俺の妹分が世界一可愛いと思うのは間違っていない   作:EXEC

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とりあえずのジン視点。
後半と矛盾が出たら、描写を書き加えたり変えたりします。
うーんでも後半より次に進めたほうが良かったりするんだろうか。

というか、これアイズ視点要るだろうか……?
これだけでも十分甘い気がしますけど。


11.彼の失敗/彼女の秘密

空を舞いながら木剣を振るう。

しかし、残念ながら相手には当たらず回避される。

今度は相手のほうから向かってくるがこちらも動き回るためなかなか攻撃の間合いに入れないようだ。

先ほどから何度かこの展開が繰り返されている。

 

 

今、俺はアイズと空中での模擬戦をしている。

しかし、どちらも空は不慣れであり、互いに大きさは人間、更に動き回るともなれば攻撃は物凄く当たりづらい。

格好いい空中戦を繰り広げるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 

一通りの模擬戦を終えて、地上に降りる。

その後幾らかの反省や注意点を話し合ってアイズと別れる。

この後はシャワーを浴びて朝食を食べダンジョンに潜る。

 

あの巨大花との戦闘後、そんな日々を一週間ほど繰り返していた。

 

 

 

結局巨大花の出現理由は不明だった。ガネーシャファミリアは捕まえていないらしい。

加えてあの花が出てきた地下を探っても何も見つからなかったそうだ。

なんともしっくりこない終わり方だが現実はそんなものなのかもしれない。

 

そうして朝食を食べるアイズを眺める。なんというか上品な食べ方だ。

子供の時は普通だったので、恐らくロキファミリアに入ってから覚えさせられたのだろう。

艶やかな金髪に目が覚めるような美しい容姿とその食べ方が相まって深窓の令嬢のように見えてくる。

実際は高レベルの冒険者なのだが。

 

静かにアイズを見ていると、彼女は最後の一口を口に運び手を合わせた。

 

そして顔を上げると、ちょうどアイズを見ていた俺と目が合う。

すると彼女は不思議そうに目を瞬かせて首をかしげた。

アイズは俺と接する時どこかこういう風に無邪気になるような気がする。

甘えているのだろうか。だとすれば少し嬉しいが。

 

俺が立ち上がると、アイズも立ち上がる。使用後の食器を置く場所にトレーごと食器をおくと、ダンジョンへ向かった。

 

 

 

巨大花との戦いの次の日から、アイズは俺が6階層より先に潜るのを許可してくれた。

どうしてか聞くと、俺が思ったよりモンスター相手に手馴れていたかららしい。

アイズは俺がトロールと戦っているところを見ていたようだ。

 

それを聞くと俺は一気に中層へと向かった。

今アイズが傍にいるうちに、どの程度まで潜るのが適正レベルか調べるためだ。

 

だが。

 

どうやら、今の俺はそれなりに強くなっているらしい。

中層のモンスター相手にもかなり余裕を持って戦えている。

新しく得た魔法、魔力放出は機動力を大幅に上げる。それにより、この魔法を使った俺は集団戦にかなり強くなったらしい。

加えて燃費もよく、ある程度節約し続ければ戦闘では毎回使っても魔力切れにならない。

 

―――ロキや魔法に詳しいリヴェリアに話を聞くと俺の魔法は非常に原始的でそれゆえ利用法が多いらしい。

やっていることは正確に言えば、魔力に物理への干渉効果を与え魔力を操作できるようになる。

それだけであり、詠唱も無いこれを魔法と言っていいかリヴェリアも悩んでいた。

 

何にしても便利なのは間違いない。移動に攻撃にと使い道が多く、即戦力だ。

 

 

モンスターの群れのうち、最後のミノタウロスを斬る。

考え事をしながらでも十分戦える位には中層のモンスターの行動は把握した。

だが、俺の適正レベルから考えると中層まで。

18階層を越えて探索することはアイズが認められないだろう。

 

ちらりとアイズを見ると彼女は静かにこちらを見返してきた。

そして言うには、

「もう17階層。これ以上先に進むとゴライアスもいるから行ってはだめ」

 

