魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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閃の軌跡IIIの最新情報来たぁ‼︎

思わず興奮してしいまして、来年の秋頃発売の予定らしいですが、今からでも待ちきれない心情です。

さらにスクリーンショットを見たら興奮倍増です‼︎


104話

 

 

落し子に災厄を起こさせないために巨大なゲートを潜り抜けると、そこは機械的な要塞の中のような異界だった。

 

「こ、これって……」

 

「……まるで要塞ね」

 

「どうやら……影属性が強く働いているみたい」

 

「属性の暴走に残された最後の1つですね」

 

「ですが、あれは……」

 

正面を見ると、扉が2つあった。 どうやら二手に分かれているようだ。

 

「二手に分かれているな」

 

「かなりの深度(レベル)の迷宮が引き寄せられたようだね」

 

異界迷宮(ザナドゥ)の性質上、同時に攻略しないと突破は無理だね」

 

「眷属でこのレベル……夕闇ノ使徒の力が計り知れないぜ」

 

「ーーならば二手に分かれるぞ。 A班4名、B4名……上手く戦力を分けろよ」

 

「了解です」

 

A班に、俺、ソフィーさん、ルーテシア、アリシアとソエルとなり。B班にアリサ、すずか、ソーマ、サーシャとアギトという編成になった。

 

決定した所で、ソフィーさんが作戦開始の合図を出そうとする。

 

「ーーこれより、異界迷宮の攻略を開始する。 目標、夕闇の落し子。 ミッドチルダの異変の元凶を何としても討伐する!」

 

『おおおっ‼︎』

 

叫ぶように返答し、俺達は二手に分かれ、片方の扉を開け迷宮に入った。 通路の壁の至る箇所の色が違っている、おそらく影以外の4つ属性が影響しているのだろう。

 

迷宮に入ると武器を取り出し構える。

 

「クラレント、セットアップ」

 

ソフィーさんは赤い宝玉の形をしたデバイスを取り出すと起動し、赤い装飾が施された銀のロングソードを掴み、振り払うとかなりの振動が伝わってくる。

 

「す、凄いです……」

 

「以前にも増して気迫が凄いよ」

 

「さらに腕を上げたみたいですね?」

 

「ふ、私もまだまだ現役ということだ。 さて……時間がない。 B班に遅れないよう、速やかに出発するぞ」

 

「了解です!」

 

「レッツ・ゴー!」

 

「オー!」

 

落し子を討伐するため、異界迷宮の攻略が開始した。 グリードもかなりの実力で、トラップも電撃の檻とかなり凶悪だ。

 

「要塞めいた異界だけあってトラップも多いな……」

 

「ーーあまり不用意には近づくな。 スイッチを探して、無効化しながら進むぞ」

 

卓越した剣技でグリードを倒しながらスイッチを探しだし、トラップを無効化し道を作りながら奥へ進んだ。 中間地点に到着すると、俺とアリシアは少し披露を感じ、ルーテシアは息絶え絶えでガリューにおんぶされていおり、ソフィーさんは全く息を切らさず余裕そうだ。

 

「ふう、ここのグリードは手強いな」

 

「そうだね、全く倒せないわけじゃないけど……」

 

「はあはあ、トラップが……邪魔過ぎです……」

 

(コクン)

 

「大丈夫、ルーテシア?」

 

「ふふ、君は幼いながらも良くやっている。 その調子で、何とか付いて来るといい」

 

「は、はい……!」

 

先ほどのと変化したギミックを攻略しながらグリードとトラップを退け迷宮を駆け抜けた。

 

「そろそろ終点が近そうだ……最後まで気を抜くな!」

 

「ソフィーの方こそね!」

 

それから動く床を作動させ、狭い空間でグリードが何体も現れたが何とか退け、それからすぐに迷宮を抜け、最奥の手前に到着した。 しばらく傷を癒しながら待っていると、もう1つの通路の扉が開き、アリサ達が出てきた。

 

「ーーアリサ!」

 

「あ……!」

 

「皆さん!」

 

アリサ達は俺達に気付くと近寄ってきた。

 

「お互い、無事で良かった」

 

「何とか最奥に辿り着いたみたいだね」

 

「ああ、この先にーー」

 

ドックン‼︎

 

その時、唐突に強い虚空震が起こった。

 

「い、今のは……」

 

「うん、間違いないね」

 

「どうやら……最後のようだね」

 

(コクン)

 

「ふう……ようやく終わりそうです」

 

「気を抜くなよ」

 

