレベーターに足を向けた。

 

ピリリリリリリリ♪

 

エレベーターに入ったらすぐにメイフォンが鳴り始めた。 俺はなのは達かゼストさん、もしくはゲンヤさんからだと思いすぐに出た。

 

「はい、異界対策課、神崎 蓮也です!」

 

『ああ、私だ、アトラス・オルムだ。 すまない、管理局からの連絡あたりと勘違いさせてしまったかな?』

 

「い、いえ……もしかして、どこかと連絡が取れたのでしょうか?」

 

『いや、残念ながらまだだ。 実は、ゲート前の警備員から気になる報告があってね。 休憩中に悪いが、私の部屋まで来てくれないだろうか?』

 

「分かりました、すぐに伺います」

 

警備員からの報告……嫌な予感がするな。 俺は最上階に向かうべく、そのまま認証カードを使って上に上がった。 すぐに到着し、ノックして総裁室に入った。

 

「ーー失礼します」

 

中にはアトラスさんの他にアリサとメルファ、それに休んでいたはずのソーマ達がいた。

 

「レンヤさん……!」

 

「ソーマ、もういいのか?」

 

「はい、もう平気です」

 

「十分休めましたし、これ以上足手まといにはなりません」

 

「元気も魔力満タンですよ!」

 

(コクン)

 

もう3人とも平気そうだな。 それを確認し、次に何事かアトラスさんに聞いた。

 

「それで、一体何があったのですか?」

 

「ああ、警備隊の隊員が2人ほどゲート前に来たらしい」

 

「! それで……⁉︎」

 

「今のところ、攻撃する気配もなく留まっているだけみたいです。 まあ特殊合金製のゲートですから突破も難しいでしょうけど」

 

「そうか………俺達がここにいるのがバレた可能性が高そうだな」

 

「……ええ、そう考えた方がいいでしょう」

 

「ーー失礼します」

 

遅れてすずかとアリシアが総裁室に入って来た。

 

「すずか、アリシア」

 

「何でも警備隊員がゲート前に来たらしいね? はいパス」

 

「っと……ああ、今のところ、何もしてないそうだが……」

 

ピリリリリリリリ♪

 

放り投げられたレゾナンスアークを受け取ると同時に、この部屋に備え付けられていた通信機に着信が入った。

 

「ーー私だ……なに……」

 

おそらく警備員からのゲート前に来ている警備隊員についてだろう。 しばらくアトラスさんが話し終わるのを待つと……話しを聞くごとにアトラスさんの表情が怪訝そうなものになる。

 

「……ゲート前の警備隊員が妙なことを始めたらしい。 円筒状の装置のようなものを設置しているとの事だが……」

 

「! まさか……」

 

「指向性の魔導爆弾⁉︎」

 

すずか、アリシア、サーシャはそれが何なのか知っているようだ。

 

「爆弾⁉︎」

 

「それは一体……⁉︎」

 

「緊急時の時以外は使えないけど、本局が所持している破壊工作用の魔導爆弾だよ!」

 

「特殊合金製のゲートでもさすがに保たないかと……」

 

「そんな……」

 

「くっ、そんなものまで……」

 

「……操られている割には知恵が回りますね」

 

メルファは微妙に毒を吐いたが……ここにいるのが気付かれた以上、すぐに止めないといけない。

 

「ーー仕方ない。 アリシア、打って出よう」

 

「うん……それしか無いみたいだしね」

 

「……やるしかないか……」

 

(ポンポン)

 

レゾナンスアークを首に掛けながら次の行動を開始した。 ルーテシアは若干落ち込み気味だが……

 

「君達……⁉︎」

 

「いくら何でも無謀です!」

 

「いや、その魔導爆弾の設置を妨害するだけだ」

 

「まあ、そのまま帰してはくれなさそうだけどねえ」

 

「逃亡劇の次は防衛戦……ふう、なかなかハードな1日になりそうね」

 

「ふふ、1日で済めばいいんだけど」

 

「大丈夫です! 身体が頑丈なのが取り柄なので!」

 

「はあ、夜更かしはお肌の大敵なのに……」

 

「そんなの気にする歳じゃねえだろ」

 

(コクン)

 

軽口を言えるだけの体力はあるみたいだな。

 

「もちろん、応援が来るまでは耐えます。 はやてあたりなら俺達がここにいることは気付いているでしょう」

 

「ゲート前なら地の利もあります。 どうか任せてはもらえませんか?」

 

「……分かった。 くれぐれも気をつけたまえ!」

 

「はい!」

 

そうと決まれば早速部屋を出て、エレベーターに向かうと……不意に隣にあったメルファの私室の扉が開き……

 

「あれ? ……パパたち、どこに行くのー?」

 

目が覚めたヴィヴィオが出て来た。

 

「ヴィヴィオ……」

 

「あはは……ちょっとお仕事でね」

 

「? ……ヴィヴィオも付いて行っていい?」

 

「そ、それは……」

 

「えっと……」

 

「レ、レンヤさん……」

 

ヴィヴィオの唐突な発言に、ソーマとサーシャ、ルーテシアは対応に困る。

 

「……だめだ。 子どもはもう寝る時間だろう? ユノだってちゃんと寝ているんだからーー」

 

と、そこで今度はユノが部屋から出て来た。

 

「ユノ……」

 

「起こしちゃったかな……」

 

「その……目が覚めちゃって……」

 

「いや……うるさくしてゴメンな。 メルファ、ラーグ、ソエル。 2人の事を頼んでもいいか? ちゃんと寝かせておいてくれ」

 

「……ええ、分かりました」

 

「了〜解〜……」

 

「ああ」

 

ラーグとソエルはすずかとアリサの手からメルファの肩に移動し、メルファは2人に近寄った。

 

「ーーさあお2人とも。 温かい飲み物を用意しますから。 リラックスしたらまた寝ましょう」

 

「え、え……」

 

「?」

 

メルファは半端強引に部屋に入れ、俺達はエレベーターに乗って下に降りた。

 

「……………………」

 

「絶対に……守らないとね」

 

「……うん……!」

 

「皆、警備隊は人員不足のせいで個人での戦闘は弱いけど、それを埋めるように隊としての戦闘はかなり強い……操られているとはいえ、薬の影響も馬鹿にならない。 それに多分、もうワンパターンな行動はしないと思う。 厳しい戦いになるよ」

 

「ああ、分かっている。 俺達のチームワークが試されるってことだな」

 

警備隊の練度はよく知っている。 一瞬でも気を抜けばこちらも危ないかもしれない。

 

「ーーまずは爆弾の撤去。 そのままゲート前で隊員達の突入を阻止する」

 

「分かりました」

 

「やってやんぜ!」

 

1階に到着し、すぐに外に出て……

 

「異界対策課、これよりDBM防衛戦に入る……総員、必ず死守するぞ!」

 

『了解‼︎』

 

全員バリアジャケットを展開し、ゲートに向かって駆け出した。

 

 

 


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