第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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混乱時空/時空の結合より3年1カ月

 星系規模の暗黒要塞。そこは深海のようであり、土の中のようであった。

 奇妙な姿、微生物を巨大化させたような生きた兵器が、何億とも知れず群れていた。

 すさまじい機動性と火力。無限の再生能力。

 新生黒色槍騎兵が、黒い穴を開ける……だが、それしかできない。

 前方に、すべてを消滅させる楯と騎兵槍の統合体を掲げて突撃する虚無の槍先は、先を見通すことができない。ビッテンフェルトの直感でいいところを穿ってはいるが、それだけでは決定力にならない。

 さらにこの艦隊は、止まって上下左右後方から攻撃されたら即座に壊滅する。ひたすら直進し続ける以外使いようがないのだ。

「十分だ!道さえあれば」

 やっと戦場に出られた古代進が大喜びで叫ぶ。

「ラインハルト陛下を助けに行け!」

 何を直感したのか、リュウセイ・ダテの叫びにビッテンフェルトは即座に反応する。

「無論のこと、陛下が俺の槍を求めているのならば、行くだけだ!」

 と、超要塞を巨大な槍のように貫通し、そのまま別の戦場に向かった。

 残されたヤマト、ハガネ改、ヒリュウ改2、そしてルクシオール。

 膨大な敵が押し寄せる……クラゲのような、装甲を着たムカデのような、また目も砲もエンジンノズルもない巨大なセンチュウのような。

 囲まれたヤマト。突然その周囲の時空が次々とゆがむ。事前に瞬間物質移送機で送られた微小無人機のおかげで高精度、計算技術や収束フィールドの進歩で収束密度も高い火炎直撃砲が、迎撃に当たる怪物を消し飛ばす。その空隙に次々と中型艦が出現する。

 瞬間物質移送機による援護。

「デスラー」

 古代進が微笑み、見回す。

「全防御兵器、使用を許可する」

 南部の一言とともに、一新された対空砲が……静かに動き回り、パルスレーザーを吐き出す。

 だが、パルスレーザーは単なるスポッティングライフルに過ぎない。また昔のパルスレーザーそのままでもない。たとえ次元潜航艇でもいぶり出す、強力な魔力の光も混じっている。

 対空兵装の本体は、艦の奥深くにあるシャルバート系兵器。

 光線が当たって反応し、時空が歪んだ、その歪みに艦の設備や装甲をとびこして直接未知の粒子を転移させる。それはごく短い時間で、ハエの卵がウジになって肉を食い尽くし、羽化して空に消えるように時空を破壊し、物質も食い尽くして消えていく。時空を食う時に放たれるきわめて高密度のエネルギーはHUバリアすら過剰負荷で破壊し、31次元に及ぶ時空のゆがみはパラトロン・バリアも貫通する。

 

 ルクシオールから、ルーンエンジェル隊が飛び出す。

 その紋章機を守るのは、ハガネ改とヒリュウ改2から飛び出した鋼の騎士たち。

 バルマー帝国相手に奮戦していたヒリュウ改2、ハガネ改は大破から修理されたが、当然〈白き月〉とダイアスパー・シャルバートの技術を加えて徹底した改修を受けていた。

 当然、機動兵器も。

 

 その前に、恐ろしいを通り越した存在が立ちふさがった。

 平均全長70メートルはある、不気味な機械化生命……糸を放ち毒牙で襲うクモ。おそろしい速度と固さで体当たりするゴキブリ。無数の爪を振り、毒牙を突き立ててくるムカデ。外套膜を翼のように広げ、鋭い毒矢を放つ巻貝。超高速で飛び交い強大なハサミを振るうエビ。

 ひたすら長く、ぬるぬるした表面の、他の器官が何もない怪物。

 卑猥とも凶悪ともいえる、トゲとぬらっとした感じで、あちこちに割れ目ができては刺胞だらけの内部を露出させ、そこから肉芽を出して増殖していく化物。

 螺旋形の巨大細菌。空間そのものに無数の線を出して増殖し、鋭い鞭を振り回す超巨大菌。

 その奥にいる本隊をめがけ、機動兵器が襲いかかった。

 複雑な、破壊困難な地形。高い機動性で襲ってくる触手や虫に似た敵。

 ここは大艦隊や紋章機以上に、機動兵器が役に立つ戦場だ。チェーンソーと外科メスが、別の場で役に立つように。

 

