魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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128話

 

 

聖王医療院に何が起きたのか解明するため、俺達は空白と手を組んで医療院内を捜索していた。

 

「邪魔!」

 

「はあっ!」

 

警備として放たれたアーミーハウンドを倒しながら前に進み、まずは病棟に入ろうとするが、ロックがかかっていて中に入いれなかった。

 

「こんな時に……!」

 

「仕方ない……まずは別館の方を確認しようよ」

 

「ええ、もしかしたら誰がカードキーを持っているはずよ」

 

別館の宿泊施設の中に入ると……さっそくマフィア2人と遭遇した。 2人はこちらに気付くと無言でデバイスを構えた。

 

「問答無用ですか……」

 

「来るわよ……!」

 

襲いかかってきたマフィア達……だがやはりその行動は単調で、慣れてしまえば脅威になり得なかった。 大振りな攻撃を避け、鳩尾に強打を入れて気絶させ、制圧した。

 

「ふう……手こずったー」

 

「やっぱり彼らから感情が感じられない……もしかしたら自分の意志で動いていないのかも」

 

「それってつまり……操られているのかしら?」

 

「そうだね……」

 

アリシアはマフィアの1人の前に膝をつき、状態を調べ始めた。

 

「……やっぱりおかしい。 この人から怪異の気配がしない」

 

「グリードの? ネクターを使用しているんだろ? だったら検査でネクターにはグリードの体組織は使われていないと出たじゃないか?」

 

「そうなんだけど……さっきの紫色のオーラ、()()の気配がしたの」

 

怪異の気配はしないのに異界の気配はする? どういうことだ?

 

「ゲートから発せられる気配に似ているのかな?」

 

「そんな感じ、かなり意識しないと分からないけど」

 

「……気にはなるけど、まずは関係者の安全を確認しましょう。 この宿泊施設に閉じ込められているかもしれないわ」

 

「ああ……」

 

マフィア達が背を向けて見張っていた扉を通ると廊下に出た。 手前と奥に部屋があり、人の気配がした。 まずは手前の部屋に入ると、

 

「ひっ……⁉︎」

 

「なんだあんたらは……⁉︎」

 

「あなた方は……」

 

と、乗客の1人がこちらに気付くと思わず口に手を当てた。

 

「あなた達……管理局の、しかも異界対策課じゃ⁉︎」

 

「はい、時空管理局に者です。 こちらの異変に気付いて皆さんの安全を確認しに来ました」

 

それを聞くと、乗客達は安堵の息を吐き、喜んだ。

 

「た、助かったわ!」

 

「バスから引きずり出された時はどうなることかと……」

 

「あなた達、途中で止まっていたバスに乗っていたの?」

 

「ああ……道の途中で、いきなりあの黒服達が立ち塞がったんだ」

 

「む、無言で銃を突きつけられてここまで歩かされて……抵抗しようとしたら運転手さんがい、いきなり撃たれて……!」

 

「そうだったの……」

 

「……もうしばらくの間、ここで待っていてください。 皆さんの安全は自分達が必ず確保します」

 

「わ、分かった!」

 

「よろしく頼んだわよ!」

 

次の部屋に行くと、そこには医療院の師長とここの寮長や、先ほどバスの乗客が言っていた運転手と……おそらくここの警備員がベットで横たわっていた。

 

「あんた達……⁉︎」

 

「たしか管理局の……!」

 

「師長さん……ご無事でしたか」

 

「……良かった……」

 

顔見知りだったので、無事でこっちも安心する。

 

「どうしてここに……ひょっとしてもう安全なのかい⁉︎」

 

「いえ、私達もつい先ほど到着したばかりよ。 現在、安全を確認しているわ」

 

「そうかい……」

 

「どうやら怪我をしている人がいるみたいだね?」

 

ベットで寝ている2人は怪我をしているが、応急処置が施されており、今すぐに治療が必要な怪我ではなかった。

 

「ああ……ウチの警備員とバスの運転手さ。 あの黒服達に撃たれて……一応、応急手当ては済ませたよ」

 

「そうですか……他の看護師や医学生達、入院患者達はやはり病棟の方でしょうか?」

 

「ああ、ちょうど仕事中だったし、かなりの人間が病棟にいるはずだ。 あたしはちょうど休憩中でこっちに来ていたんだが……くっ、こんな事になるなら病棟から離れるんじゃなかった!」

 

「師長さん……」

 

「……安心してください。 全員、俺達が絶対に助け出します!」

 

「師長は怪我をしている人を診ていてください」

 

「ああ、よろしく頼んだよ……!」

 

それで部屋を後にしようとした時、先ほど病棟の正面ゲートにロックがかかってあることを思い出し、師長に聞いてみた。

 

「あ、そうだ。 病棟の正面ゲートが封鎖されていたのですが……師長はカードキーを持っていますか?」

 

