禁魂。   作:カイバーマン。

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第六十二訓 思わぬ縁を糸に大魚を釣る

前回のあらすじ

エリート部隊、見廻り組のリーダー佐々木異三郎と偶然コンビニで出くわした上条当麻と魔神オティヌス。

仕事手伝ってくれたら報酬を払うという異三郎の誘いに金欠で困っていた彼はホイホイとついて行ってしまったのだ。

攘夷浪士と繋がりを持っていたスキルアウトの元アジトへとやってきた三人、何か怪しい物がないかと捜索に入るのだが思いも知らぬ事態が発生。

 

なんとこのアジトには自分達以外にも何者かが潜んでいるというのだ。それも隠密に長けたかなりの凄腕の者が……

 

「ふむ、ここまでめぼしい物がないとなると既に何者かが処分したと考えるのが妥当でしょうか」

 

スキルアウトが寝床としていたであろう部屋で異三郎がしゃがみ込みながらじっと部屋の中を観察する。

すると頭上からシュッと一本のクナイ手裏剣が彼の頭上目掛けて飛んできた。

 

「ある者といったら先程からチマチマと振って来るクナイぐらいなものですかね、うっとおしいたらありゃしません」

 

異三郎はそれを振り向かずにヒョイと難なく避けるとクナイは床に敷かれていた布団に突き刺さる。

もうコレで何度目の襲撃だろうか、数える事もめんどくさくなった彼はぼんやりとした表情で天井を見上げる。

 

「気配は既に感じない……この腕と気配の消し方……かつて幕府が所持していたある組織と通ずるモノがありそうですね、私の部下を何度も追い返してる所から察するにやはり一筋縄ではいかぬ相手の様だ」

「どわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「やれやれがエリートである私がエリート的に思考を巡らしている時に……」

 

一人冷静に相手の実力を測っていると別の部屋からやかましい叫び声が飛んできたので異三郎は考えるのを一旦止めて声のした方へと赴く。

 

「いつの間にかハンターハンターが再開してたァァァァァァァ!!!」

「いつ殺されてもおかしくない現場でなにジャンプ読んでるんですかあなた?」

 

そこには小汚いソファの上に座っていた上条当麻が両手でジャンプ開いたまま歓喜の叫び声を上げていた。

どうやら家探しそっちのけで偶然見つけたジャンプに夢中になっていたようである。

 

「神経が図太いというかバカと言いますか、サボってないで仕事してくれませんかね、ヒソカに殺されますよ」

「あのさ、勘違いしないでほしいんだけどさ」

 

表情は変わらずともどこか呆れている感じで注意してきた異三郎に対し、上条はパタンとジャンプを閉じた後、きりっとした表情で顔を上げた。

 

「上条さんはバカはバカでも生粋のジャンプバカなのですよ、そこん所ハッキリしてくれないと」

「知りません、仕事して下さいジャンプバカ」

 

ドヤ顔で何言ってんだろうかと思いながら異三郎が冷たく言い放っていると今度は別の方から

 

「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「やれやれ……」

 

また叫び声が部屋の中で木霊する。叫んだのは上条と共にやってきたオティヌス。

異三郎はどうせまた下らぬ事であろうと思いながらも一応彼女の傍へ歩み寄ってみると

 

「ユニクロの春物が今ならもれなく70%OFFだとぉ!!! ただでさえ安いのにどれだけ身を切り崩すつもりだぁぁ!! 何を考えているんだ一体!?」

「今が夏だからですよ」

「ああそういう事か」

 

案の定と言うべきか、散らばっていた広告チラシを見て叫んでいたオティヌスを冷静に諭しながら、背後からそのチラシをひったくる異三郎。

 

「呆れを通り越して哀れに見えてきましたよ、服ならもっといい所で買った方がいいと前に忠告したはずなんですがね、てかあなたが着てる物が服として認めてよい物か甚だ疑問ですが」

