第三次スーパー宇宙戦艦大戦―帝王たちの角逐―   作:ケット

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スターウォーズ/時空の結合より2カ月

 銀河帝国と反乱同盟軍の戦いは続いている。

 第二デス・スターの建造の情報が流れており、反乱同盟軍はそれを破壊する作戦を練っている。

 だが、帝国の戦力は分散を始めた。

 多数の並行時空とのつながりに乗じ、そのつながった時空を支配するための戦争に、多くの艦船将兵が、この時空を離れているのだ。

 逆に並行時空から攻め寄せた軍勢と、帝国軍の戦いも起きている。

 それに乗じて、反乱同盟軍に、別時空の勢力に救援を求めようとする動きもある。

 

 そんなとき、レイア姫とハン・ソロを救出したルーク・スカイウォーカーは、ジェダイの騎士として修行を終えた。

 師ヨーダはフォースの霊体と化したが、ダース・ベイダーこそルークの父アナキン・スカイウォーカーであるという衝撃の事実とともに、「タネローンを探し守れ」という奇妙な指示を遺した。

 彼はまず、助け出されたばかりの友ハン・ソロに、その件について相談した。

「タネローン?聞いたことがねえな」

「レイアは?」

「わたしも聞いたことがありません」

 宇宙のあちこちを回った密輸商人であるハン・ソロ、そして王女にして元老院議員のレイアの二人とも聞いたことがない。

「どこに行けばいいのか、それこそ最近つながったっていう、別の宇宙にでも行くしかないか」

「ですが、そのような暇があったら第二デス・スターを調べて、破壊しなくては」

 そこにランド・カルリシアンがやってきた。

「いや、それを言うならソロの救出や、それまでルークがしてきた修業も、同盟軍を無視していた。しかし結果的に士気は高まった。

 タネローンの探索も長い目で見れば、同盟の勝利に貢献するよ」

「そうですね、将軍」

 レイアが高貴に微笑みかける。

 そして正式な任務としてアクバー提督の許可を受け、ルーク、ハン・ソロ、チューバッカ、C-3PO、R2-D2の五人は、ルークが感じるフォースの導きに従って旅に出た。

 辺境の星域だが、最近別宇宙へのゲートができたというエレム星に。

 

 エレム星は赤色巨星と白色矮星の二連星で、人類の居住には適していない。

 しかし、二重星から離れた軌道を回る大規模な小惑星帯から、特殊なコンピューターに必要な希少素材エレミウムが得られるため、ちょっとした無法の鉱業都市となっていた。

 その小さな港は今、別時空からの商人と、別時空への調査・征服を始める銀河帝国艦船などが集まり、一気に人数が膨らんでいる。

 その混乱の中に、ソロたちは紛れこんだ。もちろん帝国から見れば最重要指名手配人物であることは百も承知だ。

 ミレニアム・ファルコンはやや離れた小惑星に隠し、目立ちすぎるチューバッカは留守番に、おんぼろロケットでプレハブの街に出る。

「すごい人が多いな」

「こういうところには儲け口がたくさんあるぜ」

 向こうの街路では、たくさんの美女や若者が一人の、薄汚れた隕石鉱夫を追って歩いている。

「ワイルド・ビル・ウィルアムスだ!」

「ついていこうぜ、また大鉱脈当てたってよ!」

「大将!あいっかわらずいい飲みっぷりだ!」

「すてきぃっ!」

「ビル!ビル!」

「宇宙一の拳銃使い!」

「ビル!ビル!ビル!ビル!ワイルド・ビル・ウィルアムス!」

「妙な騒ぎだな」と、ルークがそちらを振り向こうとして、素早く心に鎧をまとう。

(とてつもない力の持ち主がいる。普通の人に見せかけるんだ)

