俺の妹分が世界一可愛いと思うのは間違っていない   作:EXEC

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さて、書いたはいいんですが。
今回は正直全然自信がありません。
上手く書けてるといいんですが。
あまりに酷いようなら、完結後、または修正案が思いついたときに修正します。



12.彼女の不安/彼の祈り

朝食を食べる彼を見る。巨大花から助けてもらった時から、気づいたら彼を目で追っている。

今も、朝食を食べながらなんとなく彼をチラチラと見てしまう。ただ、彼と目が合いそうになると思わず慌てて逸らしてしまう。どうしてだろう。

 

ぼっーと彼を見ていると彼はもうすぐ食べ終わりそうだった。私の朝食はまだ半分くらいしか食べていない。慌てて朝食を摂るのに集中した。

 

 

ジンが戦うのを眺める。魔法を習得してから、彼は更に強くなった。でも、相変わらず守りは紙とは言わないけどベニヤ板レベルだ。それでも彼は中層の相手にも危なげなく対処している。私が助けに入るのはこの一週間一度もなかった。

 

そんな彼の姿から、巨大花に勝ったときの彼の笑顔が思い浮かんだ。顔に熱が集まりそうになって、けれど頭を振る。

 

ここはダンジョンの中だ。加えて今までなかったとはいえジンが危ないときはフォローに入らないといけない。油断は私だけでなく、ジンも危険に晒す。私はジンに意識を集中したのだった。……たまに格好いいなーと思うくらいは許されると思う。

 

ダンジョンを出ると私は少しだけ気分が落ち込んだ。これでジンの指南役は終了だ。明日からは私とジンは別々に行動することになる。朝と夜は一緒だが、常に一緒だった今日までとは比べるべくもない。

 

でも、と思う。

よく考えると私とジンはいつも一緒にいる。それに対してジンはどう思ってるんだろうか。そう考えて一抹の不安が脳裏に浮かんだのだった。

 

 

その僅かな不安を振り払ってジンについていく。お昼ご飯を一緒に作るんだから、頑張らないと。

材料を見ながら、献立を考える。お昼だからそんなに凝ったものは作らない。パスタとかどうだろう。そんな風に思っていると、ジンが親子丼はどうか聞いてきた。

 

うぅん、親子丼は良いけどパスタも捨てがたい。話し合いの結果、親子丼になった。パスタは次の機会にということらしい。図らずも次の約束ができたから、それで十分満足だった。

 

エプロンをつけて手を洗う。鍋にみりん、水、醤油なんかを入れてベースを作っていく。ジンはお肉と玉ねぎを切っていた。ジンの方が早く終わり、私も心持ち急ぐ。

 

あまり急いで作って美味しくないものを作るわけにはいかない。ジンに食べさせるんだから、私の料理が上手なのを見せないと。

そう思って、集中するとジンがこちらを見て何か呟いたのが聞こえた。微かな声だったので完全には聞き取れなかったが、こう聞こえた。

 

”アイズ…と結婚…幸せかも…な”

 

…えっ!?

思わず振り返りそうになるのをなんとか堪える。

 

結婚?私と?

カーッと顔が赤くなるのがわかる。

全身が熱くなって、物凄く恥ずかしくなる。

ジンの視線を意識してしまって、体が思うように動かなくなる。

 

そうだ、そろそろ卵を入れなくちゃ。なんとか、持ち直して料理に集中しようとする。だがそこで、焦ったのが悪かったのか、足を滑らせてつまずいてしまう。

しかし、ジンに支えてもらって転ぶのは避けられた。でも、

"~~~"

触れられたところを意識してしまってカチコチになってしまった。のぼせて頭が真っ白になる。

 

結局料理は美味しくできたけど、そこから先のことは全然覚えていない。ジンに聞くと、不思議そうにそこからは私が作ったと言っていた。

 

 

そのあと、ジンに膝枕をねだってみた。本当は私がやってみたかったけど恥ずかしくて言えなかった。

あきらめずにいつかやってみたいと思う。

 

膝枕をされた状態で上を向くと、どうしてもジンの顔が視界に入って落ち着かなかった。

しょうがないので、頭を横に向けて目を閉じた。耳のほうからジンの体温が伝わってきて、どこか心地よかった。

 

 

 

体が揺らされて起こされる。起き上がってみるとすぐ傍にジンがいた。少し考えて、膝枕をしてもらっていたと思い出した。

ジン曰くお客さんが来たので私を起こしたらしい。目をこすって顔を上げてみると、この頃よく会う受付嬢の人がいた。

 

確かエイナという名前だっただろうか。せっかくの時間を邪魔されてちょっと不満だったけど、仕方が無い。

 

彼女はロキに用事が聞きたいことがあってリヴェリアが連れてきたそうだ。

 

リヴェリアがエイナに持っていた瓶からソーマというお酒を注いで渡し、その後ジンにも渡した。

後から来たロキが言うにはそのお酒はとても美味しいらしい。少し興味が湧く。

話を聞いてからジンがコップから一口飲んだ。表情からも美味しそうなのが伝わってくる。

 

それを見ていると、ジンから"飲むか?"と勧められた。

お酒は飲んじゃだめだと言われていたけど少しくらいならと思って、そのお酒を口に含む。確かにこれは美味しいと思う。

 