17階層から18階層の間にはゴライアスと呼ばれる階層主が存在している。

倒しても二週間程度で再出現する階層主はかなり強いらしい。

中層のゴライアスでもレベル4相当はないと勝てない。

今は倒されてまだ再出現していないみたいだが、彼女が言いたいのはそういうことではなく、これから一人で潜るときのことを言っているのだろう。

 

今日でアイズの指南は終わり。明日からは一人ないし自分でパーティーを組んで探索しなければならない。

俺はまだパーティーを組んでいないので、しばらくは一人ということになるだろう。

 

なお18階層は安全階層と呼ばれ、通常モンスターは出現しない。そのため、この階層には街が存在しているらしい。

まだ行ったことはないが早く行ってみたいものだ。

 

 

 

探索を切り上げて地上へ戻る。今日は17階層にたどりついたため、早めに帰ることにしたのだ。

そのまま諸々の雑事を終わらせると、アイズを連れて市場へ向かった。

二人で話しながら、材料を見て何を作るか決めていく。

 

今日はせっかくなのでアイズと一緒に昼でも作ろうと決めたのだ。

 

何を作るか決めて材料を買っていく。

卵、たまねぎ、肉、などなど。米や調味料はホームにある程度あるので、必要なものだけ買っていく。

ちなみに作るのは親子丼である。

 

 

ホームのキッチンに入り、手を洗う。

アイズに鍋を任せ、こちらは肉や玉ねぎを切っていく。

アイズのほうは、みりんや水、酒、醤油などを加えて煮ている。

 

こちらの方が早く終わった。アイズを手伝おうにも今は鍋を煮込むだけなので手伝うことはできない。

ひとまず、卵を割ってかき混ぜる。

鍋が煮立ったのかアイズは俺が切った鶏肉を入れて、玉ねぎを入れる。

また煮込むわけだが、鍋の前で鼻歌を歌うアイズのエプロン姿になんとなく新婚という単語が浮かんだ。

 

急いで頭を振ってその考えを追い出す。何を考えているのか。

仮にアイズが新婚なら客観的に見て夫は俺なわけだが、アイズは妹分だ。そういうわけにはいかない。

 

ただ、

 

「アイズみたいな娘と結婚できたら幸せなのかもしれないな」

 

そう微かな声でつぶやいた。

背後から見ると、アイズの耳が赤くなっていたような気がするが気のせいだろう。

 

――――――――

 

 

親子丼をアイズと一緒に食べたあと。

 

俺はロキファミリアの談話室でソファに座って本を読んでいた。

膝の上にはアイズの頭が乗っている。いわゆる膝枕だ。

横を向いてるため起きてるのか寝てるのかわからないアイズの頭を撫でる。

 

これをやっているのは、昼食のあとアイズにねだられたからだ。

まあ、大した労力でもないし、この状態でも本くらいなら読めるのでやってあげた。

 

そういえば昔を含めて今まで膝枕はやったことが無かった。

そんな風に思い至る。

 

あぁ、でも。近い状態なら耳かきをやってあげてたか。

今度、やってあげてもいいかもしれない。

 

そうして取りとめのない思考を紡いでいると、突然談話室の扉が開いた。

 

扉の向こうからやってきたのは、リヴェリアと……エイナさん?

ギルドの受付嬢がホームにまで何の用だろうか。

なんにしても珍しい客人のはずだ。

 

 

流石にお客さんの前で寝ているのはまずい。

アイズを揺すって起こす。どうやら寝入っていたようだ。

アイズは"んぅ"という声と共に起き上がって目をこすった。

 

ただ、それを見ているエイナさんはどこか複雑そうな顔をしていた。

 

リヴェリアから事情を聞くと、エイナさんはロキに聞きたいことがあるそうだ。

手に持った酒を見せてくる。ソーマというらしい。

リヴェリアがエイナさんにコップを渡してそれにソーマを注ぐ。

 

そして、俺のほうを見ると"飲むか?"と聞いてくる。

せっかくだし、おいしい酒らしいのでいただこう。

そう思って頷くと、俺にもソーマを注いだコップを渡してくれる。

 

