俺の妹分が世界一可愛いと思うのは間違っていない   作:EXEC

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書きましたぜー。
昨日は中間テストとレポートで死にそうでした。睡眠時間?何それ美味しいの?いやまぁ、中間は想像以上に簡単で拍子抜けしたんですけどね。でも、明日の中間テストがラスボス。



17.彼の療養/彼女の看病

 

すー、すー、と寝息が聞こえる。ジンの寝息だ。

ジンに食事を食べさせた後、まもなく18階層の空にある水晶の輝きがなくなって夜になった。18階層は普段は水晶が輝くことで辺りを照らしているが、それが一定周期で暗くなるのだ。

それを冒険者たちは夜と呼ぶことにしている。この時間は街のお店も閉まって、18階層は眠りにつく。

 

それはここに一時的に滞在している私たちロキファミリアも同じ。今も見張り番をやってる人たち以外は眠っているはずだ。

そんな中、私はジンと同じテントに寝ていた。残念ながらジンと寝床は離れているけれど。

食事の後、ジンを見張るという名目があったから、リヴェリアに同じテントで寝かせてもらえないか聞いてみた。リヴェリアは少し渋ったものの、ティオネとティオナの後押しもあって、寝床を離すなら、と許可してくれた。

二人は私が大胆だとか、キセイジジツがどうだとか言っていたけど、なんだったんだろうか。ちなみに二人はその発言の後リヴェリアに連れて行かれた。

加えて、ジンのほうも幾らか反論していたけど、そっちはリヴェリアが説得してくれた。ジンは、私を助けて貰ったからかどうもリヴェリアには弱いみたいで、最終的に力なく頷いていた。

 

テントは二人用でそんなに広くないので、寝床が離れているといっても手を伸ばせば届くくらいの位置にジンは横になっている。

ジンはこちらを向いて目を閉じて眠っている。昼間もある程度寝ていはずなのに、夜になってすぐ寝入ってしまった。たぶん再会して初めて見るジンの寝顔が横にあって、少し落ち着かない気分。

それでもじっと見ていると、ジンが身じろぎをした。慌てて目を閉じて寝たふりをする。少し待って再び目を開けるが、ジンはこちらを向いて寝たままだった。

 

もう一度ジンの顔に視線を合わせる。普段はもっと大人っぽく見えるジンの顔が少し幼く見える気がする。どこか新鮮で、胸の中から暖かいものが湧き出てくる。

それは、鼓動が早くなるような熱を伴うものではなく、ほっとするような柔らかくて静かな暖かさだった。

 

私がジンに感じる想いは、時に炎のように激しくて、時に今のように穏やかに湧き出てくる。

どちらも等しく大切で、でもいつも私を揺れ動かす。

 

今このときも、こうやって離れて眠るのではなく傍で寄り添って眠りたい、と私に訴えてくる。この想いをどうするのが正解か私にはわからない。

 

それでも、何となく少しだけ体をジンの方へ寄せてみた。もともとの距離の三分の二くらいになっただろうか、そこで止める。

 

満足感と共にまだ足りないという思考が過ぎるけれど、黙殺する。そうして"今はこれで十分かな"と納得する。

 

早くジンが元気にならないかな、でも元気になると看病できなくなるな、なんて少しだけ考えながら、私は目を閉じて眠りについた。

 

 

――――――

 

 

朝起きてアイズに朝食を食べさせられた後。

 

俺は暇だった。毒が消えていないため仕方がないのだが、一切体を動かすことを許して貰えず、かといって体を動かさずに暇を潰せるようなものはない。

アイズと話をしてある程度は解消できるが、それにだって限界はある。他の毒になった団員と違って、呻くほど苦しくもないので贅沢な悩みだが。

 

結局、見舞いがてらに来たリヴェリアが俺が明らかに暇そうなのを見かねて、アイズに"食糧確保のついでにジンを連れて散歩でもしてくるといい"と言って外に出る許可をくれた。

アイズは少し不満そうだったが、意外とすんなり認めてくれた。どうもアイズも俺が暇そうなのはわかっていたらしい。

 