「なんだって⁉︎ あの黒服ども内側から閉めたね……! ……カードキーならあたしが持っていたんだけど……黒服に奪われちまったんだ」

 

「分かりました。 こちらで取り返します」

 

今度こそ部屋を後にし、3階ある宿泊施設を探索する。 その過程でマフィア達と交戦し、カードキーを奪い返した。 そして屋上から連絡橋で病棟に向かおうとするが、連絡橋は資材を乱雑に置かれて塞がれていた。

 

「面倒な事を……」

 

「ボヤいても仕方ない、上から入らないかちょっと見てくる」

 

障害を飛び越え、病棟内に入る扉に手をかけるが……ロックされていて中に入れなかった。 解除する端末も側にないことから内側からしか開けられないようだ。 研究棟はこれとは別のカードキーが必要のようで、ガラス越しに中を確認すると……かなり瘴気が充満していた。 1人で行くにはかなり危険と判断して引き返した。

 

「どうだった?」

 

「研究棟と病棟、どっちも入れなかった。 まずは病棟内の安全を確認したいし、1階の正面から行こう」

 

「壊そうにもここの壁やガラスは対魔力素材で出来ているからね……それがいいと思うよ」

 

「ふふ……これでは飛べない空戦魔導師と同意ですね」

 

「だったらここから飛び降りなさい」

 

アリサは言うや否や屋上から飛び降り、重量魔法で制動して地面に降り立った。 俺達も後に続き、そのままカードキーを使って病棟内に入った。 中は静まり返っているが、あちこちから気配がする。

 

「ふむ……どうやら医療院関係者は各所に避難しているようですね」

 

「後、マフィアもいるよ。 ここからが本番のようだね」

 

「うん。 慎重に進もう」

 

病棟内の探索を開始し、マフィアと交戦しながら医療院関係者と患者の安全を確認していく。 マフィア達は基本的に巡回はせず、待ち伏せばかりだったのですぐに制圧できた。 ちらりとここから中央広場を覗くと……かなりのグリードが蔓延っていた。 だが先ずは目の前の敵を倒し、マフィアを倒すたびに研究棟のカードキーがないか調べた。

 

「あー、辻斬りみたいでいやだなあー」

 

「そ、そんなこと言わないでよ……」

 

「あ、あったわよ。 研究棟に入るためのカードキーが」

 

「よし……病棟内の安全を確保できたし。 後はホアキン先生を探して出そう」

 

すぐに病棟屋上に向かうと……そこには双剣を構えているシャッハと、ここの患者らしき少年がいて、別種のグリードに囲まれていた。

 

「あれは……!」

 

「マズイよ!」

 

すぐさま武器を構え、グリードに向かって走り出した。 アリシアが2丁拳銃でグリードどもの前に魔力弾を撃ち込んで怯ませ、前方にいたグリードの背中を斬り裂いた。

 

「へ、陛下……⁉︎」

 

「陛下だ!」

 

「話は後だ! こいつらを撃破する!」

 

「巻き込まれないように注意してくださいね」

 

シャッハと少年を背にしてグリード……デスムーンと向かい合った。

 

《カノンフォルム》

 

「っ!」

 

すぐさまアリサが魔力弾を三体デスムーンに撃ち込み、怯ませた。

 

「疾っ……!」

 

空白が端にいたデスムーンに向かい飛び出し、一瞬で切傷を刻んだ後に横に蹴り飛ばし、他のデスムーンにぶつけた。

 

「ふっ、昇双蹴(しょうそうしゅう)!」

 

素早くもう一体のデスムーンに近付き、左脚で浮かせ、右脚で蹴り上げた。 そして飛び上がったデスムーンを追いかけるようにアリシアが飛び上がり……

 

《エアキック》

 

「せいっ! やっ!」

 

魔力を足に集中させて、二刀小太刀で斬り上げ頭上を取った後……追撃して斬り降ろし、屋上にぶつけた。

 

《オールザウェイ》

 

「えいっ!」

 

すずかが槍を横に一振りし、三体デスムーンの足元から扇状に氷柱を形成させ、デスムーンを貫き、氷柱が砕けると同時にデスムーンを消滅させた。 安全が確保されたのを確認し、シャッハの方を向いた。

 

「陛下に騎士アリサ……それに皆さんも。 ありがとうございます……助かりました」

 

「ううん、気にしないでいいよ」

 

「無事でよかったわ」

 

「………………………」

 

「コホッ、コホコホッ……」

 

その時、少年が胸を押さえて咳をした。 おそらく喘息なんだろう。

 

「大丈夫か……⁉︎」

 

「いけない、発作が出て来ました。 部屋に戻りましょう」

 

「コホッ、コホ……ごめんなさい。 僕がわがままを言っちゃったから……」

 

「子どもが気にしないで。 医師の判断を押し切って連れて来たのは私よ」

 

「なら、俺が運ぼう」

 

「いえ、ここは私が……」

 

