新しく発見された時空間ゲートには、〈シルバーン〉の女性型有機アンドロイド、春・夏・秋・冬、季代子・知子・優子・由衣子の8名が派遣された。万能型・戦闘型・技術型・医療型が二組。
11キロメートルの巨大母艦二隻。相当数の、多様な無人艦隊を収納している。大艦隊を粉砕し、星系を占領し開発できるだけの自律重機・バイオロイドも積んでいる。
コリン側からも、人材不足を割いてアンドリュー・サムソンを送った。観戦武官・オブザーバーに近い、指揮権はないが必要があれば協力する、という立場だ。
立場、本来は明確な法が必要な話だ。だが、双方の軍法のすり合わせは、〈ダハク〉と〈シルバーン〉の強大な計算力があっても簡単ではない。コリン側でも、何万年前の第四帝国の法と、滅亡までに国体も変わった皇国の法、さらに地球各国の国法軍法をすり合わせるだけでも不可能事なのだ。皇国の〈大憲章〉は機械を後見人とし、市民の権利を擁護する素晴らしいものでもあった。
そして法は条文だけでは力を持たない。人々の心も変えなければならない。
平時でも無理なのにこんな激戦の最中にできるわけがない。
(信頼関係だけ……)
という頭を抱えるしかない状態である。
そして、ボーグに侵食されたアチュルタニ艦隊と、アチュルタニ艦隊の本隊……
(索敵し、敵同士をぶつけ合わせ、漁夫の利を得る……)
それが最初に考えられること。
アチュルタニ大艦隊との決戦も、それ自体は必要とされる。
ジュリア率いる艦隊はボーグ化された艦隊と、時間稼ぎの激戦を始めた。
ケインの時空、特にその危険な遺跡の監視も重大な仕事になる。ケインの故郷の国がそれを獲得し、利用しようと研究しているが、もし解放されたらとんでもない災厄になることが明白だ。
かといってその国、いやその時空のどの国の指導者も、警告を聞くはずがない。災厄を信じたとしてもそれを利用することを考える輩か、精神論で突き進む愚か者ばかりだ。
アチュルタニ艦隊と地球の、中間近くで発見されたゲートのそばで、春たちアンドロイドは無人機探査を始めていた。
「もう一つ知っているのにとても似たゲートね。あちこちに発生している?」
夏が静かに見まわす。
「無人機に向こうに行かせ、偵察させます」
「ゲートの性質自体は、前のとほとんど変わらないようね」
「無人機が帰って……」
無人機からの情報を読むが早いか、技能型アンドロイドの秋が絶叫した。
「太陽系、技術力が極端に高い!原子一つ、いや素粒子サイズでも危険!」
その言葉にアンドリュー・サムソンは青くなりながら、口をつぐんだ。
「七段階のシールドはある。八段階に」
戦闘型の夏が手早くコンソールに手を走らせる。奇妙な振動が超巨大艦を覆う。
「危険にもほどがある。このゲートは向こうからくるのを止めて封印した方がいいわ」
「でも、こちらにも余裕がない……」
「無人機4、7は破壊されています!データパック……ウィルススキャン……」
夏が画面をにらみ、春が二つの分析画面を同時に処理する。
「火星近傍で少数だけど激しい戦い、それに巻き込まれたわね。無関係でいつづけることはできない」
「探査情報……木星がない、推定位置に普通の物理法則ではあり得ない何か。太陽近傍に惑星サイズの超巨大建造物多数。でも、超光速航行の痕跡がない、近傍星系からも技術の痕跡がない!」
次々と秋が分析し、共有する。
「ここまでの情報だけでも司令に返して。悪い場合にはこの宙域は閉鎖しなければ」
春の命令に、医療型の冬が、
「徹底的な汚染防止、警告も」
と添え、皆がうなずく。
「反撃?」
夏の言葉に春が、
「このまま見なかったことにするわけにはいかないわね。もうこちらの存在はあちらに補足された。
夏、ナノマシンやウィルスによる攻撃、対処できる?」
「絶対とは言えないけど」
「なら、このまま押し込む。どこかの勢力と接触するわ。こんな乱暴なことは本来しちゃいけない、でも……時間がない」