 

 鋼龍戦隊の多くの機動兵器は、激戦に大破していた。

 神々や異常生物の面の方が強いサイバスター、龍虎王、ライン・ヴァイスリッターなどは機械による修理は無理だ。〈黄の月〉はかなり霊的な面もあるが、逆に〈月〉が汚染される危険が大きすぎた。

 というわけでそれらは自己修復を待った。〈月〉の改修複製ができたら別だが、それはもう半年はかかる。

 それ以外は新造の機動兵器が作られた。ユリアン・ルークらの護衛に行っていたオクト小隊も戻り、激しく損傷した愛機を修理にゆだね新量産機に乗り換えた。

 技術水準がかなり離れているので、修理したり改造したり設計図を読んでコピーしたりするより、新しく作る方が早い、ということになった。

 コンパチブルカイザーのように中枢が再現困難技術であり、手足などは手が届く技術を用いた機体もある。それらは中枢だけを、新量産機が大きいランドセルを背負ったような形にした。

 例外はSRX。

 

 量産新造機を作るにあたり、ハガネ・ヒリュウ改とその故郷、平行世界やバルマー帝国が蓄積した膨大な人型機のノウハウを注いだ。メガロードが蓄積したノウハウと、ダイアスパーやシャルバートなどの超技術との統合でもある。

 信頼性と設計生産時間短縮に全振りし、ノアとマリオン・ラドム博士らがドクターストップがかかるほどの改良版タンクベッド生活をした。

 時間短縮のため可変機構はなく、人形のみ。外見は西洋全身板金鎧に似ている。全高29メートル。

 設計思想は徹底的に「人間の動きを模倣する」、ヴァルシオーネ、ダイナミック・ゼネラル・ガーディアン、ヴァイサーガの方向。短時間での生産・信頼性・防御・戦闘継続能力を重視している。関節部や人型制御機構は信頼性が高い、ダイアスパー技術で改良されたメガロード機の技術を応用している。

 操縦インターフェイスは、各パイロットの愛機と同様にカスタマイズされている。

 内蔵武装はやや少なめ。重力拳、クロスマッシャー・パルスレーザー・シャルバート産のCIWS、バリアのみ。ただし圧倒的な出力ゆえ、クロスマッシャーも連射可能だ。内部にはハイパードライブとバーゲンホルムがあり単独超光速航行が可能。

 

 ほかにも、バラヤー方面で使われているスカイホークに似た可変機やダイアスパーが改造したバルキリーなども考えられた。だが、12メートルの巨人との格闘戦を目的にしたメガロードの可変機と、あらゆる異星人を見た目で脅すことが主眼の機動兵器はかなり設計思想が異なる。

 また可変機に慣れていないこともあるし、第一スカイホークを小型化した技術的に最も進んだ機体は、人型がなくガウォーク形態のみだ。

 

 内蔵武装が少ない分、別のものを充実させた。

 まず、20メートルはある大型ライフル。独自のエンジンを内蔵し、ヤマトの主砲以上の威力はある。

 外見は特大リボルバーの120ミリ火薬砲も、信頼性を優先するマリオン・ラドム博士が無理やりつけた。フォルテ・シュトーレンも大乗り気だった。ただし炸薬は波動カートリッジ。

 

 さらに、機械の馬。全長97メートル、波動エンジン・波動砲装備。馬というよりオオトカゲに近い外見だ。

 自在に動く長めの首、口からのブレスとして波動砲と大口径ショックカノン・フェイザーを連射できる。

 額の角に重力内破槍。外付けの量子魚雷発射装置、高水準のシールドもついている。

 機馬自体に高い自律性があり、馬と同じように乗りこなすことができる。

 人をサイボーグ化する時間がなければ、鎧を着せ、着剣小銃を持たせ、馬やバイクに乗せてしまうのが一番いい戦力強化だ。

 機動兵器一機につき、量産型準無人紋章機ダークエンジェル2が2機ずつ随伴して命令を受け、援護もする。予備エンジンにもなる。

 