「おうよ!」

 

気を引きしめ、ソフィーさんが最初と同じように号令する。

 

「異界対策……いや、チーム・ザナドゥ。 ここまでよく付いてきてくれた。 もう、時間も残されていない。 覚悟を決めたら、さっそく突入する!」

 

「ええ……!」

 

「はい……!」

 

最後の準備を整え……そして最奥の扉の前に立つ。

 

「行くぞ……気を引き締めて行くぞ!」

 

『了解っ‼︎』

 

扉が開き中に入ると……

 

ドックン‼︎

 

また虚空震を感じ、目の前に……紫の波動を放つグリムグリード、夕闇ノ落し子(ブリード・オブ・ダスク)が強い存在を放っていた。 ブリード・オブ・ダスクは咆哮を上げながらさらに強い虚空震を起こした。 その起きる様は、まるで震源が目の前にあると言う感覚に陥ってしまう。

 

「うくっ……⁉︎」

 

「きゃあああっ⁉︎」

 

「こ、虚空震……!」

 

「まさか……攻撃に使うつもりか⁉︎」

 

「とんだ化け物だ……!」

 

「で、でも……引くわけにはいきません!」

 

「ええ、放置すればあれは災厄を起こす……!」

 

「うん……ここで、確実に止めないといけない!」

 

「そんなこと、絶対にさせない……! ミッドチルダを、街を……大切な皆を守るためにも!」

 

刀をブリード・オブ・ダスクに向け、俺は想いを口にする。

 

「ここで、倒させてもらう……当たり前の明日を迎えるために!」

 

「これで終わりにする……ゆくぞ! チーム・ザナドゥ!」

 

『おおっ‼︎』

 

ブリード・オブ・ダスクは咆哮を上げながら腕に刃を展開させて前を薙ぎ払った。 それを散開して避ける中……

 

「とりゃ!」

 

ソーマが剣をブリード・オブ・ダスクに投げ、剣が激突すると同時に転移し、そのまま剣を斬りつけた。

 

「私も、行きます……!」

 

「ガリュー、行くよ!」

 

(コクン)

 

サーシャが輪刀の中心から魔力弾を発射し、ルーテシアはガントレットを操作し始める。

 

《ソニックソー》

 

烈風陣(れっぷうじん)!」

 

《ガトリングブリッツ》

 

「乱れ撃つよ!」

 

《アイススピア》

 

氷槍穿(ひょうそうせん)!」

 

腕や足の踏み潰しや、それにより起きた衝撃を避けながら接近し攻撃を当てるが、その度に硬い外殻に阻まれる。

 

「ッ……固いな」

 

「さっきからダメージが……あんましないようだね」

 

「あの外殻が厄介です……」

 

「でも、壊すことができれば……!」

 

「ーーなら、どデカイの一発かますわよ!」

 

「おう、ド派手に行くぜ!」

 

「「ユニゾン・イン!」」

 

アリサがアギトとユニゾンし、アリサにアギトの髪と目の特徴が現れ、炎と魔力が膨れ上がる。

 

「さあ、行くわよ!」

 

《ロードカートリッジ》

 

『コントロールは任せろよ!』

 

俺達がブリード・オブ・ダスクを引き付ける中、アリサの魔力が上がって行き、フレイムアイズの刀身の炎がさらに勢いを増す。

 

『行くぜえぇ、避けろよ!』

 

《クリムゾンストライク》

 

「はあああっ!」

 

飛び上がり、フレイムアイズを全力で振るうと……剣がいきなり途中で止まった。まるで目の前の空間を殴りつけたかのように。 さらに、そこから強烈な爆炎と爆風が発生した。 すぐさま離れると爆炎がブリード・オブ・ダスクを襲い、着弾による強い衝撃が飛んできた。

 

「うわっ……⁉︎」

 

「ひゅう、強烈ぅ!」

 

「これなら……」

 

「! いや、まだだ!」

 

その時、巻き上がった煙の中から首が飛び出してきた。 外殻にヒビは入っていたが、ブリード・オブ・ダスクは大口を開けると闇色のブレスを吐いてきた。

 

「させないよ、トライシールド!」

 

「隙間があるって!」

《ディソルダープロテクション》

 

ルーテシアが正面に近代ベルカ式の魔法陣を盾のように展開し、アリシアが左右に開いた隙間を複数のミッド式の魔法陣で防いだ。 その隙にソフィーさんが背後から接近する。

 

「せいっ! クロススラッシュ!」

 