春の決断に、サムソンもうなずく。
とてつもない巨大艦が闇に包まれ、小型戦闘機のように機敏に踵を返して奇妙な光を放つゲートに向かう。
「季代子、お願い」
もう一隻の四人にバックアップを頼む。
このゲートから出てくるものを電子サイズでも全て捕捉する。もし戻ってこなければ連絡する。必要があれば援軍になる……
残る四人も重要性も危険性も劣らない。
そんなとんでもない仕事を愛するアンドロイドに任せてしまった遠くの一馬の心痛はどれほどか。だが一馬も最前線にいる……
ゲートを超えた瞬間、〈シルバーン〉所属の母艦は猛烈な攻撃を受けた。非常に鋭い何かを大量に放つ何か。
それに追われている船……
「口封じ? 太陽の犬?」
と春。彼女は昭和にはまってネタが古い。サムソンは驚いているが、シルバーンの側は慣れていて無視している。
そんな間に、秋が襲われている船と通信しようとした。
凄まじい速度で動き、きわめて高度なナノマシンをばらまいてあらゆるものを食い、情報を奪い、染め変えようとする危険な敵と戦いながら。母艦側は次元数が高いシールド、時空もねじ曲げる火力があるからこそ戦えている。
襲われ、春たちが救援しようとした船は非常にはかない印象、凍った蜘蛛の巣やものすごく細い氷のような印象。だが分析結果は、とてつもなく強い素材でできていることを示している。
「あなたは?」
「〈シルバーン〉所属の探査母艦です。時空間ゲートの調査に来ました。侵略の意図はありません、攻撃には自衛します」
「〈ペルホネン〉だ」
男の声。
「勝手に応答するな!」
女の声。
「応答の必要はあるわ、おかげで攻撃が緩んだ……」
人ではないが優しい声。
「修理は?」
男の声。
船の中の通信情報が洩れる。
「船そのものにも知性があるわね?水準が高い」
秋の報告に春が、
「ならそちらとも交渉を!」
と返す。
激しい戦いが一段落し、〈ペルホネン〉との交渉が始まった。
「徹底的に確認してからだ。敵の攻撃はどんな細かな破片からも、どんな艦でも侵食され支配され作り変えられると思え」
という男の言葉を、四人のアンドロイドはしっかり信じた。
「ミエリ」
ぶっきらぼうで、あまり他者との交流に積極的ではない女が、名前だけを返す。
「ジャン・ル・フランブール。彼女はオールトの雲出身、高次ペレグリーニの配下だ。その依頼で、火星から地球に向かっているところだ」
男の方がむしろ話しやすいが、冬が警戒感を感じた。
「わたしたちは、あのゲートを通じて別の時空から来たの。侵略の意図はないわ。ただ、あの向こうでも戦いがある……あのゲートをくぐって恐ろしい敵がこちらになだれ込む可能性もあるわ。それに、そちらがこちらにとって侵略者になるかもしれない。知らなければならないの」
春の言葉に、ジャンがうなずき、船も肯定のメッセージを返す。
主にジャンの話を聞いた……高慢で軽薄な性格も感じるし、盗賊だと名乗り誇っている男だがその奥には違う人格があることも感じた。
特に〈ペルホネン〉そのものが信用が置ける性格だ、とも。
とてつもない技術水準、それが規約戦争(プロトコル・ウォー)などで地球や火星が荒廃し、多くの勢力に分かれた太陽系。もっとも有力なのは精神共同体(ソボールノスチ)と呼ばれる、惑星サイズの超巨大電脳を作って物理法則もねじ曲げる研究をしている集団。他にも族(ゾク)と言われる、日本のオタクを起源とする人々など様々な勢力がある。
ジャンは昔から怪盗として知られていたが、ある事件で有力者につかまり〈ジレンマの監獄〉と呼ばれる外太陽系の惑星サイズ監獄に、多くの人格データ断片として閉じ込められていた。そこに別の有力者の手先であるミエリが逮捕されて潜入し接触した。それから船の支援を受けてミエリがジャンを助け脱獄し、ジャンの記憶を探すため火星に行った。
