魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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10話

 

 

高町家に住み始めて早半年、ようやくこの生活にも慣れてきた。

 

翠屋の手伝いをしながら父さんたちの指導のもと鍛錬をしていた。

 

学校はまだ行っていない、まだ入学できるまで頭が良くないからだ。

 

入るなら、公立でもよかったが、なのはたちの強い推薦でなのはたちが通う私立聖祥大学付属小学校に編入生として入ることになった。

 

しかし、今まで勉強なんてしたことはないし、漢字も外に置いてあるテレビを見て覚えたくらいだ。

 

ただ恭也さんが言うにはもう少しで基準値を超えるらしい、頭が良くなってくるのは素直に嬉しい。

 

聖祥のパンフレットを見た時、年間の学費が公立と桁が違うことに気がつき、やはり公立に変えようと思ったが桃子さん、お母さんに……

 

「子どもがお金のことを気にするんじゃないの」

 

断られてしまった、やはり申し訳なくいつか絶対に返そうと誓った。

 

鍛錬の方も最初の試験以外、順調だ。

 

でその試験ていうのが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まーーーーーてーーーーー!」

 

「ほらこっちだよ」

 

お父さんに奪われたソエルを取り返すことだった、別にお父さんが悪いわけでもない、俺の了承もある。

 

ただ……

 

「なんで!街中を走っているのですかーーーーー!」

 

「試験だからだよ」

 

平日の昼間とはいえ、人がいて恥ずかしい。

 

「とうっ!やっ!」

 

手を伸ばすもかすりもしない。

 

「こうなったら!」

 

「えっ」

 

肩に乗ってるラーグを掴み……

 

「行けラーグ!」

 

思いっきり投げた。

 

「ふざけんなーーーーー!」

 

しかし、お父さんは苦もなく掴み、やさしく投げ返した。

 

「こんな小細工は通用しないよ」

 

自信満々に言う。

 

「くっ動物になんてことを……」

 

「おまえが言うな!」

 

何か手がないか辺りを探し、使われていないロープを見つけた。

 

「これだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん?諦めたのかな?」

 

川に架かっている橋を渡る時にレンヤがいない事に気がついた。

 

「そう簡単に諦めるとは思わないんだけどね〜」

 

その時、レンヤが見えてきた。

 

「うおおおおおおお!」

 

ラーグをロープで縛り付け振り回しながら。

 

「小細工がダメなら大細工だーーー!」

 

「…………………」

 

私は思った……

 

(それ十分、小細工!)

 

「うっりゃーーーー!」

 

「あああああれええーーーー!」

 

投げられたラーグを避けた。

 

「これじゃあまだ…!」

 

避けたはずのラーグが後ろから来ていた。

 

(なるほど…柱に回して…!)

 

ロープを柱に回して方向を変えたのだ。

 

「…でもまだ!」

 

それを飛んで避けた。

 

「まだまだー!」

 

レンヤが飛びかかってきた、ラーグを踏み台にして。

 

「うおおおおお!」

 

しまった!空中では……

 

「取った!……あっ」

 

取ったのはいいけど橋から出てしまった。

 

「あああ!お父さんパス!」

 

ソエルを投げてレンヤは川に落ちてしまった。

 

「あ〜あ、落ちたな」

 

「落ちちゃったね」

 

ソエルと背中にくっきりと足跡があるラーグが言った。

 

「どうかしたのかい?」

 

「レンヤ、泳いだことないよ」

 

「川に入ったことはあるが、全身が入る深さまではないな」

 

「え……」

 

慌てて見ると……

 

「ガボッガボッガボッ!」

 

「れっレンヤーーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ぬかと……思った……です……はい」

 

「ふう、大丈夫か」

 

「はい、すみませんお父さん、やっぱり不合格ですよね」

 

「どうしてそう思うんだい」

 

「自分の身を顧みない者は他人も救えない、恭也さんに言われました」

 

「そうか…なら合格だ」

 

「えっ」

 

「ちゃんとわかっているなら、直すことができる、完璧な人間はいないのだから」

 

「お父さん……はい!」

 

「それじゃあ、早く帰ろう。風邪を引いてしまう」

 