武器に魔力を纏わせ巨大な剣を作り出し、脚を狙って広範囲に左右から斬撃を繰り出した。 だが、全くダメージを感じさせず後ろ足で直立し左右の腕の刃を展開して振るってくる。

 

「どりゃっ!」

 

「ふっ……」

 

サーシャとソーマは刃を受け流して避け……

 

「今が狙い時、行くよガリュー!」

 

(コクン)

 

《Gauntlet Activate》

 

「ガントレット、チャージオン!」

 

ルーテシアはガントレットを起動させ、ガリューを球に変えると。 既にゲートカードをセットしていたのか、ガリューを掴んで振りかぶる。

 

「爆丸、シュート!」

 

球を投げると、どう言う訳か地面に着かずに球が展開して……

 

「ガリュー……アタック!」

 

ガリューがそのまま出現すると投げられた勢いのまま、ブリード・オブ・ダスクの腹部にボディーブローをいれ、それにより腹部の外殻が砕けた。

 

「ポップアウト、ダークオン・ガリュー!」

 

《Ability Card、Set》

 

「アビリティー発動! ダークサーベル!」

 

手に紫色の魔力の剣を出現させ、ブリード・オブ・ダスクに斬りかかり、ぶつかるたびにその巨体の攻防に衝撃が響き渡る。

 

「な、何度みても慣れませんね……」

 

「だろうな、私も慣れん」

 

「あ、あはは……」

 

「ふう……緊張感ないわね」

 

その時、いきなりブリード・オブ・ダスクはその巨体で高く飛び上がった。

 

「あの巨体で飛んだ⁉︎」

 

「あれで落ちたらかなりの衝撃が来るよ!」

 

「させません!」

 

《Ability Card、Set》

 

「フュージョン・アビリティー発動! バオルボウ!」

 

ガリューは魔力剣を振りかぶると上にいるブリード・オブ・ダスクに投げつけた。 だが、体勢は崩せたがあの巨体で落ちることは変わらなかった。

 

「やばっ!」

 

「ルーテシアちゃん、ガリューを!」

 

「は、はい! アビリティー発動、インディブルダッシュ!」

 

衝撃から逃れるために空中に浮び、ガリューは魔力を纏い、ブリード・オブ・ダスクに当たる瞬間に高速で移動して避け……ブリード・オブ・ダスクはそのまま地面に叩きつけられ、衝撃が辺りを襲う。

 

「きゃああ!」

 

「くっ!」

 

「怯むな! 今が好機だ!」

 

「はい!」

 

「行くわよ!」

 

サーシャ達が怯む中、ソフィーさんと俺、アリサ、すずか、アリシアは衝撃をかいくぐり残りの外殻を狙う。

 

「はあっ、ソニックブレード!」

 

風迅蒼破(ふうじんそうは)!」

 

炎砕牙(えんさいが)!」

 

氷楼月(ひょうろうげつ)!」

 

「アサルトサークル!」

 

それぞれが頭部、両手、両脚を狙い攻撃し、全ての外殻を破壊した。

 

「今よ、ルーテシア! デカイの入れなさい!」

 

「はい!」

 

《Ready、Mega Blaster》

 

ガントレットから紫色の光が放射され小さなパーツが出現すると、合わさって1つのバトルギアができた。

 

「バトルギア……セットアップ!」

 

それをガリューに向かって投げると、バトルギアが巨大化し……巨大なブラスター砲が装備された。

 

「レッツ・ゴー! バトルギア・アビリティー発動! メガブラスター・ロック!」

 

砲身に魔力がチャージされ……ブラスター砲から二本の魔力レーザーを発射された。 その威力は絶大で、ブリード・オブ・ダスクは壁まで押しのけられてかなりのダメージを受けた。

 

「よし、このまま一気に……!」

 

「行きます!」

 

ソーマとサーシャがたたみ掛けようとすると、

 

「! 待ちなさい!」

 

「あれは!」

 

ブリード・オブ・ダスクは咆哮を上げながら体表の色を紫色に変化させた。

 

「な、何が起きたんですか⁉︎」

 

「強力な影属性の力……無属性から変化させたの⁉︎」

 

「え、今影属性になったんですか? なら影には影、ダークオン!」

 

《Ability Card、Set》

 

「アビリティー発動! ダークオン・ドライバー!」

 

アビリティーが発動し。 ガリューはマフラーに自らの身を包み、きりもみ回転しながらのブリード・オブ・ダスクに突撃した。

 