 冷や汗を流すルークの肩に、ハン・ソロはのんきに腕を回した。

「こういう街が好きなんだよ。賭博場は……」

「だめだソロ、止めろってレイアにいわれてる」

 ルークが止めるのに、ハン・ソロは手を広げた。

「おいおいお堅いなあ坊主、女のいうことに従って大の男がなすべきことをするのを止めるのか?」

「どうせまたすってんてんになってトラブル起こすにきまっている、とランド将軍もおっしゃっておられましたよ」

 C-3POの言葉に、R2-D2がピポ、と電子音を漏らす。

 ソロが言い返そうとした瞬間に、激しい喧騒と悲鳴が響いた。

 手練れたちは素早く身構える。

 ストームトルーパーが、長身の若い男女+メイドの三人を追って、目の前に飛び出してきた。

 三人とも重武装し、抵抗している。重装甲のストームトルーパーだが、的確に隙間を撃ち抜いている。

 二人のストームトルーパーが、近くの店で茶を飲んでいた、頭に布を巻いた少年が放った紐に足を絡まれて倒れた。

「いい腕だな」

「それどころじゃ」

 とルークが言った瞬間、ストームトルーパーはソロに発砲、ルークはとっさにライトセイバーではじき返してしまった。

「あ」

 ストームトルーパーたち、さらに街のならず者たちも目の色を変える。

「まずいですよルークさま。帝国最重要指名手配犯のあなたたちを捕まえれば、千人が一生遊んで暮らせる金額に」

「黙れ」

 ハン・ソロがC-3P0にすごむ。

 あっという間に、ストームトルーパーのみならず、周囲の群衆からも血に飢えた悪漢どもが進み出てきた。

 だが、奇妙なことに一発の銃弾……布を頭に巻いた少年が放った、古い火薬式の銃……がきっかけで、むしろ帝国兵と悪漢たちが争い始めている。

 その、わずかな力の空白。

「こっちだよ、兄ちゃん、姉ちゃん」

 ルークたちと追われていた三人は、少年に導かれるように人波の隙間に走った。

 追われていた側の女性が何かつぶやくが、言葉は通じない。

「罠じゃねえか?」

 ソロのつぶやきにルークがうなずく。

 いつか、少年の姿は消えた。

 路地の中の、ちょっとした空地。そこには、黒ずくめのマントとストームトルーパーと同じマスクの巨漢が待っていた。

「ダース・ベイダー」

 ソロが恐怖を押し殺す。カーボン冷凍の苦痛は思い出すだけでも全身が震える。

(父さん)