「いいからいいから、早く行こうよ」

 

シャッハの遠慮を押し切って少年を横抱きに抱え、病室で薬を飲ませてから少年を寝かせた。 それからシャッハにここに来た事情を説明した。

 

「そうですか……でもまさかホアキン先生が……」

 

「……まだ怪しいと確定したわけじゃないけどな。 先生はまだ研究棟に?」

 

「それは分かりませんけど……他の教授の方々は研究棟に取り残されているはずです。 黒服のマフィアが連れ出したのは研修医の方ばかりでしたから」

 

「そうか……」

 

少なくともホアキン先生の疑いは今も続くな。

 

「それであのグリードはどこから出たかわかる?」

 

「いえ、いきなり研究棟から現れました。 それでそのまま囲まれてしまって……」

 

「どうやらその研究棟に何が隠されているようですね。 時間がありませんーー早速、向かいましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

「……あの、陛下……その方は……?」

 

シャッハが空白が何者なのか質問した。

 

「ふふ……私の名は空白。 訳あって本名を名乗れないのをどうかお許しください。 私は偶然ここに居合わせたフリーの魔導師でして、マフィアと交戦している時に彼らに助けられ、そのまま行動を共にしているのです」

 

「そうでしたか。 ご協力、ありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

このやり取りだけを見ると、空白はいい人に思えるが。 実際はただの次元犯罪者だ。 だがそれをシャッハに教えるわけにもいかず。 屋上に戻り、手に入れたカードキーで中に入ると……先ほど見た通り空気が淀んでいた。

 

「空気が淀んでいるわね……」

 

「スノーホワイト」

 

《毒性は検出できません。 ですが無害とも限りません》

 

「そう……」

 

「……これは異界の気配……ここ、擬似的にだけど異界化している」

 

「では、ここにグリード……グリムグリード級が?」

 

「そうじゃないよ、なんかこう……異界そのものが力を出しているような……そんな感じ」

 

感覚的に伝えられてもよく分からないが、これが異常なのは理解できた。

 

「怪異ではなく異界そのものが……人為的な可能性があるわね」

 

「ああ、おそらくここに放たれているグリードもネクターを投与されているだろう」

 

「ふふ……もう麻薬ではなくて、魔薬ですね」

 

「冗談を言うな。 ……とにかく、研究棟を探索しよう。 まだ教授達が取り残されているはずだ」

 

研究棟の探索を始め、先ほど戦った今までフェノールが連れてきたのとは違うグリードを……だが明らかにネクターを投与されているグリードを倒しながら進み。 2階に差し掛かると……近くにあった部屋から人の気配を感じた。 警戒しながら中に入ってみると……

 

「き、来ました〜!」

 

「これでも喰らえ!」

 

「くたばれ、化物があっ!」

 

「え……」

 

突然意味もわからず男性2人に罵倒され、2人は物置の裏側から何か薬品みたいなのが入った容器を投げてきた。 俺達はそれを避けるが……地面にぶつかり中身が飛び散ると、不快な臭いが出てきた。

 

「うわっ……⁉︎」

 

「危ないわね!」

 

「あの、俺達はーー」

 

「馬鹿者、何を外しておるか! まったくこれだから無能な外科医師はっ……!」

 

「そういうアンタこそ思いっきり外しただろうが! これだから内科医師は口先ばかりで使えんのだ!」

 

誤解を解く前に、老人と男性が喧嘩を始めてしまった。 と、そこで女性が誤解を解き、女性を含む3人が物置から出て来てくれた。

 

「おお、君達は……!」

 

「確か管理局の……」

 

「……異界対策課の者です。 皆さん、ご無事みたいですね」

 

「やれやれ……まさか薬品を投げられるとは思わなかったよ」

 

「これはその、酸か何かですか?」

 

「す、すまん……実験用の酸化液なんだが」

 

「た、多少刺激が強いが毒性がないから安心してくれ」

 

安心できるか。

 

「まったくお2人共。 軽はずみはいけませんよ〜」

 

そうおっとりと話す女教授に、2人は怒りの矛先を向けた。

 

「来ましたと言ったのはあなたじゃないですか⁉︎」

 

「酸化液のビンを見つけたのも君だったと思うが……?」

 

「あれれ、そうでしたっけ?」

 

「と、とにかく内部はまだグリードが徘徊しています」

 

「護衛しますので、一旦ここから出ましょう」

 

俺達は3人を連れて研究棟を出て、病棟の屋上まで連れて行った。 そこで他の教授が……特にホアキン先生が見ていないか聞いてみた。

 

「ーーでは、ホアキン先生は全く見かけていないんですね?」

 

「うむ、例の黒服達が研究棟に乗り込んできた時にはすでに見かけなかったな……」

 

「てっきり夜釣りにでも行ったのかと思ったが……」

 

「……そうですか」

 

この自体が起きている時に姿が見えない……どうしても疑いの念が湧いてしまうな。

 

「……現時点ではかなり疑わしいね」

 

「そうね……」

 

「そういえば、研究棟にいるグリードはどこから出てきたの? マフィアが連れ込んだの?」

 

「いや、どこからともなく現れた感じだったが……」

 

「私も見かけていないな……」

 

「あれれ、あのグリードなら変な人が連れてきたような……黒い服じゃなかったからマフィアの人には見えませんでしたけど」

 

おそらくその人物がこの研究棟にあのグリードを放ったのは間違いないが、フェノールでないとすればD∵G教団の構成員か幹部か……?