 また、実際には機動兵器に火器が必要かどうかは怪しい。精密に位置を指定すれば、そこに火炎直撃砲や、瞬間物質移送機でハイパー放射ミサイルや波動カートリッジ弾が転移してくるのだから。

 

 SRXだけは完全に例外。バンプレイオス構想についての資料を呑みこんだ〈白き月〉がなぜか、SRXの残骸のトロニウム・エンジンやT-LINKシステムをとりこみ、決戦ギリギリで新しい機体を出現させた。

 全長177メートルの巨大戦闘攻撃機、としか言いようがない。優雅なデルタ翼、いくらリュウセイが叫んでも変形機構も何もない。

 4人で制御し、波動エンジンとクロノ・ストリング・エンジンのハイブリッドを補助エンジンとする。無論波動砲やバーゲンホルムも装備されている。最新のコンピュータが入っているとはいえ、ライディースの負担は大きいものだ。

 ミサイルのペイロードはすさまじいものがあり、その面でも重要な戦力になる。

「戦力も運用コストもずっといいわ……」

 アヅキ・サワなどは言っており、メカニックたちはみな同意している。

 

 もともと出自が広く、超高速恒星間航行試作機から重装甲格闘型と、多様な機体で構成される鋼龍戦隊の機動兵器。それを一種の量産機でやるのは無茶……に思えた。

 だが、圧倒的な性能がそれを可能とさせた。

 アイビス・ダグラスはアルテリオン以上の超高速と機動性の高さに翻弄され、コンピュータのアシストと強力すぎるスラスターの反応速度でこれまでできなかった機動をこなした。

 キョウスケ・ナンブはアルトアイゼン・リーゼをはるかにしのぐ突進力と装甲で突撃し、正面から強力な火薬砲を叩きこみ、敵の装甲を貫いた。

 ラトゥーニは敵の行動データを優れたコンピュータの助けを受けて解析し、味方機にも動くべき動きを支持しつつ敵の三手先に爆雷を置いた。

 

 

 八つの爪腕を振り回す怪物と、生身の軽量級ボクサーより鋭い動きを30メートルちかい体躯でこなす機動兵器が超速で撃ち合う。

 超絶なコンピュータが制御する、ほんの数十メートルのバーゲンホルムによる200倍光速。それで死角に回りこんで有慣性化、超重力をまとったショベルフックが怪物のシールドを無効化しつつ装甲を撃ち抜き、体内にクロスマッシャーを直接叩きこむ。一発ではない、何発も連射して即離れる。

 長大な銃剣が極限密度の力場の刃をまとい、やすやすと敵を切り裂く。

 ゼロ距離からのすさまじい火力。特に敵が集まったときに、まとめて粉砕する分子破壊砲。

 敵のグロテクスさに悲鳴を上げるルーンエンジェル隊を、グロテスクな敵には慣れているSRX隊が慰めながら支援する。

 

 要塞の中央にあったのは、巨大すぎる脳と、それを囲む機械のような体だった。

 コンパチブルカイザーのコウタ・アズマ……その中の戦士ロアが激しく反応する。

「……古の賢者たちは云った……“闇在れ”と……」

「我らは暗邪眼にて世界を看破し、開明脳にて叡智を集積す……」

「我らは闇黒の叡智……至高の想念集積体……ダークブレイン」

 

 強い。至近距離からの小型波動砲でも表面が焦げる程度の装甲。バーゲンホルムから波動エンジンで加速して重力の拳を叩きつけても、そこにはいないほどの機動性。

 リュウセイがT-Link、念動力を用いた先読みで相手の動きを読み、キョウスケとエクセレンが得意の連携攻撃を加え、そこに白い翼を広げたスペルキャスターが束縛呪文を唱えて足を止め、ゼロ距離からクロスキャリバーの、二条平行の火箭が貫く……

 