 ルークの心が叫んだ。

 ダース・ベイダーが静かに反応する。

「来るのだ」そう言って、ルークを見る。また、ルークたちにはわからない言語をコンピューター発声しつつ追われていた娘を見る。

 ダース・ベイダーの機械呼吸音が静かに響く。

 娘が、同じくわからない言語を口にしつつ、ベイダーのほうに決然と歩もうとする。

「だめだ」

 ルークが止めた。理由もわからず。

 追われていたほうの、男とメイドが娘に警告する……

「狙撃兵か」

 ソロはすぐにわかった。

「上空に中型艦」

 娘の、口が動いていないのにルークたちにわかる言語で声がする。

「もうだめです!」

 C-3POが叫んだ、その時。

 ダース・ベイダーも小さく見えるほどの巨漢が、鉄塊のごときハルバードをふるってダース・ベイダーに打ちかかる。

 柄を切り落とそうとしたライトセイバーは、別方向から放たれる光弾に吸い寄せられた。

 宇宙斧がベイダーの身体に食い込もうとした瞬間、ベイダーは高いジャンプでかわし、もう一発の光弾をはじく。

 遠くのビルから放たれる光弾を、ルークのライトセイバーが正確にはじき返した。

 さらに、上空で爆発音。

 気がつくと、ダース・ベイダーと、見覚えのある小汚い隕石鉱夫が対峙し、互いにすさまじい力を放ち合っている。かたわらには斧槍を持つ巨漢。

「フォース?違う、でも」

 ルークの声に、ソロは戦いながらいぶかしんだ。

 突然、ベイダーのライトセイバーが振りかぶられるが、そのまま硬直した。

「伏せて!」

 娘がハンドサイン付きで叫んだ、言葉はわからなくとも何人かは地面に身を投げる。

 爆発、別の方向でも激しい銃撃戦が起きる。

「行くぞ!」

 爆発で吹き飛んだ壁の穴から、ダース・ベイダーに呼ばれた娘が率先して走る。奇妙なことに、彼女の胸の片方はしぼんでいた。

「胸パッドが爆弾だとぉ?」

 ソロのデリカシー皆無の一言。翻訳機を持っているらしく、三人は殺気を込めてにらむ。

 いつしか、数人の重装甲兵が群衆の間から出現し、三人を援護しはじめた。

 ルークたちには言葉がわからないが、

「こっち」「はやく」

 と、女の肩からルークたちにもわかる言葉が出る。

 グレネードが乱射され、煙が渦巻く。

 強引に、ほとんど落下するように降りてきたシャトルに、次々と重装甲の海兵隊が乗る。

「早く」

 真っ先に飛び乗ったメイドが、武器を長い狙撃銃に切り替えて連射する。

 だが、もう二人……ロングナイフと呼ばれた女と男は、最後まで乗ろうとしない。

 C-3POとR2-D2、ソロは素早く乗る。だが、ルークと男女、隕石鉱夫は最後まで戦い続ける。

 ルークが光弾を次々とはじき返しつつ、

「さっさと乗れ!」

 と叫んだ。

 男も何か叫ぶ。

 女が叫ぶのを、面倒になったのかハン・ソロが強引に引きずりあげる、その一瞬前まで彼女がいたところが大口径弾にぶち抜かれる。

「上げろ!」

 叫びとともに、ルークと男がドアに飛び込む。ドアが上がりながらシャトルは地面を離れた。

 

 静かに見送る、ダース・ベイダー。

 隕石鉱夫の姿は、いつの間にか消えていた。

 

 

 上空で、帝国の中型艦を撃破しシャトルを収容した艦が待っていた。

 そのブリッジで、胸の大きさが左右違う女が不敵に微笑む。ハン・ソロが、腕を組んで三人の男女をにらみつける。

「さて、自己紹介といこうかしら」

 また、口を動かさない、ルークたちにわかる言葉。

 そして、驚いたことに艦の壁が変形し、女の胸元から響く電子音を聞いたR2-D2が端子を伸ばして接続、さらに数秒間C-3POのあちこちが光る……

「はい、新規言語データ受領しました」

 C-3POが通訳を始める。

「こちらは、知性連合海軍大尉、クリスティン・アン・ロングナイフ王女でございます。並行時空とのゲート現象の調査のため、このワスプ号でこちらにいらしたとのことです。外交交渉ができる相手を求めて」

「こちらの帝国とは、外交交渉は難しいと思いますよ」

 ルークが苦笑気味に言い、C-3POが通訳する。

「ぼくはルーク・スカイウォーカー。こちらはハン・ソロ。これはC-3POとR2-D2。ぼくたちは反乱同盟軍の士官で、同じく並行時空の調査に出ようとするところだ」

 じろり、とソロがクリス側の、メイドと男を見る。

「クリスお嬢さまの専属メイド、アビーと申します」

「護衛のジャック中尉だ」

「それより、下が騒がしくなったんなら、とっとと俺のファルコンに行きてえんだよ」

 ソロが言う。

「ワスプ号にようこそ、艦長のブレット・ドラゴだ。今はステルス形態に変形したまま、漂流を装ってる」

 と、いかにも海賊風の艦長が告げた。

 ドラゴ艦長とハン・ソロはちらりと目を合わせただけで、何か通じ合うものを感じたようだ。

「ちょっと待ってくれるか?」

 ルークが船の一方を見た。

 同時に、クリスもうなずく。

「船に侵入者がいるわ。さっきのどさくさで入ってきたのね。ネリー」

(侵入者をこっちに)