火星の、過去の自己増殖性ナノマシン災害から、怪物化して人を襲う機械と戦いつつ繁栄している〔忘却の都市(ウブリエット)〕に行き、ジャンは過去を探して彷徨った。
残り時間を貨幣とし、時間がゼロになったら人格データを吸い出されて静者(クワイエット)として感情のない奉仕作業ロボットとなる都市。
昔の恋人の一人、また探偵となっていた知らされていない息子とともにジャンは自らの過去を追い、都市を支配しようとする陰謀と戦った。巨大な戦力との抗争にもなったが、ミエリの恐ろしい戦力もあって切り抜け、一人の有力者の核心に迫る鍵データを手に入れて内惑星系に向かおうとしていたのだ。
ミエリは強い焦燥感をもって、自らが仕える電脳有力者の仕事をやり遂げようとしている。
救助したこと、そのときに首輪と言えるプログラムを打ち込んだこと、また武人気質などもあり、
(ミエリはジャンの主人である……)
という態度が強い。故郷に対する誇りも強い、
(自分特別だと思っている傲慢な蛮族……)
という感じもある。
だが、信義がわからない者ではない、とも夏には伝わった。
多くの人が、強制的に精神アップロードを受けている世界。太陽の資源すら使う、惑星規模の超電子頭脳を操る権力者たち。
危険な地ではある。だが、それは一馬たち、コリンたちの戦いに大いに資するだろう。
何人かが思いついているのだ。
「あのボーグと名乗る、異星人の脳にプローブを打ち込み、機械と生物の融合体として、一体の知的存在と化す敵……」
「敵とはいえ、アチュルタニであっても、あの運命は残酷すぎます!」
「だが、一体である、機械部分が大きい……一つの巨大で高度なコンピュータ、ともいえる。なら、適合するコンピュータウィルスを打ち込めば……」
ウィルス、というメルティの言葉に、ケティが複雑に表情を変えた。
一瞬目を伏せる。歯を強く食いしばり怒りを抑える。罪悪感にこぶしを握り締め、目を強くつむる。唇をゆがめ、決意する。
一馬が歩み寄り、ケティの肩を軽く叩いた。
ケティが、両手それぞれに何か持つ様子を見せ、その二つを胸の前で合わせる。しばしば気にしている貧乳の。
生物兵器。
第四帝国の後身である皇国を滅ぼした生物兵器。
ケインの故郷から、アレックスが持ち込み上層部にばらまこうとした……以前、異星人の遺跡がある星で目撃者を消すために、移住者などを全滅させた生物兵器。
両方を解析したケティは、ゲーム時代の生物兵器も統合し、分子生物学的に編集し、もっともっと凶悪な代物を作り出している。
誰よりも生物兵器こそ許さない、医療型である彼女が。
その重みを、一馬はわかっている。
(ともに背負う……万一使うしかなくなったら、その罪も)
と伝えた一馬。
コリンも即座にそれを察し、一馬とケティの肩を抱き寄せた。
二人は感謝しながら、強めに押し返した。
背負わせきれないものもある。同盟ではあっても別の勢力……無論友情に感謝しながら。
そのウィルスで生物部分を一掃することもできる。また、ボーグという巨大すぎるコンピュータを破壊できるコンピュータウィルスも、作れなくはない……
だが圧倒的な計算力を持つこの新世界を協力者にできれば、より早く可能だろう。
ちょうど、ジャン・ル・フランブールの腹の中には、つい最近使ってしまったばかりの〈ジレンマの監獄〉をなす〈偽神(アルコーン)〉の一部が演算的に凍結されているのだ。
交渉のあてもある。この世界のどのプレイヤーにとっても、超光速航行技術は喉から手が出るだろう。
それとは別に、ボーグ/アチュルタニ艦隊とジュリアが引き続き率いる分遣艦隊との死闘は続いている。
「むしろ通信妨害を優先しろ、あいつらは集合精神だ」
「反ニュートリノ砲が眠ってました、通信妨害になる範囲に撃ってみます」
「通信波長が多い、電弱統一粒子も使われています!」
「重力子爆弾で擾乱できないか?」
次々と兵器を試す。二つの文明由来の武器を組み合わせる……矢と火を組み合わせるように。