「なんだ貴様喧嘩売ってるのか、私のファッションセンスについて異議を唱えたいのであればそこに直れ、徹底的に議論してやる、泣いて許しを乞うお前の姿がもう既に見えておるわ」

「仕事中でなければ是非ともご相手してあげたい所ですが、残念ながら今私はそんな事にうつつを抜かしている暇は……おや?」

 

服の事を指摘された事にカチンと来たのか腕を組み挑発的な立ち振る舞いをするオティヌス。

そんな彼女に異三郎はいつも通り無表情で返事をしようとするがふと彼の懐から携帯音が鳴り響く。

 

「失礼、メールです」

「携帯取り出すの早ッ!」

 

鳴った瞬間即座に制服の内ポケットから二折り携帯を取り出してパカッと開けてメール確認する異三郎。

ボーっとしていてぶっちゃけ鈍そうと思っていた彼があまりにも俊敏な動きを垣間見せたので上条は思わず驚く。

 

そして異三郎の元へやって来たメールはというと

 

『ごめんなさいいきなりこんなメール送っちゃって、実は私、イギリスでモデルをやっていた20代後半の女性(巨乳)なんだけど日本の生活だと本当に出逢いが無くて……こんな突然で驚くのも無理ないけどよろしければ一度会っていただけないでしょうか? この下のURLへジャンプして登録すればいつでも私と繋がれるのでよろしく♪』

 

「ふむ……ふむ……」

「……なんか携帯見ながら登録しようかどうか迷っている所悪いんだが、それ絶対マルチだぞ……」

「おや、人の携帯を後ろから盗み見しないでくれませんか?」

 

その場にしゃがみ込んでどうするべきかどうか重大な選択を決めようとしていた異三郎の背後には、いつの間にか上条がジト目で突っ立っていた。

 

「アンタ……もしかして出逢いとか欲しい訳? 見る限りそういうの興味無さそうだと思ってたんだけど、絶食系みたいな?」

「あなた結構年上相手に失礼な事言いますよねホント、ちなみに私が迷っていたのはこのメール会話をどれだけ引き延ばせばメル友になってもらえるのだろうと思っていただけです、別に相手が女性だろうが男性だろうが、はたまたその真ん中だろうがメールしてくれる相手がいれればそれでいいんですよ私」

「いやそれはそれでおかしいと思うんですがねぇ……ていうかどんだけメールに飢えてんだよ」

「しかしまあ……これも大方ここに潜む者が仕向けた罠でしょう」

 

メール依存症というものを聞いた事はあるが、マルチだと分かっている相手とメールのやりくりしたいと思う時点でヤバいというレベルを超えているだろと上条は内心異三郎に対して引き気味になっていると、彼はパタンと携帯を閉じてスッと懐に戻す。

 

「敵は色々と情報通みたいですね、見廻り組局長である私のメルアドを把握しているとは……もしや我々エリート部隊の内部に間者でも忍び込ませてる可能性が……いずれ洗う必要がありそうだ」

「上条さんは一体何者なのか検討つきません」

「構いません、あなたに説明しても時間の無駄なので。ほらさっさと探してください」

 

上条の事は体を動かす事ならともかく頭脳労働には適してないと判断し、異三郎は特に隠さずにストレートにそれをぶつけながらシッシと手で追い払った。

 

「といってもこの部屋を探す所なんてもうどこにも見当たらないのですが……」

 

妨害の手を退けつつなんとか部屋の中を捜索し続けていたがもはや探す場所はほとんど無いといっていい状態であった。探せと言われてもなと上条は途方に暮れた表情で頭を掻き毟って部屋を見渡す、

 

「だけど特にめぼしいものも見つからないのに……どうして相手はずっと俺達をこの部屋から追い出そうとしているのだってうお!」

 

少々油断していたのか彼の足目掛けて突如鋭く光るクナイが勢いよく飛ばされてきた。

間一髪で足を上げてギリギリのタイミングで避ける上条

 