テントを出てのんびりと歩く。残念ながら許可されたのは野営地の周辺の比較的安全な場所のみだったが、それでも十分暇は潰せそうだ。

もっとも、それは今日だけで明日からはまた暇になりそうだが。そんなことを思って苦笑しながら、木に生っていた果物をもぐ。この果物もダンジョンの一部らしく、もいでもそのうちまた生るらしい。

 

「おっ、水晶飴(クリスタル・ドロップ)

 

貴重な果物を見つけて少し得した気分になる。

水晶飴とは貴族のお菓子と呼ばれるほどの果物であり、瓶詰めのこの果物が地上ではウン万ヴァリスで取引されることもある。

 

「あーん」

 

隣を歩くアイズの口元にこの水晶飴を差し出す。アイズは差し出されたそれを食べて、口の中で転がしたあと、"美味しい"とだけ言った。ちょっと悔しそうだ。

 

今、俺たちは水晶飴なんかの貴重な果物を見つけたら、相手に食べさせるという遊びをやっている。たぶん最初に始めたのはアイズで、それのお返しに俺がアイズに食べさせたら張り合うようになったのだ。

一応、アイズ基準では食べさせた方が勝利らしい。悔しそうなのはそのためだろう。

 

普通の果物も随分と集まりつつある。そろそろ野営地に戻るか、いや戻るとまたやることがなくなるしなー、などと思っていると。

 

『――――――ォォォォォ!』

 

遠くから微かな咆哮が響き渡った。同時に聞こえた方向から、震動が伝わってくる。野営地を挟んで反対方向にある18階層から17階層への通路からだ。恐らく、階層主ゴライアスのものだろう。

どこかの冒険者のがゴライアスに手を出したのだろうか。アイズと顔を見合わせると、ひとまず野営地へと向かった。ここから走るよりも野営地から人が出るほうが早い。俺たちがついた時には既に終わっているだろう。

特にアイズも急いではいない。18階層とはいえモンスターがいないわけではない。俺を置いて行くわけにはいかないからだろう。相変わらず心配性だと思いながら、少し歩幅を早めた。

 

 

どうやら、冒険者のパーティーが中層に存在する縦穴に落ちて、地上に戻れなくなった結果、18階層を目指したらしい。なかなか難しい判断をしたと思うが、実際にたどりついた以上は素晴らしい判断と言える。

しかも、そのパーティーはあのミノタウロスを倒した白髪の少年をリーダーとしたパーティーらしい。あの少年はつくづく今回の遠征に縁があるようだ。

 

採ってきた果物を預けたあと、ティオネに話を聞いた情報だ。今はティオナが世話をしているそうだ。ティオナはあの少年をアルゴノゥト君――御伽噺の英雄――と呼んで気に入っていたようだし、それも当然かもしれない。

もっともその話を聞いてすぐ、アイズの手で俺は再びテントに缶詰となったが。せっかくだし見に行こうかなと思った矢先のことである。

 

アイズ曰く、暇つぶしは十分に済んだはず、とのこと。どうやら果物の採取をして遊んでいるうちに、昼食の時間にしても遅めの時間になったようだ。

それほど早い時間ではなかったとはいえ朝から始めたはずだ。つまり半日近くやっていたということなので、確かに十分かもしれない。

自覚すれば、腹が空いていることに気づく。水晶飴なんかを途中で食べながらとはいえ、そういう貴重な果物は大した量ではない。

 

昨日と同じく、アイズが果物を切って食べさせてくる。今日も一応朝から抵抗したのだが、アイズはどうも意地になっているようで、決して食べ物を渡してくれなかった。

別に食べさせて貰うこと自体が嫌なわけではない。ただ、毎回やられると自分がヒモか堕落した駄目人間のように思えてきて、心が痛いのだ。

 

結局昼食も全て食べさせられてしまった。この分だとベートが治療薬を持ってくるまではずっとこの調子かもしれない。

 

 

―――――

 

 

森の中特有の緑の匂いが鼻をくすぐる。

今私はジンと一緒に18階層の森の中を歩いていた。

 

あんまり今のジンが動き回るのは良くないと思うけど、かといってずっとテントの中というのも気が滅入ると思ってのことだ。本当は私から提案しようと思っていたのだけど、リヴェリアが先にジンに言ってしまった。

