第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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〈宇宙要塞シリーズ〉の、ファンからの寄贈と書かれている「閑話集」の兵器は使わないことにします。本編にはほとんど未来兵器の描写がないので、かなりの程度憶測というかこちらで加えることになります。

 どの原作にも、本作に登場した作品はエンターテインメントとしても存在していません。たとえば「老人と宇宙」で登場人物が「スターウォーズ」のイゥオークは皆殺しにすべきだなどと議論するシーンがありましたが、それはなかったことになります。


反逆者の月/時空の結合より二月

〈雷(いかずち)の僕(しもべ)〉の助手、アク=ウルタンのブラシールにとって、それはいつも通りの仕事のはずだった。

 復讐(ヴィンディケイター)号の一員として、〈巣の守護者〉として〈雛(ひな)殺し〉を倒す。

 だが、その仕事は一転して悪夢となった。

 

 

 ホルス総督率いる、第四帝国の地球の守備隊は、もはや過労を通り越していた。

 設備建設。艦船。避難。反乱鎮圧……

 

 救援は衝撃であった。呆然とする中、勇士たちは自分たちが救われたことを知った。無数の時空がつながり合う、〈百万の天空の合〉の付随効果と、二人の指導者の相互信頼によって。

 

 

 戦いが始まる。亜光速戦艦〈ナーガル〉の艦長、アドリエンヌ・ロビンズ大佐は深く席に沈み、最終点検を承認していた。

 コリンが地球を取り戻すまで潜水艦艦長であった彼女は、自分の出世に信じられないような思いだった。そして、ほぼ間違いなく今日の終わりには、自分が生きていないであろうことも実感はなかった。常に覚悟していたつもりではいたが。

 静かな、大きすぎない声で指示をする。訓練された部下たちは、しっかりと戦いの準備をした。

 

 巨大すぎる艦が虚空に出現した。20キロメートルはある……それも、ありえない数。

 地球人は、それほど多くの艦船数を知らない。史上最大と言われるレイテ沖海戦のアメリカ側でも、数百の戦闘艦に千五百の補助艦艇程度。2019年の米海軍も290隻。帝国人の、大艦隊に勤務している者はもっと上の単位の艦隊を知っている。

 こちらも、戦艦120隻、合計800隻近い艦船数。だが敵は……

 最初に、出現したばかりの敵に注がれたハイパー・ミサイルの反物質弾頭や重力子弾頭は60の敵艦を粉砕した。

 だが敵も多くが生き残り、素早く反撃してくる。

(勇敢で有能な敵だ……)

 ロビンズ大佐にはわかった。しかも、それは先遣隊に過ぎない。おそらく、こちらの駆逐艦、いや偵察機程度でしかないのだろう……

 失った味方も多い。隣の僚艦の姿は、広がり続ける爆炎でしかない。

 

 

 あの悪魔(ターヒシュ)の惑星を破壊するため……ガス惑星の衛星の大きいものを、ゆっくりと加速してぶつける。ブラシールたちは、それによって滅ぼされる〈雛殺し〉たちがその氷塊をイアペタスと呼んでいる、ということなど知る余地もなかった。関心もなかった。

 質量はわかっていた。誰が計測しても同じになる。単位が違う、基礎となる数も12と違うだけで。加速するのが大変だ。止めることも大変だから、止められる心配も少ない。

 加速していく無防備な小惑星を、大艦隊で守る。どれほどの犠牲を出しても。

 単純で、対抗しようがない戦法。

〈蹄(ひづめ)〉。

 

 

 イアペタスの質量はおよそ10の21乗キログラム……地球の月が22乗の数倍。

 それを、速めの隕石の十倍近くの高速でぶつけてくる。到底対抗しようのない大艦隊で守って。

 地球は拳銃で撃たれた鶏卵のようになる。惑星を守るシールドも無意味。

 大艦隊で戦いつつ惑星に小惑星をぶつけるのが、アチュルタニの基本戦術だということは知っていた。だが、やられる立場になれば呆然とするものだ。

 爆発音を知らない人間が、訓練で初めてそれに触れるように。戦場で実際の洗礼を浴びるように。初の砲撃では半分以上の新兵が大も失禁し、それまで勇敢な強者だった少年の心が壊れることも珍しくない。

 暴れる者もいた。だが、多くはただ、絶望の中任務に就いた……呆然と処刑場に歩むように。

 

 完全な絶望の戦い。降伏ができるならだれもがするだろう、だがアチュルタニが降伏を受け入れるはずがない。

 家族を守れない……それほど辛いこともない。何の意義があるのか?