そうして帰路についた。

 

「レンヤ〜よくも踏み台にしたな〜」

 

「ごっごめんなさ〜〜〜い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんともあり、一緒に鍛錬をしている。

 

ソエルが持っていた武術の書もあり順調に進んでた、今日は街をよく見るため散歩をしていた。

 

「へーここが聖祥かー」

 

「大学が一緒にあるから、それなりにでかいな」

 

「下見はこれぐらいでいいだろう、次行こうぜ」

 

それから少し歩くと図書館が見えた。

 

「ここは…図書館か」

 

「風芽丘図書館…いつの間にか海鳴市の中にもこう言うのがあったんだな」

 

「ねえ!入ってみようよ!」

 

入ってみるとチラホラと人がいた。

 

「…………レンヤ、ちょうどいいからここら一帯の地図を見よう。異界に関わることもあるよ…………」

 

「わかった」

 

それから地図を探し歩いていると、車椅子の女の子が精一杯手を伸ばすして本を取ろうとしていた。

 

放っては置けず、代わりに本を取ってあげた。

 

「これか?」

 

「あっありがとうございます」

 

「次からは周りの人たちに頼むんだぞ」

 

そう言い俺は戻ろうとすると……

 

「まっ待って下さい!」

 

呼び止められる、振り返った。

 

「その、迷惑でなければ、一緒にお話でも…」

 

うーん、常連らしいしもしかしたら地図の場所もわかるかな。

 

「うん、いいよ、その代わりといっちゃなんだけど、この街の地図を探してるんだけど」

 

「はい、こっちです〜〜」

 

妙に訛りがあるしゃべり方だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地図を見つけてくれて、目的のページを見る。

 

『ほら、ここだよ、ここがここら一帯の地脈の中心だよ』

 

念話でソエルと会話していた。

 

『ここを中心として異界化が発生する確率が高い』

 

『わかった、忍さんに教えておこう』

 

見終わり本を閉じる。

 

「もういいんですか?」

 

「ああ、そうだ俺の名前は神崎 蓮也だ、よろしく」

 

右手を出して握手を求める、少し驚いたが、嬉しそうに握手に応じた。

 

「八神 はやてです。よろしゅうお願いします」

 

「日本語おかしいね、どこの方言?」

 

「関西弁や、やっぱりおかしいかな?」

 

それから色々と話した。

 

「ええええ!レンヤ君男の子やったんか!」

 

「まあね、よく間違えられる」

 

ソエルやラーグのことも。

 

「白いのがソエル、黒いのがラーグだよ」

 

「うさぎさんや!でも少し変やなぁ」

 

「「変っていうな」」

 

「うわぁ今しゃべらんかった⁉︎」

 

「腹話術だよ、上手でしょう?」

 

「えっでも同時に……」

 

「そう言えば!はやてはいくつなの?」

 

無理やり話題を変えた。

 

「見た感じで、同い年に見えるけど…」

 

「私は今7歳や」

 

「なら同い年だ、敬語で話さなくてもいいぞ」

 

「ほな、お言葉に甘えて」

 

しばらく話していたらすっかり夜になってしまった。

 

「すっかり夜だ、はやての両親はいつ迎えに来るんだ?」

 

「あっ私の…両親は……昔に……」

 

「………ごめん、聞いちゃいけないことだったな」

 

「いえ、気にせんといて下さい」

 

「俺も…両親はいないんだ」

 

「えっ」

 

「はやてとは違う……捨てられたんだ、だから両親がいない気持ちはわかる」

 

「レンヤ君……」

 

「ごめんね、暗い話しをして。でも今は温かい家族によくしてもらっている、とても感謝をしてる」

 

「…そうなんか」

 

「…コホン、家まで送ろうか、車椅子じゃ何かと不便だろう」

 

「大丈夫や、慣れとるし」

 

「そっか」

 

「なんやレンヤ君、心配性やなー……なら、お願いしようかな」

 

「ああ、そうだな任しとけ」

 

はやての頭を撫でて安心させた。

 

「あっ///」

 

「それじゃあ行こうか、道案内よろしく」

 

「あっうん、了解や」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日はいつも通り図書館に来ていた。

 

そこで新しい友だちと出会った。

 

最初は綺麗な女の子に見えたけど、男の子だと聞いてすごく驚いたけど。

 

両親がいない事に親近感を覚えたけど、レンヤ君のあの寂しそうな顔が頭の中から離れない。

 

あれ?さっきからレンヤ君のことばかり考えている。

 

あかん、顔が熱うなってきた。

 

これが、一目惚れなんか?

