更識家長男はシスコンである。【完結】   作:イーベル

45 / 62
段落開けの修正作業を行っていたら十九話が十八話で上書きされていることに気が付かず保存してしまうミスが勃発。
慣れないことはするもんじゃないですね……多機能フォームェ……。

修正しましたが完全には出来ず、うろ覚えでもう一度書き直しました(泣)
絶対違う内容になってる……。

ストーリーには影響はないので安心して最新話をどうぞ……。



水族館で僕と握手!

 刀奈と簪を誘って承諾を得たのは良かった。だがしかし、俺はノープランだった。

 どこに向かえば喜ぶのか見当がつかない。この二年で好みも変わっているかもしれないし…

 

 悩みに悩んでいたそんな時、特に意味なくつけていたテレビCMが目に入ったのだ。

 

『魚たちが織り成す幻想的な空間に癒されてみませんか? この週末はぜひ沢田水族館へ!』

 

 沢田水族館というと実家も近い。俺もちょくちょく一人で行っていた。二人は昔ほどエネルギッシュではないし、落ち着いた場所に連れ出すのもいいかもしれない。

 それに、もしかするとあいつもいるんじゃないか? ちょっと連絡取ってみよう。音信不通だったので何を言われるか分からないが…上手くいけば刀奈も簪も喜んでくれるだろう。

 

 ▼▼▼

 

 モノレールに揺られる。車内は外出に出掛ける女生徒でにぎわいを見せていた。大半は次の駅、『レゾナンス前』で降りて友達とショッピングにしゃれ込むのだろう。

 停車してたくさんの人が出て行く中、刀奈が話し出した。

 

 「そういえば聞いてよ兄さん。去年のことなんだけど、レゾナンス周辺で事件があったんだよ」

 「それって人が壁にめり込んだってやつだよね」

 

 ん?どこかで聞いたことがあるような話だな……。

 

 「へぇ、変わった事件だな。どうしてめり込んでたんだよ?」

 「それが原因不明なんだって、使われた道具もなければ一瞬の出来事だったらしいよ。被害者も『段ボールが襲って来た』なんて訳の分からない供述をしてたらしいよ」

 「ぶ、物騒だな……。簪と刀奈も気を付けろよ」

 

 ま、まさかそんな大事になっているとは、知らなかった。今更ながら少しだけ罪悪感が湧いた。手が汗でべっとりしていたのでハンカチで拭う。

 補足しておくと、あの時俺がやったことは段ボールで顔を隠しつつ、ビルに向かって蹴り飛ばしただけだ。壁に叩きつけるつもりだったのだが、壁が劣化していたのかめり込んでしまった。

 

 「お兄ちゃん顔色が悪いけど大丈夫?」

 「大丈夫だ心配してくれてありがとうな簪。そろそろ着くぞ」

 

 最寄り駅に到着し、降りて今度は送迎バスに乗った。

 

 ▼▼▼

 

 「さて、到着だ」

 「綺麗な海が見えるわよ。簪ちゃんこっちこっち!」

 

 刀奈は手招きして簪を呼び寄せる。ここは海辺に面している水族館なので、透き通った水平線を見ることが出来る。今日は天気も良く、日差しを反射してキラキラと輝いていた。

 

 「お姉ちゃん、今日は水族館に来たんだからこっちだよ。そっちは帰りでもいいでしょ」

 「それもそうね」

 「じゃあチケットだ。無くすなよ」

 

 イルカが印刷されたチケットを二人に配布する。当日チケットを買いに並ぶなんて言語道断だ。その分楽しむ時間が減ってしまう。暇だった俺は前日にチケットを購入してある。準備は万全だ。

 俺達はパンフレットをゲートのスタッフから受け取り、進んだ。

 

 ▼▼▼

 

 「まずどこからまわる?」

 「イルカショーは最後にしておこう。時間がかかるだろうしな」

 「じゃあ…私はペンギンを見たい」

 「了解だ簪。刀奈はどこに行きたい?」

 「えっと……じゃあこのアクアチューブなんかいいわね」

 

 疑問に思ってパンフレットを広げて確認する。トンネル型水槽のことらしい。そんなものまでできているとはしばらく見ない間に随分変わったみたいだ。 

 

