車で移動中にソエルからジオフロントB区画に入るための解除コードを送ってもらい、入り口前に到着したらそのまま解除コードを使用してジオフロント内に入った。
「ここがジオフロントB区画か。 構造自体は他のジオフロントと同じようだな」
「データベースによると、ミッドチルダの水道施設を管理している一角のようですね。問題の第8制御端末室は上層のどこかにあると思います」
「メールの内容を見る限り……私達を待ち受けている可能性が高いかもね」
「本当に話があるのか、それとも罠なのか……用心して慎重に進みましょう」
「ああ、行こう」
ゲートの先を潜り、ジオフロントの探索を開始した。 中は他のジオフロント同様に入り組んでおり、現実の迷宮のような印象を受けたが、グリードがあるわけでもなく。 たまに暴走した掃除ロボットを相手にしながら第8制御端末室に辿り着いた。
「あそこのようですね」
「人の気配は……しませんね」
「とにかく入ってみよう、なにか残しているはずだ」
「うん、了解」
中を警戒しながら突入し、罠などの類はないことがわかると警戒を解く。 中は以前爆破された第6制御端末室と大差ない。
「誰もいませんね……」
「誘っておいて……どういうつもりなのかな?」
「さぁて、な?」
制御端末室の奥にある座席の上に、一枚のカードが置いてあった。 手に取ってみると……また空白からだ。
〈今門は開かれました。 いざ星の塔に挑み私の望みを受け取ってもらえますか?〉
「置き手紙とは、また洒落ているな」
「ふうん? ………ずいぶんと回りくどいことするんだね」
「そうですね。 この星の塔というのはどこにあるんでしょうか?」
「恐らく、ミッドチルダ南部にある星見の塔だろう」
「星見の塔……古代ベルカ時代に造られた古い塔ですね。 天体観測場として機能していたそうですが、今は封鎖されているはずです」
南部に行こうとすれば絶対に目にする石造りの塔。 だが知っていても誰も訪れる事はない場所だ。
「とにかく手掛かりはこれしかないから、早く行こうよ」
「はい」
「………………」
「サーシャ?」
「え、あ、はい⁉︎ なんですか?」
「どうかしたの? ボッーとして」
「い、いえ、ちょっと次元会議のことを思い出しまして」
「ああそうか、その時にこことは違う第6制御端末室が爆破されたことを前に言ったな」
「まあ、確かに思い出すかな。 とにかく行こうか、アリサ達にも一言連絡しておかないとね」
「あ、僕がやります」
第8制御端末室を出ながら連絡をする中、サーシャは目を閉じて考え込んでした。
(あのハッキングの癖……次元会議の時に会った人と似ていた。 まさか、空白の背後にいるのって……)
サーシャはすぐに頭を左右に振ると、駆け足で後に続いた。
中央区から南部に繋がる郊外にある本道、その途中に森へと続く脇道がある。 その先には森をゆうに超える高さを誇る古風な塔が建っている。 そこが星見の塔、空白が指定した場所だ。 ちなみにこの他にも古代ベルカ時代に作られた建物はある。 月の僧院と太陽の砦、俺が産まれる前に三つとも調査されたらしいが、ただの古い建物としか判明せず、それ以降放置されているらしい。
「ここが、星見の塔ですか……」
森を抜けた所でソーマが車の窓から顔を出し、塔を見上げる。 だが、塔の入り口に車と管理局の地上の制服を来た人物がいる。
「……あれは、陸上警備隊の車両か」
「はい、警備隊で使用している軽装甲機動車ですな。 何でこんな所に来てるんでしょう?」
「直接聞いた方が良さそうですね」
ここで車を降りて、徒歩で塔の入り口にまで行く。 塔の前にはフェンスと思われる破片が散乱していた。
「一体、誰の仕業なのかな……? こんな場所に入る物好きなんていないと思うけど……」
「おーい!」
アリシアが呼びかけ、振り返ると……その人物はギンガだった。
「皆さん⁉︎ どうしてここに?」
「やっぱりギンガだったね」
「お久しぶりです、ギンガさん」
「そうだね、ソーマ君も元気そうで良かったよ。 サーシャちゃんも久しぶりたね」
