俺の妹分が世界一可愛いと思うのは間違っていない 作:EXEC
皆さんが萌え死んでくれると嬉しいのですが。
私は朝、部屋を出るとそのまま食堂へ向かった。
私としては、ジンに朝からご飯を作ってあげて一緒に摂りたいと思うのだが、
肝心のジンは
"アイズが俺に作ってくるのは嬉しいけど、それだと負担がかかるだろう?そうだなー、たまに作ってくれると嬉しいよ"
そう言って、私が毎日作るのを良しとしなかった。
全然負担でもないし、むしろ毎日幸せな気分になれるのだが、ジンが言うならと渋々従った。
そういうわけで、朝ご飯は食堂で食べるのが私の常である。
食堂に着くとそこそこ混んでいた。起きたのは普通の時間だったので仕方がない。
とりあえず食堂に入って辺りを見回す。見慣れた姿を探すと、ジンはレフィーヤと話し込んでいた。
レフィーヤもジンに向けて笑顔で頷いている。少しだけ胸がチクリと痛んだ気がした。
かぶりを振ってその微かな痛みを振り払うと、私はジンに駆け寄って抱きついた。
するといつものように、ジンが頭を撫でてくれる。
何となく、今日のジンの撫で方は優しげな気がする。
"嬉しいけどちょっと物足りないような"そんな思いが私の中で少しだけ湧いた。
しょうがないので、自分からジンの手に頭を擦り付ける。
そうして、ジンにレフィーヤと何の話をしていたのか聞いた。
なんでだろう。気になったのだから仕方がない。
これにジンではなくレフィーヤが答えた。
"アイズさんの昔の話を聞いてたんですよ!ジンさんが言うには今のアイズさんは綺麗ですけど昔のアイズさんは可愛かったとか"
私の話をしていたらしい。
胸の中にあった僅かな靄が晴れて、どこか気恥ずかしくなった。
つまり、ジンは昔の私は可愛くて、今の私は綺麗だと思っているらしい。
なんとなくジンに今の顔を見られたくなくて、抱きついたまま肩に顔を埋めた。
食堂を出て一旦部屋に戻ると、部屋の前にロキがいた。
どうしたのか聞くと、
"アイズたんに用があったんや。今日ジンがギルドに登録に行くやろ?"
"そのあと、アイズたんにジンの案内を頼めんか思ってな。一通り終わったら、遊んできてもええで。どうや?"
そう不気味に含み笑いをしながら答えた。何か考えがあるのかもと思ったが、ジンと一緒にいられるのは嬉しいので気にしなかった。
そのままロキについていって、ジンの部屋まで行く。
ジンの部屋はまだ殺風景だ。引っ越してきたばっかりなので、物が少ない。頭の中で今日の予定に買い物を入れた。
遊んだりして楽しむの重要だけど、一番に考えるのはジン自身の為だ。
昨日ベートさんとジンが戦うところを見て、ジンに少しでも報いてあげたいと思ったから。
それに買い物も楽しそうだと思う。
そんな風に少しわくわくしていると、ジンが物思いに耽るように固まった。
すぐ近くまで行って、顔を覗き込む。なんとなくジンの顔が近くてドキドキする。ちょっとだけジンの唇に目が吸い寄せられた。
すぐにジンは物思いから立ち返ると、私を引きはがして胸に抱き頭を撫で始めた。
嬉しいけどちょっと残念。もう少しジンの顔を近くで見ていたかった。
そうして、ジンとロキが話しているのを聞きつつ、撫でられるのを堪能する。
やがて話が纏まって、ジンが言った。
"今日はアイズが頼りだな、よろしく"
それを聞いた私は嬉しくなって得意げに"任せて"と返した。
私をこんなにも嬉しくさせてくれるジンの為に私は少しでも役に立ちたいと思うのだった。
"~♪~~♪"
鼻歌を歌いながら、道を歩く。
途中で見かけた、私がたまに行くお店、関わりのあるファミリア、美味しい屋台などを紹介していく。
ちゃんと案内はできてるだろうか。あまり話すのは得意ではないのでちょっとだけ不安だったけれど精一杯頑張ってみた。
途中、男女の冒険者が手を繋いでいる歩いているのを見かけて、少し羨ましかった。
ギルドに行くとジンが話したことがあるという受付嬢のところへ向かう。
ハーフエルフのエイナと言うらしい。
ちょっともやっとした気がするけど、ジンとエイナさんの事務的なやり取りを聞いてそれも晴れた。
最後に受付を離れようとする時、彼女がジンに私とジンはどんな関係か聞いた。
ジンが返す前に私から"幼馴染で家族"と伝えた。