「あ、あっぶねぇ! おいそろそろ向こうも本格的になって来てるぞ! 一旦退いた方がいいだろコレ!」

「おい上条、ちょっと」

「ん?」

 

上条が身の危険を覚えているとおもむろにオティヌスが話しかけてきた。

どこから攻撃が来るのかとビクビクしながら彼は彼女の方へ歩み寄る。

 

「なんだよ腹でも減ったのか? その辺にあるサバ缶でも食っとけ」

「貴様、私が何時食いしん坊キャラになったのだ。いいからこの押し入れの中を覗いて見ろ」

「まーたユニクロのチラシかなんか見つけたのか?」

 

オティヌスがふと指さしたのはギッチギチに物が詰まった押し入れの中であった。

物というより完全にごみの山だ。山積みにされたジャンプ、いかがわしい本やピンクチラシ、空になったサバ缶だのと、本来押し入れに収納しない物ばかりが乱雑にある。

 

一体なんなのだと上条はジト目でジーと観察しているとふとある事に気付く。

 

「なんか大切な物を隠すためのカモフラージュの様な気が……」

「流石にそれぐらいの事は考えつく事が出来るのですね、思ったよりバカじゃなくて良かったですよ」

 

あまりにもここだけ何か異様な感じがすると思っていると異三郎もそれに勘付いた様だ。

二人の元へ近づくと彼もまた押し入れの前に立ってアゴを手で触る。

 

「どうやらさっきからずっと暗殺者さんが隠している何かがあるみたいですね」

「でもどうやって探すんだよ、一からこのごみ全部片付けるのか? そんな事してる間に俺達殺されるぞ」

「そうですね、という事で頑張ってください」

「いやだからここは三人で力を合わせて迅速に行動して……」

「私は陰ながら応援してますから、離れた所で」

「応援だけじゃなくて手伝えよ!」

「ホコリアレルギーなんですよね私」

「嘘つけ!」

「ん? おい、あそこに隙間があるぞ」

 

捜索するか否か上条と異三郎が顔を合わせて口論しそうになっていると、オティヌスが一人ふと押し入れに詰まったゴミだまりの中にふと小さな隙間があったのを発見する。

オティヌスはそっとその隙間に目を凝らして奥を見ようとすると……

 

「!」

 

突如頭上からジジジと音を立てながら奇妙な人形が落ちて来たではないか。

それはオティヌスの目の前にポトリと落ち、彼女がそれに気付いたと同時に

 

 

 

 

 

耳をつんざく程の激しい爆音と共に爆発を起こした。

部屋の中にあった物は原型が崩れ、壁谷や窓ガラスも砕け散り、その威力は中々の破壊力。

 

そして当然その部屋にいた上条や異三郎、そして目の前にいたオティヌスもその爆発に巻き込まれ……

 

 

 

 

 

「やれやれ、やっと片付いたか」

 

しばらくしてフラリと部屋であったこの場所へ入って来る者が一人。

パラパラと砂埃が落ちてくる中を口で手を覆ったまま、足元にある瓦礫を蹴飛ばしながら入っていく。

この者こそが先程からずっと妨害工作を行っていた人物である。

 

「いよいよバレそうだったんでつい”フレンダ”の奴から拝借した『ミニミニジャスタウェイ』使っちまった。死にはしないだろうが数か月は病院生活だろうな」

 

現れたのは上条とあまり年の変わらないであろう少年であった。銀色の刺繍が彫られた黒いバンダナを頭の上で整えながら、少年はけだるそうに奥へと進んでいく。

 

「悪く思うなよ、この部屋を守れと”駒場”の奴に言われてるんだ」

 

徐々に辺りに落ちて来た砂埃は消えていき

 

残されたのは先程の爆発で吹っ飛んだ押し入れの先に現れた一つの部屋。

 