「重力波を放ちながら敵のそばを通過しろ!余波を攻撃に使うんだ!」
「忘れるな、やられないことを優先しろ。できれば……アチュルタニ本隊を減らす」
ジュリアの冷徹な言葉。だがジュリアは忘れていない、
(敵を理解する……そのためには、本隊からより多くの情報を得る。司令はいつも甘いけどね)
だが、ゲームではその甘さと徹底した準備こそ、トッププレイヤーとしての勝利に貢献してきたのだ。
巨大な立方体艦をかすめるように飛びつつ、光速の99.9...%、9が百も並ぶ速度の、相対論効果で大質量になる実体弾を叩き込む。あらゆる波を中和するシールドもそれにはたまらず破砕される。
「二度通用しないと思いな!」
ジュリアは叫びながら、別の戦術を膨大な経験から引き出す。
コリン側から昇進したアドリエンヌ・ロビンズ提督率いる皇国の修理艦も八面六臂の活躍を続けていた。地球防衛戦の疲労を癒す間もなく、次々と波長を変えてハイパー・ミサイルを撃ち続け、粘り強く戦い続ける。
敗北し、運悪く死に損ねてしまえば、
(ボーグの一体として戦友に牙をむいてしまう……)
(死どころではない……)
リスクに心底おびえながら。
アチュルタニ本隊を、食い止めるというより誘導するための戦いに挑んだ本隊。コリンと一馬も含む。
実際問題、本隊が地球を襲うことを食い止めるのは優先順位が高い。
また、新しく発見された、超高技術の時空につながるゲートがある星系にも近づけたくはない。
ビア星系への、皇国の遺棄艦・〈シルバーン〉の搭載艦両方で多くの人間をビア星系に、また別の星に退避させる作戦もあるが……救命ボートには乗らない方がいいにきまっている。
三百万隻に及ぶ敵。
多くの情報が共有された。コリン側の、地球に残っていた人たちとも、地球生まれにも帝国出身も、〈シルバーン〉のアンドロイドたちにも。
アチュルタニという種族の持つ大きな恐怖。そして、異様なほど、
(ものを考えない……)
こと。
地球人も、人にものを考えないようにさせる方法は発達している。さまざまな儀式や法、習慣、その他もろもろ。
だが、アチュルタニはその水準が異様なほど高い。
(これでまともに軍を動かし、艦隊を作り続けることができるのか……)
というほどに。
一馬にとっては、
(これまで、これからも、膨大な知的生命を殺す……)
それ自体も重圧になっている。
家族を、アンドロイドたちを守るため。仲間となったコリンたちを守るため。そう割り切ろうとはしている。
だが、コリンと違い軍人ですらない、平和な日本で暮らしていた彼にとっては重いことだった。
自分が一日遅れたことで、こちらの地球の人が何億人も死んだ、ということも。
凄まじいとも何とも言いようがないほど戦い抜き、妻子を失って壊れたイザイア・ホーター提督をコリンとともに見舞ったことも忘れられない。
その時のコリンの巨大な悲嘆も感じてしまった。
それなど億分の一となる、圧倒的な悲惨に多く触れてしまい、それが大きなストレスになっている。
何人かのアンドロイドがそれを理解し、泣くように言ってくれるのが救いだが……
決戦の前の最後の会議。
方針は見えている……数百万の敵を食い止め、ボーグ/アチュルタニ艦隊がいる方に誘導する。できれば敵の大きい艦からより高い地位の捕虜、より高度なコンピュータをつかまえて情報を得る。
別動隊が、ボーグ/アチュルタニ艦隊を誘導する。
そして春たちが、別時空と交渉してできれば高水準のコンピュータウィルスを持ってくる。
「やれやれ、それだけの技術水準があるのに、きみたちは技術に貪欲だね」
コリンが苦笑するのをエルは微笑し、
「わたしたちも、鳥なき里の蝙蝠かもしれませんから。貪欲に、あらゆる技術を、人材を、遺伝子資源を求め続けなければ、アステカ帝国のように滅びることになるでしょう」
と返す。
「やりすぎて皇国のように自滅するのも怖いな」