でも、それが喉を通ってすぐに体が熱くなった。頭がふわふわする。

そこからの記憶はないけれど、何か大変なことをしたような気がする。

最後に感じたのは少しの嬉しさと残念だなという気持ちだった。何が残念だったのか分からないけれど。

 

――――――

 

 

 

頭に走った頭痛と胸に去来す悲しさで目が覚める。どこか頭がぼんやりして、働かない。

内容は覚えていないけど久しぶりに悪い夢を見たみたい。

人の気配を感じて隣を見るとジンが本を読んでいた。

 

ジンは私が起きたのに気づいて、言った。

"起きたか、アイズ。すまない、酒が飲めないとは知らなかったんだ"

私はそれに対して首を振る。実際私が悪いのだ。興味が湧いたからって注意されたお酒を飲むなんて。

 

"私、何かやっちゃった?"

聞いてみた。覚えてないけれど何かしたのは覚えている。

"あー、うん、何かやったのは事実だけど。でもすぐ寝ちゃったから被害は無かったよ"

 

そう言った。迷惑をかけたみたいだ。少し気分が落ち込む。

改めてジンの方を見ると、近くのテーブルには何冊も本が置いてあった。さきほどまで読んでいたようだ。

 

 

ふと、思った。ジンは私といたときこんなに本を読んでいただろうか。

 

 

たまにならあったと思う。でも、いつも私が傍にいたからあまり読めなかったんじゃないだろうか。

そう考えると、私といる時ジンが趣味らしきものをやっているところをほとんど見たことが無い。

いつも私の相手をしていて、たまに困ったような顔を見せていたこともあった。

 

 

体温が下がるのを感じた。私はジンの傍にいることばかり考えてジンのことを考えていなかったのかもしれない。

 

もしかしたら、ジンは私を鬱陶しく思ってるのではないだろうか。そんな考えが頭に浮かんだ。

 

そんなことはない。そんなことはないと思う。でも、一度過ぎった考えは消えてくれなかった。

 

"ねぇ、ジン。ジンは私を鬱陶しいと思う?"

 

聞くか聞かないか考えていたら、いつの間にか不安で言葉がこぼれてきた。

もし、鬱陶しいと言われたらどうしよう。緊張と不安で泣きそうだった。

 

ジンは"そんなことはないよ。急にどうしたんだ?"そう言った。

 

安心したけれど、同時に本当に?と疑問が湧いた。

 

私はさっき思ったことをジンに話した。私がいつも傍にいて、ジンの時間が無いのではないか、と。すると、しばらくジンは考え込んだ。再び不安になる。

ジンは少しの間のあと、口を開いた。

 

"なぁ、アイズは俺の傍にいたいのか?"

 

"うん。これまで傍にいられなかった分少しでも傍にいてジンを見ていたい。"

 

私はそう返す。七年間一緒にいられなかった分、少しでも時間を共にして、失った時間を取り戻したかった。

 

"そうか。なら、それがアイズの望むことなら、望むままにやるといい。"

 

"もちろん、俺もジン・シックスという一人の人間だ。いつも付き合うことはできないかもしれない。"

 

"でも、そのときは―――ちゃんと言葉にするよ"

 

そうして、彼は言う。

 

"だから、俺が何も言わないうちはアイズの好きにするといい。"

 

"言わないうちは、ちゃんと自分で望んでアイズと一緒にいるんだよ。"

 

そして、彼は私が私の望みに従うように言った。

私が抱いた不安は忘れていいと。

このときには私の不安は消えていた。安心感とともに体から緊張が抜ける。

 

それから彼は続けて言う。

 

 

"ちょっと恥ずかしい話だけどね、俺の今の目標はアイズを守れるようになることなんだ。"

 

"七年前のとき、俺はアイズを守れなかった。モンスターに襲われて毒に侵されたときもそうだけど、アイズの傍からいなくなってアイズを傷つけた。何よりアイズの心を守れなかった。リヴェリアたちから聞いたよ。何度も悪夢を見ていたって。"

 

"だから、今度こそ傍にいてアイズを守りたい。それをアイズは鬱陶しいと思うか?"

 

"ううん、そんなこと絶対無い!"

私は思わずジンにそう言っていた。ジンがずっと私の傍にいて、私を守ってくれる。

それは私の一つの夢だ。

 

"なら、俺にアイズを守らせて欲しい。いつか、俺が強くなったとき、きっと。それまで俺の傍でアイズも見ていて欲しいかな、できれば。"

 

最後にそんな言葉をくれた。

とても、とても―――言葉にできないくらい嬉しかった。

胸の中から、あとから、あとから、暖かいものが溢れてきた。

さっきまで不安でこぼれそうだった涙が今度は別の理由で流れてくる。

 

そんな私の頭をジンが抱きしめてくれた。

ジンの胸を借りて私は静かに泣いた。

 

きっとこれはジンと再会した時の涙みたいに、悪い涙じゃない。

 

 

涙が流れる度に私の胸の中にある炎が大きくなるのを感じる。

その熱に急かされるように、私はジンに強く抱きついたのだった。

 

 

 

 




ラストが駆け足かつ突然過ぎる気がするんですよね。

もうちょい伏線を張るべきだったか。

うーむ、反応が怖いです。




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