「ど、どうもです」
「ところで……どうしてこんな場所に? あまり人が立ち寄る場所じゃないと思いますけど……」
「ああ、少し事情があってな。 それより、そこのフェンスはどうしたんだ?」
「その、どうやら何者かによって破壊されたみたいなんです。 元々この塔は危ないから警備隊が封鎖してたんですけど……私も定期巡回をしていて、ちょうど発見したばかりで」
「そうか……」
このタイミングで破壊されたフェンスか……となると、犯人はあいつだけか。
「アリシアさん……」
「そうだね、間違いないだろうね」
「???」
「ああ、実は……」
話が見えないギンガに、これまでの経緯をかいつまんで説明した。
「次元犯罪者に加担する正体不明の人物……⁉︎」
「うん……そうなんだよ。 その人から、この塔で待っているって伝言をもらってね」
「それでダメ元で調べに来てみたんだが……どうやら本当に待ち受けているみたいだな」
「は〜、街ではそんなことが……それで、どうするんですか? まさか本当に誘いに乗るわけじゃないですよね?」
「いや……あえて乗ってみるつもりだ」
俺の提案に、ギンガは驚いた。
「え、で、でも……相手は危険な犯罪者ですよ⁉︎ いくらレンヤさん達が強いからってどんな罠があるかもしれませんし……何だったらお父さん、隊長に連絡して応援を……」
「いえ、相手は相当なプロだと思います。 下手に大部隊を動かしたら感づかれて逃げられてしまいます。 ここは少人数で行った方が安全です」
「それは……そうかもしれないけど……」
「別に私達は、今の所空白を捕まえる気はないよ。 あくまで会って話を聞いて……それから空白をどうするかを決めればいいだけ」
ソーマとアリシアの言葉に納得しているが、しばらく考え込んでから口を開いた。
「……分かりました、だったら止めません。 その代わり……私にも協力させて下さい!」
「ええっ……⁉︎」
「あ、あのあの……いいのですか?」
「一応、この塔の管理は陸上警備隊の仕事ですし。 皆さんだけに危険な目に遭わせるわけには行きません。 それに、この前スバルがお世話になりましたし……ギンガ・ナカジマ陸曹、全力でサポートします!」
許可云々言う前について行くことが決定しているな。 相手の返答を聞く前に質問や決定するの、スバルに似ているな。 姉妹だから当然か。
「うーん、どちらかとかと言えばお世話になったのはソーマ達の方で俺ではないんだが……」
「ま、いいんじゃないの? 腕も確からしいし、ここは手を借りておこうよ」
「そうですね。 バックアップがいれば、私達も助かりますから」
「問題は空白が警備隊員を警戒しないかくらいですけど……1人なら大丈夫じゃないですかね?」
「……そうだな」
クイントさん直伝のシューティングアーツも、身体を見れば身に付いているのもわかるし。 このまま残しておくのも忍びない。
「ギンガ陸曹……よろしくお願いするよ」
「はい、お任せ下さい!」
そうと決まれば、早速塔の中に入った。 塔内に入いると……そこには幻想的な風景が広がっていた。
「これは……」
「……すごいね……あの光っているのは蛍か何かかな?」
「うーん、そうみたいですね。 どうもこの塔、封鎖されてから十年近く放置されているみたいで。 本当は、ちゃんと調査した方がいいとは思うのですが……」
「あはは……警備隊も大変で、そんな余裕もないですよね」
「はあ、そうなんだよね……」
「ま、こうなると、俺達に任されそうだがな」
「……ですよね」
仕事が増えたのが嫌なのか、サーシャが落ち込む。
「それにしても、この空間……変わっているね」
「変わっている……?」
「どう言うことですか?」
「どこからか異界に似た気配を感じる……異界の影響がこの塔に出ているね」
「え……なんでそんなことが……」
ギンガが訳のわからない顔をする。 改めて塔内部とはかけ離れた揺らいでいる空間を見つめると、現実に引き戻すように奥から重い足音が聞こえてきた。
「この音は……」
「まさか……!」