 だが、第一形態の打倒は、圧倒的に強大な第二形態の始まりでしかなかった。

 同時に、第二形態ダークブレインは別の世界からとてつもない数の巨大人型兵器を召喚した。滅ぼした別世界の、無残な亡霊のなれの果て……

 亡霊王と呼ばれる、誰も名も知らぬ怪物がそれを率いていた。

 長いフードつきローブをまとう……いや、衣の中は虚空。紅い虚ろな目が三つ輝くだけ。

 その指揮のもと、亡霊兵器が次々と襲いかかる。

 あるものは人間に似るが両生類を模した人型兵器。

 あるものは太い棒状のボディに半透明のキャノピーを持ち、複雑な菌糸の網に覆われた樹木が入っている。その全身を、無数の殻の長いカタツムリのような動物が覆い、脳でもある菌糸につながれて複雑な作業をしている。

 あるものは不定形の、火星規模の液体の塊。

 あるものは普通に二足二腕の、人型兵器。

 あるものは全長200メートルを超える、膨大な触手を全身に生やした二枚貝。

 あるものは八足の胴体に四本の腕を持つケンタウルス型兵器。

 それらにどんな物語があったものか。生きていれば手ごわい敵であったかもしれず、良きラマン……友であったかもしれぬ。

 もやはそれらの歴史は終わり、故郷は時空ごと食い尽くされた。

 その恨みと命、膨大な力が、特にサイコドライバーやレンズマンを襲う。

 

 

 圧倒的な敵の数に追い詰められた、その時。まったく別の方向から三機の、見慣れない紋章機が空間を切り割って出現し、すさまじい火力を叩きつけた。

「高貴なる義務……人々を守るのがローエングラム朝の王族の義務です」

 アンネローゼ・フォン・グリューネワルト大公妃。

「旧自由惑星同盟の者として、そして元帝国貴族として、いえ……すべての人のために、力があるならば立ちます!ジークフリード・キルヒアイスも、生きていればすべての人を守るために戦ったでしょう……」

 マルガレータ・フォン・ヘルクスハイマー。

 無言の、仮面をかぶった少女。

 新しい基準の国勢調査・健康診断で、紋章機との適合性を指摘された。

 アンネローゼについてはラインハルトが隠そうとしたが、皇帝直属聴聞卿……皇帝と同じ全権を持ち、同盟帝国問わず女網の有能な中核を多数掌握したアンネローゼに隠し通せることなど何もなかった。

 カーテローゼ・フォン・クロイツェルは別時空からまだ帰っていない。

 アンネローゼ、マルガレータ、仮面の少女、カリンの四人が暫定的に、この時空におけるエンジェル隊……ローゼンエンゲルとされている。

 無論、どの機体も六つの月をめぐり、バーゲンホルムやロストテクノロジーによる改造も受けている。

 

 アンネローゼの機体は、彼女の所領だったが新技術までは使えなかった海洋惑星を開拓したとき、発見された。

 紋章機の常識とは異なる、6500メートルにも及ぶ真紅の双胴艦。あるじに似つかわしい優雅な美しさもある。

 莫大なペイロードにミサイルをありったけ積み、八枚の翼を広げるように変形する。その翼全体が蜂の巣のように詰め込まれたVLS、鳥の翼から無数の羽を放つように同時発射……全弾が波動カートリッジ弾ならば、アンドロメダ級6千隻が拡散波動砲を同時発射するにも匹敵する。

 打ち尽くしたのちは重装甲と重厚なバリアで巨大なシールド艦となり、味方を守る。

 ブルートローゼ……自らと敵の血を流す覚悟。シャイン王女が駆る赤いフェアリオンと同じだ。

 

 マルガレータ・フォン・ヘルクスハイマー……貴族でありながらラインハルトとキルヒアイスに認められた少女は、同盟で育ちそのプラスもマイナスも知った。

 そして動乱を生き延び、戦うことを覚えた。新航路探査の中で見つかった、奇妙なビーコンを調べて発見された紋章機のパイロットに選ばれ、重荷を負う決意をした。

 ゴルトシュヴェールローゼがその紋章機の名。

 二本の幅広い黄金の剣を並べたような豪奢な姿で、時空を切り裂き転移する能力がある。二秒に一度以上、最短50キロメートル、誤差30メートルの超精密ワープが可能。惑星の大気中でさえも。

 機体の全長は54メートルだが、200メートルを超える多関節アームが後方に伸び、その先端には紫の雷電が刃となって敵を切り裂く、超接近戦専用機。

 また長い尾を味方に絡ませれば、味方を連れての高精度ワープもできる、きわめて有用な補助機でもある。

 