……でも何となく口に出すとしっくりこない気がする。どうしてだろう。
疑問に思うと同時、さっき手を繋いで歩いていた人たちのことを思い出して、その疑問も露と消えた。
口に出して頼むのは少し恥ずかしいので、手を出して要求する。
ジンがお小遣いとか勘違いしてたけど、全然違う。でも、手を出してくれたからこの際気にしないことにした。
ギルドを出てバベルへ向かう。ここにはたくさんの人がいる。結果論だけど手を繋いでよかった。
こんなにたくさん人がいるとはぐれてしまいそうだ。
ジンに換金所などの冒険者用の施設を案内した後、ジンの防具を買いに行く。
ジンはあの紙みたいな防具でダンジョンに行くつもりだったみたいだけど、幾らジンでもそれは許せない。
たぶん、ジンがダンジョンに潜っている間、私は気が気でいられないと思う。
お金がないのだろうかと思って、ジンに防具を買ってあげようと思ったけど、お金はあるらしい。
激しく否定していた。何でもヒモになるのは嫌だとか。ヒモって何だろう。
防具についてジンと二人で相談しながら買った。
ジンは基本的に軽くて動きを阻害しないものを好んだけど、私はもっと丈夫なのを選ぶように言った。
だって、ジンが怪我したらと思うと物凄く怖い。
お互いの意見をすり合わせて満足のいく装備が買えた。
頭の中の予定から買い物をするつもりだったのを思い出した。
とりあえず、何か必要そうなものをジンが今どれくらい持ってるか聞いてみた。
全然持ってなかった。服なんて数着しかないし、生活用品も全然足りてない。
ジンはこれでも何とか生活していけるとか言ったけど、絶対だめ。
断られたら、適当に高いのを買ってジンの部屋に置いて行くと言ったら、前言撤回してくれた。
小声で"妹分に貢がれるのは嫌だ"とか言ってた。
そうやって買い物に行ったけど、買い物でもジンはジンだった。
例えばジンはすぐ服を決めて買おうとする。そんなのだめだ。ちゃんと試着して何枚も試さないと。
しょうがないから、私が一枚一枚選んで試着するように言うと苦笑しながら了承してくれた。
でも、ジンと買い物するのは楽しかった。何と言ってもジンのだめな所をフォローするのが楽しかった。
ジンは普段はかなりきちんとしてるから、あんまり役に立てる機会が無い。
でも、今日の買い物ではたくさん役に立てたと思う。最後辺りはジンはちょっと疲れてたけど。
そうやって、バベルを出ると頭の中で案内する予定だったところを思い浮かべる。
ほとんど終わっていた。今からどうしよう。
……そういえば、ロキが案内が終わったら遊んでおいでと言ってた。
それを思い出すと、ジンに今日の案内は終わったと告げた。
そうやって、ジンが遊ぼうと言ってくれないかわくわくしていると、ジンが歓楽街の方を指差して"あっちは案内しなくていいのか"と聞いてきた。
思わず眉が寄って、眉間にしわができる。絶対ジンはあっちに行かせない。
それくらいなら私が……
取り留めのない思考を振り払って、冷たい言葉を言ってしまった。
ジンはそんなつもりで言ったんじゃなくて、純粋な疑問のはずだったのに。
でもそれに機嫌を悪くすることもなく、ジンは私に望んだ言葉をくれた。
さっき通った私がよく行くお気に入りの屋台へ向かった。
何となくさっきのことを引きずって、素直に手を繋げなかった。
お店で私が一番好きなじゃが丸くん小豆クリーム味を頼む。
そこでじゃが丸くんを食べ始める。ちょっと沈んだ気分が戻ってきた。
何とはなしにジンを見ると、一つ良いことを思いついた。
"あーん"
そういってジンの口元にじゃが丸くんを差し出す。
すると、ジンは懐かしそうな笑みを浮かべて固まった。
でも呼びかけると、すぐに差し出したじゃが丸くんを食べた。
そうやってジンは口の中のじゃが丸くんを飲み込むと私にも食べさせてくれた。
なんとなく、自分で食べるじゃが丸くんとは違う気がする。気分の問題だろうか。
そうして気分を沈む前より引き上げて、再びジンの手をとると私は歩き出したのだった。
次はどこに行こうか。本屋はどうだろう、なんて考えながら。
ほんと、恋愛描写は難しいですね。
逆に難しくない描写は何か聞かれても答えられませんけど。
何かお気づきの疑問点などございましたら、質問のほどよろしくお願いします。