ブルマの日々   作:GGアライグマ

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第23回天下一武道会

 俺の考えを正確に言うと、女としての生、地球人としての生を大切にしつつ、いざという時には男やサイヤ人になりたい。

 だが、それはできない。変身するかしないかの二択しかない。そう決めつけていた。

 

 しかしある時、ふと思った。どちらとも選ぶことができるのではないかと。ドラえもんの秘密道具のようなものを作ればいい。例えば、一瞬でサイヤ人や男になれたりできる道具を。

 具体的には、大量のナノマシンで一気にDNAを書き換える。ナノマシンの耐久性や体内での量産方法消化方法など問題はいろいろある。しかし一番の問題は副作用を無くすことだろう。

 

 運のいいことに、この世界には副作用のない変身や巨大化が存在した。プーアルやウーロンの変身。亀仙人や僕は父さんを超えてしまったんですさんのマッチョ化。サイヤ人の大猿化。などなど。スーパーサイヤ人だって突然髪や眉が変わる。

 実例があるのなら、研究ができる。科学ができる。

 

 俺は早速研究を始めた。悟空の細胞を満月に晒してみたり、俺の気を送り込んだり。プーアルに変身してもらってその間のエネルギーの動きを調べたり。平行してナノマシンの開発にも取り組んだ。この世界は気という便利なものがあるのでそれに反応して動き、DNAを変えられる大きさの機械を作ればよかった。

 他の星の技術も学んだ。ジャコに頼んでフリーザ軍の医療の理論書を送ってもらった。約3ヶ月でメディカルマシーンを作ることができた。

 

 研究にのめり込んで数年後、第23回天下一武道会が目前に迫った。クリリンとヤムチャとランチは早くから参加を決めていて、トレーニングに一層熱が入っていた。ミスター・サタンはヒーローの中で自信を失っており、参加を見送った。観戦には行くらしい。

 俺も観戦には行くと伝えておいた。しかし本当の目的は夜神ソウイチロウをそこへ送り込むこと。悟空と死闘を演じ、悟空のモチベーションを作る。実力は今の俺とほぼ同じに設定した。

 ヒーロー協会のお守りはナムに任せた。特にマイに注意するよう言っておいた。

 

 当日になった。なんだかんだピッコロ、ラピス、ラズリもついて来た。選手として参加するらしい。

 会場近くで亀仙人、天津飯、チャオズ等と再会した。

 

「見てください亀仙人様、私などこんなにも大きくなってしまいまして」

 

 クリリンが背が伸びたことを自慢する。哀れだ。

 

「分かるぞクリリン。強くなったの。ほっほっほ、ランチも相変わらずぴちぴちじゃ」

「オラァ!」

「ぐべっ」

 

 亀仙人はランチの尻を触ろうとし、殴り飛ばされた。

 皆が軽く笑う。しかし殴られた当の亀仙人は険しい顔だった。理由はすぐに分かった。チラっとピッコロの方を睨んだからだ。説明するのも面倒だしこのまま警戒させていようと思う。

 ちなみに俺の身長は175cmとなっている。トレーニング、健康的な食事、男性ホルモンの実験、などなどの影響で原作ブルマより大きくなったと思われる。

 

「おっす!」

 

 そして悟空もやってきた。突然大人の体格になった悟空にクリリンなどは口をあんぐり開けた。だが俺はまだ身長で負けてないぜ。ふっふっふ。

 

 俺はトイレに行くと言い、会場をやや離れた場所でホイポイカプセルを取り出す。中から出てきたのは小さな家。ここに夜神ソウイチロウと彼を精密に操るためのモニター室が入っている。

 

 さて、ソウイチロウ発進。選手登録を済ませ、予選会場へ。

 と、チチを見つけた。かわいいな。原作の流れになるように万一のときはサポートしようと思う。

 

 さて、万一は起こった。天下一武道会の予選で、チチはラズリと当たってしまったのだった。

 両者実力は拮抗していた。長い試合の末、ラズリが場外で敗れた。しかしチチも深いダメージを負っており、次の試合は無理そうだった。

 