そう、少年がずっと上条達に見つけられまいよう隠していたのは物ではなくこの部屋その物だったのだ。

 

「さてと、こうなっちまったらもうこのアジトを使う事は出来ねぇ、そろそろ大事なモンだけ持って余所へ行こうかね……」

 

ため息交じりに少年は呟きながらジャケットに着いた埃をパンパンと手で叩きながらその部屋にゆっくりと入ろうとしたその時……

 

「大事なモン? それはあなただけで運びきれるんですか?」

「!?」

 

突如聞こえる筈のない声が横から飛んできた。

少年はすぐにバッとそちらに振り向くと

 

「良ければこの私がその荷物の運びを手伝ってあげましょうか?」

 

砂埃塗れでゼェゼェと荒い息を吐きながら焦った様子で立っている上条に、後襟を掴まれた状態で床に尻もちをついている異三郎がそこにいた。

 

「もっとも持っていく場所はあなた方の住処でなく我々見廻組の屯所です、無論あなたもご同行願います」

「コイツは一体……よく避けられたな」

「これしきの事エリートである私なら容易き事、と言いたい所なんですがね」

 

多少服装は汚れてはいるものの、目立った外傷も特になくピンピンしている様子の二人を見て少年もさすがに面食らっていると、異三郎は自分の後襟を掴んでいる上条の方へチラリと顔を上げた。

 

「あなたよく瞬時に察知できましたね、まるでこうなる事を事前に予知していたかのような動きでしたよ」

「いや……俺自身もどうしてこんな風になってるのかわかんねぇよ、気が付いたらアンタを掴んで爆風から退いてた……」

 

どうやら異三郎を助けたのは上条だったらしい、しかし本人もこのような状況に理解しておらず思考が追い付いていない様子。

 

「あのちんちくりんな人形がオティヌスの傍に落ちたと思ったら、なんか意識が一瞬飛んだような……」

「ほう……」

 

異三郎は自分の後襟を掴んでいる彼の右手をジッと見つめるが特に何も言わずに黙っていると、上条はハッとある事に気付いた。

 

「そうだオティヌスの奴は! アイツ確かモロに直撃を食らって!」

「そっちの方はご愁傷様だな、あの嬢ちゃんは逃げようにも逃げれない距離で爆発に吞まれちまった」

「お前!」

「ま、恨みたきゃ恨め、だがこれでわかっただろ。素人が危ない事に手ぇ突っ込むなって」

 

先程からオティヌスの姿が見えない、どうやら彼女は逃げ切れずあの変な爆弾にやられてしまったらしい。

しかし少年の方はあっけらかんとした感じで肩をすくむだけ、その態度に上条が怒りをあらわにしていると……

 

「ふぅ、なんだなんだ一体どうした」

「どわぁ!」

 

いきなり少年が足元を見て驚きの声を上げて退く。咄嗟に上条は彼の足が置かれていた場所を見ると

 

「む、また小さくなっておるではないか」

「うおぉ! オティヌス! いやチビオティヌス!!」

「チビ言うな、妖精と言え妖精と」

 

見るとそこにはちんちくりんな少女が更に縮み、手の平サイズとなってしまったオティヌスがそこにいるではないか。

少年同様驚く上条だがまたもや小さくなったオティヌスは不満顔で彼の方へ振り返る。

 

「なるほどな、どうやら私はダメージ判定を食らうと縮む仕様らしい」

「どこの配管工のオッサンだよお前!」

「もしかして花や星を取ったら私はファイヤーオティヌスやスターオティヌスに……」

「ならねぇよ!」

 

冷静に自分の体を観察ているオティヌスに上条がツッコミを入れていると、彼に掴まれていた異三郎がゆっくりと起き上がった。

 

「コレは素直に凄いですね、お嬢さん、あなた何者なのですか一体?」

「さあな、私自身それがわからなくて困っているのだ」

「難儀なもんですね、それはさておき……」

 