先に続く通路から現れるたのは、甲冑を纏った巨大な騎士のような2体のグリードだった。 とっさに俺達はデバイスを起動してバリアジャケットを纏い、武器を構える。
「ええっ⁉︎」
「こ、これは……⁉︎」
「っ、まさか本当に出るとはな……!」
「来るよ!」
1体のグリードが突進して来た。 迎撃しようとギアを1つ駆動させた時、後ろからギンガが突然飛び出した。
「せいやっ‼︎」
そのままグリードに飛びかかると、頭を両手で抑えて顔面に膝蹴りを入れた。
「ええっ⁉︎」
「ギ、ギンガさん……⁉︎」
「し、しまった! つい条件反射で!」
そう言いながらも両手を肩に移動させてそのまま直立し、手の力だけで頭上に飛び上がった。
「ふっ、せい!」
その状態から体を捻り、脳天に踵落としを落とした。 その攻撃で甲冑型にグリードは顔と頭が凹んでしまった。
「す、すみません皆さん!」
「ふう、クイントさんの影響だな……」
「あ、あはは……あの人時々過激な事を教えますからね」
苦笑いしながらも、ソーマは剣を投擲して転移し、もう1体のグリードを薙ぎ払う。
「行きます!」
サーシャが倒れたグリードの上に飛び上がり、輪刀ごと落下してグリードの胴に刃がめり込んだ。
「レンヤさん、アリシアさん!」
「了解! フォーチュンドロップ!」
《イエス、マイスター。 ダガーブレード、リミットスクウェア》
「とう!」
2丁拳銃に魔力刃を展開し、小太刀と合わせて4方向からグリードを切り裂いた。
《セカンドギア、ドライブ。 ソニックソー》
「
2つ目のギアを駆動させて刀に魔力を走らせる。 そしてもう1体のグリードの頭上に飛び上がり……
「はあっ!」
一回転しながら縦に真っ二つにし、グリードは消滅した。
「なんで現実世界にグリードが?」
「空白によるものなのか、それともここに異界があるのか……はっきりした事は分からないな」
「ただでは通らせてはくれないわけですね……」
「とはいえ、この場所の空間はかなり乱れているていることには変わらないよ……本人に聞けば、分かると思うけど」
そう言ってまとめたアリシアにギンガは咳払いを一つ、真剣な顔で全員を見回した。
「……どうやら警備隊がここを放っておいたのは完全に間違いだったようですね……行きましょう、皆さん。 私としても、この塔の中を調べたくなりました」
「ああ……慎重に探索を開始しよう」
「やれやれ、まさか現実世界でグリードを相手にするなんてね」
アリシアはそう愚痴りながらも顔はワクワクしている。 現実世界の迷宮の探索……まさか本当にやるとは思わなかったな。 グリード自体は大したこともなく、ソーマ達をフォローしながら塔を登った。
そして最上階の手前の広間に到着した。 そこには無限書庫には劣るがそれでも巨大な書棚と赤と青の天球儀があった。 古代ベルカ時代に天体観測をしていたのは間違いなさそうだ。
「ここは……」
「すごいです……」
「明らかに放置するものじゃないと思うけど……」
「ふふ……ここは古の魔導師……いえ、錬金術師が造った夢の産物といったところです」
突如、男の声が聞こえてくると……書棚の上に、黒のスーツを着て同色の目帽子を深くかぶった人物がいた。
「お前は……!」
「黒スーツに帽子……!」
「現れましたね!」
「初めまして、異界対策課の皆さん。 どうやらお客さんが1人、増えたようですが?」
「……私はただのサポートです。 どうかお気になさらず」
「ふふ……いいでしょう」
ギンガの存在に、大した気にもせず書棚を蹴って飛び。 俺達の前に降り立つ。 帽子を常に抑えていて、どうも顔を見せたがらないようだ。
「お会いできて光栄です……私は
「……ああ、随分と引きずり回してくれたからな。 ちなみに、塔にいるグリードはお前とは無関係か?」
「その通り……あれは元々この塔の中にいました。 腕を鈍らせないように、狩場を探してこの塔を見つけたのですが……中々面白い場所ですよ」
「そ、そうなんですか?」
「ま、個人がどうこうできるものでもなかったしね。 そうなるとそれはそれで別の問題だけど……」