 匿名の少女が駆るのは、徹底的にバランスが取れた機体。

 漆黒の姿。

 遠距離狙撃・中距離制圧・近距離弾幕を均等にこなす、半球砲塔の高収束威力調節可能ビーム機関砲が2門。厚めのシールド。スピードもペイロードも標準的。

 ハイデンローズライン……野ばらと名付けられている。

 だが明らかに、その口をきかぬ操縦者の物腰は、貴族令嬢だ。

 

 ここにはいないカリンの、直線攻撃からショットガンを撃つようなヒットアウンドアウェイ機はローゼンクロイツの名がついている。

 

 ルーンエンジェル隊の紋章機も負けじと、巨大な怪物と戦い続ける。

 巨大すぎるイソギンチャクのようなくぼんだ要塞の内部に侵入し、巨大な火力と精密な高機動で敵を薙ぎ払って、弱点にたどり着き集中攻撃を加える。

 多数集中した大型機に、魔法と蝶の姿の弾幕が集中する。

 味方の危機を狙撃が救い、ナノマシンが癒す。

 高速のドッグファイトから放たれる爆弾が、多数の敵を巻き込み連鎖反応を起こす。

 

 

 大型のハガネ改・ヒリュウ改2・ルクシオール改も、徹底的な改修を受けている。

 圧倒的に頑丈なバリアやバーゲンホルムの機動力はもちろん、艦そのものの大きさを活かして2連装3基の超大型新主砲をつけている。波動エンジン・波動砲装備の駆逐艦を、そのまま波動砲とエンジンを上下二連の砲身としたような主砲兼機動スラスター。波動砲そのものを拡散・収束を使い分けて主砲扱いにぶっ放すのだ。

 使いやすい艦載フェイザーもある。

 また、転送受容器システムもついており、遠くの工場で作られ転送された各種ミサイルをほぼ無制限に速射することもできる。

 そしてヤマトは、あらゆる時空の技術を全部詰め込んだリスク上等のテストベッド。スピードも火力も防御も機動性も以前とは桁が違う。島の腕があり、さらにバーゲンホルムと桁外れに強化されたエンジンがある……戦闘機のような機動を、光速の何十倍もの速度域でこなせる。

 さらに紋章機は失ったが、新たに紋章機の戦艦版と言えるリプシオール級改を駆るムーンエンジェル隊……ミルフィーユ・桜葉、蘭花・フランボワーズ、ミント・ブラマンシュ、フォルテ・シュトーレン、ヴァニラ・H、烏丸ちとせ、この六人も前線に突進した。

 圧倒的な力で蹴散らしていく、だが第二形態のダークブレインは、白い翼を広げた紋章機の一斉攻撃を軽く受け止めた。

 

「抵抗は無意味……多数の時空がつながった今、我らはすべてを食らう」

「〈混沌〉も我らが開明脳により支配する……〈混沌〉が世界の壁を薄くした故、我らは顕現した……〈混沌〉も天秤も開明脳の糧とする」

「ヴァナモンドも〈狂える精神〉もや」

「ガガックの娘も」

「アリシアもエッドールも、第三段階レンズマンも我らの糧となる」

 強大すぎる第二段階ダークブレインの叫びが、戦士たちを打ちひしぐ。

 別の意味で打ちひしがれる者もいる。それら上位存在は、存在自体が人間には秘密だ……人間が劣等感を覚え、やる気を失って退廃しかねないから。

 同時に上位存在たちから、

「絶対にさせるな!」

 という絶叫が来る。

 

「ダークブレインはすべてを闇、黒一色に染めようとしている……それは『腐った〈法〉』にあたるものだ。〈混沌〉と共闘し食らおうとしているのが間違いだ」

 どこかから、空電の雑音のように声が情報網に混じる。

「教官」

 アヤ・コバヤシが、

「イングラム」

 リュウセイ・ダテが聞き取り、増幅解析して中央に送った。

 通信を通じてエンダー・ウィッギンやラインハルト・フォン・ローエングラムの耳にも届いた。

 フフフ……と、どこかから声が聞こえる気がした。

 それを聞きつけた総司令官エンダー・ウィッギンは、即座に新しい作戦構築をラインハルトに命じる。


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