小さなくなったオティヌスを物珍しそうに眺めた後、異三郎は懐からチャキっとある物を取り出した。

人間一人なら容易く始末できるであろう拳銃だ。

 

「残念ですがあなたの必勝の一撃も無駄に終わったようですね」

「……らしいな」

 

異三郎は静かに銃口を目の前にいる少年に突き付ける。少しでも動けば即座に撃てる構えだ。

 

「まだ我々と戦う気ですか?」

「戦うって? いやいや降参だよ降参、完全に俺の負けだろこりゃ」

「ほう」

 

少年はすぐに両手を上げて参りましたというポーズで自身の敗北を認めた。

その潔い態度に無表情であった異三郎の眉が微かにピクリと動いた。

 

「随分と諦めの早い事で」

「”忍び”ってのは侍と違って命賭けねぇんだよ、やるのは勝てる戦、負ける可能性があるなら一目散に逃げる。生き延びる事こそが俺達の役目だからな」

「忍び……あなたやはり」

 

気配を隠す事に長けた能力と扱う武器からしてもしやとは思っていたが

異三郎の予感はやはり的中していた。

 

「俺は服部半蔵≪はっとりはんぞう≫、元御庭番衆頭目だった服部一族の出だ、最も俺は幕府なんぞに仕えた事はねぇけどな、仕えていたのは俺の先輩方さ」

 

自分の名と一族の事をはっきりと紹介した半蔵という少年に異三郎は小首を傾げると

 

「自分の素性をお巡りさんである私にぺらぺらと喋ってよろしいので?」

「あ、しまった俺とした事が……いやよ、実は昔侍に憧れてた事があってよ、忍びのクセに名乗り口上とか作ってたんだよ。いやはやこりゃ先輩方に顔向けできねぇな……だから”全蔵さん”にいつも忍び向いてねぇって言われるんだよな俺」

「だから喋り過ぎですって」

 

思わず異三郎がツッコミを入れてしまう程長々と語り出す半蔵。確かに忍びには向いてない様だ。

そして異三郎がそろそろ彼を拘束しようかと思い始めると……

 

「だがま、確かに負けは認めるけどよ」

 

不意に半蔵は上げてる自分の手を僅かにそっと動かす。

 

「情報の隠蔽だけはしっかりさせてもらうわ」

「!」

 

そう言ったと同時になんと彼のズボンの裾からポロっと先程爆発した奴と同じ人形が出てきたではないか。

いち早く上条がそれに気付くとすぐに彼の近くにいたオティヌスの方へ駆け出して手を伸ばす。

 

「オティヌス!!」

 

小さくなったオティヌスを右手でガシッと掴んで横っ飛びで跳躍したと同時に、上条の背後でまたもや爆発。

幸いにも先程とは違って威力が弱かったのか、強風と小さな瓦礫を僅かに背中に食らっただけであった。

 

「朧さんみたいな隠し手使いやがって……!」

 

それにどうやら上条達を狙ったわけではなく押し入れの奥にあった部屋を破壊するのが目的だったらしい。

重要な情報がありそうだったその部屋はもう跡形もなく完全に破壊されていた。

 

半蔵の姿はもうどこにも無い、最低限の仕事をし終えたのでさっさと行方をくらましたのであろう。

 

「チャラチャラしてて忍びっぽくなかったが、腕は相当あるみたいだな」

「おい上条」

「もしまともにやり合えば俺一人ならまず勝てる相手じゃなかった、向こうから退いてくれて助かったぜ」

「おい貴様」

「ったく何がバイト感覚だよ、下手すれば死ぬ所だったぞこっちは……こりゃあ報酬たんまり貰わねぇと割に合わねぇってモンですよ」

「いい加減にしろ貴様」

「……え?」

 