 しかし、悟飯の誕生はドラゴンボール無死亡攻略に最も大切なイベント。ここを外すわけにはいかない。

 俺は医務室に向かい、わけを話してチチの治療を任せてもらった。もっとも知り合いのラズリがボロボロな状況でチチだけ治療するわけにもいかないので、ラズリも治療するが。

 ホイポイカプセルでメディカルマシーンを出す。先にチチを中に入れて治療した。すぐに終わった。

 

「あんがとう。あんたいいやつだべ。名前は?」

「ブルマ」

「あっ! あん時の!」

 

 チチは気付いたようだ。

 

「お久しぶりです」

「おめえ悟空さと一緒にいた女だな。しっかしおめえがオラのこと覚えてるっつーのに肝心の悟空さときたら……」

 

 チチは愚痴を言いながら予選会場へ戻った。

 俺は急いでラズリの治療を始める。これもすぐに終わるが、まだまだ急がなければならない。

 

「夜神選手ぅー! 夜神ソウイチロウ選手ぅー! 失格にしますよー!」

 

 ちょうど夜神の名が呼ばれていた。危なかった。

 試合は楽に勝てたが、俺の慌てっぷりはラピスラズリの疑心を買っていた。双子は俺のカプセルハウスの前に立ち、叫んでいた。

 

「おーいブルマー。何やってんだー? 怪しいぞー?」

「ここを開けろー! さもなくば壊すぞー!」

 

 壊されたら困るので、開けてやった。

 

「ここはなに? 何やってんのあんた」

 

 ラズリが訝しそうに尋ねた。

 

「秘密だ。質問も禁止!」

 

 俺は二人を押し、家から追い出す。

 

「なっ、何すんだよ!」

「ちょっとくらいいいじゃないか!」

 

 俺は双子を一睨みし、家をカプセルに戻す。

 その後、「ついてくるなよ!」と念押しし、彼等にはついてこれないスピードで飛んで会場を後にした。

 

 

 その後の予選は順調に進んだ。チャオズは桃白白に敗れ、ナムは夜神ソウイチロウに敗れ、ヤムチャがラピスを倒した。

 決勝は以下のようになった。

 

 クリリン対夜神ソウイチロウ

 マシニア対ヤムチャ

 孫悟空対匿名希望

 天真飯対桃白白

 

 ソウイチロウはスーツ姿のしがないおっさん。クリリンは小さいが亀仙流として結果を残してきた。

 観客達はクリリンの勝利を確信していた。そのクリリンはナムを倒したソウイチロウを前に油断していなかった。

 しかし、勝負は一瞬でつく。

 

「ふん!」

「あっ、ああっ」

 

 ボディーブロー一発でクリリンの足がガタガタ震える。そのクリリンをソウイチロウは蹴り飛ばす。

 

「場外! なんということでしょう! 夜神ソウイチロウ選手、強敵クリリン選手を簡単に破ってしまいましたー! 彼は何者なのでしょうか!」

「つーかさあ、あいつ夜神って言うのか。なんか前に国王を誘拐したやつもそんな名前じゃなかったか?」

「今の時代苗字が被るって珍しくないか? しかも夜神なんて聞いたことがない」

 

 観客達に不穏な空気が出始める。しかし試合は進む。観客の関心も次の試合へと移っていく。

 ピッコロ大魔王(善)対ヤムチャ。

 両方共、原作の神対ヤムチャより弱いような気がする。ピッコロは本体な分だけシェンより強い可能性もあるが、ヤムチャはつい3年前まで強盗やってたからね。

 勝負はすぐに終わった。ピッコロの勝ちだった。

 続いての試合も悟空の勝利ですぐに終わった。そしてチチは正体を明かすと共に求婚もどき。悟空は「結婚すっか」で結婚を決意。めでたく2人は結婚した。

 これで今日のノルマは達成した。あとは余興だ。

 天津飯はふつうに桃白白に勝った。

 

 さて二回戦。ピッコロ対ソウイチロウ。

 

「二回戦は共に初出場のお二人。しかし実力は疑いようもありません。予選から全試合一瞬で勝利を納めてきました。好勝負が期待できそうです」

『なぜロボットで試合に出た?』

 