 

「それって……」

 

「その人は大柄の男性とか、髪の薄い男性でしたか?」

 

「いえいえ。 何だか普通の女性でしたよ。 エレベーターで4階の方に上がって行っちゃいました」

 

「4階……教授達の研究室のあるフロアですか」

 

「何者かしら……」

 

「ふむ……中を調べるのならくれぐれも気をつけるがいい」

 

「私達は、病棟の空き部屋にひとまず避難していよう」

 

「私の見た人を追いかけるならこれを持って行っていいわよ」

 

女教授から認証カードを貰い受け、3人は病棟の中に避難して行った。

 

「グリードを率いた謎の女性ですか……何か心当たりはありますか?」

 

「いや……現時点ではさっぱりだ。 だが無関係というわけでもなさそうだな」

 

「何者かは知らないけど……捕まえる必要はありそうだね。 さっそく4階に上がってみよう」

 

真実はこの上にいるその女性が知っているはず……エレベーターの中に入り、先ほど貰い受けた認証カードでロックを解除、4階へ向かった。 そしてホアキン先生の研究室に入ると……

 

「おや? ずいぶんと早かったですね」

 

「あなたは……!」

 

「エリン……プルリエル……」

 

正面の開けられた窓際にいたのは……ミゼットさんの元秘書のエリンだった。 笑いながらこちらを向いたエリン、その瞳は赤く光っていた。

 

「ふふ。 2ヶ月ぶりですね? まだ宵の口ですが、月がきれいですね」

 

「あなた……その瞳の色は……⁉︎」

 

「……どうやら、堕ちるまで堕ちましたか」

 

「ほう、これは……噂の空白(イグニド)殿もご一緒でしたか。 あなたが余計な事を吹き込まなければ私の立場も安泰でしたのに……どうやらお礼をする機会が巡って来たようですね」

 

「私は空白。 色無き色、忘れ去られた過去の色……あなたごときでは知る事もできませんよ。 たとえどこまで堕ちたとしても」

 

「フフ……言ってくれますね」

 

お互い犯罪者だが、両者共に相容れないこともあるようだ。

 

「……どうやらあなたが、グリードを率いていたようですね」

 

「それ以前に、どうしてあなたがここにいる? 軌道拘置所にいるはずのあなたが?」

 

「フフ、軌道拘置所ですか……あそこなら、この医療院と同じく既に“我ら”の手に落ちています」

 

「なに……⁉︎」

 

「軌道拘置所の警備は空の航空武装隊が担当しているはずだよ……そんな場所をマフィアが襲ったって言うの⁉︎」

 

「フフ……そういう訳ではないのですが。 ちなみにフェノールごときを我らと同じにしないでくれますか。 彼らは単なる傀儡です。 我らの計画を成就するためのね」

 

その発言に、ようやくこの状況と今までの情報が噛み合った。

 

「やはりそうか……ネクターを服用した者を何らかの方法で操っているんだな?」

 

それはつまり……管理局員内にもネクターの服用者がーー何十、何百人いるかはわからないがーーおり、その者が脱走の手助けをしたのだろう。

 

「フフ、その通り………全ては偉大なる我らが“同志”の計画によるもの。 大いなる儀式を遂行するための“駒”に過ぎないというわけなのよ!」

 

「偉大なる“同志”……」

 

それは、ある人を指していた。

 

「D∵G教団の残党にしてマフィアの背後に潜伏していた人物……。 つまりーーこの部屋の主というわけか」

 

それを言うと、エリンはくつくつと徐々に笑い始め……

 

「アハハハハハハハハッ……‼︎」

 

盛大に狂うように笑うと、同時に異様なオーラを放ちながら片刃の剣を取り出して構えた。

 

「なっ……」

 

「これは……!」

 

「マフィアとは比べ物にならないくらいの異界の気配……⁉︎」

 

「ーーそれを確かめたければ私を退けてみるがいい……“同志”の導きによって真なる生命(ネクター)に至った私をねェ……!」

 

「……っ……‼︎」

 

「来るよ……!」

 

「フフ……来なさい!」

 

エリンは紫のオーラを斬り払い、そのまま大雑把に横に斬撃を振った。

 

「くっ……!」

 

「フォーチュンドロップ!」

 

《メタルプロテクト》

 