その時、ブリード・オブ・ダスクは大口を開けると辺りを震わせるような咆哮をした。 するとガリューはあらぬ方向へ進み、壁に激突した。

 

「ガリュー⁉︎」

 

「うわあっ⁉︎ 何も見えない!」

 

「ううっ、今の咆哮のせい……?」

 

「ッ……やられたわ……!」

 

どうやら今の咆哮には視界を奪う効果があるようで、ガリューに加えソーマとサーシャとアリサが視界を奪われていた。

 

さらにブリード・オブ・ダスクは体表の色を黄色に変化させた。

 

「今度は鋼属性⁉︎」

 

「まさに、属性暴走の体現だね」

 

「でも、それは弱点もできたってこと! ソエル!」

 

「了解!」

 

ソエルは口から何かをアリシアに飛ばし、それを受け取る。 アリシアが手に持っているのは……風の神器だ。

 

「両翼一閃!」

 

アリシアは風の神器を纏い、風属性の魔力剣をいくつも飛ばすとブリード・オブ・ダスクは苦しそうに後退する。

 

「まだまだ! 嵐界、霊陣! ラストフレンジー!」

 

背中の霊力を収束させたブレードを開いて僅かに跳び上がり、風属性のレーザー薙ぎ払った。 だが、ブリード・オブ・ダスクはまた属性を変化させ……今度は焔属性に変わり、アリシアの攻撃を軽減させた。

 

「くっ、厄介なことを……!」

 

「なら、次は私の番だよ!」

 

すずかはソエルから神器を受け取り、水の神器を纏う。

 

「蒼穹一閃!」

 

弓から水渦巻く矢を放ち、続けて矢を引き弓を構える。

 

「三星結集! トリニティアロー!」

 

霊属性の矢を3発重ねて放ち、威力を倍々に高める魔法。 そして三本目の矢は、ブリード・オブ・ダスクを貫通すると同時にその場で炸裂した。 そして怯んでいるその隙にアリサ達を回復させる。

 

「五元快方! ディスペルキュア!」

 

「ん……あ、見えます!」

 

「傷も治っている……」

 

(ペコ)

 

「ありがとうね、すずか」

 

「どういたしまして」

 

「ほら、治ったならすぐに動いて!」

 

「は、はい!」

 

その間にブリード・オブ・ダスクはさらに属性を変化させ、今度は風属性に変わった。

 

「さあて、よくもやったわね……」

 

『倍返しだ!』

 

アリサはソエルから火の神器を受け取ると纏った。

 

「焔剣一閃!」

 

燃え盛る大剣で薙ぎ払い、追撃して懐に入り……

 

「建つは血塔!」

 

業炎をまとった巨大剣を振り上げ、ブリード・オブ・ダスクを斬り上げ、続けて魔力を高める。

 

「炎舞繚乱! ブレイズスウォーム!」

 

周りに紙葉を舞わせ、時間差で熱風を巻き起こした。 最初のダメージに加え、かなりの深手を負っているはずだ。

 

だが、その時ブリード・オブ・ダスクは両手を上げると……

 

ドックン‼︎

 

「うっ!」

 

「ぐうっ、虚空震か!」

 

「全員、防御または回避しろ!」

 

「はい!」

 

次の瞬間、ブリード・オブ・ダスクを中心にして巨大な衝撃が襲う。 冗談抜きで震源が目の前にあるような衝撃だ。

 

「皆、大丈夫か⁉︎」

 

「は、はいぃ!」

 

「何とかね」

 

「はあはあ、こんなに強いなんて……」

 

「気張れ、まだ終わっていないぞ……!」

 

コロコロと属性が変化し、また影属性になり、さらに激情したのか魔力の奔流が激しくなる。

 

「うっ、効くか分からないけど……ゲートカード、オープン! コマンドカード、フリーズエネミー!」

 

地面からゲートカードが現れると、ブリード・オブ・ダスクが石になったかのよう動かなくなった。

 

「や、やった!」

 

「いいよ、ルーテシア!」

 

「一気に決めるぞ!」

 

ソフィーさんが一気たたみ掛け、俺はソエルからある神器を取り出す。

 

「はああっ! ジャッチメントドライブ!」

 

急速にロングソードに魔力を込め、高密度の魔力を纏った剣を撃ち下ろした。

 

「はああっ!」

 

俺はソエルから受け取った……闇の神器を纏い、全力で魔法を放つ。

 

「幻影想起! ナイトメアフィアー!」

 