しかも、ジンは嬉しそうにリヴェリアにお礼を言っていた。なんというか、それがリヴェリアに向けられたのがひっかかる。不満……なのかな。ちょっとだけもやもやして悔しかったけど、とりあえず飲み込んだ。

 

視界の端に雫の形をした果実が映る。水晶飴だ。もっともジンの方が先に見つけていて、私が見つけたときには既に手が伸びていた。

ジンが口元に差し出したそれを食べる。ひんやりしていて上品な甘さ。私が"美味しい"と言うと、ジンが得意げな顔をしてにやりと笑った。

……次は勝とう。

 

少し前のことだけど、果実の採取のために森に入ってすぐ水晶飴を見つけてそれをジンにあーんしたところ、次にジンが見つけて私に食べさせてくれた。

なんとなくそれからも貴重な果実を見つけたら互いに食べさせあっていると、いつの間にか競争になっていた。私としては食べるのは美味しいけど、食べさせる方が好きだ。

前も思ったことだけど、私は少しでもジンに報いたい。子供の時のこと、今も私を大事にしてくれること。こんなにも幸せな今このときのことを。

 

けれど、ジンは朝食を私が毎日作るとかそういう一方的なことにはあまり良い顔はしない。だからあまりお世話することはできない。

そういう理由もあって、看病のことや今の果実のことをやりたいと思うのだ。

 

……ちょっとこじつけな気もする。本当は、私はただジンと一緒にいたいだけなのかもしれない。

 

そんなことを考えていると、またジンが貴重な果実を見つけて私に差し出してきた。……うん、悔しいからちゃんと集中して探そう。

 

 

ある程度果実も集まってそろそろ散歩をするのも終わりしようと思ったとき、突然17階層への洞窟の方から咆哮と震動が伝わってきた。

階層主のゴライアスだろう。仮に近くにいたなら見に行って、危険そうなら助けたと思うけれど、ここからよりも野営地の方が大分近い。もうロキファミリアから人が出ていると思う。

それに、今はジンもいる。安全階層でもモンスターが全くいないわけではない以上、知らない冒険者よりジンの方を優先する。

 

とりあえずジンの方を見ると頷いてきたので、野営地に戻ることにした。

 

 

どうやらゴライアスの咆哮の原因はミノタウロスと戦って勝った冒険者の子だったらしい。名前は知らないけれど、もうレベル2になったとか。何でも、もう目覚めていてティオナが聞いたそうだ。

 

どうやってこの短期間にレベルを上げられたのか、少し前の私なら気になったかもしれない。でも、今はあまり気にならない。

 

私が強くなりたかったのは、きっとそれでジンが帰ってきてくれるという思いがあったからだ。

ジンと別れたばかりのときの私は、私が無力だったからジンと離れることになったと思っていたから、それが幻想だとわかっていても縋らずにはいられなかった。

今でも強くなりたいという思いはある。でも、それは昔のように自分を無くしてまで苛烈に強くなろうというものじゃない。今はただ、ジンと一緒に歩いて、一緒に強くなりたい。それだけだ。

 

とりあえず、その冒険者の子を見に行こうとしたジンの腕を掴んだ。そしてそのままテントへと連れて行く。もう息抜きは終わりだ。今気づいたけど、もう昼食を食べるにしても少し遅めの時間帯になっている。いつの間にかそんなに経っていたようだ。……私がムキになってジンに勝とうとしたせいかもしれない。

 

ジンは少しだけ不満そうではあったけど、大人しくついてきた。そのままテントに入って、昼食となる果物を切っていく。切った果実をジンに差し出すと、諦めた顔で食べた。

やっぱりジンはこういう一方的にお世話されるのはちょっと苦手みたい。嬉しくないわけではないらしいけど、それでも苦手なようだ。何でも、堕落しているように感じるとか。

普段はきちんとやっているのだから、こういうときくらい素直に甘えてもいいと思うのだけど。うん、たまには甘えて欲しい。

 

次々と食べさせて、私も合間合間に少しずつつまんでいく。……たまにジンの唇が指に触れることとは関係ない。でも、ちょっと自己嫌悪するので明日からはフォークを使おう。

 