 ジェラルド・ハッチャー大将は叫んだ。食い止めることなどできないことは百も承知でいながら。

「次の星の同胞に少しでも楽をさせるんだ、最後まで悪あがきをするぞ!君たちを誇りに思っている!」

 

 わずかな艦隊と、密集して氷塊を守る艦隊が近づく。人類から見ればすさまじいスピードで。宇宙の中ではむしろゆっくりと。

 引かない。

 奇妙にも、互いに敬意を感じた。

 

 ブラシールはそれでも潰さねばならないと決意している。同胞たちは、敵が弱いうちに芽を摘むことで生きてきた……もう二度と、〈大いなる雛殺し〉にやられたようなことをされてはならない。

 

 ロビンズはしっかりと、地球に向かってゆっくり加速を続ける巨大な氷塊を見た。

 決意をとおりこした、言葉にできぬ感情に心が満たされる。

 クルーたち、随伴してくるタマ・ヒデヨシ率いる戦闘機部隊……その動きから、はっきりと心が伝わる。

(せめて、地獄を作ってやる)

 絶望を通り越した中に、奇妙な喜びが沸いていた。

(一歩も引かずに最終兵器を守る、あの固すぎる壁を、必ず食い破ってみせる)

 

 短くもすさまじい激突だった。

 そしてそこにあったのは、物理法則より普遍的な法則だった。

 ランチェスターの法則。数が多く射程が長い方が、圧倒的に有利……

 地球人もアチュルタニも、命を惜しまず奮戦した。戦って戦って戦い抜いた。正気などどこにもなかった。

 それでも……

 

 ハッチャーは、突然あがった声に違和感を感じた。もう忘れていた感情……希望。

 そして見た。

 自分が知っている航法とは違う眺めで、ジャンプアウトする超巨艦。

 長さ250キロメートル、幅170キロメートル、厚み110キロメートルに及ぶ超巨大艦が出現し、膨大なレーザーをまき散らす。

 レーザー、単純な兵器だ。だが、そのエネルギーの量と密度が十分に高ければ、反物質弾頭よりも強大な破壊力になる。シールドも狭い面積に過剰な負荷を受ければ崩壊する。何度となく、地球を覆う巨大シールドが小惑星やミサイルに抜かれると同じように。

 全長20キロメートル以上の艦が、数秒で姿を変え、気がついたら炎の塊と化している。輻射熱が離れた味方艦も温める。

 離れた、密集した敵艦隊が瞬時に崩れ去り、炎ですらない何かと化す。小さい無人高速艇がジャンプアウトし、直後に特定の方法でジャンプを失敗する……地球ほどの体積の時空が変質し、戻る。その内のすべての物質は破壊しつくされている。

 タンデム弾頭……ごく小さい重力子弾頭でシールドを破壊し、比較的量産しやすい水爆、それもツァーリ・ボンバの百倍以上の弾頭を叩き込むミサイルが大量にばらまかれる。

 超巨大艦から放たれる何かが、直径1500キロメートルのイアペタスを包む。と思うと、氷塊が消え失せる。

 どこへ?

 誰もが思った。だがそれはどうでもよかった。

 

「見慣れない艦ですまない、よくぞ戦い抜いてくれた」

 画面に映るコリン・マッキンタイアの姿と声。コリンの隣には、皆がよく知るジルタニスではなく、見知らぬ軍服を着たブラウンヘアの女性がいた。

 虚脱していたハッチャーたちが歓喜の声を上げるには、かなりの時間がかかった。

「捕虜をとる!敵を知らなくちゃね」

 乱暴な口調の女士官……ジュリア、と名乗った……が敬礼もそこそこに飛び出す。

 

 

 別時空で囚われ拷問されていたセーラ医療大佐を助けた、アンドロイドのチェリーとすずは、そのままセーラを連れて〈シルバーン〉に戻り、コリンとジュリアが率いる救援隊に合流した。

 エリック・ケイン准将もホルム将軍に改めて命令を受け、敵艦隊への侵入部隊に加わる。

(せめてもの恩返しだ……)