確かに大雑把だが、この狭い空間で戦うのなら問題はなく。 逆に回避も難しいこちらは防御を取るしかないが……

 

「⁉︎」

 

「嘘おっ⁉︎」

 

「きゃっ⁉︎」

 

だが、斬撃が防御魔法に触れた瞬間……何の抵抗もなく防御魔法が斬り裂かれ、斬撃が目の前まで迫ってきた。 とっさにすずかの頭を抑えて倒れこむように回避する。 斬撃は背後の壁に直撃して跡を残すが、跡を見る限りそこまで威力はなかった。

 

(だが、どうして? それにあの力、魔法じゃない……)

 

「ボヤッとしている暇がありますか⁉︎」

 

「クソッ!」

 

《ファースト、セカンドギア……ファイア》

 

考える暇もなく今度はエリン自身が接近して剣を振り下ろした。 とっさにギアを2つ駆動させ、剣を受け止めた。

 

「あらあら?」

 

「ぜやっ!」

 

エリンは受け止められたのが不思議に思ったのか目を丸くした。 まるで今使っている力に慣れてない素ぶりだ。 剣にも力が乗っていなく、すぐさま押し返した。

 

「面妖な力を使いますね!」

 

「あなたほどではないわ」

 

空白も2本のレイピアで斬りかかるが、エリンは先ほどとは打って変わって鋭い剣筋を見せ、レイピアを弾いた。

 

《ロードカートリッジ》

 

焔狼衝(えんろうしょう)!」

 

エリンと空白が斬り合っている隙に、アリサがカートリッジをロードし、左手に焔を纏わせ、床を殴りつけた。 すると焔は床を走り、勢いよくエリンに向かった。

 

「あら……」

 

エリンの視線が焔に向いた瞬間、空白はエリンの剣を蹴って距離を取り。 次の瞬間焔がエリンに直撃し、爆発を浴びた。

 

「っ……痛いわね……」

 

エリンはダメージを負ったが、ネクターの影響か痛がる素振りも見せず。

剣にオーラを纏わせると、そのまま振り下ろして斬撃を飛ばした。 今度は最初から回避するが……

 

「ほらほら、遅いわよ!」

 

「うわっ⁉︎」

 

続けて放たれた斬撃が、アリシアのバリアジャケットの袖を浅く切った。 防御魔法はおろかバリアジャケットまでこうも簡単に……

 

「くっ、魔導師だとしても、この力は一体……⁉︎」

 

「いくら鍛えたとしても、ネクターだけじゃ説明ができない!」

 

「アハハ! 身体中を駆け巡っているようだわ! これが……これが異界の力!」

 

「まさか……本当に、()()()()()()から力を引き出しているとでも言うの⁉︎」

 

「ええ、その通りよ! “同志”は異界の力を引き出して使う技術を見つけ出したのよ! ああ……なんて甘美な力、魔導師すらも凌駕する! その名も……魔乖咒(まかいじゅ)‼︎」

 

「魔乖咒……だと?」

 

1度も聞いたことのない単語だ。

 

「それじゃあ、あれかしら? あなたはさしずめ魔乖術師(まかいじゅつし)とでも言いたいのかしら?」

 

「おや、偶然とはいえ鋭い。 ええその通り、私は“同志”によって魔乖術師になりました。 そしてこの力!」

 

剣を振るうとこっちに向かって魔乖咒による斬撃が放たれ、防御しようにも防御魔法が掻き消されるように消えてしまう。

 

「冥土の土産に教えておきましょう。 魔乖咒にはその効果によって8つの系統に分類されます。 私の系統は“滅”……その破壊力は8つの系統の中でも随一です。 そして滅の魔乖咒には相手の防御を無効化する特殊効果もあるんですよ」

 

「通りでこっちの防御魔法が紙みたいに通り抜けられるわけだよ……」

 

だが、弱点もあるようだ。 先ほどから大技でしかあの滅とやらの攻撃が放たれていない。 どうやら強力な反面、力押ししかできないらしい。 このことを念話で皆に伝え、勝機があるとわかり表情が変わった。

 

「あら? まだやるのかしら? あなた達は私の力の前では丸裸も同然なのよ?」

 

「当然、負ける訳にはいかないからね」

 

アリシアは立ち上がると、俺と戦術リンクを繋いだ。 そしてアリシアの行動を読み、静かに刀を納刀して好機を探った。

 

「フレイムアイズ!」

 

《チェーンフォルム》

 

「はっ!」

 

鎖をエリンとはズレた方向に投げ、鎖が壁を反射してエリンの周りを囲った。 次いでその囲いをすり抜けるようにすずかがエリンの側面から接近した。

 

「えいっ!」

 

「おっと……」

 

すずかは槍のリーチを活かして鎖の合間に槍を通して攻撃し、魔乖咒の発動と反撃を許さなかった。

 

「面倒、ね!」

 