「でも、アチュルタニのように止まってしまうのも嫌でしょう?」
貪欲に技術を高める〈シルバーン〉の態度は、コリンたちにもまぶしく思えた。
コリンも元宇宙飛行士。進歩、前進にあこがれたからこそつらい選抜と訓練に耐えたのだ。
敵は百万隻以上。こちらは、コリン側が数百隻の月サイズの戦艦、〈シルバーン〉の百キロメートル級の戦艦が数十隻。
コリン側の艦船は、首都周辺には少なかったが、〈シルバーン〉が発見回収した艦もかなり含まれる。
半分程度の、できかけの〈シルバーン〉の複製もあり、兵器は相当程度複製されている。これらはケインの故郷時空から買った人材の力で作らせたものであり、セーラ医療大佐のついでにチェリーたちと海兵隊が救出した、CACの捕虜リャン・チャン将軍が率いている。
祖国で、敗北の罪で拷問惨殺されるリスクがあった彼の家族も救出されており、その感謝もあって〈シルバーン〉に協力することをうべなった。
膨大な敵艦が出現する。
戦闘型アンドロイドであるヘルミーナの指示を受け、最初にリャン・チャン将軍が突撃して膨大な兵器を解き放った。
速度を優先して改造した小艦隊で、長身のアンドロイド、シグルドリーヴァが敵艦中枢を狙っている……敵超大型艦を鹵獲するため。
コリンは、巨大な罠を仕掛けて敵を引きつけている。
共存の可能性、自分が教え込まれていること……〈雛殺し〉を殺しつくさなければ生き残れない……とは違う真実があるかもしれない、複数の群れが戦うのではなく力を合わせて生きることができる可能性……
それを考えるよう言われたアチュルタニの捕虜ブラシールは、凄まじい苦悩にもがいていた。
昔の地球人が、神が存在しない……黒人を奴隷にするのは間違いだ……それらを考えるようにつらいこと。
敵陣のまっただ中に出現した、四国島に匹敵する巨大艦が敵の超巨大艦を数十光年離れた虚空に飛ばす。慌てた敵の猛烈な攻撃を何千もの頑丈なシールドが食い止め、時空歪曲フィールドがそらし、対空砲が迎撃する。
小艦隊を救出するためにヘルミーナの艦隊が動き、ダハクたちもそれに追随する。
はるか遠くに飛ばされたアチュルタニの巨艦に、セレスと、ケイン率いる海兵隊が突撃した。情報を得るために。皆殺しではない未来を得るために。
そして春たちも、あまりにも技術が高すぎる別時空、強大な戦力はあっても脅威が多すぎる世界で、高度過ぎる人間の子孫……あまりに能力的にかけはなれ、ながらも人間と同じく権力と虚栄を争う幼い超知能たちとの戦いに巻き込まれようとしている。
ジャンを狙う恐ろしい、美しい刺客も、一時は撃退されながらネコ科肉食獣のように爪を研いでいる。トラなどの爪が使われながらわずかずつ砕けて鋭さを保つように。カバやイノシシの牙が、上と下で磨られ研がれ続けるように。ディヴィッド・ボウイ(ナイフメーカー、有名なロック歌手とは別人)のステンレスを鋳造したナイフの微細構造がわずかずつ砕けて鋭さを保つように。
ミエリはひたすら何かを求めている。彼女のまっすぐな使命感は何をもたらすのか……
あまりに多くが、あまりに強く求める超光速航行。
また、膨大な人間が別時空にいる……強制的に脳の中身を電脳に吸いだすことを、狂信的に追及している勢力も多くある。
危険すぎる世界との接触。
そして激しい戦い。
宇宙飛行士が皇帝とされたコリン。ゲーム中毒の普通の日本人だった一馬。最悪のギャングから海兵隊として激戦を続け、戦死者の幽霊に毎夜苦しむケイン。そして記憶の一部を取り戻した盗賊、ジャン。
常識を、自分のすべてを破壊されてもがくブラシール。
彼らは何を求め、どこに……
ボーグの天敵って悪魔艦長と8472の他にもSFには多いです。
拙前作「MW」ではシロベーン(勉強後)でインプラント除去手術。
ハッカー、ということで「ミニスカ宇宙海賊」「楽園追放・残響」も考えましたが、どちらもいくらなんでも宇宙要塞以上じゃないだろう、と。