 ケインの腹心ジャックスをはじめかなりの人数の海兵隊もいる。

 頑丈な強襲揚陸艇が、正確なショートジャンプで敵に接する。ケインたちには想像を絶する技術だが、恐怖を抑え込んだ。

「ファイブ、サウザンド、フォー、サウザンド、スリー、サウザンド、ツー、サウザンド、……、ゴー!」

 セレスがあえて米軍パラシュート降下訓練の言葉遣いをする。一声加えることでより正確な秒カウントに近づける。もとよりアンドロイド、原子時計以上の精度で秒をカウントできているのだが。

 三つの世界の精鋭が、一瞬で切り裂かれた敵艦に突入する。

 戦い自体は慣れている。慣れていないのは味方の性能差……第四帝国の改造を受けた士官や、〈シルバーン〉の女性士官たちのけた外れの運動能力は、ケインたちの装甲服よりはるかに上だ。

 黒髪黒目ポニーテールの侍ガールのすず、グリーンの髪と目の忍者ガールのチェリーが連携し、膨大な火力で応戦してくるケンタウロス状の異星人と超高速で打ち合う。二人とも言動はやや幼いが、実力で海兵隊の精鋭に認めさせた。

 ケインもほんの一瞬戸惑ったが、たたきこんだ訓練が体を低く突進させていた。

 閃光手榴弾や低周波振動弾が敵の抵抗を引っ掻き回す。

 人工重力が、味方には予告付きで不規則に艦外からかけられ、敵を混乱させる。

 それでも、アチュルタニの勇士たちは屈することなく立ち向かい続けた。

 アンドロイドの忍者刀も、コリンの部下マクマハン将軍の放つワープ・ライフルも、海兵隊員の銃も激しく火を噴いた。

 敵の中隊長あたりか、足が折れていても激しく戦い続ける。

 魂と魂がぶつかり合う肉弾戦……

 小回りがきかないケンタウロスの体。だがその蹄はすさまじい威力。地球人、二足二腕の、動物としては欠陥が大きい存在とは違い、膨大な体重を正しく集中させられる。

 それをケインやチェリーは技の限りを尽くして受け流し、拘束しようとする。抵抗と意志、技と力。

 

 

 コリンは、すさまじい奮闘に疲れ切ったホルスら、地球に残してきた部下たちの姿に呆然とした。

 全員がゾンビになった、と言われても誰もが納得する。

 ホルスから見ても、重労働の限りを尽くしていたコリンたちの姿はゾンビそのものだ。

 だが、死者を悼む暇もなければ、慰める暇もない。

 感謝を告げ、見たものを報告した。ありのままに。信じられないところから得た味方。別時空のあまりにもおぞましい同胞たち、その中の宝石の魂を持つ軍人たち……

 

 多くの人が動き出す。生き残った地球人の女子供の相当部分、特にジルタニスの腹の胎児を、〈シルバーン〉の超巨大搭載艦でアンドロメダ銀河まで送り出す。何億人も一人80平米のスペースをもらえるほど大きな船で。

(たとえ負けたとしても、人類の種は残るように……)

 と。

 第四帝国首都バーハットにも、同じく種を残すため多くの人を送る。そこでは『西側連合』『中央アジア共同体(CAC)』『南米帝国(SAE)』などから、贅沢品や若返りの医薬品と引き換えに購入した何億人もの棄民がバイオロイドたちによる再教育を受け、〈シルバーン〉のリソースを利用した膨大な生産が始まっている。

 

 これまで当たり前だった生活。

 どんな些細な違反でも、いや何もしていなくても上の気まぐれで始まる拷問。あたりまえの飢え、汚水、疫病。そして数日で死に至ることも珍しくない重労働……残忍な見せしめ……

 ギャングどものけた外れのサディズム。おぞましい性的虐待。常に、自分自身の拷問、家族の惨殺……もっと悪い、考えたくも言葉にしたくもない行為を強要される。魂が磨り減る。何もかもが当たり前になる。