ブリード・オブ・ダスクの影から槍が飛び出し、抵抗なく身体を貫く。 そして飛び上がって頭上を取り、大鎌が闇を纏いさらに巨大で黒く、大刃と小刃が左右にある鎌となり……

 

「我が鎌は漆黒、黒き常闇に判決せよ! ルナシェイド!」

 

小刃で軌跡を残しながら何度も斬り裂き、大刃をブリード・オブ・ダスクに当て……一気に魔力を解放し、螺旋を描きながら刈り取った。

 

その攻撃に耐えられず。 ブリード・オブ・ダスクは咆哮を上げると、胸を抑えて苦しみ出し。 胸から光が漏れ出すと断末魔を上げながら消えていった。 それと同時に……迷宮も光出し、異界が収束していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実世界に戻ると、周りは騎士団とヘインダールの団員が息を上げながら休んでいた。 辺りにはグリードの気配もなく、何とか退けられたようだ。

 

「ふう、どうやら異界化は無事に収まったみたいだな」

 

「そのようだな」

 

「団長!」

 

「落し子を仕留めたようだな」

 

騎士団の1人とオルデンの白装束が近寄って来て、ソフィーさんに状況を報告する。 ゲートが開いていた場所を見ると……焦げた何かの破片が散らばっていた。

 

「あの破片は……」

 

「落し子を封じ込めていた依り代みたいね」

 

「ん〜……異界反応もなし、完全に消滅しているね」

 

「ほっ……そうですか」

 

(コクン)

 

「良かった……本当に」

 

「やっと肩の力が抜けるね」

 

「ーーよお、お疲れさん」

 

「ご苦労だったさぁ」

 

そこへラーグとカリブラが近寄って来た。 カリブラは肩に刀担いでいて、深緑のコートは泥で汚れていた。

 

「そっちもお疲れ、無事みたいだね」

 

「ああ、それなりに大変だったが……お前達ほどじゃあ、なかったからな」

 

「こっちはいい訓練になった、こんな大量のグリードを相手にする機会なんて滅多にないからな」

 

「む……」

 

「いいさ、それがヘインダールなのだから」

 

すずかがさすがに不謹慎だと思ったのか注意しようとした時、ソフィーさんが来てそれを制した。

 

「感謝する、お前達」

 

「ソフィーさん……?」

 

「お前達のおかげで何とかこれだけの被害で済んだ。 そして……改めて謝罪させてくれ、お前達を盾にし隠れ蓑にしたことを」

 

「いえ、ソフィーさん達にも事情はありますし」

 

「むしろ私達が異常なだけで、これが本来の形なんだよ」

 

「そうね、異界は表に出るべき物じゃないわ」

 

「そうか……だがせめて何人か出向扱いで異界対策課に送ろう。 お前達のためなら皆も喜んで力を貸してくれるだろう」

 

「あ、ありがとうございますです! デスクワークも私1人じゃ苦しくて苦しくて……!」

 

「あ、あはは……」

 

サーシャを酷使しすぎた記憶があり、さすがに申し訳なくなる。

 

「これで、ミッドチルダに潜んでいた元凶は消え去った……」

 

「今後は異界化も落ち着きはずだね」

 

「ふう、仕事が少なくなるね。 その代わりに依頼が増えそうだけど」

 

「はは、あり得ますね」

 

「でも、ようやくひと段落ですね!」

 

(コクン)

 

「あたしとしては、物足りない気もするけどな」

 

「あんたはこれを機にもっと落ち着きなさい」

 

「せっかくだして、どっかで打ち上げでもしようぜ」

 

「賛成〜! なのは達も一緒に呼んじゃおうよ♪」

 

「そうだな、それもいいかもしれないな」

 

あの緊張した空気からようやく解放され、賑やかになってしまった。

 

「そういえば、リヴァンは?」

 

「リヴァンならあそこさぁ」

 

カリブラの指差す方向にリヴァンとフォーレスと言う男性がいた。 リヴァンは肩で息をあげて膝をついており、フォーレスは余裕でタバコを吸っていた。

 

「あいつらはグリードを相手にしながら戦っていたさぁ。 まあ、邪魔にはならなかったし、グリードも倒してくれてたから止めはなかったさぁ」

 

「そう……」

 

「リヴァン君、大丈夫かな?」

 

「完敗でしたのでしょうか?」

 

「いや、それなり喰らい付いていたさぁ。 リヴァンは弓で鋼糸を飛ばす分、フォーレスの旦那より速いからな。 だが、旦那が一度に操れる鋼糸の数は約億単位、万単位のリヴァンじゃあ少し部が悪い。 まさしく桁が違うのさぁ」