ブツブツと文句を垂れながらため息を突いている上条がやっと気付いた。

声のした方向に振り返るといつの間にかオティヌスは元のサイズに戻っていた、どうやら右手で触ったことが原因らしい。

しかし問題なのは上条が元に戻った彼女の体のある部分さっきからずっと触ってる訳で……

 

「いつまで人のおっぱい触ってんだひっぱ叩くぞ」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

元に戻った瞬間にいつの間にか上条の右手は彼女の小さな胸に置かれていたらしい。

それにようやく気付くと上条は慌てて手を引っ込めて後ずさり

 

「すんませんでしたぁぁぁぁぁ!!」

「うむ、即座に自分の非を認めるのは良い事だ。それに免じてセクハラで訴えるだけで済ますとしよう」

「それ済んでないのですが!?」

「おやセクハラがあったんですか? お巡りさんならここにいますよ、犯人は何処です? ブタ箱にぶち込んであげましょう、それともこの場で射殺しますか?」

「いや勘弁してくださいマジで!」

 

こちらを軽く睨みながら判決を下すオティヌスとタイミング良く拳銃を持ちながらやってきた異三郎に対し、上条が深々と土下座して謝っていると

 

「それにしてもめんどうな事になりましたね」

「確かにこんな小さな少女の胸を触ってしまった事は昨今の時代ではとても許される事ではないですがこれはあくまで不可抗力でして……」

「いやそっちじゃなくて」

 

土下座して必死に弁明を図る上条をスルーして異三郎は先程爆破されてしまった押し入れの奥を指差す。

 

「アレではもう探す事も無理みたいですね」

「ああ、完全にやられたな……」

「うむ完全にやられた、完全に貴様におっぱい触られた」

「いやそっちじゃなくて」

 

先程異三郎が言った台詞をそのままオティヌスに呟く上条。

 

「あの半蔵って奴にまんまとやられたって事だよ。情報を隠すために跡形もなくぶっ飛ばしちまった、ったく俺がしっかり奴の動きを注意深く見ておけば……」

「別に貴様の非ではないだろう、私のおっぱい触った事は全面的にお前に非があるのは確かだが」

「もういい加減おっぱいから離れてくれませんか、反省してるんでホント……」

「ああ、そういえば先程妙な物を拾ったぞ」

「え?」

 

何時までも引きずって来るオティヌスに上条がうんざりした表情を向けていると、彼女はふと思い出したかのように手元にあった一枚の紙きれを彼に見せる。

 

「実はさっき小さくなっていた時に頭の上に落ちて来たのだ、大方爆発の衝撃で押し入れの奥から吹っ飛んできたのであろう」

「なんだコレ、写真?」

 

最初の爆発で小さくなったオティヌスの下に幸か不幸か、隠し部屋のあった押し入れの奥から飛んできた物らしい。

それは粗雑な解像度の写真だった、上条は彼女からそれを受け取って見てみる。

 

そこには小学生ぐらいの小さな金髪の女の子と

いかにもな屈強そうな体つきをしたいかつい大男が居心地悪そうに彼女の隣に立っていた。

 

スキルアウトとは縁遠い上条はこの二人については全く知らない、しかしそれは路地裏やスキルアウトとはかけ離れた風景であるというのはわかった。

 

「……」

「いやはやこれはこれは……」

 

しばらくじっとそれを眺めていた上条の背後から興味深そうな声が飛んできた。

いつの間にか異三郎が彼の背後から一緒にその写真を眺めていたらしい。

 

「その写真、渡してくれませんか」

「あ、ああ……」

 

そっと手を差し出してきた彼に上条は怪訝な表情を浮かべながらもその写真を渡す。

受け取った異三郎は相変わらず何を考えてるかわからない表情で再び眺める。

 

「この男は駒場利徳、かつてここにいたスキルアウトを統括していたリーダーですよ」

「そいつが駒場なのか? じゃあその隣にいる女の子は誰なんだ?」

「……」

 

異三郎は何も答えない、しばらくして彼はその写真をスッと制服のポケットに忍び込ませた。

 