「さて、色々と疑問がお有りだと思いますが……」
空白は少し両手を後ろに隠すと、どこからともなく二本のレイピアを取り出して構えた。
「まずはその前に、その実力を拝見させてもらいましょう」
「え……⁉︎」
「どういうつもりですか⁉︎」
突然の空白の行動に、ソーマとサーシャは武器を構えながら質問する。
「ーー
「うっ……」
「やっぱりお約束だね……」
「皆さん、気を付けてください! かなりの手練れです!」
「なら、手加減抜きで行かせてもらいます!」
「ふふ、よき闘志です。 それでは……行きますよ!」
空白はノーモーションでほぼ直立の状態で接近してきた。 突き出されたレイピアを受け止め、もう片方のレイピアを避けてその状態から斬り合った。
「さすがですね、一瞬でも気を抜いたらやられてしまいそうです」
「どの口が言う……!」
「それは失礼ーーおっと」
横から空白に向けてアリシアの魔力弾が撃たれ、一旦距離を取った。
「ふふ……さすがに部が悪いですね」
「今更何を言っているんですか? もう手遅れですよ?」
ギンガが脅しめいた感じで拳を構える。
「いえいえ、今ごろ一対一のお願いなどできませんよ。 ですから……」
レイピアを眼前に持っていくと、空白の身体がブレ始めていき……合計5人の空白が出現した。
『こうすれば、フェアになりますよね?』
5人が同時に同じ声で喋られるとどうも変な感じになる。
「分身⁉︎」
「アリシアさんと同じ魔法でしょうか……?」
「さぁてね……ただ、実体はあるみたいだけど」
「とにかく面倒には変わりない!」
分身の1体に斬りかかり、鍔迫り合いをしながらその場を離れた。 アリシアも1体を引き連れて離れ、3人はそのまま残りを相手にした。
「………………」
「皆さんが心配ですか?」
「いや、全然!」
皆が空白に引けを取るとは思わない。 だから今は目の前のことに集中する。
「はっ……!」
《サードギア……ドライブ》
「おっと……」
急激にレイピアの剣速が速く、鋭くなり。 3つ目のギアを駆動させながら捌いていく。
「はあっ!」
横一閃をひらりとかわし、挑発するようにまた帽子を抑えた。 動きも心情もひらひらしていて捉えにくいな……だったら。
「レゾナンスアーク……ファイナルドライブ!」
《リミットブレイク》
ギアの回転がさらに加速、激しさを増していき。 急激に上がった魔力で一気に踏み込んだ。
「っ⁉︎」
「
2本のレイピアを一瞬で上に斬り払い、一転して正面を斬り上げた。 空白は強い払いを受けきれず、吹き上がるとダメージに耐えきれず消えていった。
「時間をかけ過ぎたか……」
息つく暇もなく他の皆の援護に向かった。
「このっ……!」
「ふふふ……」
皆と離れてからこの空白……多分偽物と相手をしているかけど、銃も小太刀もひらひらかわされて。 しかも笑っているから余計腹立つ。
「いい加減当たりなさいよ!」
「ふふ、こう見えても痛いのは嫌いでしてね」
「子どもか⁉︎」
って、いけないいけない。 ここは冷静にならないと……と、そこで心を鎮めた瞬間……眼前にレイピアが迫っていた。
「うわああっ⁉︎」
「おや惜しい、あと少しでしたのに」
「ほんっっと、人を煽るのがお得意のようですねぇ⁉︎」
「お褒めいただき光栄です」
「褒めてなーいっ!」
《落ち着いてください、マスター》
「ふふふ……」
ブチ……
「…………うん、落ち着いた。 頭はホットで心はクールに……ブッ飛ばす! フォーチュンドロップ、スタイルチェンジ!」
《イ、イエスマスター。 トランス、ポリゴンスタイル》
バリアジャケットが変化していき、上は肩出しのコートを羽織り、スカートが動きやすようにホットパンツに変わった。 小太刀と2丁拳銃は消えて、背後に6個のビット……タクティカルビットと共に空中に浮遊する。
「試作段階の装備だけど、見せてあげる!」
ビットが変形し、赤いソードビットに変形し空白に向かって急速に発射させる。
「っ……これはマズイですね」
高速のソードビットをギリギリで避ける空白。 その表情は見えないが、余裕ではないことはわかる。
