ガーディアン・フリート❮はいふり×GAMERA❯   作:濁酒三十六

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六話目更新、当分ガメラ出ませんです。


六話・戦いの後に…

 空は晴天。知名もえかは朝早くから岬明乃の退院の為に病院に来て一人部屋の病室の窓を開け涼やかな風を入れた。ベッドには明乃が気持ち良さそうに小さな寝息を立てて寝返りをうっていた。

 高校生活初日は入学式から航行実習~そしてギャオスとの遭遇からガメラ出現と通常なら経験し得ないアクシデントが起こり過ぎた。ギャオスに殺されかけた明乃は救助された後も意識が戻らず、横須賀共済病院へと移動して昏睡状態のまま検査をされて一日目が終わり、二日目の夕方頃に意識が回復し、三日目により精密な検査を行った。身体に異常はなく、もえかは教官である古庄薫に許可を貰い晴風の副艦長である宗谷ましろと一緒に着替え等を用意して彼女の元へ向かい、四日目である今日のお昼頃に退院となっていた。

 もえかは安心感を滲ませた笑みを浮かべて明乃を優しく声をかけて起こす。

 

「ミケちゃん、もう直ぐ9時になるよ。

早く起きないと宗谷さんに怒られちゃうよ?」

 

 実は一緒に宗谷ましろも来ていて今は朝の食事を用意してもらっていた。病室のドアが開いて白いトレーに朝御飯を乗せて持って来た宗谷ましろはなかなか起きない明乃に苦笑を見せるもえかに連れて苦笑し、トレーを台に置くとベッドを挟んでもえかの向かいに立ち、明乃を起こそうとした。

 

「艦長、起きて下さい。朝御飯ですよ。」

「むにゃむにゃ…、バナナうめえ~、マジうめえ~。」

 

 寝惚けた明乃の寝言を聞いたましろは彼女との()()()()()()()を思い出し眉間を寄せた。

 

「知名さん、岬さんは夢で見る程にバナナが好きなのか…?」

「ドチラかと云うと好きな方かな。でも普段はこんな言葉遣いはしないし、それに私初めてミケちゃんの寝言聴いちゃった♪」

 

 もえかは明乃の寝言を聴けたのが嬉しい様で円満な笑みをましろに向けていた。ましろは中学の頃に姉に読まされた四コマのギャグ漫画を思い出す。確かその漫画のヒロインもバナナが死ぬ程に好きだった筈である。

 

(…ア〇ガール…!?)

 

 そんな事を考えていると明乃がモゾモゾと動き、ショボショボした目を擦って身体を起こした。

 

「ん~~~、眠い。あっ…モカちゃん、おはよう。」

「お早う、ミケちゃん。」

「お早うございます、艦長。」

「おはよう、シロちゃんも来てくれたんだ。ありがと。」

 

 返事をもらったましろは気恥ずかしそうにソッポを向いた。明乃は朝御飯をましろから受け取って食べ始めるともえかが温かいお茶を淹れてあげ、明乃はお茶を啜りホッと一息吐いた。微風は病室内を程好く涼やかにし、もえかは明乃の下着とパジャマを畳んでバッグに詰め、ましろは彼女の私物を別の鞄に入れて片付ける。

 

「何か…、航行実習での出来事が嘘みたいだよね…。F-15Jの事も…ギャオスの事も…」

 

 伏し目がちに明乃が呟き、それを聞いた二人は荷造りの手を止めてしまう。岬明乃が宗谷ましろ達に救出された後にガメラは直ぐに海底へ姿を消した。大破した晴風は救助に来た猿島が合流して安全監督室のブルーマーメイドに救助された。ギャオスに撃墜されたF-15J二機の残骸も海上安全整備局によって回収されてパイロットの遺体も回収された。…ギャオスの残骸も…。

 あの出来事から意識を取り戻してからずっと頭から離れず繰り返し脳内より聴こえるF-15Jの撃墜音とけたたましいギャオスの泣き声が決してあの死闘が嘘などでもなければ夢でもない事を明乃に突き付けていた。三体のギャオスが出現してF-15J二機が撃墜され、巨大ギャオスに晴風は善戦して、明乃は巨大ギャオスに命を奪われかけたのだ。明乃は通信機越しに聴いたF-15Jのパイロット…小金井の優しげな声を思い出してしまい、涙が込み上げて来てしまった。

