刀奈を雑な起こし方で起こしたことで叱られ、凹む刃。そんな中ISの大群が迫っている事を知る。それを打破するためにクロエが提案した策とは……
「くーちゃん……今自分で何言ったのか分かってる?」
胸倉をこれでもかというぐらいに強く掴まれている。ドレスが千切れてしまいそうだ。
視線が痛い。おおらかな束様が私に対してここまで感情を荒げたのは、この一年間で初めてだ。
でも、ここで引き下がってはいけない。これは私がやるべきことだ。私が自分の意思でやらなければならない。
「分かっています。私にかかる負担が大きいことも、成功する可能性が低い事も……心得ています」
「だったら!!」
「では、他に手段があるなら言ってください。
「そ、それはもうちょっとしたら何か思いつくよ」
束様の肩に手が置かれる。刃様だ。
「落ち着け束。策があるなら聞いておくのが筋だろう? 他の選択肢はその後考えても遅くない」
「でもあれは……!」
「その様子からして、お前はクロエの策について知っているみたいだな。話はクロエから聞いておく。お前はその間に別の策について考えてくれ。頼んだぞ」
束様を私から離れさせて、深紅の瞳が真っすぐに私を見つる。静かに私の言葉を待つ。
私は自身の
『ワールドパージ』はコアネットワークに接続することで発動できる能力であること。
コアに干渉することによって、対象が理想とする世界を幻覚として見せる事が出来ること。
以上の二つのプロセスをえてコアの動きを止められるかもしれないということ。
そして最後にネットワークに接続するので私自身が乗っ取られる可能性があると言うこと。
この説明を黙って聞き届けると、刃様は一度目を閉じて目柱を抑えため息を吐いた。
「正直なところ、俺は賛成したくない」
告げられたのは否定。刃様になら賛成してくれると思っていた。でもやらなければ、ここにいる束様や刃様、簪に楯無の身が危険だ。引く訳にはいかない!
「でも他に策は無いのでしょう? 私の策に乗るしかないじゃないですか!」
声を荒げる。とてもじゃないが、いつもの私とは思えない。
「じゃあ、お前は止めた後どうする気だ? ISを操っている側からすればお前が邪魔だ。真っ先にコントロールを奪いにくるに違いない。元を絶てなければ意味が無いんだよ」
「ですが……」
言い返せない。正論の刃で私の意見は断ち切られてしまった。もうここまでかと思った。俯き目線が地面へと向いた。
そんな時、ふと頭に温かい感触。目線を上に上げると、刃様の手が私の頭をやさしく撫でていた。
常に鍛錬して武器を握り続けた手の平は、何回もマメがつぶれた後なのかゴツゴツしている。
なんだかくすぐったくて、心地が良かった。
「……悪い。意地悪だったな。全部否定している訳じゃ無いんだ。逆にそれさえできれば文句は無い。おい束!」
「ひゃい!? えっと……もうちょっと! もうちょっとだけ待ってよ~」
「それはいいから、俺の質問に答えろ」
涙目で肩をゆする束様をたしなめてから、確認し始める。
「コア反応はコアから出る電波を捉えてISを補足するんだよな?」
「うん。それがどうしたの?」
「いや、今その電波は一定の方向から発信されているんじゃないかと思ってな。確認できるか?」
「できるけど、ちょっと待ってね~……確かにこの学園の最深部から多く発信されてるけど……」
「ビンゴだ。そこにこの騒動の原因がいる」
「えっと、お兄ちゃん。ちゃんと説明して」
刃様が一人で考えをまとめる中、話に入れていなかった簪が口を挟んだ。作戦の要になると思われる私ですら把握できていないのだから無理もない。
「適材適所って奴だ。俺が敵を抑え込もうって時点でどうかしてた。クロエが止められるって言うなら、俺は騒ぎの元凶を叩きのめせばいい」
「やっくんストップ! くーちゃんにやらせる気なの!?」
「ああ、ただし時間制限付きだ。刀奈がコントロールを奪われたのは戦闘開始から十分後。クロエに対しては優先度が高いだろうから、その半分の五分以内で方を付ける。それなら問題ないだろう? 束?」
「その条件ならギリギリ……でも最深部に敵がいるって言ったよね? ここから行くには遠すぎるよ。道も複雑、最低でも十分は掛かるよ」
「そうよ兄さん。いくら何でもその計画は無茶がありすぎるわ!」
「なんというか、おふくろに似てそういう所はクソ真面目だな刀奈。俺が地図見ながら学園内を走り回るとでも思っているのか?」
IS学園の最深部は地下にある。最深部に人を立ち入りにくくするため、道は迷宮の様に入り組み、セキュリティも万全にしてあると束様が話していたことを覚えている。
そんな場所に五分で到達するどころか、敵を倒すと宣言したのだ。楯無の反論は当然と言えた。
「束、コアの位置情報を青天井に転送してくれ」
「う、うんいいけど。何に使うのさ」
「まあ見てろ」
青天井――――モード『荒天』
漆黒の刀を展開し、電気を帯びて藍色の髪が逆立つ。残り時間も少ない切り札をこんな所で展開した意図が読み取れない。
「派手に行くぞ。簪、刀奈を抱えて離れてろ。束はクロエを頼む。――――目標補足完了」
体に纏っていた電撃が輝きを増していき、刀に収束していく。そして切っ先を地面に向けた。それを見て慌てて簪と束様がそれぞれ一人ずつ抱えて上空へ退避した。
「
打ち込まれた雷撃は大地を
「難しく考えすぎだ。もっとストレートに、『押して駄目ならぶち壊せ』ってな」
必殺技紹介
某七海の葉王、もとい覇王さんが金属器バアルで放つ技。雷撃を剣から放出する。
今回シスコンは地下への穴を開けるために使用していたが、本家では山脈を吹き飛ばしたりしてたので威力は控えめ。
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