「はいこれにて仕事完了です、お疲れ様でした」

「え!?」

「いやはやあなた達を誘って正解でしたよ本当に、私を爆撃から守ってくれた上にこんな重要な情報まで見つけてくれるなんて。思わぬ収穫です、これで時間解決の日もそう遠くないでしょうきっと」

「ちょ、ちょっと待てって! これで終わりなのか!?」

「終わりですよ、だから言ったでしょお疲れ様でしたと」

 

アッサリともう終わりと言われて上条が呆気に取られてると異三郎は話を続ける。

 

「ご心配なく、報酬はキチンと後日払わせていただきます。苦労してもらった分しっかり上乗せさせていただきますよ」

「い、いやそれは大いに嬉しい事だけど……でもなんでそんな写真が重要な情報に……」

「残念ながらその点については一般人であるあなたには言えません、ここから先は警察である我々の仕事、あなた達は大人しく家に帰りなさい」

 

質問には答えずに異三郎は踵を返してここから出ようとする。もうここに用はない、手に入れる物はもう手に入れたという感じだ。

 

そんな彼の背中を上条が無言で眺めていると「ああそうそう」ともう一度彼がこちらに振り向いて来た。

 

「あなた達中々見所ありますよ、エリートである私が保証します。出来ればこれからも仲良くやっていきたいと思うぐらいにね」

 

そう言うと突然上条のシャツのズボンのポケットに入ってあった携帯が鳴りだした。

何故だか嫌な予感を覚えつつ上条は恐る恐る自分の携帯を取り出して画面を見る、すると

 

『登録する時はお友達の所にやってほしいんだお(^ω^)

これからもお金に困ったらいつでも仕事紹介してあげるからたくさんメールしてくれたら嬉しいな

もし今後大活躍してくれたらご褒美に見廻組に入れてあげてもいいんだお(`・ω・´)キリッ

P・S 登録名はサブちゃんでよろしくお願いします』

 

一体誰からメールが来たのはおおよそ検討が付く、上条はジト目でゆっくりと携帯から顔を上げると異三郎はこちらに背中を向けたまま歩き出し

 

「それでは、夜にお休みメールするんで返信忘れないで下さいね」

 

それだけ言うとと二人を置いたまま行ってしまうのであった。

 

残された上条は恐怖を感じつつ携帯を握り締めながらボソッと呟くしかなかった。

 

「いつ俺のメルアド調べたんだよ……」

 

 

そして今日の夜、彼の下へ異三郎から本当にお休みメールがやって来た。

上条がそれを無視して寝ようとすると5分おきに彼からの返信の催促メールが来たとか……

 

「不幸だ……」

「上条それうるさい、さっさと黙らせろ」

 

上条当麻、思いもよらぬメル友をゲット(強制的に)

 

 

 

 

 

おまけ

教えて銀八先生

 

「はーい、なんか久しぶりだねホント、随分と待たせてしまってすみませんねホント、じゃあ気を取り直して1枚目、八条さんからのお便り」

 

『ブリーチに引き続き、こち亀が最終回を迎えることについて上条はどう思っていますか?』

 

「「長年の作品が終わるのは悲しいけどこれでまた新人作家の枠が増えるから嬉しくもあり寂しくもある」だそうです、編集者かよ……」

 

「では2通目~泰成さんからの質問」

 

『銀さんや真選組のメンバー等の年齢は原作と同じですか?』

 

「はい全く同じです、特に変更している部分はありません。実は銀さんが十代だとか、ゴリラが還暦超えてるとかそんなのは無いんでご安心を」

 

「はいじゃあ質問コーナー終わりまーす」

 

 

 

 




投稿が遅れてしまい大変申し訳ありませんでした、実に9カ月ぶりの更新……反省するばかりです。
これからはキチンと完結できるよう心掛けて頑張りますのでどうかよろしくお願いします。

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