 「ぐるっと回って行けばペンギンコーナーとアクアチューブは繋がっているみたいだな。

その間のコーナーを見ながら行こうか」

 「分かったわ」

 「了解」

 

 ▼▼▼

 

 薄暗い部屋でライトアップされるクラゲや深海魚、カニ等を見ながら進む。地元漁師達から得た豆知識を披露すると、喜んでくれたようだった。何が役に立つか分からない物だな……。

 

 昼食をとった後しばらく歩くと、アクアチューブにたどり着いた。巨大な水槽の中にチューブ型の管を通し、その中でエスカレーターが動いている。

 

 「結構大きいわね」

 「入っている魚の数が多いからな」

 「何がいるの?」

 「エイ、サバ、サメ、アジ……大きく分けるとこんな感じかな。止まってても仕方がないから行こう」

 

 チューブの中を進むと、俺達の眼前を魚の群れが通り過ぎていった。新幹線が鼻先を掠めたかのような迫力に思わず一歩引き下がる。

 

 「お兄ちゃんビビり過ぎ」

 「べ、別にビビってねえよ。心の準備が出来てなかったんだ」

 「フフッ、変なの」

 

 簪は口元を手で隠してクスクスと笑った。その動作自体はとてつもなく可愛いのだが、なんだかよく分からない敗北感を感じた。おのれサバめ……今度釣ったら三枚に(おろ)してやる。

 

 「見てよ兄さんあそこ」

 

 エスカレーターも終わりに近づいた頃、刀奈が指を指す所を見るとガラスにエイが張り付いていた。裏側がなんだか間抜けな顔に見える。

 

 「エイって面白い顔してるね」

 「そこ顔じゃないぞ」

 「え…? 違うの?」

 「そこの目に見えるのは鼻なんだ。本当の目は表に付いてる」

 「確かにそうね。言われてみれば納得だわ」

 

 愛らしく見えるがこいつはアカエイと言って毒針を持ち、結構危険な生物であったりする。

 

 そんなことを話しているとエスカレーターも終わり、次の目的地のペンギンコーナーが見えた。少し歩いて近づくと海水の中を飛び回るように泳いでいる奴、岩場でじゃれ合っている奴、個性豊かなペンギンたちが見えた。

 

 「……可愛い」

 

 ガラスに手を着くまでは行かないが簪は中の様子に釘付けだ。ここまで食いつきが良いとは思わなかった。簪の可愛いもの好きは相変わらずらしい。

 釣っても食べれないが、ペンギンたちは見ているだけでも疲れ切った心を癒してくれる。簪との相乗効果もあってそれが引き立てられていた。これで明日も休みだけど頑張れる。

 

 そんなセラピー効果のある時間を過ごすこと約十分。アナウンスが館内に響いた。

 

 『まもなく本日最後のイルカショーが始まります! ご覧になりたい方は外部水槽まで!』

 

 名残惜しさを感じながら、夢中だった簪の肩を叩く。

 

 「そろそろ移動しよう」

 「イルカショーだよね。所でお姉ちゃんは?」

 

 簪に夢中になっていたので目を離してしまっていた。まさか連れ去られたなんてことは無いよな。キョロキョロと辺りを見渡たす。

 

 「兄さんに簪ちゃん~遅いとおいてっちゃうよ」

 

 心配は杞憂だったか。さっきの放送を聞いていち早く向かっていたらしい。もしかするとイルカショーが一番楽しみだったのかもしれない。

 俺達は刀奈の後を追って、イルカショーの会場へ歩き出した。

 

 ▼▼▼

 

 今日最後のショーということもあって人が大勢詰め寄せていた。出遅れたのもあって座っている席は後ろの方だ。

 

 「もう少し早く来ればよかったかしら?」

 「いや、あまり前過ぎると水しぶきが飛んでくるからこのぐらいで良いだろう」

 「それもそうだね。そろそろ始まるよ」

 

 トレーナーと思われる人物が壇上に立ってマイクを手に取った。

 

 『さてみなさんお待たせしました! イルカショーを始めたいと思います。主役を大きな拍手で出迎えてあげてください!』

 

 拍手で会場が包まれて、ショーは始まった。

 

