俺の妹分が世界一可愛いと思うのは間違っていない   作:EXEC

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昨日は更新できなくてすみません。
昨日は忙しさと体調不良とのダブルコンボで導入しか書けませんでした。

で、今日書き上げたやつです。
ジンとアイズの両視点です。どうぞお楽しみください。




13.彼女の願い/彼の予定

最近、ジンがダンジョンに行っていて私がホームに残っているときはよく彼からもらったスケッチブックを見ている。

 

スケッチブックは50枚くらいの絵が描いてありなかなか飽きないし、時を忘れて眺めてしまう。

 

私の指がスケッチブックの最後のページを開く。そこには片手をジンに差し出す私と、私の前に跪いてその手の甲にキスするジンが描いてあった。

 

これは確か私とジンが離れ離れになったあの雨の日から一週間ほど前の出来事だ。

 

本を読んでいた私はその中でお姫様と騎士がこうしている場面を読んで、この場面を再現して欲しいとジンに頼んでみたのだ。

 

ジンは少し渋ったものの、結局引き受けてくれた。そうして、私がお姫様役でジンが騎士の役となって再現した。それがこの絵だ。

 

あのとき、ジンが最後に言った誓いの言葉。

 

"生涯君の隣で君を守らせて欲しい"

 

彼のその言葉にあの時、訳がわからないくらい胸からこみ上げてくるものがあって、涙をポロポロとこぼしてしまった。そんな私を見たジンが慌てて慰めて…。

 

 

あの時の涙とこの前の涙。それは同じものである気がする。何故、泣いてしまったのか。それが分かれば、私のこの胸の中の炎が何なのかわかるのだろうか。

 

私はそんなことを思いながら、スケッチブックの最後のページを眺めたのだった。

 

 

―――――――

 

 

「はぁ、俺が遠征に、ですか?」

 

「あぁ、その通りだ。君には次の遠征についてきてもらう」

 

あの、アイズに俺の目標を伝えてから数日後、俺は団長のフィンに呼び出されて、遠征について来るように言われた。

 

遠征ではダンジョンの深層まで潜る。そのため、荷物を運ぶサポーターですらレベル3の冒険者がなる。レベル2もいないわけではないが、少なくともレベル2に成り立ての冒険者が遠征について行くことはない。

 

「ロキからの要請だ。そして僕もロキに賛成した。彼女が僕に君のスキルの詳細を話してくれてね。それを考えると君にはついてきてもらったほうがいい。加えて、君は実力的にはレベル3の冒険者と言ってもいい。前線で戦うことはあまりないだろうが、サポーターや荷物の護衛で役に立ってもらう」

 

相変わらず俺はロキから自分のスキルの詳細を聞いていない。まぁ、俺自身に教えれば効果を阻害すると言われれば仕方がない。

 

「急な話だから遠征の準備などもあるだろう。話はこれで終わりだ。悪いね、もう少しロキも早く言ってくれると助かるんだが」

 

そう謝罪して、去っていくフィン。

 

まぁ、遠征について来れるのは好都合だ。今のところ俺がアイズに許されているのは17階層まで。正直敵が弱く物足りない。ここで出来るだけ強くなっておきたいものだ。

 

そう思うと遠征が楽しみになってきた。

 

なお、ここでアイズとの約束を破って下の階層に行くという選択肢はない。アイズを悲しませない為に強くなろうとしているのに、強くなる為にアイズを悲しませては意味がないからだ。

 

 

アイズに俺が遠征についていくことを伝えると、複雑そうでありながらも嬉しそうな顔をしていた。

 

恐らく、複雑そうなのはアイズは過保護なので俺が遠征についてくるのは危険ではないかと思ってのことだろう。

嬉しそうなのは俺が遠征についてくることで離れ離れにならないで済むからだろうか。だとしたら嬉しいと思う。

 