「逃がさないよ!」
2つのソードビットを黄緑色のビットレーザーに変形させ、左右から強力な魔力レーザーを放った。 2つのレーザーが直撃した瞬間、爆煙が舞い上がる。 ビットを戻し、フォーチュンドロップに確認を取る。
「やった?」
《反応、未だ存命です》
煙が晴れると、空白が煙からスーツを叩いていてたが、ダメージは受けたようだ。
「次は……こちらの番ですよ!」
ほぼその体勢から一瞬で目の前に接近し、レイピアには朱色の魔力が纏われていて、捻りを加えた鋭い突きが放たれた。
「遅いよ!」
《リフレクトビット》
レイピアが届く前に、3つのビットが変形して青いくなり。 三角形の魔力障壁が展開された。
ガキィンッ‼︎
「っ⁉︎」
それには空白も驚愕したようで、口元しか見えない顔が驚く。
「隙あり……ブレイドダンス!」
すれ違い様に、ビットを全てソードビットに変形させて空白を連続で切り裂いた。 空白はそのまま倒れると、一瞬で消えてしまった。
「ふう……やっちゃったな……」
ちょっと後悔しながらも、皆の元に向かった。
「え、い⁉︎」
「きゃっ……!」
「くっ……」
レンヤさんとアリシアさんと分断されて、今は顔が……は見えないけど、同じ空白3人と戦っていた。 だが、空白は隙のない連携や絡み手で私達を圧倒する。
「さすがは噂されることはありますね、こうも相手にならないなんて」
「ふふ、あなた方も中々の実力ですよ」
「ここまで食い下がるとは想定外です」
「そこのあなたも、良い師に教授されたのですね?」
空白が私達を囲いながら1人ずつ話掛けてくるので、かなり変な感じになる。
「ソーマ君、サーシャちゃん、まだやれる?」
「はい!」
「もちろんです!」
2人は私と同じでまだ諦めていなく、自分の武器を握り締める。 私も左拳を右手に力強く当てて気合いを入れ直す。
「はっ!」
ソーマ君が1体の空白に向かって剣を投擲し、転移してそのまま斬り合った。 ソーマ君は常に上から斬りかかっていて、空白より優位な位置を取った。
「えええいっ!
サーシャちゃんは物凄い速度で回転を始め、その猛攻に空白は受け切れず後退して避ける。
「たたたっ!」
「おっと……」
残った1人に接近し、何度もパンチの連打を繰り出す。 だが、やっぱりひらひらとかわされて全く当たらない。 けど……
「逃がさない!」
「ふふ……」
とにかくインファイトで攻めて攻めまくる。 少しでも掠れば流れは変わる!
「せい! やっ、とっ!」
「っ………」
右ストレートだ掠って体勢を崩した!
「喰らえ! お母さん直伝、殺人キック!」
軸足である左足のローラーを踏み込みと同時に逆回転させ、右足で空白に向かって蹴りを入れた。
「とっ……!」
空白は身を引いてギリギリで飛んで避けるが、蹴りの風圧で体勢を崩し、高めに飛んでいる。
「まだまだ!」
「くっ!」
飛び上がって追撃し、空白はレイピアを突き出すが……見切り、左手でレイピアの突きを抑え……
「ルーシー・ハーン!」
それを支えとして利用して右手で胴に拳を突きを入れた。
「せいっ!」
「グハッ!」
そのまま蹴りつけ、空白をソーマ君の方の空白にぶつけた。 そして着地してすぐさまサーシャちゃんの方にローラーを向けた。
「! ギンガさん⁉︎」
サーシャちゃんは突然の事で驚いたが、空白は冷静で。 先ほどよりも鋭く速い突き放った。
「ヤン・エラワン!」
体を横に倒すことでレイピアをギリギリで回避すると、同時に強力な回転をかけて空白の胸に膝蹴りを放った。 攻撃をモロに受けた空白はそのまま消滅した。
「サーシャちゃん! アレをまとめて狙って!」
「は、はい!」
私の指示にすぐさま輪刀を浮かせて、残りの空白に向けた。
「ショートバスター!」
輪刀を加速器として青白い魔力砲を一瞬にして放った。 砲撃は空白の1人に直撃し、消えていった。 しかもこの魔法、チャージ時間が短い変わりに射程と威力が小さいのに、今のは凄い威力だ。
「せいやっ!」
「ぐうっ……」
そして残った1人をソーマが倒し、空白は膝をついた。