 

レンヤ君の他の友だちを聞いた時、みんな女の子やった、聞くかぎりではみんなかわいい部類やったと思う。

 

そう思うと胸がムカムカしてくる私がいる。

 

そんな事を考えてたらいつの間にか私の家についた。

 

「はやて、はやて!」

 

「なっなんや⁉︎」

 

「ついたぞ、ここがはやての家でいいんだよな」

 

「うっうん、ここが私の家や、もう大丈夫や」

 

「そうかじゃあまたな」

 

「レンヤ君!また会えるん?」

 

「また会えるから、またなって言ったんだぞ」

 

そうするとレンヤ君はラーグの口に手を入れて、紫の模様がある羽根を取り出して、私にくれた。

 

「はい、自信のないはやてに」

 

「うわぁ、綺麗な羽根やな」

 

「心の羽根と言って、持ち主の心を表すことができるんだ」

 

「私の心……」

 

手に持った羽根は青く染まる。

 

「悲しい、いや寂しいんだね、大丈夫またきっと会えるから」

 

「ほんまに……」

 

「すぐには無理だけど、いつか絶対にはやてのもとに行く、約束だ」

 

「ぐす、うん!約束や!」

 

私の持つ羽根がピンク色に変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はやてと別れて、急いで家に帰っている。

 

「すっかり夜だ、みんな心配してるよ」

 

「悠長にしゃべっていたからな」

 

「そう言えばレンヤ、帰ったら桃子が話があるって言ってたよ」

 

「なら、近道するか」

 

体に魔力を巡らせ、筋力を強化する。

 

思いっきり飛んで、屋根の上の上を走った。

 

「これぞまさしく飛行(非行)少年!」

 

「うまい!」

 

「魔法使いは全員、飛行しない訳ないだろ」

 

「飛べない人もいるよ」

 

そんなこんなで家についた。

 

「怒っているかなー」

 

意を決して扉を開けた。

 

「ただい…グッフッ」

 

帰って早々なのは頭突きを食らった、鳩尾に……!

 

「遅いの!いったいどこに……ッて、大丈夫⁉︎レン君!」

 

「あらあら、先にお話しされちゃって、残念」

 

良かったです、頭突き食らって。本当に……

 

しばらくして復活できた。

 

「いってててて」

 

「ごめんね、レン君……」

 

なのはが落ち込んでいる、心なしかツインテールがしおらしい。

 

「大丈夫だ、そう落ち込むな」

 

「あっ」

 

なのはの頭を撫でて落ち着かせる。

 

「ごめんなさい、お母さん」

 

「いいのよ、レンヤが意味もなく遅れる子じゃないわ」

 

でもお話ししようとしたんですよね⁉︎

 

「レンヤ?」

 

「なんでもありません」

 

直立姿勢で返事をする。

 

「それでお母さん、話しってなんですか」

 

「えっ、お話ししたいの?」

 

「もっと別のお話しです!」

 

「冗談よ、レンヤもそろそろ聖祥の編入試験を受けてもいいんじゃないかしら」

 

「本当ですか!」

 

「ああ、このまま試験まで勉強を続ければ、十分合格点まで届く」

 

「それで、試験日はいつですか」

 

「一週間後よ、結果発表はさらに一週間後」

 

「そうですか、今から待ち遠しいです」

 

「レン君!私が勉強を教えるの!」

 

「なのは、勉強できたっけ?」

 

「………一緒に勉強するの」

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私立聖祥大学付属小学校の編入試験日ーー

 

私立だからなのか試験を受けるのは俺しかいないせいで、緊張が加速する。

 

広い教室にど真ん中にある机、目の前の試験監督とのマンツーマン。正直きつい。

 

「それでは始めて下さい」

 