 おぞましい惨殺の悲鳴が常に耳を打ち、もう心も砕け……崩れた者を権力者が楽しみに切り刻み、じわじわと焼く。

 汚物を食わされる。心から喜んで食えと言われる。心から喜び感謝していないと上が決めつけ、連帯責任で拷問が始まる。それが当たり前。

(お前の心がどうなっているか、それを決めるのは俺だ。お前の言葉や態度など何の価値もない。俺はお前の汚れた心をいくらでも罰する……)

 その論理による、徹底的を通り越した奴隷化。家畜に対するより残忍な、人間の最も残忍なありかた。

 当たり前。

 使い捨て奴隷の生。

 それが売られた、変わるとは思っていなかった。誰に売られたのかも関心などなかった。

 

 だが、変わった。まず十分な食事と睡眠。徹底した清潔と医療。何をするか、何か違和感がある人々……バイオロイドに指示される。

 連帯責任ではない、一人一人が常に裁かれる。それも極端な体罰ではない。他者を傷つけようとした者は確実に制圧され、公開で裁かれ、ごく軽いと思える刑罰のみ。そこには実は高度技術による徹底した監視があったが、それに反対する心などもとよりなかった。

 比較的楽な、高度な機械を使う仕事をきちんとこなし、これまで禁じられていた勉強をすれば、昇給と贅沢というべき家電などが与えられる。

 工夫など考えることもなかった、時折バカが身分知らずに工夫を言い出して家族ごと拷問惨殺、いやもっとおぞましい刑罰を受けて皆の悪夢となることはあった……それが、工夫し改善すれば褒められ報酬になる。

 人間らしい生活。それは意欲となり、膨大な生産性となる。

 奴隷を鞭で働かせるより、給料を受け取る自由民とするほうがはるかに生産性は高い。

 いや、以前が以前だっただけに、狂信的な忠誠心が生じる。

 狂信的な宗教で生きていた人たちも、腐敗した残虐な権力者はいつかいなくなって、まったく別の生活の形となった。

 アンドロイドたちが再現した、平和な時期の中世イスラム帝国。信仰と豊かな生活、厳しくも公平な法、当時最高水準の科学技術と文化が調和していた時代。……狂信的宗教の権力者が訴える、預言者の時代とはまったく違う、それでいて聖典とはまったく矛盾しない世界。それと巧みに調和した高度技術による便利な生活と、比較的楽な仕事。無論当時は奴隷と征服あってこそだし、あちこちに残忍さもあったが、富は機械がもたらす。

 

 多くの棄民たちがバイオロイドと共同して膨大な生産力になる。

 兵器も、艦船も。風呂桶や台所や鍋も。食糧も衣類も。

 バイオロイドを作る装置も。艦船を作る機械も。

 あらゆる機械を作る基礎となる、旋盤などのマザーマシンも。

 膨大な鉱山からの様々な素材も。

 何もかも、広くまとめて生産される。

 また、皇国の遺棄設備も修理され、工場としての能力を急速に取り戻す。その工場が、アンドロイドとバイオロイドの指揮で膨大な数の遺棄艦を修理し、ミサイルを増産する。

 

 戦場から離れたバーハット近くでは、すさまじい生産が始まっていた。

 

 

 

 大工事の副作用、防げなかった弾の余波で地球は大災害状態。食糧供給のためにも、バーハットで短期間で再起動できた状態のいい皇国艦や、〈シルバーン〉が膨大な食糧や衣類を生産し供給し続けている。

 拿捕したアチュルタニ艦隊から、情報を絞り出す仕事もある。

 皇帝というめちゃくちゃを地球人に納得させるという難題もある。

〈シルバーン〉の正体はホルスに言うぐらいで極秘だが、一馬に正規の軍・政治家の経験がないことは何人もの人が違和感を持っている。

 エリック・ケインも受けた士官としての訓練は、ある意味人工的な貴族を作ることでもある……地球の古くからの伝統で、士官将校や政治家は、貴族でなければなれない。実力主義が強まったら、貴族を人工的に作る。一馬がそれではないことが、どうしても違和感になってしまうのだ。睡眠学習で食事マナーなどを押し込むことはできても、それは余計に違和感となる。

 軍人とはいえ宇宙飛行士でしかなかったコリンも、世界を支配する将軍や政治家たちを率いるようになればかなりの無理を覚えているほどだ。

 