 

フォーレスは煙をはくと、膝をついているリヴァンを見る。

 

「……反射速度、空間把握能力、戦術の組み方、鋼糸のキレ、瞬発力や耐久力を含めた身体能力、剄量……どれも以前よりも増して上がっているな。 俺の推測だともう少し下と読んでいたが」

 

「くっ…何が言いたい……!」

 

「天剣相手にただのデバイスでここまで戦えたことを褒めてるんだよ」

 

タバコを捨てて足で火を消すと、天剣を待機状態に戻し……リヴァンに放り投げた。

 

「なっ⁉︎」

 

「そいつはやる、後は勝手にしろ」

 

「一体何のつもりだ!」

 

「さてな」

 

フォーレスはリヴァンに背を向け歩き出し……忽然と姿を消した。

 

「…………………」

 

リヴァンは呆然と手にある天剣を見つめていた。

 

「おいおい、旦那は何考えてんのさぁ。 完全に戦力ダウンさぁ……」

 

「ふ、奴の考えていることなど分からんさ」

 

「……しょうがないさぁ。 さあて、これで依頼は完了だ。 俺っち達はこれで退散させてもらうさぁ」

 

「ああ」

 

カリブラは他の団員を連れて、自分達の次元船に乗り込みこの場を後にした。 次元船が去るのを見送ると、白装束がソフィーさんの方を向いた。

 

「さて、私もこれで失礼する」

 

「そちらもご苦労だった、ミッドチルダの危機を伝えてくれて感謝する」

 

「構わない、こちらも災厄の1つを消せればそれでいい」

 

白装束は特に気にもせず首を横に振るう。 だが、今聞き捨てならない事があった。

 

「待ってくれ、災厄の1つとはどう言う事だ」

 

「まさか、まだ元凶がいるの!」

 

「……確かに元凶はまだ存在すしてしる、夕闇ノ使徒の眷属は2体、ここにはいないがな」

 

「それは一体どこで……」

 

「それを教えることはできない、仮に知ったとしてもお前達ではどうしようもできない」

 

白装束は手をかざして魔法陣を展開し、転移しようとした。

 

「ちょ、ちょっと! まだ話は終わってーー」

 

「今回の連続して起きた虚空震の影響で時空間が歪み、次元間航路が不可能になっている。 道しるべを付けていなければ次元転送は無理だろう」

 

「ぐっ……」

 

「では……機会があれば、また会おう」

 

そう言うと、白装束はどこかの次元世界に転移していった。

 

「………………」

 

「……なんか釈然としない」

 

「でも実際、他の次元世界に落し子がいるなら……私達にはどうする事もできない」

 

「そう言う事だ、お前達は自分の役目を果たした。 今はそれだけでいい」

 

「はい……」

 

「で、では! 予定通りこのまま打ち上げに行きましょうよ!」

 

「そ、そうだよ! あんなグリードを倒したんですからここはパーっと行きましょうよ!」

 

サーシャとルーテシアが場の空気を変えようと、明るくはしゃぎ気味でそう言う。

 

「…………はは、そうだな。 出来ないことを悔いても仕方ないか」

 

「今は、危機を退けたことを……素直に喜びましょう」

 

「うん、そうだね」

 

「それじゃあ、行ってみようか!」

 

俺達はソフィーさん達のご厚意に甘えさせていただき、後始末を任せて他の団員に飛行艇で送ってもらい第二演習場を後にした。

 

それからなのは達を呼び、ルキュウの喫茶店で打ち上げをした。 なのは達は力になれなかったことを悔いていたが、俺達はぜんぜん気にせずに楽しくやった。 そんな打ち上げはドマーニ教頭が注意するまで夜遅くまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月上旬ーー

 

ようやく次元空間が安定し、念の為にクロノ達次元船行部隊の協力の元、もう一体の落し子の存在を確認するため管理世界、管理外世界関わらず人が暮らしている次元世界を調査した。 だがどこも特に変化はなく、特にグリードの存在や聖霊教会が確認されている地球は念入りに調べたが……海鳴に滞在していたエイミーさんや隠居しているギル・グレアムさんに聞いてみても有力な情報は得られず、捜査は打ち切られた。ただの杞憂だったのか、それともこちらと同じく極秘裏で処理されたのかは定かではないが……なにやら不吉な予感がする。

 

まだ、何も終わってないという感じが……胸の中で渦巻いていた。

 

 

 


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