 クリスの声のない命令に従い、ネリーから船のスマートメタルに連絡が行く。

 それで変形した船は、錨庫の隙間に潜んでいた少年を引っ張り出してきた。

 だが、戦塵に慣れた船長たちの目には、その年齢と豊富な実戦経験は一目で見てとれた。

「へへっ」

 悪びれもせず、武器を向けるクリスたちに微笑みかける。その人懐っこい笑顔と鋼の度胸に、思わずクリスもソロも微笑んだ。

「密航者か?」

「どこの所属だ?」

「さっき助けてくれたな」

 と、これは目が行き届いているジャックだ。

「ストームトルーパーは悪者だってわかったから、それに追われてるあんたたちは正義の味方、だろ?」

 当然のように言葉を覚えている。

「われわれは軍人です。善も悪もありません。あなたも同じですね」

 クリスの容赦ない目、普通の子供ならちびっているところだが、彼は笑っている。

「名は?」

 ルークがじっと少年の目を見つめる。

「おいら、太助ってんだ」

「どこの出身だ?所属は?」

 ルークの目に、太助は静かに、激しく抵抗する。精神の戦いの末、やっと口を開いた。

「新五丈、竜我雷の、密偵だよ。これを見てよ」

 と、太助が、クレジットカード大の乾パンを油紙袋から取り出す。

 それには、下手な漢字で「新五丈王 竜我雷 これを所持する太助をわが代理と思うべし」と書かれ、美麗な「銀河帝国皇帝」印が押されていた。

 それをクリスとソロに渡し、

「食べて食べて」

 と笑う。

「いざという時には完全に隠滅できる、というわけね。それにしても、別の文字に言うのもなんだけど……あまりうまい字じゃないわね」

「まあ、その手を使うやつらもいたな。お、うまいじゃないか」

 食べたソロが笑った。

「雷の兄きは身分も何もない雑兵として、おいらと肩を並べて戦ってきたんだ。だからまだまだ字は下手で、お姫さんのほうがうまいぐらいさ。でも狼刃元帥に言われて、本はたくさん読んでたよ」

 太助が軽く鼻の下をこする。

(この人たちは、完全に信じるべきだ。こっちが腹を割れば、応えてくれる)

 何もかもあけっぴろげに言うのは、ちゃんと覚悟と人を見る目あってのこと。

「しばらく見てきたけどさ、すごい腕だよねみんな」

 と、笑う太助に、

「あのどさくさに船に入りこんだ腕もすごいよ」

 アビーが鋭い目と言葉を突き刺す。

 ほっと、皆が息をつく。

「お忙しい中すみません、ちょっと加速しますよ」

 士官の声、ともにぐっとGがかかる。

「いい腕だな」

「まあね」

「ファルコンは」

 とルークが言いだそうとしたとき、R2-D2がビーコンをキャッチする。

「お、迎えに来てくれたか」

 ミレニアム・ファルコンが彗星の陰から出現し、並走を始めた。

「そちらのハッチの規格を教えてください」

「ああ、R2」

 ルークの指示でR2-D2が情報を送る。その通りの大きさに船殻のスマートメタルが変形して、全く未知の船のドッキングが成功してしまう。

 チューバッカとハン・ソロが派手に喜び合う。

「どうやってここに」

 チューバッカの声をC-3POが翻訳する、

「神のような存在からの精神通信を受けた、と言っております」

「神だぁ?妙な情報で船を動かすな、といいたいところだが結果よければいいか」

 ソロがリラックスする。

「先ほど私を呼んだ黒い士官、かなり高い地位にあるようですね」

 クリスの言葉に、ルークとソロが苦笑する。

「帝国のナンバー2、ダース・ベイダー卿だ」

(父さん)

 ルークの口調には苦味が混じる。

「なら思いきって」

「無理だって。クリス・ロングナイフという名とそのお顔は、見つけ次第殺せの指名手配犯だったよ?それに、ここの帝国とは交渉なんてできないよ。師真さまも話にならないって」