「きゃああ⁉︎」

 

「くっ……⁉︎」

 

突如、魔乖咒のオーラが気迫と共に放たれ。 すずかは吹き飛ばされ、アリサは鎖を消し飛ばされた。

 

「レンヤ!」

 

「ああ!」

 

間髪入れずアリシアが飛び出し、俺は鞘に溜め込んでいた魔力を解放しながら抜刀した。 刀身が蒼く光、蒼い粒子を舞い散らせる。

 

「抜刀……!」

 

「ほう……それは集束系魔法(ブレイカー)ですか。 器用な事を」

 

「密接している近接戦闘だと、隙の多い大技は命取り……っと言っても、まだまだ発動までに時間がかかるがな。 効率もまだ悪いから持続時間も短い」

 

改良する問題点は多いが……今はそんなことは後。 剣戟を繰り広げているアリシアの元に向かって行く。

 

「アリシア!」

 

「了解!」

 

《フラッシュフロント》

 

「ぐっ……小賢しい真似を!」

 

アリシアが魔力弾を魔力膨張により破裂させ、前方に向けて強烈な光線を放ちエリンの視界を塞いだ。

 

「行って!」

 

「ああ!」

 

光でエリンの姿は霞んで見えるが、リンクによってアリシアが位置を把握し教えてくれ……その位置に向かって刀を降った。

 

「一瞬三斬……瞬光!」

 

本来は納刀状態から放つ抜刀技だが、あえて無納刀の状態から放ち……エリンの横を通過する刹那に3度斬りつけた。 その攻撃にエリンは耐えられず、膝をついた。

 

「フフ……まさかこんな展開になるなんて。 正直、予想外だったわ」

 

「……分からないわね。 いったい何があなたをそこまで堕としたのかしら?」

 

「堕ちた……? いや、真実に目覚めただけさ。 そう……今なら判る。 このミッドチルダという地がどんな意味を持つのか……理屈抜きで“判る”のよ!」

 

まるで本当に麻薬患者のような狂ったように発言するエリン。

 

「……意味がわからない……」

 

「完全に飛んでいるね……」

 

「ーー戯言はそのくらいにしてもらおう。 元統幕議長秘書、エリン・プルリエル。 時空法に基づき、傷害、騒乱、不法占拠、薬物使用、拘置所脱出などの容疑で現行犯逮捕する。 大人しく捕まってもらうぞ!」

 

「フフ……そう焦ることはないわ。 まだ夜は始まったばかり……“同志”の趣向はこれからよ。 そちらに招待状があるから目を通しておくことね」

 

「何……」

 

エリンが目で指した方向にはホアキン先生のデスクがあり、その上に2つのファイルが置いてあった。

 

「あれは……」

 

「あはは……それではまた会いましょう……! あなた達がこの先の死地を超えられたらね……!」

 

「しまった……!」

 

全員の視線がデスク上のファイルに向けられた隙に、エリンは立ち上がって開けられていた窓から飛び降りた。

 

「待て!」

 

「逃がしません……!」

 

すぐさま追いかけようとするが……どこからともなく翼竜のようなグリードが現れ。 エリンはその背中に乗り、飛び去って行った。

 

「あれは……!」

 

「星見の塔にもいた翼竜型のグリード……」

 

「……無茶苦茶過ぎるでしょう」

 

「ふう……あの速度では追いつけませんね。 まあいいでしょう、早く目を通しましょう。 その“同志”とやらが用意した招待状をね」

 

「あ……ああ、そうだな」

 

空白の頭の切り替えの早さに驚きつつも同意する。 デスクに近づくと、黒と白のファイルが置かれていた。 そして白のファイルには特徴的な紋章があった。

 

「この紋章は……」

 

「……もしかして、これがD∵G教団の……」

 

「あの僧院にあったのと類似しているわね……」

 

「月の僧院の裏側にあったやつだね」

 

「ほお……そんな場所があるのですか」

 

「……お前が待ち受けていた塔と似たような場所でな。 それはもとかくーー」

 

こんなあからさまに証拠が置かれているのは腑に落ちないが、ここで見なくては真実に辿り着けない。 意を決して黒のファイルを開いた。 黒のファイルには議員の……特にアザール議長の不正の数々、さらにはネクターに関する情報や出荷場所も事細かに乗っていた。

 

「まさか……こんな事まで……」

 

「……ふふ、世も末ですね。 まさかアザール議長さえも取り込まれていたとは……」

 

「どうやら何かの弱味を握られて協力させられているようだけど……この楽園っていうのは何かなぁ?」

 

「……分からないよ。 ひょっとしたら教団の拠点の一つかもしれないけど……」

 

「いずれにしても、アザール議長は彼に弱味を握られていた。 そして彼がミッドチルダに潜伏するのをフェノールに手伝わせたのか……」

 

資料によれば、かなり以前からこの医療院に潜伏を開始していたようだが……

 

