ブルマの日々   作:GGアライグマ

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妖術のナノマシン

 ナノマシンによる肉体変化というアイディア。しかし単なる物理的なアプローチでは不可能に近い。細胞とはそれだけ繊細なのだ。プーアルやウーロンがそうであるように、不思議パワーを利用した変化が必要になってくるだろう。

 

 科学と不思議パワーは相反するように思える。しかし不思議パワーと言ってもは現象として存在し計測できた時点で科学できる対象なのだ。この世界にとっては妖術も魔術も数字で扱えるエネルギーなのだ。

 実際、ドクター・ゲロは気をエネルギーに変換するこに成功していた。手のひら型のエネルギー吸収装置もそうだし、気弾を再現した技もそうだ。あれだって気という現象を計測し理解し何らかの媒介を計算通りに配置することで可能になっているのである。

 となれば、妖術や魔術だって計測し方程式の形で理解しそれを狙い通り物体に作用させれば扱える。ブルマの頭脳ならばそれができる。

 

 俺はプーアルの細胞を使った実験を幾度も行った。プーアル本人にも協力してもらった。例えばどういう条件で変化が解除されるのか。術者の気の大きさと妖術の持続時間の関係。細胞を体から切り離した場合は何mまで術者の影響を受けるか。プーアルの細胞をマウスに移植した場合どうなるか。細胞が妖力を生み出しているのか、脳が妖力を生み出しているのか。などなど。

 

 結果、妖力は気によって補えること。妖力を生むのは脳だがプーアルの細胞は妖力を増幅できること。が分かった。俺はプーアルの脳波と気の流れを測定し、それを機械によって再現することで妖力を生み出すという研究を行った。

 結果、プーアルの神経細胞を使ってプーアルっぽい脳波と気の流れを発生させれば妖力が生まれることが分かった。次に俺は神経細胞の移植の研究を始めた。純粋に俺の体に移植するのではなく、機械に移植する。俺の脳、機械によってプーアルの脳波に変換、プーアルの神経細胞、とワンクッション置くことで副作用なく妖術が使えるだろうと期待した。

 

 などなどという流れで実験を重ねた。3年後、とうとう妖力の発生に成功した。さらに半年後、俺自身の思考をプーアルの脳波に変換する実験も成功し、俺は好きなように変身できるようになった。

 ところで、問題に気付いた。妖術でサイヤ人っぽく変身したとしてもサイヤ人になったわけではなく、あくまで見た目を似せただけ。DNAも見た目を似せただけで力が伴っていない。気も増えなかった。この世界ではそういうルールなのだろう。妖力が尽きるとすぐに人間の体に戻った。

 この変身ではいけない。俺がやりたいのはサイヤ人への変身だ。スーパーサイヤ人化だ。この実験は無駄になってしまったのだろうか。

 

 いやさ。俺は妖術の別の使用法に気付いた。妖術を使ってナノマシンを作ればいいということに。逆転の発想。今まではナノマシンで妖術を発生させることを考えていたが逆に妖術でナノマシンを作ることもできると気付いた。

 本来ナノマシンは量子力学的な効果が大きくすぐ崩壊したり余計なものにくっついたりするが、妖術ナノマシンなら物質の性質を度外視して理想的な動きが可能だ。これで遺伝子操作のミスを減らし癌細胞や副作用をなくせるはずだ。また、変形後には妖力が尽きるので、ナノマシンは消えてなくなる。廃棄物の問題も出ない。

 

 孫悟飯は3歳となった。俺はスパイロボによりチチが英才教育を始めたことを確認していた。ここで学者肌に染まりきる前に、ヒーローとしての行き方を教えることが重要である。

 俺は一人孫家へ飛び立った。

 

「よう、悟空。そしてチチ」

「オッス!」

「お、ブルマさんけ。久しぶりだなあ。ほらほら悟飯ちゃん、お客さんに挨拶するだよ」

 

 悟飯はチチの後ろに隠れていたが、笑顔の母に押されて顔を出した。

 

「こ、こんにちは。ぼく孫悟飯です」

「こんにちは。悟飯くん。私はブルマ。初めまして」

 

 俺は警戒心を与えないように自然な顔で笑おうとした。しかし悟飯はビクンとなって隠れてしまった。

 

「全くこの子は仕方ないだなあ。人見知りが強くって」

「いやあ、でもすごく礼儀正しいよ。母親の教育がいいんだなあ」

「えっ。いやだなあブルマさんったら。お世辞が上手い」

 

 チチはうれしそうに体をくねくねさせ、俺の肩を叩いてきた。油断して気を込めていなかったから地味に痛かった。

 

「ところでチチさん、今日はその教育の話で来たのですが」

「なんだべ?」

 

 俺は真面目っぽい雰囲気を作る。

 

「私は次の未来を担う若者を早いうちから育てようという計画を練っていまして。要するにエリート教育ですね。体力と勉強と両方。最高の環境で最高の人材を育てる。チチさんがよろしいのでしたら、悟飯くんにもどうかなあと」

「えっ。いいんけ!? でもブルマさんがやるなら西の都だろ? こっからじゃちっと遠いだ」

「大丈夫です。通信教育があります」

「通信教育!? ほんとけ! いやー、オラも最近知ったんだが都会にはそういうのがあるらしいだな! ブルマさんのところなら間違いはねえ。是非悟飯ちゃんにも受けさせてやって欲しいだ!」

 

 よし。やはりチチは教育ママ。エリート教育という言葉に弱かったか。

 

「ありがとうございます。私としても悟飯くんのような将来有望な若者の教育に携わることができてうれしい限りです」

 

 最大の壁は越えた。後は悟飯をヒーローに育てるだけだ。


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