 太助が笑う。その笑顔に、皆がすっかり警戒を解いた。

「あの帝国は、どうやらピーターウォルドと仲がいいようだ、とアビーおばさんの地獄耳が」

 メイドがクリスの髪を整えながらつぶやく。

「実際、ピーターウォルドお得意の船籍不明船が、帝国船に係留されていました」

 女性士官が苦々しげに言う。

「ロングナイフだのピーターウォルドだの、意味がわからないんだが?」

 ルークの言葉に、ジャックとクリスが苦笑気味に目を見合わせる。

「そうね、わたしの故郷の歴史から語らなければならないのかしら?」

「ああ、別の時空の情報など、同盟にはほとんど漏れてこないから」

「仕方ないわね。では説明いたします」

 そう背筋をぴんと伸ばしたクリスは、王族という言葉が嘘ではないと思わせる気品があった。

(レイアと同じだ、本当にお姫さまなんだな)

 ルークの思いをよそに、慣れた口調で説明が始まる。

「わたしの故郷時空、では、人類はすでにあったジャンプポイントを利用して地球から広がりました。

 そこでイティーチ族という種族の領土を侵してしまって大戦争になり、滅びかけました。その戦争で活躍した」

 最近の、曽祖父との確執を思い出してクリスの胸が痛むが、平静を装って続ける。

「曽祖父レイモンドらを中心として人類世界はまとまっていました。

 しかし、矛盾が広がり人類社会は、大きく分けて三つに分裂しました……地球を中心とした人類協会、私が属する知性連合、そしてピーターウォルド家。

 ピーターウォルド家はあちこちに、主に経済活動と闇社会を通じた手を広げており、潜入した地上軍・砲艦の双方で積極的に勢力を広げています。また、拡張主義を取っており、人類の領域を広げることにも熱心です。

 知性連合は専守防衛で、むしろ内政と各星の人権・技術・経済水準を高めることに力を注いでいます。

 地球を中心とした人類協会はリム星域とは対照的に中心の位置にあり……保守的、です」

 少し苦々しげに。つい最近、身分制度さえ残す腐敗をしっかりと見た。

「最近、この人類領域の各地に別の時空との連絡路が生じました。

 知性連合からは、誰もいない時空にしか行けませんでした。〔UPW〕の無人設備があったので連絡を求めるメッセージは送っておきましたが、向こうがそのメッセージを読むまでは連絡が取れません。

 知性連合としては〔UPW〕の方針を是とし、全権大使として私が派遣されました」

「というか、故郷時空から追放されたという面もあります」

 とアビーがぼそっと言う。

「それで、ここの時空の政府と連絡しようと……でも」

 ルークが静かに問い返す。

「そう、でも。こちらに来るまでに通った、半ば無政府状態の時空で、この帝国の残虐な侵略性はつぶさに見ました。知性連合としてはこの帝国との外交関係は正直言ってごめんですね」

「ですが、ピーターウォルド家にとってはいいパートナーでしょう」

 と女性士官が憎々しげに言う。

「ピーターウォルドってのがどれほどの存在だか知りませんが、この帝国を利用しようとしたら……あっさり、あなたの故郷の時空ごと滅ぼされるだけでしょう」

 ルークの言葉に、クリスが微笑む。

「少しですが、こちらの帝国の軍事力・経済力は調べました。その危惧も理解できます。しかし、私たち知性連合には別の危惧もあります。

 もし別時空から私の故郷時空を侵略した場合、最悪はイティーチ族をつついてしまい、両方の時空から人類が根絶されるリスクがあるのです。そのことだけでも、こちらの帝国に伝えたかったのですが」

「そりゃ大変だ。それも兄きに知らせないと」

「竜王陛下ともぜひ連絡したいものです。どうかその折はおねがい」

 とクリスが太助にも向き合う。

「いいよ」

 と、太助は気軽に請け合う。

 冗談半分のクリスは、のちに雷と太助の絆に驚くことになる。

 腕を組んで聞いていたソロが、強いため息をつく。

「まあ、そういう演説はレイアの前ででもすればいいさ。それより今、ここからどうする?そこにある時空ゲートからは、どこに行けるんだ?お姫さんたちは、どうしたいんだ?帝国の首都に行きたいのか、それとも反乱軍の首脳部に会いたいのか?」