試験が始まった。

 

それから全科目を行い……

 

「そこまで!答案用紙を裏返し、ペンを置いてください」

 

ふう、疲れた。名前の書き忘れもなし、見直しも2回したしやる事はやった。

 

「レン君!」

 

「レンヤ!」

 

「レンヤ君!」

 

お母さんの所に戻ろうとしたら、なのはたちが来た。

 

「みんな、なんでここに……って当たり前か」

 

3人ともここに通っているんだから。

 

「レンヤ、当然上手く行ったんでしょうね」

 

「もちろん、自信はあるよ」

 

「レンヤ君、頑張ったもんね」

 

「それじゃあ翠屋で打ち上げなの!」

 

「それはまだ気が早いんじゃないか?」

 

「いいのよ、あんたが落ちるわけないでしょう」

 

「随分持ち上げるなあ」

 

「ふふ、レンヤ君だからだよ」

 

それからお母さんと合流して翠屋で打ち上げをした、次の日にも勉強を教えてもらったはやてにお礼をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後ーー

 

翠屋の手伝いから家に帰っていた。

 

「今日入試結果が届くんだよな」

 

「もう届いてるかもしれないよ」

 

家に着き、すぐにポストを見ると大きめの封筒が入っていた。

 

「なになに、私立聖祥大学付属小学校入試結果、神崎 蓮也様、来た!」

 

「早く開けようぜ!」

 

「だーめ、みんなと一緒に見るんだから」

 

「待ち遠しいね!」

 

夜になり、みんなで結果を見る。

 

「開けるよ」

 

みんなの視線が刺さる、とくになのは、キラキラしてる。

 

封を破り書類を出してみると、1番上の紙に大きな文字で合格と書いてあった。

 

「おめでとう!レンヤ!」

 

「よく頑張ったな」

 

「えへへ、ありがとう」

 

素直に照れくさい。

 

「やったの!これで一緒に学校に行けるの!」

 

なのはが抱きつき、喜ぶ。

 

「これもみんなのおかげだよ」

 

「それで、いつから学校に通えるんだい?」

 

「えっと、明後日から連絡すればいいみたい」

 

「てことは、来週からか」

 

「必要な道具や、制服を揃えないと」

 

「ふふ、それなら…」

 

お母さんがダンボールを持ってきた。

 

「お母さん、それって」

 

「制服と道具一式よ」

 

「お母さん気が早〜い」

 

「まあ、落ちるとも思えなかったがな」

 

ダンボールを開けてみると。

 

制服とランドセル、勉強道具が入っていたが……

 

「お母さん…これ何?」

 

制服を見せると、女子の制服だった。

 

「あらやだ、間違えちゃったわ♪」

 

「すっごいわざとらしい!」

 

「冗談よ、ちゃんとここにあるわよ」

 

ダンボールの奥底から男子の制服を渡てくれた。

 

「で、その制服はなのはのでいいんだよね?」

 

「うふふふふ」

 

怖いです、お母さん。

 

「とっとにかく、レンヤ、1回来てみたら。サイズの確認の為」

 

「女子の制服持って言わないでください」

 

気のせいか鼻息が荒い。

 

「レン君の制服姿を見みてみたい!」

 

「まあ、確認の為一応着るか」

 

「女子の?」

 

「男子のです!」

 

来てみるとサイズは合っていた、見た目は女子と同じで下がズボンでリボンではなくネクタイだ。

 

「どうかな」

 

「カッコイイの///」

 

「よく似合っているぞ」

 

「どちらかっていうと男装女子」

 

「うるさいです」

 

カシャ!

 

「ふふ、素敵よレンヤ」

 

「写真を撮らないで下さい」

 

「まあいいじゃないか、記念に撮っておこう」

 

それからなのはも参戦して、撮影会が行われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、疲れた…」

 

「楽しかったか?」

 

「私は楽しかったよ♪」

 

ようやく解放されたのは夜10時。

 

「寝よう、おやすみラーグ、ソエル」

 

「「おやすみ(なさい)」」

 

明かりを消してベットに入る。

 

掛けてある制服を見た。

 

(来週が楽しみだ)

 

 


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