 ▼▼▼

 

 「すごかったわね~迫力も芸もレベルが高かったわ」

 「イルカの賢さが改めて分かったね。ところでお兄ちゃん、これからどうするの?もうすぐ閉園時間みたいだけど…」

 「もうちょっとここで待っててくれ。そろそろ来るはずだから」

 「来るって何が?」

 「お楽しみだ」

 

 いつも俺はデートの時に心掛けている事がある。それは普段できないちょっと特別な体験をすることだ。印象に残りやすいし、彼女たちもまた特別な存在だからだ。

 今回は……。ようやく待ち人が来たようだ。

 

 「久しぶりだね更識君。二年ぶりぐらいになるかな?」

 「どうも沢田さん。俺も忙しかったんですよ。今日はありがとうございます」

 「いいって。むしろ()()の方が会いたがってると思うから。ところでその子達が電話で話していた妹さんかな?」

 「ええそうですよ」

 「そうかい。じゃあ奥で待ってるから、そこに置いてある長靴を履いてから奥の部屋に来てね」

 

 ポカンとしている刀奈達を見てそう言った。どうやら状況を呑み込めていないらしい。サプライズだからそっちの方が嬉しい。 

 

 「えっと…兄さんどういう事?」

 「うん……説明して」

 

 なぜか少し切れ気味に見える。どうしてだろう? 怒らせることはした覚えはないんだが

……空気が重い。

 

 「「彼女って何!?」」

 

 シャツの両袖をガッチリと捕まれる。振り払えないこともないが力が強い。二人とも国家代表、代表候補に選ばれるぐらいだから腕力も鍛えているのかもしれない。

  

 「ねぇ女?女なの?聞いてないよそんなの!」

 「……彼女を通り越して現地妻とか言わないよね」

 

 ガクガクと二人に体を前後に揺さぶられる。事態が整理できない。どうしてこうなった?

俺に彼女なんていないし、通り越して妻なんてもってのほか。妹一筋だ。

 二人は混乱しているみたいだし、説明してもすぐに理解をしてくれないと思った。

 

 「行けば分かる」

 

 俺がそう言うと、二人は既に長靴を履いて奥の部屋に向かっていた。そう急がなくてもあいつは逃げないってのに……。

 俺も長靴を履いて扉を開けようとすると、二人の悲鳴が聞こえた。慌てて飛び出すと水槽から飛び出た巨体が見えた。ったく…人を脅かすのが好きなのは変わらないらしい。

 

 ▼▼▼

 

 「「シャチ!?」」

 「ああ、見ての通りだ。こいつはマグと言う名前だ」

 「でも彼女って……」

 「メスだぞ。これで疑いは晴れたか?」

 

 海水で濡れた肌を撫でる。それを見た刀奈達はフゥ、と一息ついていた。

 

 「という訳で本日の企画はシャチと握手だ」

 「危なくないの?」

 「そんな事無い。シャチは割と人懐っこいんだ」

 

 一足先に俺はシャチの手を握って見せる。何と言うかゴムっぽい感触と言えば伝わりやすいだろうか。

 

 「マグは人馴れしてるから尚更だよ。ほら妹さんも握手しておいで」

 

 沢田さんがそう言うと恐る恐る二人は手を握った。

 

 「不思議な感触ね」

 「ヒンヤリしてて気持ちいい」

 

 ある程度触らせるとマグは水槽に戻って行った。俺が手を振るとマグも尾びれを水面から出して振ってくれた。

 

 ☆

 

 メインイベントも終了し私達は学園に帰るモノレールに乗っていた。久々のお出かけは満足感のある物だった。ふと気になることがあったので兄さんに聞いてみることにする。

 

 「そういえば兄さん。沢田さんが会いたがってるって言ってたけど結局何だったの?」

 「ん?あいつは何年か前に海で釣って、しばらく沿岸で飼ってたんだ」

 

 その回答を聞いて私はもう突っ込まない事にした。




変なテンションで書き上げた結果がこれだよ。
いつもより倍の量を書いてますwホント何だったんだろう……。
そしてタイトル詐欺、正しくは彼女と握手。でも握手と言えばこのネタなんだ。

感想評価等お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。