「……許せない……代表の1人でありながら何て愚劣な行為を……! こんな奴がいるから空が自由に好き放題に動いて……人員不足だって全く解決しないのよ……!」

 

「アリサ……」

 

悲痛のような面持ちでアリサは固く拳を握った。

 

「……感概に浸るのはまだ早いですよ。 この黒いファイルによればネクターの製造している場所はここではなく別の場所のようです。 そして出荷リストによれば……マフィア以外にもかなりの量がどこかに流れているらしいですね」

 

「……ああ。 どうやら彼はここ以外にも拠点を持っていることになる……ひょっとしたら行方不明の人達はそこに……?」

 

「あり得そうだけど、一体どこに?」

 

「その、マフィア以外の卸し先も気になるね。 まさか、そっちって言うオチじゃないよね?」

 

「ふふ、私とてそこまで無謀で無知ではありません。 他も、ネクター(これ)には興味はないでしょう。 可能性があるとすれば、どこかの野心的な製薬会社……もしくはテロリストや次元犯罪者、別次元世界の組織もあり得るでしょう」

 

「ふう、確かにね……」

 

「つくづくミッドチルダという地の特異性が恨めしくなるわね……」

 

「……ああ……」

 

否定することもできず、同意するしかなかった。 そして黒いファイルを一通り読み終え、白いファイルの方に視線を向けた。

 

「ーーこっちの白いファイルも確認してみよう」

 

今度は白いファイルを開いてみると……そこには非人道的な実験の数々と拠点が乗ってある地図、そしてーー実験を施された被験者の顔写真の数々……

 

「酷い……」

 

「こ、これは……」

 

「ふむ……これは6年前に行われたらしい“儀式”の被験者達ですか。 それ以降は管理局が勘付いた危険もあり被験者もろとも拠点を処分、ですか」

 

「……外道め……こんなものを……」

 

「………………………」

 

無言で読み進めて行き、被験者の数が増えていく中……ある1つの写真に目が止まる。 水色の髪をした、生気のない目で写真に映る少女……

 

「あ……」

 

「この子は……」

 

「クレフ……クロニクル……」

 

「そう……そう繋がるのね……」

 

「おや、その娘はお知り合いでしたか」

 

気になったのか、空白は写真の隣に記載されていた詳細な情報を見た。

 

「ーーほお、第6管理世界出身ですか。 あそこは優秀な召喚士が多数いますからね。 しかし、よくもまあ、これだけの事をしでかしましたね」

 

「………………………」

 

返す言葉も見つからず、そのまま被験者の数が増えて行くのを黙って見続け……途中でファイルの間に1枚の写真が挟まっているのを見つけた。 そこに映っていたのは……何処かの遺跡のような場所、そこにあった球体の中に目を閉じて蹲っていたのは……ヴィヴィオだった。 これにはさすがに動揺を隠せなかった。

 

「……ッ……⁉︎」

 

「ヴィヴィオ……!」

 

「……そんな……」

 

「くっ……まさかとは思っていたけど……!」

 

「例の競売会であなた達が保護した少女ですか。 この写真だけ新しいようですが、最近撮られたものということですか……?」

 

「ああ、多分そうだろう。 ……クソッ……! 最初から何もかも知っていたのか……!」

 

「ええ……おそらくそうでしょう」

 

突然、聞き覚えのある少女の声が背後から聞こえてきた。

 

「なに……⁉︎」

 

「この声は……!」

 

振り返ると……開けられた窓の縁に、クレフ・クロニクルが座っていた。

 

「異なる乱、今宵の満月は、緋色の夜、その再現……こんばんわ、異界対策課の皆さん」

 

詩人のように意味深な事を言うが、その表情に変化は見られない。

 

「……気配は感じられなかったのに、君はいつからそこに……?」

 

「どうやら只者ではなさそうですね?」

 

「ええ……あなたと同じくらいには。 ーー改めて自己紹介します。 私はクレフ……クレフ・クロニクル。 コードネームは(シルフ)。 そしてこの子は、ジーククローネ」

 

「ピュイ」

 

クレフが呼んだかのようにどこからともなく白い隼が飛んできて、クレフの隣に留まって一鳴きした。

 

「……もしかして、君の組織も関与しているのか? この研究室の主が起こそうとしている企みに?」

 

「ナイン……それはあり得ません。 私はあくまで1個人としてここにいます」

 

つまり彼女の組織は関与してないのか。 となると……クレフがここにいるのは……

 

「ーーホアキン・ムルシエラゴ。 聖王医療大学院准教授にしてD∵G教団幹部司祭……全ての儀式の成果を集め、闇に消えたネクターの開発者……これで、やっと知りたい事が分かりました」

 

「……そうか、君は……」

 

「あの白いファイル……」

 

「ヤー、目星はついていましたが決定的な証拠は不十分でしたので……ドクターの手を煩わせる前に決着を付けましょう」

 