「あなた方のご希望、目的をうかがってもよろしいでしょうか?」

 ソロの乱暴さを何とも思わないように、クリスが静かに微笑む。ソロはそれを見て見直した。

「姫、という言葉にごまかされないように。姫は副業で、本職は一海兵隊員、一番向いているのは提督だ」

 ジャックがあさっての方向を見ながら誰にともなくつぶやく。

「われわれはタネローンを探している。だがそれが何なのか、どこにあるのかはわからない。あちこちの並行時空を見てみたいんだ」

 ルークの言葉に、クリスたちは呆れたように顔を見合わせる。

「少なくともこのゲートを抜けた先は、大戦争直前ですよ」

 クリスが苦笑気味に言った。

「そうそう。ここの帝国のスーパースターデストロイヤー二隻とスターデストロイヤー三十隻、それと帝虎級二隻・艦船百以上、七十万人の大軍、もうすぐ激突するってさ」

 太助の言葉に、ソロは度肝を抜かれ、女性士官が一瞬立ち上がった。

(ネリー!)

(正確な情報です)

 クリスとネリーが素早く語り合い、おどろく。

「たいした腕だな」

 ソロが口笛を吹いた。

「この時空から、ほかにゲートはないのでしょうか?われわれは〔UPW〕と連絡を取りたいのですが」

 士官に聞かれたソロは軽く首を振る。

「〔UPW〕?ちょっとややこしいね。えーと、あれはあちこちにつながってるから、〈世界連邦〉に行くか……」

 太助が首をひねる。

「少し待ってくれ」

 ルークが立ったまま、瞑想に入る。

「ここに来たのは、君たちに会うためだ。そしてタトゥーインの近くにできたゲートに向かう」

 半ばトランス状態で漏らした言葉に、ソロとドラゴ、ジャックがとても苦く酸っぱいものでも食べたような表情で目を見合わせ、軽く首を振った。

「おいおい、そりゃ怪しすぎるだろ」

「でも、ほかにあてがあるのですか」

 C-3POがぼやく。

「わたしたちは、この時空で動き回るのは危険すぎます」

 女性士官の声に、クリスは軽く首を振る。

「こちらの帝国と交渉することも任務なんだけど」

 クリスが苦しげに言う。

「ダース・ベイダーを見ただろう?」

 ルークの言葉に、クリスはうなずくほかない。

「二度と会いたくはないです」

 アビーが震えている。

「同感だ」

 ジャックも震えを抑えきれない。

「でも、ベイダーと戦ってたあんちゃん二人もすごかったなあ」

 太助が無邪気に笑うが、すさまじい恐怖を呑みこんでなのは、だれにもわかる。

 軽く、クリスとドラゴ艦長が目を見合わせる。

「その前に、一度レイアたちのところに戻ろう。クリスと太助を、二人に会わせておきたい」

「よーし、じゃあ出発だ!」

「調子に乗るんじゃねえ、小僧」

 陽気な太助の叫びに、ソロが苦笑気味に怒鳴る。

(すっかりペースを握られてるわね)

 軽く歯を食いしばったクリスは、わざと軍隊用の声で、

「では、スマートメタルを利用して、ミレニアム・ファルコン号とワスプ号をつなげてよろしいでしょうか?ソロ船長」

 と呼びかける。

「スピードだけならファルコンが最速だ、小人数だけ乗ってくってのもありだぜ」

「こちらには海兵隊一個中隊もいます。とても乗れませんね」

 女性士官が鋭く言う。

(そういって、王女だけ拉致されたらたまったもんじゃない、この人たちだって敵か味方かわからないんだから。海兵隊の人数で脅す)

 と、いうわけだ。

 ソロは素早く察して、

「で、この船はどれぐらい出るんだ?」

 と、技術的な話を始める。

「それよりクリス姫さん、あんたの故郷の話も聞かせてくれよ。兄きはあちこちの宇宙の話を知りたがってるんだからさ。さあ錨を上げろ!」

「調子に乗るんじゃねえ」

 と、ドラゴとソロのダブルツッコミが入る。




スターウォーズ
レンズマン
海軍士官クリス・ロングナイフ
銀河戦国群雄伝ライ

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