アイズにこれから俺は遠征のために色々と買い物に行くことを話す。

すると、アイズは自分も一緒についてくると言い始めた。何でもまだ自分の準備が終わっていないらしい。

"何を買えばいいか教えてあげる!"そう笑顔で言ってくるアイズに俺も笑顔で拳骨をした。

 

あと数日後にある遠征の準備を終えていないとはどういうことなのだろうか。

 

 

アイズ曰く、遠征に行くと俺に会えなくなるのが悲しくて現実逃避していたらしい。

加えて、遠征前に少しでも俺と一緒の時間が欲しかったとか。

 

俺に怒られてしょぼんとするアイズがそう言ったのを聞いて、みるみるうちに自分の中の叱ろうという気持ちがしぼんでいった。

俺もアイズに甘いなーと思いながらアイズの頭を撫でると、アイズは俺がもう怒ってないと思ったのか、再び笑顔になった。

 

でも、とりあえず説教はしておいた。何故か説教されるアイズは少しだけ嬉しそうだったが。

 

 

アイズが言うには遠征のための薬や食料なんかはほとんどファミリア側で用意するらしい。それでも一応個人的に少しは用意するようだが、携帯食料を少しとポーションを一通り用意すればそれで十分とのこと。

 

あとは、俺たちが用意するのは服や日用品、それと個人で必要なものを用意するそうだ。

 

個人で必要なものは武器の手入れ用の道具などがあるらしいが、俺は持っているしアイズは武器が不壊属性のため必要ない。

 

服や日用品もほとんど持っている。正直あまり買うものはない。

 

なるほど、アイズが先延ばしにするわけだと納得した。

 

とりあえず、アイズに案内してもらい、必要な店を回っていく。

 

途中アイズが馴染みのファミリアの人に俺とアイズが恋人なのか聞かれて顔を真っ赤にしつつしどろもどろになったりしたが、まぁ些細なことだ。

 

 

一通り買い揃えたあと、のんびりと街を散策することにした。なんだかんだで俺はこの街に来てから然程経ってないし、実はアイズもそれほどこの街に詳しいわけではないそうだ。

基本的にダンジョンに潜ってばかりでたまに俺がどこかにいないかと探すことがあったくらいらしい。

ちょっと沈んだアイズの顔を見ていられず、その手を強引にとって歩き出す。

 

歩き回ってみるとわかるが、オラリオは基本的に雑然としている。街の中央部やメインストリートはともかく、そこから離れるにつれて区画整理?なにそれおいしいの?と言わんばかりの街並みだ。でも、こういう街並みを歩いていると、色んな発見がある。近道を見つけたり、怪しいお店があったり、良さそうな喫茶店があったり。見つけたお店は今度回ることにして、のんびりと歩き回った。

アイズもすぐに立ち直り、笑顔を見せて少しはしゃぐことさえあった。楽しめたようだ。

最後は迷ってしまい、結局空を飛んでホームまで帰ったのだが、まぁ笑い話だろう。

 

――――――

 

 

ジンは遠征についてくるらしい。それを聞いて私が感じたのは大きな嬉しさと少しの心配だった。

遠征中はきっとジンには会えないと思っていた。今回の遠征はたぶん二週間くらい。その間ジンに会えないと思うと本当に憂鬱だった。

でも、ジンが来てくれるなら、毎日会える。その落差で私は本当に嬉しかった。

 

ただ、深層まで行く以上レベルの足りないジンは危ない。どうしてジンがついてくることになったんだろう。

聞くとジンのスキルが関係しているらしい。どういうわけかかなりステイタスが強化されるスキルで、発動に条件があるんだと思う。

その詳細をロキがフィンに知らせて、フィンがジンの遠征行きを認めたらしい。

 

グッジョブ、ロキ。

 

フィンが決めたならたぶん大丈夫だと思う。もし危なくなっても絶対に私が守る。

 

 