 ピッコロがナメック語で話しかけてきた。なぜナメック語が通じると思ったのかは分からない。だが俺はナメック星で生活しているうちに覚えたので話せる。

 

『私は孫悟空に期待しているのです。自身より強いライバルの存在をチラつかせ、彼の成長を促したい』

『ふん。やつはそんな次元などとっくに超えている。武人らしく毎日己の限界を超えようともがいているさ。他人は関係ない』

『それはあなたの思い過ごしです。確かに彼は訓練を続けるでしょうが、ライバルがいるといないとではモチベーションも成長速度も全く異なります』

『ふん。知った風に言うんだな。だが、何故やつを強くすることにそれほどこだわる? お前自身はライバルを欲しているように見えない。最強を目指しているようにもな』

『平和のためですよ。この星の、いや世界の平和のために、彼は世界の神をも超える力を手に入れなければならないのです』

『ますます分からんな。世界の神など人間の手の届く存在ではない。その神に対処できない問題が存在するのならばそれは世界が滅ぶ時だ』

 

 まあふつうに考えたら地球でばかり大事件が起こるのは異常なんだよね。

 魔人ブウでさえ界王神が出てくる案件なのに、ビルス、ゴールデンフリーザ、ゴクウブラックと続いちゃって銀河王がその辺の一般人って扱いになっちゃうからね。

 

「あのー、試合始まってるのですが」

「何やってんだー! さっさと戦えー!」

 

 と、外野が煩くなってきたので、構える。ピッコロも構えた。

 

「ふいっ」

「ぐっ」

 

 やはりスピードとパワーは俺が上回る。あまり難しい相手ではないな。

 リーチは向こうに分があるので、接近戦で一気に決める。

 

「よっ、ほっ、とっ」

「ぐっ、ぐぬぬっ」

 

 ピッコロが腕を伸ばしてきたが、初見でかわす。ピッコロは仰天。その隙にさらに一撃加える。

 ふふっ、伸びることは知っているのだよ。

 

「ソウイチロウ選手、見た目とは裏腹に華麗な動き。マシニア選手を追い込んでいきます」

「ほいっ」

「ぶっ」

「決まったー! 場外です!」

 

 こうして俺は決勝へ。悟空も軽く天津飯を倒して決勝に上がった。

 

「な、なあ悟空。あいつってやっぱり」

「うむ、あの強さ。やつはおそらく……」

 

 亀仙人、クリリン等がソウイチロウのことで悟空とヒソヒソ話していた。悟空はあっけらかんとした顔で俺に近づいてきた。

 

「神様」

 

 いや、違うだろ。ナメック語を話していたから間違えたのか? 名前に神って入ってるからか? それともナメック星で学んだ技が神の技に似ていたからか?

 

「……新世界の神という意味なら、私は神の父ということになる」

「どういうこと?」

「私は夜神ライトの父、夜神ソウイチロウだ」

「えっ、そうなんか!?」

 

 悟空は本気で驚いたようだった。この頃の原作の悟空は察しの良さで周りを驚かせていたんだがな。目の前の悟空むしろ鈍いかもしれない。

 

「ちょ、ちょっと待て! あんた機械なら失格だろ!」

「そ、そうだ! 武器の使用は禁止だ!」

 

 クリリンが叫ぶと、ヤムチャも続いた。まあ俺は失格でもいいがな。目的は悟空とチチを結婚させることだったから。

 他の観客からもやじが飛び始める。実況のグラサンもたまらず聞いてきた。

 

「え、えーっと。夜神ソウイチロウ選手。ロボットなんですか?」

「そうだ」

「ええーっ! 困りますよお。武道会は武術の腕を競う場所なんですから!」

 

 もうそろそろ限界か。最後はギャグに走ろう。

 俺は申し訳なさそうに陳謝する。

 

「申し訳ない。息子が迷惑をかけてしまった」

「オラは別にいいぞ。このまま戦っても」

「そういうわけにはいかん。バレてしまったものは仕方がない。潔く死のうと思う」

「えっ。オラは戦いたいんだけど」

「そうか。ならば戦いの中で死なせてくれ。非公式の決勝でかまわん」

 