 

食べ終わってしばらくして、ジンは眠ったみたいだ。毒の影響が大きくないと言っても、自然回復を完全に阻害するくらいの影響はあるとリヴェリアが言っていた。その分少し歩き回るだけでも疲れるらしい。ジンが寝ている時間が多いのはそのせいだろう。

ちょっと思い至って、少し移動してから起こさないようにジンの頭を少しあげて太ももに載せた。つまり膝枕だ。ジンにしてもらったこともあるし、一度やってみたかった。

なんとなく、ジンの頭を撫でる。地上にいた時はさらさらしていた髪は、遠征で少し痛んだのかちょっとだけごわごわした感じがする。……そういえば、ジンはまだ一回も18階層で水浴びができていないはずだ。毒になってからそのままテントの中にずっといたから。

それからしばらくの間、どうしようかと考えながらジンの頭を撫でて穏やかな時を過ごした。

 

 

――――――――――

 

天蓋の水晶がその輝きを失って少し経った夕方のこと。

 

パチパチと焚き火の音がして、たくさんの喋り声が辺りに響いている。現在、ロキファミリアの遠征部隊ではささやかながら宴会が行われている。ちなみに毒を受けているメンバーはここにはおらず、テントの中で寝ている。

 

そんな中、白髪の冒険者ことベル・クラネルもまた宴会に参加して、スープや果物を食べていた。物資が少ないため僅かな塩のみで味付けされた果物とキノコのスープは、ダンジョン内ではなかなか食べられない暖かい食べ物だ。

部外者ゆえに多少遠慮を混ぜつつ、彼は夢中でスープをかきこむ。ある程度空腹感もなくなってきたところで、辺りを見回した。

 

すぐ近くで彼のパーティーメンバーであるヴェルフとリリは何やら果物がどうとかで喧嘩している。リリが果物を奪われてヴェルフの背中にゲシゲシと蹴りを入れているが、ヴェルフはどこ吹く風で笑っている。

少し離れたところでは、リヴェリアが他のエルフたちに囲まれていたり、ティオナがおかわりをしてスープを大量に消費していたり、何人かのドワーフが若い冒険者に酒を飲ませて酔い潰している。何とも騒々しい空間だった。

ロキファミリアの中でベルが一番関わりがあるベートはどうやらいないらしく、見当たらない。

 

では、あの人は―――

 

そう思って辺りを見回すがどこにも見当たらない。いないのかな、と少し落胆したところで背後から声がした。

 

「……ミノタウロスと戦ってた冒険者の子?」

 

背後を振り返ると、あの人――アイズ・ヴァレンシュタインがいた。果物が入っているらしい袋と小さめの鍋、食器を二セット持っている。

彼女はベルの近くにあるスープの入った鍋に横にしゃがみこむと自分の持っている鍋に注ぎ始めた。

そうして、注ぎながらベルへと声をかける。

 

「酒場のときはベートさんがごめんね」

 

「あ、いえ。その、ベートさんも不器用だけど本当はいい人みたいですし。ちょっと酔って話しのネタにしちゃっただけで、悪気はなかったってわかってますから」

 

一瞬ベルは自分に声をかけられたとわからず慌てたものの、何とか言葉を返した。

その言葉の内容にアイズは不思議そうに首をかしげるも、そのまま聞く。

 

「体は、大丈夫?」

 

「は、はい、大丈夫です。僕の仲間たちも酷い怪我じゃないみたいで、数日休めば十分らしいです。その、ありがとうございます」

 

アイズは"私は何もしてないから"と言うと、更に続けて言った。

 

「あんまり、無茶しちゃだめだよ。でも、」

 

「――良かったね」

 

そう言って微かに微笑むアイズをに上ずった声で"は、はい!"と答えるベル。

それを最後に、自分の持った鍋にスープを注ぎ終わったらしいアイズは立ち上がると、ベルに別れを告げてどこかへと立ち去っていった。

それをぼーっと見送ったベルは、今度は横から衝撃を受けた。アマゾネスの少女ティオナがベルに抱きついてきたのだ。思わずベルは真っ赤になる。だが何とか持ち直すと、"アルゴノゥト君、"と言って話しかけてくる彼女にベルは疑問に思ったことを聞いた。