ジンが遠征に行くことになったので遠征の準備のために買出しに行った。

その過程でジンに遠征の準備が終わっていないことがバレて怒られたけど。だって仕方ないのだ。ジンと二週間も離れ離れになるなんて考えられない。ううん、考えたくない。なので考えないようにしていたらいつの間にか今日になっていたのだ。

実は遠征の準備が終わっていなかったら、ホームに残れるかなーと少し考えていたのは秘密だ。あくまで少しだし、実行するつもりはなかった。ただ、そのおかげで今日のお出かけが実現したのだし結果オーライだ。

 

怒られたときはちょっと落ち込んだけど、説教は少し懐かしかった。昔、こうやって叱られた後説教されて、そうして悪いことが理解できたら撫でてくれて。そうやって私たちは本当の家族になったんだ。そう思うとこの説教が少し嬉しかった。

 

……でも、いくら嬉しそうだったからって、正座させて足を痺れさせてから足を突っつくのは酷いと思う。抗議したけど鼻で笑われた。悔しい。

 

 

そのまま遠征の買い物に行ったのだけど、あるファミリアに薬を買いに行ったときに、よく話す店員の人に恋人か聞かれてすっごく恥ずかしかった。でも、ちょっと嬉しかった。

つまり、恋人に見られるくらい仲が良いってことだ。そのあとジンが"家族というか、この子の兄みたいなものです"と言った。それを聞いてなんとなく胸の奥からもやっとしたものが湧いてきた。

たぶん、その時の私の顔は少し不満げだったと思う。店員の人は私の顔を見て良く分からないけど生暖かい視線を送って、"頑張ってください"と私だけに聞こえるように言ってきた。どうしてかな。

 

残念だけどお買い物はすぐに終わってしまった。もともと買うものが少ないから仕方がない。そのままホームに帰るのかなと思ったけど。

ジンは私が残念がっているのに気づいたのか、"少し街を散策しよう"そう言った。

 

私はオラリオの中心部なら案内できるけど、他はよく知らない。案内できない理由をジンに話す途中、私は昔ジンがいなくて探し回っていた時のことを思い出して少し落ち込んだ。たとえ、ロキファミリアが探してくれているとしても何かしないと落ち着かなかったんだ、あの時は。

 

そうやって少し落ち込んでいると、ジンに腕をとられて引っ張られる。

 

"知らないのは仕方ない。ただ、知らないならこれから一緒に俺と知ればいいさ。二人とも知らない道を探索するのって、わくわくして楽しそうだろ?"

 

ジンはそう言った。

 

……ジンはすごいと思う。私がこの街を良く知らないことを逆に利用して、二人で楽しもうとするんだから。

 

 

ジンに手を引っ張られるうちに私の顔に笑顔が戻っていった。

途中、ジンが雰囲気が良い喫茶店を見つけて、今度一緒に行こうと言われて少しはしゃいでしまった。子供っぽいと思われなかっただろうか?

 

ジンと時間を過ごしていると私の胸の中で少しずつ炎が大きくなっているのを感じる。それは心地よいけれど同時に少しだけ怖かった。この気持ちは一体なんだろう。溺れてしまいそうなほどの胸の暖かさに私は、この暖かさから離れてしまった時のことを思って少しだけ体が震えたのだった。

 

最後は二人とも迷って空を飛んで帰るという締まらない終わりだったけれど、とても楽しい散策だった。子供の時に村の周りを探索して遊んだのを思い出す。秘密基地とかまだ残ってるだろうか。"いつかまた村を訪ねられたらいいな"そんな思考が頭を過ぎった。

 

 

 

さぁ、数日後には遠征。絶対に二人とも無事に戻ってこよう。そう心の中で誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次の話で恐らく一つの区切りになると思います。
そのあとこぼれ話かな。

ここからはたぶん難しくなるので毎日更新できるとは限りません。
ですが、できる限り時間を作って頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします。

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