エイナさんとリヴェリアが話し始める。

そこでよくわからないことをリヴェリアが言っていた。酒でロキを呼ぶとはどういうことだろう。

 

しかし、どうやら言ったままだったようだ。

突然ロキが扉を開けて入ってくると"ソーマはここかー!"と叫んだ。

ロキに対して呆れていると、ロキがソーマファミリアのことについて話し始めた。

何でもエイナさんが聞きたかったことらしい。

そして、この酒が失敗作らしいことを聞く。本物はファミリアの人間にしか手に入らないようだ。

しかも、本物には一種の洗脳効果があって、酒に"酔って"しまうとか。怖い話だと思いながら、手元のソーマに口をつける。

 

とてつもなく芳香で、涼やかな味。それでいて頭にガツンとくるほど衝撃的な味だった。

なるほど、これで失敗作なら本物なら洗脳効果があってもおかしくない。

これまで飲んできた酒とは格別というか次元が違う。

すると俺の横に一切距離を開けず密着して座っているアイズから視線を感じた

「…飲むか?」

とりあえず聞いてみた。

 

アイズはこくりと頷くと俺が渡したコップを受け取って、口をつけてコップを傾けた。

ゆっくりとのどが動いて、ソーマを嚥下する。

 

「あーーーーー!!!」

 

ロキが突然こちらを指差して声を上げる。顔が真っ青になっている。

リヴェリアの方をみると、こちらも心なしか顔が青くなっている。

エイナさんは何が起きているのかわかっていないようだ。

 

ロキは声を上げた後、ソーマの瓶を引っ掴んで脱兎の如く逃げ出した。

本当にどうしたんだろうかと思っていると。

 

「……ジン」

 

アイズがどこかぼーっとした声で名前を呼ぶ。

隣を見ると、アイズが顔を上気させてこちらを見ていた。

その上気した肌を見ると、扇情的で色っぽい気がしてどぎまぎするしかなかった。

 

そのままアイズは俺の胸に頭を一度擦り付けた後、こちらを向いたままゆっくりと体を傾けてくる。

当然隣に座っている俺はソファへと倒れた。

 

ソファにアイズと一緒に倒れこんだ俺はアイズに押し倒されたような形になる。

アイズの胸が俺の胸にあたり、潰れる。たぶん今の俺は真っ赤になっているだろう。

そしてアイズは至近距離で俺の顔と向き合うと、目を閉じて顔を更に寄せてきた。

 

仮にこのまま近づくと唇と唇が触れ合うことになる。

 

ん?つまり、キス?

 

「アイズ!」

 

呼びかけるが、効果が無い。

その上、高位冒険者の力で抑えられているので、逃げられない。

何とかもがくがどうしよもなく、アイズの顔が更に近づいて……

 

微かに触れるだけのキスをした。

 

ただし、唇にではなく頬に。

直前で顔を背けて、アイズの唇が頬に当たったのだ。

安心したような残念なような気持ちになっていると、

そのままアイズの体から力が抜けて、俺の体の上ですー、すーと寝息を立て始めた。

 

リヴェリアに疑問の視線を向けると、彼女は額に手を当てて言った。

 

「アイズは酒乱なんだ。そしてとてつもなく酒に弱い」

 

曰く、前に酒を飲ませた時はロキのマウントを取って殴りまくったらしい。

しかも止めようとした団員相手に魔法まで使って大乱闘を引き起こした。

 

「まぁ、ジンは知らなかったわけだし、そも被害もないわけだ。

特に何も言うことはない。だが、これからはアイズに酒を飲ませないように」

 

そう告げると、リヴェリアはエイナさんを連れて出て行った。見送るらしい。

そのエイナさんは終始引きつった顔だった。

 

俺とアイズ以外いなくなった談話室で一つため息をつくと、俺はアイズを横抱きに抱いて彼女を寝かせに彼女の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 




申し訳ありませんが、水曜と金曜は更新できるかわかりません。
筆が乗ったらで出来ると思いますが、忙しいので難しい可能性も。

とりあえず、一応がんばってみます。

というかこの小説はアイズとジンのW主人公である可能性が微レ存……?

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