ガーディアン・フリート❮はいふり×GAMERA❯   作:濁酒三十六

7 / 13
七話・それは本当に小さな出会い

 横須賀女子海洋学校…。ブルーマーメイドを育成する為の海上安全整備局傘下の女子校でその敷地は一つの人工島を丸々使用しており、全寮制である。航洋艦晴風がギャオスと遭遇した事件により海洋実習は中断…何時また海に出られるのかと横須賀女子の一年生達は自身の寮に戻されながらも待ちわびていたのだが、晴風組の皆は落胆のまま…学科をダラダラと受け流していた。ギャオスとの激戦によって航洋艦晴風は主砲二番基…そして艦橋を破壊され、ドッグに入り数週間の修理を余儀なくされた。しかも機関科の噂好き四人組が何処から仕入れて来たのかは分からないが一週間後くらいに海洋実習のやり直しをすると云う情報を晴風クラスに広めてしまっていたのだ。そのせいでクラスの空気はドンヨリとしてやる気がまるで感じられなかった。

 今は自習の時間帯だが、機関長の柳原麻侖は机にうつ伏せになってジト~ッと隣の黒木洋美を見る。洋美は洋美で機関科の教科書を見ながら予習をするものの麻侖の視線が気になったので麻侖に声をかけた。

 

「麻侖…。」

「何でい、クロちゃん…。」

「何時までだれてるのよ、貴女機関長なんだからもっと知識高める為に勉強しなさいよ?」

 

 麻侖は洋美に注意されるとうつ伏せのまま反対を向いて彼女に言葉を返した。

 

「そーゆーのはクロちゃんが居るからいいんでい。それより…………釜焚きして~。」

 

 麻侖はソッポ向いた先に見えた窓の外に意識を向け、まだ1日しか乗っていない航洋艦晴風に思いを馳せた。洋美は幼馴染みのだれ具合に呆れつつも事情が事情なので自習に励む。いざと云う時、麻侖をシッカリと補佐する為に…。

 そして間もなく四時限目の終わりの予鈴がなろうとしたその時、教室の引戸が開いて岬明乃が顔を見せた。彼女を見た途端に教室内はワッと騒がしくなり西崎芽衣と立石志摩に知床鈴…納沙幸子が駆けつけて彼女を迎えた。

 

「艦長~、遅かったじゃん♪」

「おっ、お帰り。」

「岬さん、身体の方はもういいの?」

「艦長、お務め…お疲れ様でした!」

 

 四人が明乃が挨拶をする前に取り囲み…妙にどすを利かせた幸子の変な言葉に皆暫し沈黙…、取り敢えず明乃の後ろにいたましろが助け船となり芽衣達を散らす。

 

「ほらほら、艦長は病み上がりなんだ。あまり無理をさせないでくれ。」

 

 皆ブーブーと文句を垂れながら席に着き、明乃は教室の前まで付いて来てくれた知名もえかに礼を言った。

 

「ありがと、モカちゃん。またお昼休みにね?」

「うん、またねミケちゃん。」

 

 もえかは自分の教室へと戻り、席に着いたと思った芽衣と幸子がワザワザ戻って来てもえかの背中を覗いた。

 

「あの娘、誰?」

 

 芽衣に聞かれた明乃は笑顔でもえかを見送りながら答える。

 

「知名もえか、モカちゃん。私の幼馴染みで“武蔵”の艦長さんだよ。」

「え~、武蔵の艦長!?」

 

 芽衣は感心し、幸子は顎を撫でてまた何やら言い出し始めた。

 

「幼馴染み二人して艦長、片や一方は大戦艦~片や一方は航洋艦、何て示し会わせた様な組み合わせなんでしょうね!

確実に副長の()()となりますよあの娘はっ!」

 

 ワイのワイのとはしゃぐ二人に明乃は苦笑いをし、ましろは眉毛をつり上げた。

 

「お前達、サッサと席に着けええええっ!!」

 

 ましろの怒号が飛び、芽衣と幸子は急いで席に駆け戻った。

 そして昼休み…、もえかの待つ裏庭に明乃は付き添いをしてくれるましろと向かい、その途中でデブ猫五十六に遭遇した。ましろは猫が苦手で“ひっ!?”と小さな悲鳴を洩らして明乃の後ろに隠れてしまった。

 

「何でシロちゃんはそんなに猫が苦手なの?」

「べっ、別に理由などどうでもいいだろ!

…その…昔、突然飛び付かれて…」

 

 …と話してはみたが当の明乃はましろそっちのけでしゃがみ込んで座っている五十六の喉元をゴロゴロしていた。すると、五十六のお尻と地面の隙間から何かが出て来た。明乃は“ギョッ”として覗き込むとソレは“頭”の様で上を向き明乃の顔を見返す。…と、五十六の身体が少しだけ持ち上がり、少しだけ前に進んだ。もしかしたらと思い、明乃は五十六を持ち上げると、其処には“一匹のリクガメ”がいてやっと自由になったのか…イソイソと逃げ始めるが、五十六が“ガウッ”と鳴いてリクガメを前足で押さえつけた。そのままリクガメに腹を置いて乗っかりカメを隠してしまった。

 さすがに明乃は見ていられずにまた五十六を持ち上げると脇に離してそのリクガメを掴み手に乗せた。大きさは掌より脚がはみ出る程でカメはまたあまり長くない首を伸ばして明乃を見上げる。明乃もカメの瞳を見返すが、不思議な感覚を明乃は感じた。

 

(何だろう、身体があったかい?)

「艦長っ!」

「ふえっ!?」

 

 突然呼ばれて振り向くと、真横に今まで放っておかれていたましろの無念の顔が明乃を睨んでいた。

 

「艦長、貴女はもっと人の話に耳を傾けるべきです!」

「うん、ごめん…シロちゃん…。」

 

 ましろは溜め息を吐いて明乃の掌に乗っかるリクガメを見た。

 

「珍しいな、リクガメなんて…。逃げ出したペットだろうか?」

「そうかも、このままにしておくと五十六のオモチャになっちゃいそうだから私が預かろうかな。」

 

 それを聞いたましろは怪訝な顔を向けた。

 

「艦長、あまく見るな。生き物を飼うって事はとても重い責任を負うって事だぞ。カメだってそれなりに費用が掛かる筈だ。」

「大丈夫だよ、飼い主が見つかるまでだから。」

 

 明乃はそう言ってリクガメを両手に乗せて自分の視線まで持ち上げた。

 

「早速名前を決めよっか。

よし決めた、君の名前は“トト”、これからはトトって呼ぶね♪」

 

 明乃は嬉しげにリクガメ…トトを頭の上まで持ち上げ、トトは明乃の顔を短い首を伸ばして見おろした。ましろは少し不安が過るが、取り敢えず彼女に笑顔が戻ったので先ずは良しと考えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 横須賀女子海洋学校校長室にて校長である宗谷真雪は教頭先生と共に来客を迎えていた。その者達は二人で皆黒色の背広に身を固め、黒いサングラスをしていた。

 

「来賓とはいえサングラスを着用のままの入室はあまりに無礼ではありませんか!」

 

 この学校の最高責任者である真雪が黒服の二人を一括すると、二人はサングラスを取り真雪に視線を向けニヤリと笑った。




トト登場です、登場させちゃいました!
当分はほのぼの話と伏線の用意になります…かな?

今更ながらトトが五十六の下から頭を出すシーンて、卑猥だわ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。