 

「ヴァレンシュタインさんは、宴会に参加しないんですか?」

 

「あー、アイズはねー。ちょっと大事な人が毒になって、看病してるんだよ。さっきのスープはそのために持っていったんじゃないかな」

 

少し苦笑しながらティオナはその疑問に答えた。

 

「大事な人……?」

 

ベルはその答えに更に疑問を持つ。大事な人とはどのような人なのか。もしかして恋人なのでは、と想像してちょっと落ち込んだ。

 

「子供のときの幼馴染で、兄みたいなものだな。まぁ、本人たちはそう思っているだろう」

 

今度の疑問に答えたのはティオナではなかった。いつの間にか、少し離れていたはずのリヴェリアが近くに来て答えたのだ。

ロキファミリアの幹部が近くに来たことに驚いてうろたえるベルに微笑ましいものを見るかのように視線を向けるリヴェリア。

 

「まだ恋人じゃないみたいだけど、今でもちょっとベタベタし過ぎてる上に、二人でいるとアイズが幸せオーラ全開で疲れるよねー」

 

ベルに引っ付いたままティオナが言う。

ベルは『まだ』恋人ではないという言葉に衝撃を受けていた。つまり今はともかくそのうち恋人になるのではないか、と。

 

「まぁそう言うな。ジンが来てからアイズも無茶しなくなったし、何より笑顔を浮かべるようになったんだ」

 

「代わりにベートがたまに落ち込むようになったけど。しかも落ち込んだベートを見てエルフの子達が変な妄想するようになったし」

 

"落ち込んだベートが男に走るとかどうたらってさー"と続けるティオナにエルフの王族であるリヴェリアが額に手をあてて呻く。

話が見えないベルは、少なくともアイズに親しい男性がいるということは理解できてかなり沈んでいる。そんな混沌としつつある状況に新たな乱入者が訪れた。

 

「なんじゃ、そこの小僧はアイズに懸想しておるのか?……まぁ今のアイズ相手には厳しいじゃろうが、女なんて星の数ほどおる。あまり気にせんことだ」

 

ロキファミリアの幹部であるドワーフ、ガレスだ。ガレスはその言葉と共にベルに酒の入った杯を押し付けた。飲めば忘れられると考えてのことだろうか。

渡された杯を手に飲むべきか飲まぬべきか悩むベルを尻目に、ガレスはリヴェリアに言葉を向ける。

 

「しかし、あのエルフの若いのたちはどうにかならんかのう。趣味はそれぞれじゃろうが、せめて身内で遊ぶのはなぁ」

 

「すまない。一応私の方でも言い聞かせておこう。ただ、あの子達は私もあちらの道に引き込もうとするからどうしても苦手でな。身内もそうだが、関係のない人間に迷惑をかけるのも忍びないし、なんとか説得してみよう」

 

そう言うと、ガレスと共にベルへ視線を向けるリヴェリア。――実は、そのエルフたちのネタになっているのはベートもそうだがベルもである。

彼女たちはジンにベートが負けたあと、ベルに鍛錬をつけるベートの話やミノタウロスとの戦いのあとベルをわざわざ地上までベートが運んだという噂を聞いて、盛り上がりだしたのである。

そのおかげで、エルフたちの間で評判が悪かったベートの態度などへの評価が急速に上がり始めているのはかなりの皮肉だが。

 

彼らに視線を向けられたベルの方は暗い影を背負いながら不思議そうな顔をすると、ガレスに渡された酒を飲むと決めて口をつけたあとむせていた。

ベルが渡されたのはドワーフ御用達の火酒なので当然である。ティオナに背を叩かれて咳き込みながら少しずつ火酒を飲んでいくベルは、まもなく酔い潰れるのであった。

 

なお、ベルを間接的に酔い潰したガレスはリヴェリアにしこたま怒られた。

 

 

 




ベートは不憫。ベルも不憫。
でも、もう少しパンチをきかせた方が良かったかなー。個人的には少し味気ないですね。



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