 ソウイチロウは申し分けなさそうな顔で構える。悟空もにっと笑い構えた。

 

「びょっ!」

「うわっ」

 

 いきなり全力全開。ソウイチロウの連撃に悟空もなすすべがない。

 

「ちょっ、たんま、たんま」

「あー! らいらいらいらい!」

「くっ」

 

 悟空は俺の突きで吹き飛ばされると、むしろ足からかめはめ波を放って武舞台外へ加速した。そして空中で服を脱ぎ、落としていく。

 脱ぎ終わるとかめはめ波で帰ってくる。

 

「はあ、はあ、はあ。ずりいぞおめえ。待てって言ってんのに。はあ、はあ、はあ」

 

 初めの攻撃でだいぶ体力を削れたようだ。まあこんなことしなくても勝てたとは思うが。

 

「ここからはオラも全力だぜ」

 

 悟空はそう言うとにやりと笑った。

 と、悟空の姿がぶれた。残像拳か。

 俺は気を読んで後方を殴る。しかし悟空も動きを読んでかわし、逆にカウンターを合わせた。

 

「何っ」

 

 初めてダメージらしいダメージが入った。ソウイチロウの回路が一瞬麻痺する。

 

「ダダダダダダダ!」

 

 悟空は最初のお返しとばかりにラッシュをかける。

 ダメージの度にソウイチロウの動きが鈍る。補正が間に合わない。

 

「ダリャアアア!」

 

 最後の悟空の蹴りで吹き飛ぶ。やっと自由になれた。

 この隙にオートによる攻撃を次々とインプットしていく。マニュアル操作ではインターフェイスの微妙な時間で対抗できなかったりするからだ。エネルギー制限も解除。また、悟空の読みを狂わすために、ロボットならではの関節を外した攻撃ができるよう制限を解除する。

 

「さあ、第二ラウンドだ」

 

 口からオイルを垂らしながらソウイチロウが武舞台に戻る。悟空はにっと笑った。

 

「びょっ」

 

 ソウイチロウは腕をドリルのように回転させて攻撃する。悟空はかわすが、かわした方向へ口から光線中が飛ぶ。

 

「んぎゃああああああ!」

 

 光線中は悟空の腹をつらぬいた。痛そう。

 ソウイチロウは苦しんでいる悟空へ近づいていく。腕のドリルが迫る。

 

「くっ、波ああああああ! なっ」

 

 悟空はドリルをかわし、カウンターのように顔へかめはめ波を放った。しかしソウイチロウは上半身と下半身を分離させることでかわした。

 

「そ、そんなんありかよ。ぜえ、ぜえ、はあ、はあ。ぐっ」

 

 分離した上半身と下半身がそれぞれ悟空を襲う。一方はマニュアル操作、一方はオート操作である。オートの方はワンパターンだから気付けば大したことないのだが、今の悟空はダメージと疲れで判断力が鈍っているようだ。両者攻撃を全力でかわそうとし、追いつけず次々と攻撃を食らう。

 下半身の蹴り、上半身の頭突き、下半身の蹴り、上半身のドリル攻撃。

 

「んぎゃあああああああああ!」

 

 上半身のドリル攻撃が悟空の肩をえぐる。血が、肉が飛び散る。かわいそうなことになってしまった。

 悟空はたまらず倒れこんだ。痛みに叫び転がる。起き上がる気配はない。いや、目はまだ死んでいない。

 

 悟空の体が舞空術でふっと上がる。突然気が溢れる。そして突っ込んできた。

 

「うわああああああ!」

 

 しかし単調な頭突きだ。俺は機械だからこそのトリッキーな緊急加速でかわす。悟空はそのまま観客席へ突っ込んだ。それから立ち上がることはなかった。

 

「場外! 場外です! 大丈夫でしょうか孫悟空選手! 酷い出血でした!」

 

 グラサンと医療班が急いで悟空のもとへ向かう。ソウイチロウは分離したまま飛び上がり、どこかへ消えていく。そして、不意に自爆。

 まあこんなもんでいいだろう。次は悟空の治療を急ぐか。


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