 

「人が…、死んだんだね…。私達の……私達の、目の前で…!!」

 

 明乃は箸を落とし、そのまま泣き崩れてしまい…もえかが明乃に駆け寄って強く抱き締めた。ましろも明乃がギャオスに噛み潰されかけたあの恐ろしい光景を思い返してしまい、涙が溢れる瞳で明乃を見つめる。

 

(岬さん、私はもうお前のあんな姿は見たくないよ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京都…国会議事堂に海上安全整備局本部があり、組織を束ねるのが海上安全委員会である。その作戦室に数人の幹部が集まりガメラとギャオスの再出現に皆頭を抱えていた。

 

「何て事だ…、またこの日本で怪獣共が好き勝手に暴れると云うのか!?」

「F-15J二機の損失も大きいぞ、今後ギャオス出現でF-15Jを出すのは要検討だ!」

「貴様、戦闘機なんぞ領海侵犯以外に何の使い道があると云うのだ!?

それが失われたのはパイロットの質が悪いからだ、もっと訓練をさせておけ!!」

「おいお前、今の言葉を遺族の前で言ってみろ!!」

「いえいえ、間違いではないでしょう。遺族に支払う慰謝料だってバカにならないんですから、怪獣が出る度に死なれては困ります。」

 

 皆が皆…好き勝手をのたまう中で独り、深い溜め息を吐く高齢な人物がいた。かつてガメラやギャオス…宇宙怪獣レギオンにギャオスの変異体イリスに関わった官僚…斎藤雅昭である。初めてギャオスが姿を現した時はギャオスの恐ろしさを知らずその希少価値を訴えたが、その後の東京壊滅により考え方を改めレギオン~イリスの際はガメラを弁護…世界に対するガメラの重要性を説いた。しかしイリスが出現する前にガメラはギャオス三体を倒す為に渋谷一万人の人々を犠牲にしており、その憎しみは今も遺族の心に燻っている。斎藤雅昭は過剰にガメラ側に付くのは自身のキャリアに傷が付くと考えて現在は沈黙を守っていた。…しかし俗物に近い彼でも周りの身勝手な言動が飛び交うこの会議はあまりに聞くに堪えないものであった。

 

「皆さん、静粛に…!」

 

 そんな時、一人の初老の男性が飛び交う罵詈雑言をたった一言で止めさせてしまった。委員会の面々は初老の男性に目を向け、斎藤も眉間を潜め彼に注目した。初老の男性は皆が自分に注目したのを確認すると先ずはこの場にいる全員を叱責した。

 

「今…正に国難とも呼べる危機的状況に我々が合い争ってどうなされる!?

今回命を落としたパイロット二名は未来のブルーマーメイドとなる少女達の為に命を落としたのです!

彼等は英雄です。そして我々は此以上の犠牲を出さずに()()()()()から日本を守る術を探さねばなりません。皆さん…、どうかいがみ合わずに…互いに協力をして頂けませんか?」

 

 彼の言う事は正しく正論で自分勝手な言い分を口にした者達は自身を恥じた。斎藤は沈黙を守りながら会議の流れを見極めようとする。初老の男性の名は渋川眞人(しぶかわまきひと)、嘗てはブルーマーメイドと対を為すホワイトドルフィンとして多くの功績を残した人物である。白兵戦も得意で二十年程前に日本に侵入した無国籍テロ集団を1小隊のみを用いて殲滅せしめた。しかしその際、テロリスト達は皆殺しとなり、彼は事件を闇に葬ってしまった責任を取らされてホワイトドルフィンを退役させられていた。

 

(渋川眞人か…、さて、彼がガメラやギャオスに対しどう対処するのか…?)

 

 斎藤は渋川眞人に対し懸念を感じ、会議は彼を中心に回り始めた。

                                                                                                                                       




小説後半は親父ばっかで斎藤雅昭はガメラ1と3に出ました。本田博太郎さんが演じたお人です。

渋川眞人はオリキャラでイメージとしては漫画“地獄の教頭”の教頭先生です。立ち位置として明乃達の敵で考えています。

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