「え、今なんて……」

 

アリシアが言い終わる前に、クレフは窓の縁の上に立ち上がった。

 

「君は……一体何をするつもりだ?」

 

「復讐……と言えばそうなりますが、ナイン。 強いて言えば……私が私であるうちに……人でありたいから」

 

「何を……」

 

「ーーお礼として助言はしておきます。 あの子はおそらく、全ての鍵。 くれぐれも奪われないでください。 無用な助言だとは思いますが」

 

「……全ての鍵……」

 

「もしかして、ヴィヴィオの事……⁉︎」

 

「それでは、私はこれで失礼します」

 

《Gauntlet Activate》

 

左腕にいつの間にか緑色のガントレットを装着し、起動させるとそのまま後ろに倒れこみ……ここから落ちていった。 そしてすぐさまジーククローネが飛び出し……一瞬で緑色の巨鳥になるとそのままクレフを背に乗せ、飛び去って行った。

 

「……性格の割に大胆な事をする子ね」

 

「あ、あはは……」

 

「ふふ……役者は揃いつつ、ですか」

 

「はあ、あの秘書といい、常識外れすぎるでしょう……」

 

「……ああ……だが、どうやらクレフはこの件に関っていないようだ……黒幕の正体も判明して、その狙いも朧げだが見えてきた。 こうなったら急いでクラナガンに戻ってーー」

 

ピリリリリリリリ♪

 

「あ……」

 

「すごいタイミングね……」

 

本当に着信が来る時って空気読めないよなぁ。

 

「はい、異界対策課、神崎 蓮也です」

 

『ふう、無事だったか。 ーー俺だ。 陸士108部隊のゲンヤ・ナカジマだ』

 

「ゲンヤさん……! 今、どこにいますか⁉︎」

 

『ちょうど医療院に到着した所だ。 これから部隊を突入させるが問題ないな?』

 

「そうですか……マフィアは一通り制圧している状態です。 医療院内の人達に声をかけて保護してもらえますか?」

 

『分かった。 また後で合流しよう』

 

通信を切り、皆に詳細を説明し。 その後黒と白のファイルを持ち、研究棟から出て病棟屋上から陸士108部隊の様子を見下ろした。 迅速な対応で医療院関係者は保護され、マフィアは拘束されていった。

 

「やれやれ……これで一安心だね」

 

「ええ……でも、まだ気は抜けないわ」

 

「……そうだね……エリンさんが言う限りではまだ何かするつもりみたいだし……」

 

「ああ、ゲンヤさんと話したら急いでクラナガンに戻ろう」

 

「ーーふふ……どうやらここまでの様ですね」

 

背後にいた空白が警備隊を見下ろしながらそう言った。

 

「空白……行くのか?」

 

「これ以上付き合う義理もありません。 報告はこれで十分ですし、私は私でやる事も多いです」

 

「そう……」

 

「ありがとね、協力してくれて」

 

「……今日はもう会うことはないでしょう。 ですが、まだ夜は続きます……くれぐれも気を抜かない事です」

 

「ああ……ありがとうな」

 

「お疲れ様、気を付けてね」

 

「ふ……それではさらば、です」

 

無駄にカッコつけたセリフを言い、空白は病棟屋上を駆けてそのまま屋上から飛び降りた。 その後、ゲンヤさんとギンガと合流し、俺達は手早く事情を説明した。

 

「……そうですか。 もうお戻りになるのですね」

 

「ごめん、シャッハ……本当なら復旧の手伝いをするべきなんだろうけど……」

 

「いえ、気にしないでください。 警備隊の方々もいますし、陛下には陛下にしか出来ないことをすべきです。 ……姫の身に危険が迫っているのでしょう?」

 

「ああ………正直、ホアキン先生の思惑はまだはっきりしていない。 この混乱の中で俺達がどう動くかべきなのも……だがヴィヴィオは……あの子だけは必ず守ってみせる!」

 

俺の言葉に同意するように、アリサ、すずか、アリシアは大きく頷いた。

 

「……私も同じよ」

 

「うん、絶対に守らないとね」

 

「そうそう、危ない人には意地でも返してやるもんか」

 

「はい、陛下達ならきっと答えを見出せます」

 

「はは、言おうとしていた事をほとんど言われちまったな」

 

ゲンヤさんはそう言いながら苦笑いすると、咳払いを1つして真剣な表情になった。

 

「ーー軌道拘置所も襲撃され警備隊も相当混乱しているが……他の警備隊と連携して事態の収拾に当たらせてもらう。 長い夜になりそうだが……お互い、乗り切ろう」

 

「はい……!」

 

「もちろんだよ!」

 

心苦しく思いながらも医療院を後にした。 走行中にファリンと連絡を取り、ヴィヴィオの無事を確認し。 念のため、ヴィヴィオとユノと共に異界対策課に向かうように指示した。

 

 


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