 アチュルタニについての調査研究も急速に進む。その技術は極めていびつ……そのことは以前からも知られていた。何万年も、決して技術進歩をしないのだ。

 しかも整合性がない。艦が亜光速ドライブを持たないのに、ミサイルは持っている。ミサイルのエンジンを拡大して艦に積むのは容易なはずなのに、そうしていない。

(極めて優れた技術水準の文明が、極端に技術的に劣った兵器を作った……)

 としか思えないのだ。

 だがそれは、エルやケインにとっては容易に理解できることだった。20世紀までの歴史に精通したエルたち、また多くのおぞましい敵と戦い抜きおぞましい祖国に育ったケインたちには。

「植民地兵士」

「赤軍」

「奴隷兵」

 劣等民に劣った武器を持たせる、その生命を全く尊重していない、むしろ減ればいいと思っているから。

 

 さらに全員が雄である……それで何十年も戦い続けている。

(それだけの間性欲を抑えることは不可能……)

 と思われてしまう。

 さらに、異様なほど遺伝子的に均一。

 

 それどころではないこともある。

 今、地球を目指しているアチュルタニの本体は、三百万隻近い。アチュルタニは12を、地球人にとっての10と同じような基本の数とするのだが。

『西側連合』など別時空は、たとえ協力的であったとしても事実上戦力にならない。技術水準が低すぎるのだ。労働力も、優れた将兵もありがたいことはありがたいが。

〈シルバーン〉の戦力があってさえもかなり厳しい戦いになる。

 何十隻も、皇国製の〈ダハク〉以上の性能を持つ修理された艦が加わっても。〈ダハク〉が事故で消えたとされてから新造された〈ダハク2〉も含め。

 

 出現する膨大な敵……ミサイルが事前に待ち構えている。

 

 待ち構えていた彼らが見たのは、まったく異質なものだった。

 巨大な立方体。

 亜光速の反物質弾頭が超爆発を起こす。何もないように、立方体艦のシールドが白光を吸う。無傷。

 直後。あらゆる波長、あらゆる波で、英語も含む膨大な種類の言葉で紡がれる放送が全艦のアンテナをたたく。

「我々はボーグだ。お前たちの生物的特性、科学技術を我々と同化する。抵抗は無意味だ」

 その後から、知っているアチュルタニ艦とは微妙に異なった姿の大艦隊が姿を現す。何十隻もの艦が、立方体をした艦に率いられているように。多くのアチュルタニ艦は深刻なダメージを受け、修理中に見える。

 

「な……」

「アチュルタニ艦隊を、別の種族が襲ったんだ!……精神を乗っ取るタイプか」

 呆然としたコリン。ジュリアが素早く分析し叱咤した。

「そうだ、ああ!交渉できないようなら、戦うまでだ!」

 コリンがあらためて決意する。

 

 別時空との接触……別の時空から、とんでもない種族がここに流れてきた。

 アチュルタニ艦隊は、この上ない恐怖、悲惨な運命に陥ったのだ。

 突然の奇妙な通信。あらゆる攻撃が、二度目には通用しなくなる立方体の敵艦。球形の艦が接舷したと思ったら次々に、奇妙なプローブを撃ち込まれ、顔に奇妙な機械を生やして兄弟を攻撃し始める兄弟たち……

 

 ただでさえ恐ろしいアチュルタニ艦隊がもっと……だが、やる事は変わらない。

 

 

〈シルバーン〉では、医療型タイプでギャルっぽいマドカとエルが、アチュルタニ捕虜についての資料を検討していた。

 特に協力的であるブラシールを孤立させ、移送し、丁寧に説得していた。

 

 方針は変わらない。敵を撃破する。捕虜を、情報を得る。次の目標はある程度以上のコンピュータ。

〈シルバーン〉のアンドロイドたちは、アチュルタニの奇妙な文化や技術からある仮説を感じていた。それを証明するためにも。

 

 問題はそれだけではない。太陽系と、敵と決戦する地点の間の中継基地とした星系に、またも時空間ゲートが発見されたのだ。




〈反逆者の月 シリーズ〉原作の、ウェーバーならではの多数の死…限界をはるかに超えた奮戦…これもため息が出るほど読む分にはいいんですし、この世界の人間たちにとってその経験もなくてはならないものでしょうが…

「知っている」人ならボーグに支配された異種族の大艦隊、なんて絶望ものですが、その時空にまだ接していない今回の登場人物は知りません。

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